番外編 形成された水牢・男VS女Ⅲ
「おわっ!……っ、こんなところでクロールしてんじゃねぇ!!」
「うっせぇなここは泳ぐ場所だろが!別れろバカップル!!」
第一泳者、陽志と古旗の戦況はほぼ互角だ。
互角だったのだが、陽志の奴ビーチボールで遊ぶカップル……いやバカップルと接触したため少し古旗の方がリードしている。
陽志、よくやった……!
……と思っていたら陽志の野郎、立ち止まりやがった。
「む?どないしたんや陽志?」
奏ちゃんも陽志の異変に気づいたようだ。
どうやら水を飲んで咳き込んでるようた。……あの野郎、負けたら昼飯奢らなきゃいけないの忘れてないだろうなぁ。
「……泳ぎながら大声出すからやん。」
まったく陽志の奴、バカップルに突撃したことは評価するが、まだまだだな。
言ってる間に古旗は折り返し地点……つまり50Mを通過したみたいだ。
「……ぐっ、やっべ」
陽志は息を整えるとすかさずクロールを再開する。
「そろそろ……かな。」
古旗に続く第二泳者である菜川が飛び込み台に立つ。
「次は菜川か、泳ぎ得意なのか?」
暇潰しに菜川に尋ねてみる。……まぁ、本音は情報収集だ。見たところ、古旗はよく泳げている。ここで菜川も泳ぎに自信を持っていたら、オレ達と同じ様な作戦、つまりリレーの正攻法である短期決戦狙いって訳だ。
……まぁそりゃ当然の戦略だろうが。
すると菜川が自信無さげな表情を浮かべるのだから驚いた。
「……それがだな。自慢ではないが泳ぎはまったく自信がない。25Mすら危ういんだから。」
「……え?」
マジか。……え?どゆこと。
少なくとも女子チームはオレらと別種の作戦って訳か?
まさかまさかまさか、オレらの想像もつかない未知なる戦略でもあるってのか?
オレは奏ちゃんに意見を聞くべく、小声で話しかけてみる。
「女子チームの作戦?どういうことや?」
「次の菜川、泳ぎにまったく自信がないみたいなんだ。どういう作戦だと思う?」
「……?そりゃ、あれやろ?泳ぎが下手やから責任重大のアンカーを泳がんだけやろ?作戦じゃぁなく。」
「……は?」
「わいらは勝つためにいち早くゴールするべく、速い奴を先に泳がせて遅い奴を後回しにする作戦やけど、女子たちはただ単に個々の意見を尊重しとるだけやろ」
えー……。そんなことか。
んじゃぁ女子チームは好きな順に並んでるってことだろ?一番に泳ぎたい奴が一番に泳いで、最後に泳ぎたい奴が泳ぐ。つまりは……
「……女子チームのアンカーがエースって訳か?」
「まぁ、そやろな。ってか、普通は一番速い奴をアンカーにするしなぁ」
うん、普通はそうだよな。
「……ふぅ。」
菜川が深く息を吸う。その意図は、これだ。
「……古旗のやつ、もう帰ってきたのか。」
「……えらいこっちゃ、これじゃ何のために速い奴を最初に持ってきたかわからんやんけ」
オレらの作戦だと、切り札を初っぱなから投入して、差をつけるために速い奴を持ってくるってことだったが、まったく……これじゃ本当に負けちまうぞ。
「……っぁ、李女ちゃん任せた!」
「りょ、了解した!」
100Mを泳ぎきった古旗の声援を背に、菜川は力強く答える。
……飛び込まずゆっくり水に浸かって泳ぎ始める菜川が可愛い。
「っっはぁぁぁ……。奏也ぁ!頼んだぜ!!」
ようやく陽志も100Mの地獄から帰還した。
「任しときっ!」
バッと飛び込み台から綺麗なフォームで入水した。泳法も菜川、奏ちゃん共にクロールだが、どんどん奏ちゃんは離れていた菜川との距離を縮めていく。
25M地点まで泳いだ頃にはついに追い付くことに成功する。
「すっげ、奏ちゃん速い」
イケメンだなぁ。
「なぁ陽志見てみろよ、奏ちゃんお前の尻拭いしてくれてんぞー……」
100Mを泳ぎ切り、疲れているであろう陽志に視線を向ける。
……開いた口が塞がらなかった。
「……くぅっ…………」
「……おいおいどうした陽志!」
見ると腹部を両手で押さえ苦しそうに地べたで悶ている、。
「……まさか陽志。」
「……あぁ、そのまさかさっ……!さっき泳いでるときに水飲んじまって……それが結構な量でなぁ
「……つ、つまりは?」
「腹をこわした……」
「トイレ行ってこいこのバカヤロー!!」
腹を押さえながら惨めにトイレへ向かう陽志。さぁ、困ったぞ。三番目に泳ぐのは陽志だ。奏ちゃんが完泳仕切った時点で陽志が戻ってこないと……。
「……あらあら心二ぃ」
女子チームから優璃の余裕な声音が聞こえてくる。
「この勝負は貰ったかなぁ?」
そんな優璃の言葉にオレも余裕の笑みを浮かべながら返してやる。
「ケッ、今はウチの奏ちゃんがリードしてるじゃん。まだ分かんないよ!!」
そう言っている間にも奏ちゃんは50Mを突破し引き返しに来ている。
「いいぞ奏ちゃん!その調子だ!!」
一方の菜川はもう少しで50M地点にたどり着くと言ったところだ。
恐らく奏ちゃんが泳ぎ終える頃には25Mくらいの差は開いているだろう。
菜川には悪いが感謝するぜ!
……いやいや、次陽志の番なのに誰が泳ぐんだよ。
やっぱりオレが代わりに泳いで陽志にアンカー泳いでもらうか。
「……なるほどなるほど、面白いことしてんじゃねーか。」
少し離れたところから聞き慣れたら声が聞こえる。
人目見ただけで存在を理解させる目立った毛色をたなびかせながらこちらに手を振ってくる。
「……守郎!」
「……ったくよ、電話くらい出ろよ。おかげでだいぶ探したぞ」
あ、スマホ着替えたズボンのポケットん中だわ。悪い悪い。
「そんで?リレーやってんのか?」
「そうなんだけど陽志がトイレに籠っちまって次の泳者が居ねぇんだよ。」
「……へーへー。」
言いながら服を脱ぎ出す守郎。当然、下には海パンを履いている。
「……なら、オレが代わりに泳いでやるよ」
すごい!めっちゃ頼もしい!!
「……?守郎か?」
100Mから帰還した奏ちゃんが尋ねる。
「お、奏ちゃん帰ってきたか!陽志が腹壊してね……代わりのバカヤローだ」
「奏ちゃんゆうなて!」
「お前よりはバカじゃねぇよ」
ダブル突っ込みに場が和む。
このまま勝利を掴みに行こうぜ!そんな勢いで守郎は飛び込み台に乗らず、そのまま走りながらプールサイドを蹴り、ダイナミック入水した。
カッケーーーー、でも良い子は真似しちゃダメだぜ♪
「………。」
飛び込んだ守郎はそのまま泳ぐことはなくただその場に立ち尽くす。
「「……守郎?」」
オレと奏ちゃんの声が重なる。そして最悪の可能性が浮かぶ。
守郎はオレと奏ちゃんの呼び声に答える。
「……飛び込んで腹打った。すっげぇ痛い」
「だっせぇぇな!!この不良頭!!」
そうしてる間にも菜川が戻ってきた。
「……ぷはぁ!……くーちゃん頼む!!」
「……任せて。……お先に。」
くーちゃんはあくまでクールに、守郎を追い越していった。
「おいおい抜かれちゃったぞ守郎!早く行け!」
「……ぐっふぅ、無茶言うな…何か腹が気持ち悪い」
なんだこいつ、カッコ悪い。
深く酸素を吸い、弱々しく顔を沈めて泳ぎ出す守郎。
差はまだあまり開いていない。逆転の可能性は十分にある。
……女子チームの三番手がくーちゃんとなると、アンカーを努めるのはやはり、残りの彼女。
「……さぁて、アンカーは心二か。お互い頑張ろうね?」
未だ優璃は不敵な笑みは崩さず、静かにプールの中に入る。何なんだこの熱いノリ。すっげぇ燃えるぜ
「絶対勝つぜ優璃さんこの野郎」
オレと優璃は50Mプールへと視線を戻す。
……現実問題、オレは水泳に自信と呼べる物を持っている訳ではない。優璃とハンデなしで泳いだ場合、圧倒的差でオレは負けるだろう。
だが、それは優璃が女子チームの中で一番水泳の分野に秀でていることが前提の話。
しかし隣で堂々守郎とくーちゃんの水泳を見ている優璃の態度を見ていると、とても水泳に自信が無いようには見えない。
「………っ。」
頼む守郎!絶対、絶対……
「……守郎ーーーー!!絶対リードしてる状態でオレにまわせーーーー!!」
守郎、くーちゃんはほぼ同時に中間の50Mに到達した。
「……っはぁ、……っったく、任せろォォォォォォ!!」
大きく息を吸い込み残り50Mを目指す。
さっきまでのクロールとはまるで違う速度を出す守郎。腹を水面に打ち付け、焦りつつ泳いだ序盤とはきっと余裕があるのだろう。
水泳は力まず水を掻くことが大事だと聞いたことがある。
だが、くーちゃんもやはり負けてない。くーちゃんと言えばクール。冷静に水を掻くことが大事だとされる水泳の分野においては平凡以下なんて考えられない。守郎とくーちゃんの差は劇的に開くことはなく、どんどんとこちらへ向かってきている。
すでに水に浸かっている優璃は姿勢を低くして胸の前で両手を重ねて待機している。
そしてついに、両者は100Mを泳ぎ切ろうとしていた。
「へいくーちゃん!」
「……っ!」
パンとハイタッチを交わし泳ぎ始める。
「行けっ!心二っっ」
「頑張るっっ!!」
守郎の声と同時にオレは飛び込み台から入水し、泳ぎ始める。
今のところ、優璃と距離を離されることはなく、僅差の泳ぎを見せていた。
さっきから50Mをみんなが往復しているからか、泳ぐときに避けなければならない人がまったく見当たらない。とてもスムーズに泳げている。息継ぎの為にチラリと優璃が泳いでるとされる右隣へと目を向けた。
「……は?」
すぐさまクロールを続行したが、とても不安を拭って泳げるような心境ではなかった。
確かに、優璃は泳いでいた。
……そう、平泳ぎで。
中学の時の水泳授業で平泳ぎがとんでもなく速い奴は確かにいた。
……だが、オレを不安にさせるのは……優璃が本気を出していなかったら?と言う事だった。
考えられることだ。100Mを泳ぐにはとてつもなく体力を使う。男女で比べれば体力のある男の方が有利にも見えることだろう。そこをカバーするべく、常時腕を掻き続けるクロールではなく、一掻きでそこそこの距離を進むことができる平泳ぎを使ってるのだとしたら……?
最初の50Mで体力を温存しておいて残りの50Mをクロールで速攻をかけるのだとしたら?
オレに勝ち目はない。
今考えれば、最初リードを許して泳ぎ始めた守郎がくーちゃんに追い付いつけたことも説明がつく。
くーちゃんが先に出発していたのに、守郎が追い付けた……これは守郎がくーちゃんよりも速いからだ。
しかし、そこから守郎がくーちゃんを追い抜くことが出来なかったのは守郎がバテたと考えるより、くーちゃんが上手く体力を温存しながら泳いでいたことに他ならないのではないだろうか?
中間地点から速度を増した守郎相手にリードを許さなかったことからも、その可能性が濃いだろう。
女の子で100Mの距離を初っぱなからフルの体力を使って泳ぐなんて自殺行為はしないのだから。
男でもそんな奴はいないだろう。
50Mを泳ぎ、残り半分。
オレと優璃の差は僅差で優璃がリードしている状態だ。
ここからどう来るかで、オレの心に余裕ができるかどうかがきまる。
ここで優璃が今までの平泳ぎとは違いクロールを使ってきたら……
もうオレの心が持たない。
そして、オレは勝てないだろう。
優璃が引き返すべく大きく息を吸って顔を沈め、同時に綺麗なフォームで腕を掻いた。
水面を足で蹴り、ずんずんと進んでいく。
間違えるなど有り得ない。完全にクロールの泳法。
恐らく優璃の真骨頂。
……まずいまずい!
オレは慌てて優璃を追いかける。
わずか前方で見える優璃の綺麗な太ももがどんどんと遠退いていく。
焦りが出始めているのか、水を掻く動作が乱暴になっているみたいだ。
そして、ついに、さっきまでは優璃の胸まわりがすぐ隣にあったのに、今ではわずかに足の裏が見えるくらい。
確信した、このままでは勝てない。
そんな心二の目の前に突如大きな胸が心二の視界に現れた。
避けることは出来ず、ましてや接触なんてもってのほか。
呼吸も辛くなってきたオレは地に足をつけ、完全に立ち止まり水面から顔を出した。
まわりからみれば、今のオレの様は完全な降参だろう。
無様なオレの眼前に当然ながら女の顔があった。
水中で見た大きな胸の女の子だ。
いや、女の子……ではなく女性と表現せざるを得なくする彼女の容姿。
いつも一人でいることの多い彼女は今回もまた一人であった。
すぐ目の前に先輩の顔がある。
今までにこんな近くで先輩を見つめあったことが無いからか、とてもドキッとしただろう。
しかしだ、急に眼前に現れた彼女に、オレは羞恥よりも驚愕の相を浮かべていた。
目の前の彼女こそは、凛々しくも孤高な存在。
名を青山礼愛三年生。
我が桜南高校内では青山風紀委員長の名で知られる大人気の先輩だ。
「……おぉ。」
青山先輩の間抜け可愛い第一声にオレは思わずにやけた。
ったく、なんてタイミングで現れてくれるんだこの先輩は。
おかげでオレの中には消えかかっていた勝機が再び音もなく蘇ってみせたよ。
「青山先輩、今日も綺麗ですね!」
何としても、この勝負、勝つ!!
前まで使ってたなろう専用のTwitterアカウントにログインできなくなるという自体に陥ったため新しく作り直しました!
更新状況などを呟いておりますのでどうかフォローなりしてくれると嬉しいです
@amane_1104
本アカウントのTwitterでも言っとりますが、最近のニコニコ生放送はアニメの一挙放送いっぱいやってくれてるので暇にならんねぇ。
でも夜遅くまでやってるから自然と就寝時間がとんでもないことになってくんだよな。
今回は様々なアニメ、映画を見ながら書き終えました。
序盤はひぐらしのなく頃に実写映画二作連続とストブラ一挙を見ながら書いて
中盤から終盤は銀の匙一挙や毎週放送されるアニメを見ながら書き終え。
挿し絵は化物語一挙を見ながら描き終えました。
とはいっても挿し絵なんて最初の二話くらいで終わったから残り十何話は真剣に見とりました。
阿良々木くんと神原さんの絡みが本当癒し。
物語キャラの中では神原さん大好きです!
八九寺も捨てがたいがな……。鬼物語よかったぁ。
あぁ、コミケの放送もやってましたね。
寒そう寒そう笑
僕はコミケ行ったことないんですけど、いやぁ、行きたいねぇ。
てゆーかしゅがさん出てきてビックリしたわ笑
えるたそ~♪
しゅがさんかわええなぁ(*´∀`)
握手してて羨ましかった……!
コホン、さてさて!次の一挙は偽物語やったかな?見ながら番外編仕上げ+第4シリーズを進めていこうと思います。
……ただ、冬休みの課題終わってねぇからやんねぇとな。
ッハハ☆課題とか死ねばいいのに。
……うぅ、3時半とか眠いよぉ笑
化物語長かったぁ(´・ω・`)
さて、今回の比較画像は……狭山陽志です
左側が初登場、右側が最新話です!
変わりすぎだなぁ笑
……笑えよベジータ。




