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第126話 舞台裏での小会議

 渚沙からの連絡を受けて、信也は秘書と二人、大急ぎで対策本部の会議室へ向かった。


「お、三浦君早かったね」


 扉を開けるなり、すでに席についていた渚沙がそう言って片手を上げる。どうやらまだ、他のメンバーは集まっていないらしい。


「そりゃ急ぎもするよ……で、本当なんだね? Dream Star社のフォン・ブラウン氏が充達と接触したってのは」


 隣までやって来てそう言う信也に、渚沙は頷き、詳細を語った。


「場所はバベルの塔第四十九階層。丁度五十階に向かう階段の前にある大きな広場で接触したみたい。

 今はバベルの塔攻略の中心メンバーとして活動中だって、ナンコー君が」

「どうりで、要人保護班が見つけられないわけだ」


 渚沙の言葉に、信也はそう呟いて苦笑した。

 フルダイブの研究をやっていて、ウィリアム・トビー・フォン・ブラウンの名を知らぬものはモグリだろう。

 Dream Star社のCEOジョージ・リーの右腕であり、技術者としても一流の腕を持つ彼のことは、大学時代から交流のあった信也もよく知っている。

 大誠や充、あるいはジョージ・リーがいなければ、きっとフルダイブ技術を発明したのは彼だった。

 それほどまでに、フルダイブ業界における彼の存在は大きい。


「残基は?」

「まだ全部残ってるみたいだよ。最前線で戦ってるとはとても思えないね」

「流石、アメリカ屈指のヨルムンガンド()()だな……」


 信也は言って、しばし黙り込んだ。


 信也を含む、“決死隊”関係者達の多くは、フォン・ブラウンは各国要人達の中でも特に重要度の高い人物だと考えている。

 彼にもしものことがあれば、フルダイブ技術の未来に大きな影響を与えることは明白。なんとしてでも、生き延びてもらわなくてはいけない。


(みっちゃんを送り出しといて何言ってんだと思われるかもしれないが……)


 正直なことを言ってしまえば、前線から下がって安全に過ごしておいて欲しいのだ。

 だが、そういう訳にもいかない。バベルの塔の攻略が出来なければ、正真正銘のバッドエンドを迎えることになる。

 そして今現在の塔攻略組には、サービス開始当初から自社ゲームをほっぽりだしてヨルムンガンドに潜っているフォン・ブラウンの存在が不可欠だ。


「――ナギ、Dream Starに連絡は?」

「もう入れてあるよ。……三浦君は、どうするべきだと思う? 彼に前線から下がってもらえるよう、ナンコー君に伝える?」


 渚沙の言葉に、信也は静かに首を振った。


「いや、俺は彼らを信じたい。それが、ベストだと思う」


 あとは他の連中がどう考えるかだな、と付け足そうとした時、廊下を歩く幾つかの足音が聞こえてきた。


「ご到着、だね」


 信也は、ゆっくりと頷いた。

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