賢者タイムを超えて…
いつもお付き合いいただき
ありがとうございます。
――――これにより創生の儀が終了せり。
空間の歪みが揺れ戻り、光は二人の間に収束する。
光は絹のような輝く生地になって
俺達二人を隠すように包み込む。
すっかり安心仕切った顔で眠るサクヤを抱いたまま。
俺は万感の想い込めて呟く。
「えっ、えっ、えかったぁ〜」
かつての同士たちの怨嗟の声が聞こえた気がする。
いくら記憶にあっても、初めて生身で体感する経験は
筆舌に尽くし難く、猿勇者がハマるのも分からなくはない。
ただし、この感覚はサクヤに限る。
俺とサクヤの神力の融和性は郡を抜いている。
魂の結び付きがハンパないので、
そのあたりの影響が大きいと思う。
多分他の人ではこれほどまで感じる事はなかっただろう。
ふと、『ノリコ』と『エリカ』の事を思い出す。
寝ているサクヤが俺に抱きつく力を強めると寝言をいう。
「旦那さまぁ。浮気は駄目なのじゃぁ」
やましい事を思ったわけでもないのに冷や汗が流れる。
融和性が強すぎるのも困りものかもしれない。
そんな事をちょっとだけ思ったが、
それ以上に俺を愛し愛されている大切な繋がり。
それは何ものにも代え難い強い結び付きの証明だ。
そんな想いも通じたのか、
サクヤは満面な笑みを浮かべると俺の腕を齧り出した。
ガシガシと容赦なく齧る、
甘噛みなんかじゃなくわりと本気でかなり痛い。
「サクヤ、起きて、イタイ、痛いから……起きろー」
幸せそうな寝顔を崩すのは忍びなかったが、
放っておくと本気で俺の腕を食いちぎりそうだったので
無事な方の腕で脳天チョップをかます。
脳天の衝撃を受け、ちょっと泣き顔で目を覚ますサクヤ。
「痛いのじゃぁ、寝起きにデーブイは酷いのじゃ」
「いや、俺の方が酷いから」
色々齧られ、血まみれな手を見せる。
「なんと、旦那様に血を流させる不届き者が、
妾が成敗してくれるのじゃ」
「いや、お前だから」
俺の冷静なツッコミを受け、自分で自分を指差すサクヤ。
「アッハッハッ、冗談がすぎるのじゃ、
大切な旦那様を傷つけるなんて妾がする筈ないのじゃ…」
俺はジト目で、サクヤを見続ける。
サクヤは次第に自分がした事を認識すると、
ワタワタと狼狽しだしだんだんと涙目になる。
「妾とした事が今世、一生の不覚」
浮きながら両手両膝をつくポーズで項垂れるサクヤ。
器用だなと思いつつ、流石に可哀想になって声を掛ける。
「すまん、俺も大袈裟にしすぎた
この通り、こんなのかすり傷だ」
俺は神力を腕に通し瞬時に傷を塞ぐと、
何事もなく腕が元に戻る。
安心させる為にその手でサクヤの頭を撫でた。
「旦那さまぁぁ…よかった…よかったのじゃ」
「ああ、これもサクヤのおかげだ、ありがとう」
元に戻った腕を取り頬ずりして涙ぐむサクヤ。
すっかり泣き虫にさせてしまったな……
俺がいなかった間の事を思うと胸が締め付けられた。
サクヤも目が覚め、先程の件も落ち着いたので、
今後の事をサクヤと相談することにした。
「サクヤー、これからどうする?」
女子高生並の軽い乗りで尋ねてみた。
「そんなのは旦那様の思うままなのじゃ」
変わらないサクヤの受け答えに
嬉しくもあり、悲しくもあった。
真面目な話。記憶と力を取り戻す前だったら
間違いなく、あの猿勇者に復讐していたかもしれないが
記憶と力が戻った今、
正直に言うとどうでも良くなっていた。
正に賢者タイムを超えて神の域まで到達した
ゴッドタイムである。
童貞を脱したくらいで調子に乗った
振る舞いに怒りを覚えるものもいるだろうが、
これが持つ者と持たざる者との差だ。
一般人と転生者以上の実力差を持てば寧ろ
あの猿勇者にさえ憐れみを感じる。
ただ。触らぬ神に祟りなしなだけで
もし、虫が自ら火に飛びこんで、
降りかかる火の粉になるのなら、
それを振り払うのに遠慮はもちろんしない。
その時の俺はきっと悪い顔をしていたに違いない。
読んでいただきありがとうございます。
少しでも楽しめましたら。
ブックマークの追加
画面下の『☆☆☆☆☆』から評価して
読み進めて下さいましたら幸いです。
宜しくお願いします。




