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コア…その名は

少しでも楽しめたら幸いです。


 目の前で流暢に挨拶するメイドさん。

 サクヤはまだ打ちひしがれていた。


「どうも、テルヒコです」 

 

「存じあげてます、貴方の帰還を心から喜び申し上げます

 ええ、ずっと、それはもう、お待ちしておりましたから」


 先程までと違って急に丁寧な口調に変わるコア…

言っている言葉は多少棘を含んでいるが、

あと、それとは別にコアって可愛くないな

何か呼び名ないのかな。


「改まった言い方しなくてもいいから、あと

 呼び名だけど…名前とかある?」


「いえ、名前はまだ定義されてません

 宜しければ名前を付けてください」


 コアはサクヤとは違う妖艶さで微笑む。


「…それなら……『ヨシノ』なんかどうかな?」


 目の前の綺麗な桜の樹を眺めて尋ねる。


「なるほど、安直ですね…

 ちなみにこの樹は染井吉野ではありませんよ」


 ダメ出しされて少しヘコむ俺。

 更にコアが追い打ちをかけるように言葉を続ける。


「でも気に入りました、今後私の事は『ヨシノ』と、

 お呼びください御・主・人・様」


「いや、さっき安直とか言ってたよね」


「確かに安直ですが気に入る、

 気に入らないは別の問題です」 


 まんまと手のひらで踊らされ、翻弄される俺。


 そんな俺達を勝ち誇った顔で見つめるメイドのヨシノ。

二人して最初に主導権を握られた気がする。


 気を取り直してサクヤを抱き起こすと

 大事な事を尋ねる。


「ダンジョン管理について教えてほしい」


「分かりました。

 その前に御主人様にも管理者権限を付与します」


 マスターでなくてもある程度管理が可能という事か


「何か手順が必要なのか?」


「はい、私の胸に触れてください」


 真剣な顔で俺を見るヨシノ、嘘はなさそうだ

そう判断して手を伸ばすが、直ぐに叩き落される。


「駄目なのじゃ、旦那さま騙されたらいけないのじゃ」


「ちっ」


 ヨシノ、いま舌打ちしたよね。


「こやつは、妾の分霊だから、

 内心は旦那さまのことスキスキでたまらないのじゃ」


「流石はマスター、我が根源です。

 お見透しでしたか」


「当然じゃ。

 そなたこそメイド姿など容赦ない攻めをしおって、

 元が我ながら恐ろしいやつなのじゃ」


 これは自画自賛しあってるのだろうか?

 なんだか埒が明かなそうなので割り込む。


「それで結局どうすればいいんだ?」


「マスター、御主人様に

 管理者権限を与えてもよろしいですか?」


「管理者なんちゃらは、分からぬが良いのじゃ」


「マスターの承認を得ましたので御主人様

 お喜び下さい私を自由にして良い権利を得ました」


 挑発するような笑みでヨシノが俺を見る。


「なんじゃと、まんまとしてやられたのじゃ」


「いや、意味違うから、サクヤも喰いつかない」


 どっぷりツッコミ漬けで泥沼から抜け出せないでいる。


 そんな俺達を嘲笑うかのようにニタリと笑い

いじって満足したヨシノがヤレヤレと説明を続ける。


「しょうがないですね、ではこれが見えますか?」



 ――――――――――――――――――――――――――


 ダンジョン名:樹海

 階層数:9F

 地形タイプ:自然型

 ダンジョンLV:300

 モンスターLV:200

 罠LV:280

 アイテムLV:250

 ユニーク個体:1

 ダンジョンP:105976

 ソウルP:3654


 特性

 『龍脈』一定感覚でダンジョンPが増える

 『霊峰』霊峰の加護で山岳モンスター強化

 『死地』怨みの念でアンデッドモンスター強化

 『神樹』神樹の影響で植物モンスター強化

 『幽境』場の影響で五感が狂いやすくなる


 ―――――――――――――――――――――――――


 知りたかったダンジョンのステータスだ

しかし、封印区画と言われるだけはある通常のダンジョンが

平均レベル50で高難易度でも100だったはずだから

その難易度が単純に倍以上である。

 特に罠LVの高さが性格の悪さを表しているかのようだが、

それはきっとヨシノが眠りについていたサクヤを

守っていたからであろう。


 そう思うと悪戯お姉さん的メイドにも改めて

感謝の念を抱く。俺はヨシノの両手を取って言う。


「ありがとうヨシノ、サクヤを守ってくれて」


「なっ」


 サクヤとヨシノの声が重なる。


「なにを急に不意打ちカマしてくれますか

 貴方と言う人はだからズルいのです、自重してください」


 ヨシノは先程までの余裕ぶった態度がなりを潜め

急にアタフタしだす。


 それを横目に俺をジト目で見続けるサクヤ。


「いつの間に、こやつに名付けをしおった旦那様」


「いや、単に名前がコアじゃ可哀想だと思って」


 特に他意があったわけではないと説明する。


「はぁ、旦那さまは既に神の力を取り戻しておるのじゃぞ

 そして、そやつは元々は妾と同一の存在の分霊じゃ」


「それは分かっているけど」


「では、そやつに神として、名を与えれば…」


 サクヤの言いたいことが分かった。

 俺はサクヤと同じ存在に、別の名を与えてしまった。

 普通の人間の時なら問題はなかったが、

 俺は既に神の力を取り戻している。

 その俺がサクヤ以外の別の名で定義してしまえば

 もうその存在は……


「もう、そやつと妾は元を一つにする別の存在じゃ」


「…………俺はやっちまったのか?」


「ああ、旦那さまはやらかしてしもうたのじゃ」


 俺はいつものサクヤと同じ体制で項垂れる。

それを憐れみの目で見つめるサクヤ。

 その隣でヨシノはまだワタワタとしていた、

やっぱり元が一緒なだけはある。


読んでいただきありがとうございます。

少しでも楽しめましたら。


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読み進めて下さいましたら幸いです。


宜しくお願いします。


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