元旦から早々に絶望した
私の世界は変わらないと
信じていた。
猫も居て
メッセージアプリでの
やり取りも
大きく変わらないと
勝手に信じていた。
元旦。
一月一日の元旦には
実家に帰るの予定を立ててた。
当たり前のように
桜玉の鈴が付いた家の鍵を
玄関の鍵穴に差し込み
捻るだけ。
ZLLと刻印された
いつもの見慣れた玄関なのに
鍵が合わない。
鍵を抜き、鍵の形を確認するが
見慣れた鍵だ。
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・。
いや、オカシイだろ。
今までの情報を整理するが、
訳が分からない。
分かりたくも無い。
ここは、私の知る世界なのか。
そもそも、スライムはゲームなど
空想の生き物で
食べ物にもスライムがいないのが
当たり前だった。
・・・・・・・・。
鍵が、合わないことを
親にも弟にも隠さなければ駄目だ。
じゃないと、
何処かに監禁される可能性もある。
なんで、なんで、どうして、
どうやって、こうなった。
鍵を鞄に戻して
震える手で
親の携帯に電話する。
「もしもし、板見です」
いつもの母の声に安堵した。
「あー、お母さん。
私、奈緒美だよ。
玄関の鍵を開けて欲しいの」
まずは要件。
私が嘘をつくときの癖は
理由を付ける事が多い。
親だから癖に気付いてる可能性が
高いので咄嗟に思考が回った。
もし、理由を聞かれたら
持ってくる鍵を間違えたと、
言えば納得出来るはずだ。
だって、鍵が合わないのは
違う鍵を持ってきたのが
普通で当たり前の事実だからだ。
仕事場や自身の家の鍵を
持って来てる人も居るのは普通。
たまたま、実家の鍵を忘れてきたのは
よくある話ではないか。
【納得させるのに精一杯だな】
頭の中に文字が流れる。
いつのも事で
彼は、ユウキ。
男だそうだが、
私には幽霊が複数取り憑いてて
私の良き隣人達でもあり
現状は協力関係である。
他の協力者は居るが、
今は私の危機を何としても
回避しなければ、詰む。
「そーなん。はいはい」
そして、玄関に母の姿が写り
鍵が開く音を聞こえたので
スマホをトートバッグに入れてから
実家に入る。
弟はまだ無く私は安心した。
玄関で、靴を脱ぎ
異変が起きる三週間前に
トートバッグに放り込んだ
弟に渡す“夫婦円満《祈願》”と
書かれたしゃもじを
確認するためにトートバッグを触る。
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・。
は、い????
【おいおいおいおいおい。
出雲旅行で買ったしゃもじは
そのトートに入れたの俺も見てたぞ】
更に言うと大きいので
触っただけで分かる品なのに
入ってない。
私はスマホを取り出して
メッセージアプリ“ネイン”を
立ち上げて
弟とのやり取りを見る。
そこは、真っ白で、
まだ、何の会話、もしてない。
苦しくなる。
頭に熱がこもるように
ふらつきそうにもなるが
耐える。
とにかく、とにかく、
スマホを
また、トートバッグに入れて
玄関から、家に踏み込む。
猫缶があるはずの棚には
鳥の餌らしき物があり、
リビングへ向かう。
其処には鳥籠があり
灰色の文鳥と
白の文鳥が居た。
飼い猫の
トラ、ミケ、クロが居ない。
今年生まれのトラは
大人猫よりまだ小さく
いつも仕事から家に帰ったら
お出迎えか
ソファーで寝転がってるか
してるのに、どこにも居ない。
全ての部屋を見ても
我が家の猫が居ない。
そこから思い出す。
私は独り暮らしの許可を
親から貰ってない。
貰ってないのに
なんで、独り暮らしをしてる。
今、この現実が
恐ろしくなってきた。
私は夢を見てるのか?
河豚しゃぶの鍋が来た。
私はスマホを取り出して
操作しながら、母に言う。
「ただいま。
ご飯を食べたら、
すぐに出かけないと駄目だから
今すぐご飯は、駄目?」
「あんたも社会人だから
仕方ないのは、分かるけど、
早く用意して食べなさい」
話が通じたようで
私は母が用意した鍋を食べて
すぐに家に戻る。
マンションの位置を忘れたが、
どうにでもなる。
私はある協力者に電話をかける。
「はい、内野桐也です」
「私の家はどこだった」
「え?
でしたら、迎えに行きましょうか」
「来て。地下駅に近い古本屋へ来て」
「はいはい」
電話相手は
12月24日の
探索者説明と体験コースを
一緒に受けた海津実の名を持つ
内野桐也と私が命名した
怪しい人物だ。
この世界を知るために
私は彼さえも利用しなければ
ならないのだ。
私の知る世界は、
もう、存在しない事に
目の前が暗くなるのを感じながら
地下駅そばの古本屋へ歩いた。
そして、私は
始まりを思い返す。
世界が変わった日、
12月23日から
1月1日までを振り返った。
※次は舞台の始まりに
至った彼等との会話です。




