3. ノクムンミッドの歴史と基本情報なのじゃ
☆データ情報☆
※使用したデータは2026年09月29日時点のものなのじゃ。そのため今の値から多少ずれがあるのじゃ
※これらのデータは公式から提供されるものではなく、個人が集めたデータからの推測なのじゃ。
ノクターンノベルズ、ムーンライトノベルズ、ミッドナイトノベルズの3サイトを、このエッセイではまとめて「ノクムンミッド」と呼ぶのじゃ。
「さて小僧。まずは土俵を知るために、ノクムンミッドの約20年に及ぶ歴史を頭に入れるのじゃ」
「は、はい……! よ、よろしくお願いします……」
「なろうR18サイトの歴史は大体こんな感じなのじゃ」
・2005年03月21日 - 男性向けR18小説サイト「ノクターンノベルズ」サービス開始
・2005年05月08日 - 女性向けR18小説サイト「ムーンライトノベルズ」サービス開始
・2010年10月17日 - ヒナプロジェクトの関連会社である株式会社ナイトランタンを設立。R18サイトはナイトランタンが管轄
・2015年12月16日 - 官能を主目的としない男性向けR18小説サイト「ミッドナイトノベルズ」のサービス開始
・2022年06月01日 - ヒナプロジェクトがナイトランタンを吸収合併。運営を一本化
・2023年11月30日 - 男性向けR18新規サイト「onaco」のリリース
・2024年06月03日 - ムーンライトノベルズ公式アプリ「ムーンブックス」リリース
・2024年11月28日 - 「onaco」サービス終了
・2025年04月25日 - 「ムーンブックス」サービス終了
「始まりは2005年じゃ。3月に男性向けの『ノクターン』、5月に女性向けの『ムーンライト』が開設された。そして10年後の2015年12月、官能を主目的としない大人のためのR18サイトとして『ミッドナイト』が産声を上げたのじゃよ」
「僕が投稿したミッドナイトって、他より10年も後だったんですね……」
「そうじゃ。運営側も色々試行錯誤しておってな。2023年には男性向けR18イラスト投稿&コミッションサイトの『onaco』を立ち上げ、2024年にはムーンライト公式アプリ『ムーンブックス』をリリースしたが……どちらも1年足らずで終了・撤退しておる」
「えっ……ど、どうして終わっちゃったんですか……?」
「公式発表によれば、決済手段の制約や昨今の表現規制が理由とされておる。なろうの収入源は広告が主じゃから、課金率の高そうな層で新たな資金源を模索したのじゃろうが、電子の海の荒波は甘くないということじゃ」
「なるほど……」
「さて、歴史を学んだところで早速データを見るぞ。あらかじめ言うておくが、2026年9月29日時点で取得できた作品のみを対象とした個人集計ゆえ、それまでに削除された作品は含まれん。誤差があるので、絶対的な数値ではなくサイトの傾向を掴むための参考程度と心得るのじゃ。わからんことがあれば遠慮なく聞くが良い!」
「は、はいっ! がんばって質問します……!」
「まずは全体の作品数じゃ。ノクムンミッドを合計すると約16万作品となる。なお、ムーンライトは『女性向け』と『BL』の2部門に分かれており、それぞれ傾向が違うので別々に統計を見ることにするぞ。それぞれを『ムーン女性向け』、『ムーンBL』として表記したのじゃ。その内訳を見るがよい」
「ノクターンが約44%、ムーン女性向けが約26%、ムーンBLが約25%……ミッドナイトは約4%……ですか?」
「うむ。ムーンの2区分を合算すると半数を超える。つまり『男性向けサイトと女性向けサイトで作品数はほぼ半々』というのが事実じゃ」
「僕が投稿したミッドナイトは……全体のほんのちょっとしかないんですね」
「そうじゃ。お前さんはノクムンミッドの中でも、極めて作品母数が少ない小さな場に飛び込んだわけじゃな」
「次は月ごとの新規投稿ペースの推移じゃ。2020年春に一段跳ね上がり、2025年から再び急増して月1,500〜2,000作品ペースになっておる」
「あ、あの……! 最近急激に増えているのは昔の作品が削除されていて、最近の作品がまだ消されていないだけ……ってことはないですか?」
「ほう、良い着眼点じゃな小僧! 削除の蓄積による影響は確かにある。じゃが2024年から2025年にかけての急増はわずか1年で起きておるため、それだけで説明するのは無理がある。削除ならもっと緩やかになるはずじゃ。ゆえに大まかなトレンドとして捉えるのが賢明じゃ」
「なるほど……では、2025年からの増加は何が原因なんでしょうか?」
「これは概ね生成AIの影響じゃな。生成AIの能力が上がり、誰でも小説を作りやすくなったからのう。他のサイトでも2025年ごろから爆発的に増えておるのじゃ」
「生成AI……最近よく聞きますね。ちなみに2020年に増加したのはどうしてですか?」
「おそらくコロナ禍の巣ごもりの影響じゃな。あの頃は多くのサービスで投稿数が増加したようなのじゃ。実際、コロナ禍が収束し始めた2023年ごろからまた落ち始めておる」
「確かに……」
「今度はサイトごとの年間推移を折れ線にしたものじゃ」
「えっ……あの、神様。2026年のグラフが、急にガクッと落ちていませんか……? さっきのはどんどん増えてたように見えたのですが」
「早とちりするでない。右端の2026年が網掛けになっておるじゃろ? これはデータ取得日である2026年9月29日時点――つまり約9か月分の途中経過じゃ。まだ1年経ってないから減るように見えるのは当然じゃ。単純計算で12か月に引き延ばせばノクターンだけで年間1万作品に迫る勢いじゃぞ」
「なるほど……! それにしても、2025年からの伸びはノクターンが圧倒的ですね」
「うむ。女性向けやミッドナイトが横ばいから微増なのに対し、近年の供給爆発はノクターンに極端に集中しておるのじゃ」
「こちらは各年のサイト別割合を百分率で表した構成比じゃ。色の帯が広いほど、その年の投稿数に占めるそのサイトの割合が高かったことを意味するぞ。初期はノクターンが多かったのじゃ」
「ほんとですね……でも2011年から2014年あたりは、ムーン女性向けが4割くらいあって一番多かったんですね」
「そうじゃ。そこからまた徐々にノクターンが巻き返し、2025年には約51%と再び過半数を占めるに至った。なお、ミッドナイトは開始以来、ずっと4〜6%程度で安定推移しておる」
「ミッドナイトは安定して少ないんですね……」
「次は作品形式じゃ。選べる投稿形式としては連載と短編の2つじゃが、完結している連載を完結連載として3つに分けてみたのじゃ。短編が36.0%、完結連載が32.8%、連載中が31.2%となっておる」
「ほぼ綺麗に3分の1ずつですね……! 『連載中』って今も更新されている作品のことですか?」
「いや、完結フラグが立っておらん作品はすべて『連載中』に入る。何年も更新が止まった作品も含まれるのじゃ。短編を除いた連載作品の中だけで見れば、約51%(32.8%÷{32.8%+31.2%})が完結しておることになるな。ちなみに全年齢の小説家になろうの連載の完結率は31%じゃ。それと比べると、こちらは連載のうち半分以上がきっちり完結しておる。完結まで書き切る文化が比較的強いと言えるな」
「完結させる作者さんが多いのは、読者としても嬉しいですね……」
「サイトごとの形式比率を見ると、さらに面白い傾向が出るぞ。短編の割合はミッドナイト以外は35%前後で大差ないが、連載の『完結』と『連載中』の比率を見るのじゃ」
「あっ……! ムーン女性向けとBLは完結連載が約4割もあるのに、ノクターンやミッドナイトは連載中のほうが多いです……!」
「うむ。連載作品に絞ると、ムーンは約6割が完結済みじゃが、ノクターンやミッドナイトは4割程度に留まる。女性向けは物語を着地させ、男性向けは連載中のまま走り続ける傾向が数字に現れておるのじゃ」
「僕のいるミッドナイトは……連載中が44%もあって最多なんですね」
「そうじゃ。ミッドナイトは短編が少なく、長編連載が多い場なのじゃよ」
「次は書き手側のデータじゃ。ただしAPIの仕様上、ユーザーを識別する専用ID(XID)は取得できん。そのため、同一作者かどうかの判断は作者名の文字列が一致するかで行っておる。ゆえに別人でも同じ作者名なら同一作者としてカウントされてしまうのじゃ。よって人や名でなく表記としておる。多少の誤差があることを頭に入れておくがよい。こればかりは運営が提供しておるAPIの仕様上しかたないのじゃ。わしのせいじゃないのじゃ」
「は、はい。わかりました」
「それぞれのサイトの作者はノクターンが多く、概ね作品割合と似たような傾向となっておる」
「あの……各サイトの数値を足すと約4万7千くらいになるのに、合計は約4万2千なのはどうしてですか……?」
「良い疑問じゃ! 複数サイトに同じ名前で投稿しておる作者を、サイト別では重複カウントしておるからじゃよ。そこの合計値は重複を除いた数じゃ」
「なるほど……! 複数のサイトに投稿している人も多いんですね」
「その疑問に答えるため、次に複数サイトへ投稿している作者がどれくらいいるのかじゃ。概ね3.8万くらいが一つのサイトだけに投稿しておる」
「単一サイトだけが大半で、複数サイトにまたがっている人は少ないですね……」
「そうじゃ、大半の作者は1つのサイトだけで活動しておるようじゃの。もっとも、サイトごとにペンネームを使い分けておる者もおれば、別人なのにたまたま同じ名前の者もおる。約1割ほどが掛け持ちしておると大雑把に理解しておけばよいのじゃ」
「この図は、どのサイトに投稿している作者が多いかを示したものじゃ。下の丸で投稿サイトの組み合わせを示しておる。一番左の『ノクターンのみ』が約1万9,000表記でダントツに多いのじゃ。それに続くのも『ムーン女性向けのみ』『ムーンBLのみ』といった、1つのサイト専属で投稿しておる作者たちじゃな」
「先ほど見たように、ほとんどの作者は1つのサイトだけなんですね」
「そうじゃな、また掛け持ちの中で最も多いのは『ムーン女性向け+BL』で約1,200表記、次いで『ノクターン+ムーン女性向け』が約1,000表記じゃな。男性向けと女性向けを越境する剛の者も一定数おる」
「ミッドナイトの作者さんはどうなんですか……?」
「ミッドナイト投稿者の約3割は他サイトと掛け持ちで、大半がノクターン兼任じゃ。ちなみにすべてのサイトに作品を投稿している者は90表記ほどなのじゃ。超レアな作者達じゃ」
「色んなタイプの作品を書けるなんてすごいですね……」
「ここからは読者の反応と総量じゃ! 詳細は次回以降にじっくりグラフ化するゆえ、まずは全体像を掴むのじゃ。累計ブックマーク数は全体で約7,100万件じゃ」
「ノクターンとムーン女性向けが、どちらも2,700万件くらいで競ってますね」
「作品数はノクターンの約6割しかないムーン女性向けが、ブクマ総数で肩を並べておるのがポイントじゃ。1作品平均で見ればムーン女性向けが約1.6倍高い。……そしてミッドナイトは全体の1%未満、約50万件じゃ」
「……うう、ミッドナイトの現実が突き刺さります……」
「総合ポイントは『ブクマ×2+評価点』で算出されるが……さあ小僧、この驚愕の逆転劇を見るがよい!」
「ええっ!? 作品数トップのノクターンが3位に落ちて、ムーン女性向けが圧倒的首位……2位もBLになってます!?」
「面白いじゃろ! 計算式を逆算すると、女性向けの読者はブクマのみならず評価点もセットで投じる文化があるのに対し、男性向け読者はブクマはすれど評価点を入れん傾向が極めて強いのじゃ。文化の違いがスコアに直結しておる」
「女性向け作品のほうが人気がある、ということなんですか……?」
「そう単純ではない。評価を入れる読者文化・作法の違いによる部分が大きいのじゃ。これも後で詳しく見ていくぞ」
「ところが感想数――全体約127万件を見ると真逆になる!」
「わ……! 感想の大半がノクターンに集まってます!」
「そう! 『評価は入れぬが感想は熱心に書き殴る男性向け』『評価はきっちり入れるが感想欄にはあまり書き込まぬ女性向け』という、対比構造がここにあるのじゃ」
「一方のレビュー数は全体でわずか6,700件弱じゃ」
「感想は127万件もあるのに、レビューは数千件……桁が違いますね」
「1,000作品あたり約42件、レビューはごく一部の作品にしか付かん。長文の推薦文を書くのは読者にとっても心理的コストが高いからのう」
「挿絵数は全体約16万枚。その大半がノクターンじゃ!」
「ノクターンの圧倒的一強ですね……! あ、でもミッドナイトも、作品数は少ないのにムーンBLより挿絵枚数が多いです」
「男性向け読者への視覚的アピールの需要の高さがうかがえるのう。もちろん、一部の作者が大量に差し込んで平均を押し上げておる側面もあるがの」
「全サイトの本文を合計するとなんと約100億文字、文庫本にして10万冊分じゃ! ここでも興味深い数値が出ておるぞ」
「どんな数値ですか?」
「1作品あたりの平均文字数にすると、ミッドナイトが約8万5,000文字で、一番長いのじゃ」
「長編が多いということなんでしょうか」
「うむ。先ほど見た『連載中が多く短編が少ない』傾向と完全に合致する。どうやらミッドナイトは長編連載作品が多い場なのじゃ」
「以上の7指標を100%積み上げで総括したのがこのグラフじゃ。一番上の『作品数』の割合を基準として、他の指標で各サイトの帯の幅がどう変化しておるかを見よ。
例えばブックマークを見ると、ノクターンは作品数の割合よりも狭く、ムーンは作品数の割合よりも大きく広がっておるのじゃ。この結果から、1作品単位で見たときのブックマーク数はノクターンが少なく、ムーンは多いことがわかるのじゃ」
「なるほど、じゃあ、ノクターンは感想と挿絵が大きく右に突き抜けているから、1作品あたりの数が多いんですね。……ムーンはブクマとポイントがぐっと広がっていますね」
「うむ。そしてお前さんが挑んだミッドナイトを見るのじゃ。文字数や挿絵は作品数並みに健闘しておるが、ブクマとポイントは作品数比率の6分の1から7分の1に縮んでおる」
「ほんとですね……ということは作品に対して、ポイントが圧倒的につきにくい場所……だったんですね……」
「然り! 小僧、お前さんの作品が0ポイントだったのは、作品の出来以前に『最も評価が付きにくい過酷な土俵』を選んだ影響も多分にあるのじゃ。物差しが全く違う他所の数字と比べて落ち込む必要など微塵もない!」
「う、ウジウジ悩む前に、まずデータの全体像を知るのが大事なんですね……! すごく視界が開けた気がします!」
「うむ、素直で大変よろしい! では今日はここまでにして、次は、読者の足跡たる最重要指標――『ブックマーク』の生態系へさらに深く踏み込むとするかの! 来るときはエナドリを忘れずに持ってくるのじゃ」
「はい、ありがとうございました!」
【先行研究】
ノクムンミッドを調べたエッセイがすでにあるので紹介するのじゃ! 意外と多いのじゃ。
■小説家になろう
・【禁断のなろうR-18分析】数字から見る「ノクターンノベルズ」「ムーンライトノベルズ」「ミッドナイトノベルズ」の現状と実態!
https://ncode.syosetu.com/n2919fm/
・ノクターンとムーンライトの比較(2024年度末)
https://ncode.syosetu.com/n1659kh/
・ノクターンとムーンライトの比較(2025年データ)
https://ncode.syosetu.com/n3143lp/
・なろう、ムーンライトノベルズの作品数などを、計算してみた(修正済み)
https://ncode.syosetu.com/n3982dj/
■ノクターンノベルズ(R18サイトなのでURLは省略 サイトで検索するのじゃ)
・ノクターンノベルズでデータ分析やってみました
・ノクターンノベルズ・2022年トレンド調査
■ムーンライトノベルズ(R18サイトなのでURLは省略 サイトで検索するのじゃ)
・ムーンライトノベルズ投稿作品データまとめ
■ミッドナイトノベルズ(R18サイトなのでURLは省略 サイトで検索するのじゃ)
・ノク・ムン・ミッドの最果て作品巡礼ガイド ~裏なろうの極地に存在する最大・最小・最長・最短・最新・最古を巡る旅~
■はてな
おっぱいのサイズは戦闘力だ:ノクターンノベルズにみるバストサイズのインフレ検証
https://anond.hatelabo.jp/20201230151542




