26. 人気キーワードなのじゃ
☆データ情報☆
※使用したデータは2026年09月29日時点のものなのじゃ。そのため今の値から多少ずれがあるのじゃ
※これらのデータは公式から提供されるものではなく、個人が集めたデータからの推測なのじゃ。
「ある朝、目が覚めたら何故か女の子になっていて、原因は不明で元に戻る方法も分からない、真っ先に相談したのは大学で一番つるんでいた悪友の親友で、最初は『誰だお前? まさかあいつの彼女か!?』と信じてもらえなかったけど、二人しか知らない黒歴史を暴露してようやく本人確認完了、そこからは服の選び方も化粧のやり方もわからなくて親友に頼りっぱなし、中身が男のままなので相変わらず距離感ゼロで親友と肩を組むし、無防備に部屋で寝落ちするし、薄着でうろつくし、そのたびに親友は目のやり場に困って理性と友情の大戦争! ナンパ男や他の男友達が絡んでくると親友がやけに不機嫌に、そのうち親友の手の大きさや背中の広さにドキッとしてしまう自分に気づいて大混乱! 『俺は男だ、男なんだ……』と言い聞かせても心も体もどんどん女の子に寄っていく、元に戻る方法が見つかった時には『戻りたくない』と思っている自分がいて、最後は『お前が男でも女でも、ずっと隣にいたい』と親友に告白されて【自主規制】……あぁこういう関係性もいいのじゃ~、のじゃ~……おっ、小僧。来たか」
「こ、こんにちは……え? 女の子になることに興味はあるかって? いや、無いですが……」
「そうか。残念じゃの。まあよい、本題じゃ。今日は人気キーワードを見ていこうぞ。ここでいう『人気』には、2つの意味があるぞ。
一つは、使われておる作品の数が多いキーワードじゃ。
もう一つは、それを付けておる作品のポイントの中央値が高いキーワードじゃよ」
「たくさん使われている言葉と、ポイントが高い言葉って、同じじゃないんですか……?」
「ふっふっふ、それが全くの別物なのじゃよ!
なお今回は、1つの作品や1人の作者だけが使う独自の言葉で数値が跳ね上がるのを防ぐために、『20作品以上で使われ、かつ5人以上の作者が使っておるキーワード』だけを取り出しておる。また、前回見たチェック欄で付くキーワードは外してある。今回は作者が自分で入れたキーワードの話じゃ」
「わかりました!」
「まずは、各サイトで一番多くの作品に使われておる、『使用作品数の上位8語』を見ていくぞ! 横棒の長さが、そのキーワードを付けておる作品の数じゃ。最初はノクターンじゃ」
「ノクターンの1位は……『現代』で、16,358作品もあります!」
「うむ。ノクターンの作品の4〜5作品に1作品じゃな。現代が舞台の作品が多いのじゃろ。そして2位が『ハーレム』(8,886作品)、4位が『日常』(6,009作品)、6位が『ほのぼの』(5,846作品)、7位が『ハッピーエンド』(5,381作品)じゃ。5位には『調教』、8位には『巨乳』と、成人向けならではの場面や体の特徴を表す言葉も入っておるぞ」
「ハーレムに巨乳……わかりやすいですね」
「ノクターンの作者に好まれる要素が、そのまま並んでおるのう」
「次にムーン女性向けじゃ。1位は『ハッピーエンド』で、12,450作品なのじゃ! ムーン女性向けでは、実に3作品に1作品近くがこのキーワードを付けておるのじゃよ。悲しい結末より、幸せな結末を約束する作品が多いようじゃな。2位に『現代』(7,648作品)、3位に『溺愛』(7,351作品)、4位に『恋愛』(5,640作品)、さらに『西洋』『シリアス』『執着』『ファンタジー』が続いておる」
「ハッピーエンドが3割も……! 溺愛や執着される西洋ファンタジー、ですか……」
「うむ。ムーン女性向けでは、お姫様のような立場で王子様に溺愛されたり、執着されたりする物語が好まれておるようじゃな」
「ムーンBLも見ていくのじゃ。これを見て、気づくことはないかの?」
「ええっと、ムーンBLも1位が『ハッピーエンド』(10,540作品)で、現代、溺愛、シリアス、ファンタジーと、ムーン女性向けとほぼ同じ顔ぶれが並んでいます」
「そうじゃ。女性向けやBLの作者は、『物語がどんな結末を迎えるのか』、そして『登場人物がどんな感情を向けてくるのか』を、伝えたい気持ちが強いのかもしれん。安心して物語に浸るための目印として、こうした言葉がたくさん使われておるのじゃろうな」
「なるほど……!」
「ミッドナイトも見ていくかの。こちらは1位が『現代』(1,593作品)、2位が『シリアス』(1,306作品)、3位が『ダーク』(1,043作品)で、『魔法』や『青春』も入っておる。ミッドナイトは、性的な言葉が上位に一つも入っておらん。成人向けの描写よりも、暗さや重さのある作品が多いという、このサイトの特徴がそのまま出ておるようじゃな。
……じゃが小僧、4つのサイトの使用数の上位を見て、何か共通点に気づかんか?」
「えっ……? 共通点……? ええと……『現代』とか『ハッピーエンド』とか『日常』とか……どれも当たり前の言葉ばかりな気がします……R18っぽいのはノクターンだけですね」
「その通りじゃ! たくさん使われる言葉というのは、誰にでも当てはまる言葉なのじゃよ。では、こういう言葉を付けておれば、作品は高いポイントを集められると思うか?」
「えっ……? み、みんなが使っているんだから、それなりに読まれるんじゃないでしょうか……?」
「ふっふっふ……甘いわ、小僧! 誰でも使っておるということは、それで差がつきにくいということでもあるのじゃ。それをよく表しておるのが、次のデータじゃよ!」
「今度は、そのキーワードを付けた作品の総合ポイントの中央値が高い順に並べた、『中央値の上位8語』じゃ。横棒の長さが、そのキーワードの作品の真ん中のポイントじゃな。
ノクターンを見ると、1位が『クラス転移』、2位が『♥多め』、3位が『美醜逆転』、4位が『巨乳・爆乳』、5位が『チートスキル』、6位が『あべこべ』、8位が『男女逆転』じゃ」
「……ええええっ!? さっきの使用数の上位の言葉が、1個も入っていませんよ……!?」
「うむ。ここに並んでおるのは、特定の好みやテンプレをはっきり示すキーワードなのじゃ!」
「『美醜逆転』とか『あべこべ』『男女逆転』って、確か、常識や立場がひっくり返った世界ですよね。『クラス転移』は中央値が7,500pt超え……」
「そうじゃ! 常識改変世界やクラスごと異世界へ行く物語は、登場人物が多くて長い連載になりやすい。ノクターンは話数が多いほどポイントが高くなりやすいからのう。そういった設定の作品は、ポイントが高めになりやすいのじゃろうな」
「そしてムーン女性向けを見よ。さらにすさまじい数字が並んでおるぞ!」
「ムーン女性向けは……1位が『乙女ゲーム転生』で9,772pt……!? 2位『春のテンプレ祭り』(8,422pt)、3位『将軍』(7,300pt)、4位『誤解』(6,344pt)、5位『敬語ヒーロー』(6,282pt)、6位『元サヤ』(6,155pt)、7位『公爵令息』(6,147pt)、8位『ヤンデレ風味』(6,047pt)……全部6,000pt以上じゃないですか……!!」
「4つのサイトの中で一番高い水準じゃな! ムーン女性向けで強いのは、定番の『乙女ゲーム』じゃ。そして、『相手の男性がどんな身分や性格なのか』(敬語ヒーロー、将軍、公爵令息、ヤンデレ風味)や、『2人の関係がどんな結末をたどるのか』(誤解、元サヤ)が分かるキーワードが並んでおるのじゃよ!」
「ただ『恋愛』って書くよりも、ずっと分かりやすいですね……!」
「そしてムーンBLじゃ。1位が『不憫受』(7,450pt)、2位が『嫌われからの溺愛』(7,342pt)、3位が『西洋風異世界』(7,133pt)、4位が『後悔する攻め』(6,981pt)、5位が『騎士攻め』(5,861pt)と続いておる。
BLでは、『攻めと受けがそれぞれどんな人物か』(不憫受、地味受け、騎士攻め)、そして『どんな境遇から愛されるのか』(嫌われからの溺愛、後悔する攻め)という、ふたりの立場や性格がはっきり分かるキーワードが上位に並んでおるのじゃ。読者が求めておる好みのツボが、とても細かく言葉になっておるじゃろ?」
「攻めと受けが、特に大事なんですね……」
「さて、最後はミッドナイトじゃな」
「……あ、あの、神様。ミッドナイトの中央値の上位を見て、僕、ものすごくびっくりしたんですけど……」
「うむ? どこじゃ?」
「官能が主目的じゃないサイトだから『エロなし』があるのは分かりますけど、それがポイント上位の2位に来るってどういうことなんですか……!?」
「これは、あまり気にせんでよいぞ」
「え? どうしてですか?」
「『エロなし』を付けておる作品には、ほかのサイトからの転載や設定集、試しの投稿、それに性描写ではなく暴力描写や暗い世界観のためにこちらへ来た作品などが混ざっておる。いくつかの作者が使っておるのじゃが、その中の一部の作者が書いた作品のポイントが高いから、上位に来ておるのじゃ」
「ミッドナイトは、一部の作者さんに影響されやすいんですね」
「うむ。作品の数もポイントも、キーワードも少なめじゃからのう。ほかには『魔物』や、『美少女』『幼馴染』といった広い言葉、さらに『ts』や『性転換』といった言葉も上位におる」
「男性向けの作品が強そうですね……」
「さて、最後にキーワードの流行の移り変わりも見ていこうかの。初回掲載年ごとに、キーワードの上位の表も作ったのじゃが、情報が多すぎるからの。年ごとの詳しい表は、別の話に資料としてまとめて置いておくぞ。ここでは、大まかな流れだけを見るのじゃ」
「昔と今で、人気のキーワードって変わってきているんですか……?」
「うむ。この表は、時期ごとに上位に入ったキーワードを3つずつ並べたものじゃ。左から時期、『平均で上位』、『中央値で上位』、そして一番右が、その時期の特徴をひと言でまとめたものじゃ。
ブックマークの回で、平均と中央値の違いを話したじゃろ? 『平均で上位』は、少数の大ヒット作が数字を押し上げたキーワードじゃ。『中央値で上位』は、そのキーワードの作品が全体として外れにくいキーワードなのじゃ。
まずはノクターンじゃ。2007〜2009年ごろは、関係や行為を表す、昔ながらの官能小説の言葉が中心じゃった。2010〜2013年は『ハーレム』や『チート』の異世界ハーレムもの。2014〜2016年は、催眠などの細かい好みのテンプレじゃな。2017〜2021年は『貞操逆転』のような、価値観がひっくり返った世界のテンプレじゃ。そして2022年以降は、『セリフのみ』のような、書き方や表現の形を表す言葉が中央値の上位に入ってくるのじゃ」
「物語の大きな枠から、どんどん細かい好みや表現の指定へと変わっていったんですね……!」
「次にムーン女性向けじゃ。初めのころは『恋愛』『女性視点』のような、ジャンル名のような大まかな言葉だけじゃった。2011〜2012年に『異世界トリップ』や『溺愛』が入り、2013〜2017年は『騎士』や『体格差』の西洋風の物語が人気じゃな。2018〜2022年は『乙女ゲーム』『悪役令嬢』『婚約破棄』と、本家のなろうでも流行っているテンプレが入ってきたのじゃ。そして2023年以降は、『勘違い』『愛が重い』のような、気持ちのテンプレが中央値の上位に入っておる」
「そんな早い時期から異世界ものって人気だったんですね……!」
「ムーンBLは、初めは学園ものが人気じゃった。2012〜2014年に、ムーン女性向けから少し遅れて異世界ものが入ってきたのじゃ。2015〜2019年は最強のBLテンプレである『オメガバース』が流行りだしたのじゃ。また『美形×平凡』のような、2人の組み合わせのキーワードもよく使われておるの。2020〜2023年は『悪役令息』じゃ。2021年に始まった『悪役令息』の作品は、中央値が14,530ptと、全データで一番高い値なのじゃ。そして2024年以降は、『溺愛攻め』『敬語攻め』のような、受けや攻めの人物像がさらに細かくなっておる」
「悪役令息がそんなに人気に……!」
「最後にミッドナイトじゃ。初めは作品が少なく、ジャンル名の言葉だけじゃな。2018〜2021年は『ハーレム』『チート』『異世界』の異世界ものじゃ。2022年以降は、平均と中央値で上位の顔ぶれが分かれて、異世界ものが少数のヒット作で平均を押し上げる一方、中央値では『百合』や『調教』が上位に来ておる。最近は『中世』や『職業もの』のような、異世界以外の題材も目立つのう」
「読者さんの好みが細かく分かれていって、それに合わせて、キーワードもどんどん具体的な言葉になっていったんですね……!」
「うむ。それと、もう1つ面白いことがあるぞ。キーワードはサイトをまたいで広がっていくのじゃ」
「サイトをまたいで……?」
「たとえば、声の表し方に関するキーワード『♡喘ぎ』は、2018年にムーンBLで上位の表に現れて、2022年にノクターンに広がり、2026年にはノクターンで約500作品が使うまでになったのじゃ。別の声の表し方のキーワード『濁点喘ぎ』も、ムーンBL(2023年)からノクターン(2024年)、ムーン女性向け(2025年)へと渡っておる。『執着攻め』は、ムーンBL(2019年)からムーン女性向け(2026年)へ渡っておるぞ。
逆の向きもあるぞ。『ケンカップル』はムーン女性向け(2022年)からムーンBL(2025年)へ、ノクターンで人気だった言葉がムーンBLへ渡った例もあるのじゃ」
「サイトが違っても、書き手さんや読み手さんは行き来しているんですね……!」
「そうじゃな。もっとも、どの言葉が本当にどこで生まれたのかまでは、このデータでは分からん。上位の表に初めて顔を出した順番、というだけじゃがの」
◇
「どうじゃ小僧、人気キーワードの傾向は見えたか?」
「はいっ……! たくさん使われている言葉は『現代』や『ハッピーエンド』みたいな広い言葉で、ポイントの中央値が高いのは『クラス転移』や『乙女ゲーム』『不憫受』みたいな、具体的なテンプレの言葉なんだってことが、すごくよく分かりました……!」
「うむ。……じゃが小僧、ここで一番大事な釘を刺しておくぞ!」
「えっ……? な、なんですか……?」
「『そうか! じゃあ自分の小説に【クラス転移】や【乙女ゲーム】ってキーワードを片っ端から付ければ、大人気作になれるんだ!』などと考えてはならんぞ! 中央値が高いのは、その型の作品を探しておる読者が多い、ということまでじゃ。
読者は、そのキーワードが約束する物語を味わうために検索してやって来るのじゃ。キーワードだけ付けて中身が伴っておらん作品など、最初の数行で読むのをやめられてしまうぞ。大切なのは、自分の書きたい物語の魅力が何なのかを自分で見極めて、それを求めておる読者に届く、一番ぴったりな言葉を選ぶことなのじゃよ!」
「ちゃんと届く言葉を選ぶ……!」
「それができれば、読者に見つけてもらいやすくなるぞ」
「なるほど……!」
「ということで、データの講義はここまでじゃ。最後は、これまでのまとめをしていこうかの」
「はいっ! 最後の最後まで、よろしくお願いします……!」




