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エピローグ

 ふぇぇぇ ふぇぇぇ


 赤ん坊の泣き声が聞こえて、はっと目が覚めた。

 ようやく空が白みかけてきた時間。

 まだ寝たい、けど起きなくちゃと思ってベッドを抜け出す。

 新は、朝はちょっとやそっとじゃ起きない。長年付き合ってもうわかっているので、ベッドを抜け出すのも気を遣わない。


「おはよー。早起きさんだねー。」


 あくびを噛み殺しながらおむつを替えて、授乳すると、泣き止んだ。

 懸命に吸っている姿を見て、改めて感慨深くなる。自分が、新しい命を授かるなんて。


 顔を上げると、写真立てが目に入る。結婚式のウェルカムボード用に作ったものも飾ってあって、高校生のわたしと新が写っている。海で遊んだもの、文化祭で一緒に回ったところを撮られたもの、演劇部でアドリブさせられたシーン、新の合格祝いのデート、どれも思いで深くて胸の奥が温かくなる。


 マコトはあれ以来、一度も会っていない。文化祭の翌日に転校していってしまった。大事なイベントをしんみりさせたくないから黙っていたらしい。マコトと付き合っていた女子たちは、意外とドライだった。あんなにおおっぴらに浮気されていれば、それもそうかというところだ。風の噂でベンチャー企業を立ち上げて、モデルか誰かと結婚したらしいけど、とにかく雪ではないことに安心した。


 わたしは前世と決着をつけてから、自分自身を見つめなおす過程で、人間の心理に興味が湧いたので、臨床心理士の資格をとった。地域の保健所に籍を置きつつ、学校や福祉施設へ赴いてカウンセラーとして仕事をしていたが、今は育休中だ。


 新は俳優業まっしぐら。途中スランプもあったけれど、今はそこそこ売れている舞台俳優だ。

 お付き合いも、まあ、まあまあ、順調に進み、婚約し、籍を入れ、新しい命も授かった。

 

 自分にこんな将来が待っているなんて、夢にも思わなかった。

 一時は目標を見失って、自分がわからなくなったけれど、周りの人のおかげで今のわたしがある。

 とてもありがたいことだと思う。


 そして大人になった今、”白雪姫”として頑張っていた自分に声をかけてあげたい。

 ”白雪姫”になってくれて、ありがとう。

 おかげで、温かい家族ができた。大切な友達ができた。愛する人に出会えた。

 今の自分を好きになれた。仕事にしたいことも見つかった。


 変わっていったこともたくさんあった。けれど、それは今まで経験して得たことの結果なのだ。間違いもないし、正解もない。それが時には苦しく思うこともあるけれど、後ろを向いたり止まったりすることもあるけれど、いつか前に進める時がくる。それが全部わたしなのだと、受け入れられる時がくる。


 わたしは今、幸せだ。


 腕の中の、小さな小さな人間に目を向ける。


「あなたも、あなた自身の道を見つけられますように。」


 やわらかい髪をなでながら、そしてその道行が、幸せでありますようにと願うのだった。

 



最後までお読みいただき、ありがとうございました。

感想をいただけたら、大変嬉しいです。

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