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33 それぞれの未来

「はーい、オムツ変えまちゅよ-。いい子ね-。可愛いでちゅね-」


 茶色く大きなつぶらな瞳で見上げてくる姿が余りにも可愛いすぎて思わず赤ちゃん言葉になってしまった。そっと触ると小さな手できゅっと握り返してくる。可愛い……。この世にこんな可愛い生物が存在していいのだろうか? この可愛さの破壊力は抜群だ。思わずミルエンナは自らの腕の中にその小さな身体を抱いて悶絶した。


「ミーナちゃんって赤ちゃん好きよね」


「だってベグルはこんなに可愛いのよ? こんな天使みたいな存在を嫌いな人なんているわけないわ!」


 苦笑するクリスティーナにミルエンナは力説した。ミルエンナが夢中になっているのはクリスティーナとユングサーブの第一子であるベグルシュア。元気な男の子だ。邪念のない澄んだ瞳で見上げてくる姿になんとも癒やされる。


「生まれてくるのが楽しみだねえ」

「うん。ハナルに似た男の子がいいな」

「ハナルはミーナちゃんに似た女の子がいいって言ってたわよ」

「えー!! 絶対にハナル似が良いわ。だってあんなに格好良くて優しくって素敵なのよ?」

「……。どっちに似てもいいんじゃない?」

「それはそうだけど……」


 ミルエンナは不服そうに頬を膨らませた。絶対にハナルジャン似がいいと顔に書いてある。

 クリスティーナの妊娠がわかり待望の第一子を出産したのがつい三カ月前のこと。そして今、ミルエンナもハナルジャンとの愛の結晶を身籠もっている。


 ミルエンナはハナルジャンのパーティー仲間入りを目指して居たはずがなぜこうなったかと言うと、ユングサーブが『俺とクリスの間に出来た子は男ならギルド最強、女なら町一番の美人に違いない!』と惚気たことに始まる。それを聞いたハナルジャンは『俺とミーナの子の方が強いし美人だ。』と言い張り、不毛なプレ親バカバトルを繰り広げた二人はどっちが上か実際に生まれたら勝負だ!となった。

 クリスティーナからみたら二人とも真正バカだとしか言いようが無い。仕事の出来るバカ同士で気が合って何よりだ。


「クレッセも早く子供が出来ないかな」

「うちは夫婦になったばかりだから。こればっかりは授かりものだよ」


 きらきらと瞳を輝かせるミルエンナにクレッセは笑顔で答えた。クレッセもつい先月からシナグヤーンと同居を始めて夫婦となった。クレッセとしてもシナグヤーンとの子供は欲しいが、今はまだ二人の蜜月を楽しみたいと思っていた。射手もやっと『レベル3』になった。うまく射れるとシナグヤーンの能面のような表情がふわっと緩むのが嬉しくて今は弓の修行に夢中だ。


 帰宅したミルエンナはハナルジャンにベグルシュアがどんなに可愛い赤ちゃんかを話して聞かせた。ハナルジャンはいつもミルエンナの話を微笑みながらじっと聞いてくれる。


「もしも私達の子が女の子だったら、きっとベグルのこと好きになっちゃうわ」

「なに? それはまずいな。俺達の娘の相手は俺を倒せる奴じゃなきゃ認められない」


 ハナルジャンが眉間に皺を寄せたのを見て、ミルエンナはクスクスと笑った。


「ハナルってば、ギルド最強なのにそんなこと言ってたら娘の相手が居なくなっちゃう!」


 ミルエンナはハナルジャンの気の早い親バカぶりに驚いてしまった。ハナルジャンはそんなミルエンナの様子を見て優しく目を細める。


「俺を倒すってのは言い過ぎたかもな。でも、ミーナはこれからも俺が守るし、ミーナの大事なものも俺が守る。だから、俺が認めた奴じゃなきゃ娘はやれないな」


 ミルエンナがハナルジャンを見ると、二人の視線が絡まった。目の前に居るのはミルエンナの大好きな人。ハナルジャンは出会った時からいつも変わらずミルエンナを優しく守ってくれた。ごく自然に感謝の気持ちが湧き上がってきた。


「ハナル、私を拾ってくれてありがとう。大好きよ。ずっと一緒ね」

「どう致しまして。俺の可愛いミーナ。」


 ハナルジャンはミルエンナの膨らんだお腹をそっと撫でてからミルエンナの唇に触れるだけのキスをした。唇を離した2人は目が合って、お互い微笑みあう。


 ミルエンナにとっては間違いなく世界一素敵な旦那様。この人と一緒ならどこまでだって行けると確信できる。


「今日も明日も明後日も、ずっと俺がミーナを守るよ」

 

 大好きな人の声が耳元で心地よく響いた。


最後まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!


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