第8話~ため息ばかりで何が悪いっ!~
「やっぱ屋上が一番だな」
伸びをしながら修がつぶやく。修は今、屋上に来ていた。
理由は簡単だ。クラスメートからの質問攻めと七海から逃れる為だ。
屋上からの景色はなかなかのもので、時々勇輝、拓人、龍斗の四人で来ることもあった。しかし、他にここに来る人はまったく居ない。言わば、学校の隠れスポットだ。
「よっこいしょっと」
修がフェンスの方に座り込もうとしたその時、修は誰か人の気配を感じた。だがあの三人ではない。
勇輝と拓人は教室にいる。そして龍斗も購買のほうへ行っている。修は誰か分からないまま言った。
「おーい誰かいるのか?」
特に反応はない。修は、少し気にしすぎかと思いながら座った。
「ん?」
修はふと、扉からは死角になっている貯水タンクに気がついた。修はもう一度立ち上がり死角になっているほうに向かった。
「なにやってんだ」
ちょうどそこには人がいて修は声をかけた。その人物の正体は姫河 百合奈だった。
「ふぇ!?」
百合奈は間の抜けた声をあげてビクっと肩を震わし、修の顔を見た。この時、修は百合奈を見下ろしている形になっていたので、百合奈は上目遣いっぽくなり修はドキッとしてしまった。
我に返った修はとりあえず整理することにした。 ちょうど遭遇したくなかった相手だったのでその対処とうまくいけば昨日のことも周りに知られずに済むかもしれない。そう思い心の奥でガッツポーズをする。
「姫河、だよな?」
「あ、あなたは昨日の!」
いきなり百合奈が立ち上がりすごい勢いで修に迫ってきた。さすがの修も思わず仰け反ってしまった。
「お、おい」
「あなたどこの組の人なの! というより名前は?」
百合奈は修にどんどん近づきながら疑問をぶつけた。
「ま、まて! いまからその事話すから聞いてくれ!」
なんとか百合奈を落ち着かせて軽くため息をついた後それから話を切り出した。
「まずお願いというか頼みがあるんだが」
「何?」
「昨日のことは内緒にしてくれ!」
「え? なんで?」
両手で頼むように手をあわせている修に対して百合奈は「?」を浮かべた顔をしていた。
「俺の生活にとんでもない支障がでるから」
「そんなに!?」
百合奈は驚いていたが、これは単に普通を守る為の口実だ。
「まぁそういうことだから頼む」
「別にいいけど……」
そう言い残して屋上を去ろうとする修を百合奈は両腕をがっちりとホールドして引きとめた。
「名前聞いてないよね? あと昨日のことも」
「う……(なんなんだこの七海にも似たプレッシャーは)」
はぁ、と今日何回目のため息だろうか、と思った修はとりあえず答えておいた。
「俺は二組の神谷 修だ。 これでいいか?」
「あ、うん……って昨日のことは?」
内心、誤魔化せると思っていた修は心の奥で軽く舌打ちしていた。それにしてもいつになったら開放してくれるだろうか、と天を仰いだ。
「ねぇ、聞いてる?」
「んー 昨日の事かそれは――――――」
なんとか誤魔化そうと思い、言おうとした瞬間
バンッ
扉の開く音とともによく見知った女子生徒が現れた。
「見つけたわよ!」
その瞬間今日一番のため息をついたのは言うまでもない。
今週末からテストがあるので更新が落ちると思われますw