手塚治虫さんがいない世界線
一応前回の続きです。
新静岡セノザの角善ジュンク堂書店。映画終わりにマンガコーナーにやってきました。
「すごいマンガの数!!」
「すごいねー★」
バトルやファンタジーといった王道、最近増えた異世界転生や悪役令嬢、ラブコメ、日常系、ホラー、ミステリーや成人向けととにかくたくさんずらりずらりと並んでいます。
私も来る度「日本にはこんなにもマンガがあるんだ」って圧倒されちゃいます。もちろんここにはない作品だっていっぱいあるんです。気になる作品全部買いたくなってしまいます。
「これがさっき見た映画の原作だね」
「買ってこっかな?」
「あ、これは未来も知ってるよ、電車の中でみたアニメの原作だ」
「キャンプのアニメだね♪」
「あたしこれ知ってるよ!!」と、いろいろ見ていきます。それにしても凄い数。
そしてまた知ってるマンガの前で足を止めます。
「『鉄腕アトム』に『ブラックジャック』だー」
「あ、聞いたことある!!けど読んだことないなー★」
「鉄腕アトムは21世紀の未来で10万馬力のロボット少年アトムが活躍するSFヒーローマンガで、ブラックジャックは無免許だけど天才の外科医が活躍する話だよ」
スマホで公式サイトをカンニングしながら答えます。
「作者さんは・・・手塚治虫さん!えっと・・・凄い人なんだよね!!」
雑!!
「マンガの神様って呼ばれる人だよ、日本で初めての国産テレビアニメで『鉄腕アトム』を作ったんだよ!!」
凄い人ですよね!小学校の図書室でマンガの伝記を見た覚えがあります。
「例えば静かな空間を『シーン・・・』って言うでしょ、あれも手塚治虫さんが考えたの」
「そうなんだー!!もしこの人がいなかったら今のマンガはどうなってるんだろう?」と未来は言います。
「そっか、・・・やってみよう!」
「タブレットの出番だね!」
そう言って、バックからいつものあれを取り出します。テスト週間でも持ってきてたんだ。まあ終わってるんだからいいけどね。
「「もしも手塚治虫さんがいなかったら」」
今度はどんな世界かな?
目を開けると、本屋さんでしたが・・・
「マンガがごっそり消えてる・・・」
「なんか文房具と雑貨コーナーになってる」元の世界からありましたがなんか広がってる気がします。
「カフェだ!!オッシャレー♧」と未来。
「この世界はマンガの売上げがほぼないから現実よりさらに本以外を売る率が高いんだね」
この世界の出版業界は現実よりさらに出版不況が深刻です。なのでコロナ以降大規模なM&Aを実行中。
そのまま絵本コーナーにやってくると、マンガと書かれた本を発見。さっそく中身を見てみると・・・「なんていうか・・・すっごい子ども向けだね」
「あれ、猫型ロボットは?ライダーは?」と未来。
「その作者である藤子不二雄も石ノ森章太郎も手塚治虫にあこがれて漫画家を目指したんだよ、つまり・・・」
この世界のマンガは絵本のように子ども向けの印象が高く、大人向け作品などほぼないようです。娯楽の絵物語程度の扱い方です。
「あれ、日本史のマンガもないね」
それどころか教育的な価値もなく、教育に使われるとしても教科書の挿絵程度です。
「あれ、沙羅のバッグについてたアニメの缶バッジは?」
「え・・・え、ない!?落としちゃった!?いやそれとも・・・」
すぐにスマホでそのアニメのキャラ名を検索すると。
「ない、ない、どこにもない!」
そう、この世界ではマンガはおろかアニメもゲームも日本産はほとんど消え失せていたのです。それもそうです、マンガという原作がないのですから。「鉄腕アトム」が日本初のテレビアニメですが、当然それもないので日本のアニメ業界は「日本マンガ昔話」のような子ども向け作品しかありません。さらにいえばこの世界では原作がないのでドラマも大きく変わり、月9もありませんしゲームもほとんど存在していませんでした。信天堂のインベーダーゲームはありますが、○リオとかはありません。ラノベも、そしてこのサイトそのものも大きく連載されてるものが変わりそう。そしてアニメ・漫画のメディアミックスがまるっと消滅するんですから経済への影響もかなりのものです。コスプレ文化もなくなりますから、服飾業界は少し大変です。
アニメの長編は幸いアメリカの大手で千葉県の遊園地がありますから、そこは大丈夫ですけど逆に言えばアメリカしかないって寂しいですね。日本のアニメ業界はアメリカの下請け、みたいな感じが長く続いています。
「でも、漫画がないからって娯楽以外で変わるところはそんなないよね」
「それはどうかな?」
まず日本におけるロボットの扱いです。現実の日本では「鉄腕アトム」から始まり「猫型ロボット」「RXー78ー2」「少女のロボット」などで人間と機械は友達みたいな感じで好意的な印象ですが、この世界では・・・
「ロボット?怖い、人間が機械に支配される!!仕事が消える!」
こんな感じです(実際にアメリカは日米英中の4カ国で一番ロボットの受容性が低く、アンケートでロボットにはなにもしてもらわなくていいと答えた人が一番多かったようです)。
ロボットへのイメージはアメリカのハリウッド映画のように「反乱を起こして人類を滅ぼす」みたいなものが大きく抵抗感が大分強いでしょう。
「確かにロボットって言ったらあの猫型ロボットだよね、あたしも欲しいな!!」
「未来は秘密道具何が欲しい?」
「やっぱりどこでもドアかな!!友達のとこにすぐ行けるし★」
「そしたら台風が来ても学校に行けるね!!」
「それはいやー!そういう沙羅は何が欲しいの?」
「私はーーー・・・んータイムマシンかな」
邦画も変わりそうですね。現実では興行収入ランキングのほとんどがアニメを占めますが、それらがごそっと消えたら映画館の売上げは大きく落ち込むでしょう。「大正時代に鬼と戦うアニメ」のヒットによる映画館の賑わいも消えるからコロナの後はお客さんがガラガラになってしまいそうで不安です。
そしてスポーツや部活。
「?スポーツ?」
「よくあるでしょ、何かのスポーツを題材にしたらそのスポーツやりたい人が増えるってやつだよ、キャプテン望のおかげでサッカーする人が増えたとか」
「あー!!」
「世界でもロナウジーニョ選手にイニエスタ選手、メッシ選手が影響を受けたっていうし、日本ではサッカー競技人口を2倍に増やしたらしいからね」
「え!!じゃあキャプテン望がなかったら今のサッカー界はないんだね♪」
スラムダンクもバスケ人口を増やしたって聞きますし。こうやってスポーツにも影響を及ぼすマンガ、すごいですね。
「そして聖地巡礼!これの効果もすごいよね!」
「東京の神社横の階段とか有名だよね★」
静岡県で言えば沼津のスクールアイドルアニメ、伊豆や大井川あたりでは△キャンプアニメがありますね。例えばスクールアイドルアニメの舞台となった沼津の内浦地区では総合案内所の利用者数が2015年の9000人から2018年には8万人になっています。伊豆箱根鉄道やバスではラッピングを施したりJRが臨時列車を走らせたり。2017年だけで沼津市への経済効果は50億円から64億円とされます。すごいですね~。
本屋を進んでいくとあれを発見。
「あれ、あの日常系マンガはあるんだ」
「長谷川町子さんは手塚治虫さんより前だからね」連載開始は1946年です。戦後の本当すぐからやっているんですね。
「さてそんなマンガだけど、昔は大変だったんだよ」
「へえ、大変って?」
「悪書追放運動っていうのがあって1955(昭和30)年に政府や警察、PTAが主導してマンガを悪い本だって言って、子どもから取り上げて校庭で焚書・・・燃やしたんだって」
「はあああああ!?ひっどい!」
「これのせいで漫画家を辞めた人もいるからね」
「そんな・・・」
「手塚治虫さんが初めてマンガでキスシーンを書いたときは脅迫状まで来たんだって」
「キスシーンくらいで・・・そんな中で手塚さんは頑張ったんだね!!すごい人だね本当に・・・」
「手塚さんはマンガを描きたいから描いてるんだろうね、私が絵を描くように・・・昔はマンガやアニメは小学生で卒業っていう時代だったらしいけど、今は違うから感謝しなきゃ」
少なくともアニメやマンガを見てるからっていじめられたりはしませんよね。私の時も理由はアニメマンガ関係ないですし。
「でもその後はマンガやアニメが迫害される、なんてことはなかったんでしょ?」
私は首を横に振ります。
「1989年に東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件という酷い事件が起こったの、犯人の部屋はビデオがいっぱいでオタクだって報道された」実際はメディアによる誇張もあったようですね。
「調べてみたけど酷い事件だね・・・」とスマホを見ながら気分悪そうに呟く未来。
「そしてアニメを見る大人は犯罪者だって扱われて、現実と虚構の区別がつかない未熟な異常者だって、そう言われる時代があったんだって・・・」同人誌即売会が幕張メッセから追い出されたのは有名です。
「酷い!!犯罪をしたり迷惑かけるのはもちろんダメだけど、人の好きな物を否定するなんてどうかしてるよ!!」と未来は怒ってくれました。
「でもなんで今は良くなったのかな?」
「日本が不況の中、アニメやマンガは売れ続けたからっていうのと、インターネットが発達したことが大きいんだろうね」新世紀のロボットアニメでちょっと盛り返して、列車男や非日常系学園ストーリーアニメで話題になって・・・
「じゃあ今は完全にそんな偏見なくなったんだね!!」
「そうだといいんだけど・・・未だに絵柄が性的って批判する人がいるんだよね・・・」
「性的な絵柄ってなに・・・?」いわゆる萌え絵でしょうけど、あの絵柄は今では当たり前ですからね。
「あとは香川県のゲーム条例とかかな」
「何だっけそれ★」
「ゲームは1日1時間までっていう条例」
「それわざわざ条例で決めること?」時間を守らないとお父さんにセーブなしでコンセント引っこ抜かれちゃう、みたいな・・・そういうのは家でちゃんと決めましょうね。
「あとはサイバー犯罪条約とか」
「?」
「先月国連で採択された条約でロシアや中国が主導したんだけど、政府の監視拡大や表現の自由抑圧の恐れがあって問題になってるの」
「へー、表現の自由は今も怪しいんだね・・・」
しばらく二人で考えた後、未来はこう呟きます。
「でもさ、広告のエロいのはどうにかしてほしいよね★」
「でもどこまでがエロいって言うのは人によって違うし、線引きが難しいよね・・・」
極端ですが、世の中には女子がほおを赤らめてご飯食べてるだけで性的だって言う人もいますし。誰が誰がどうやってどのような基準でエロくないか判断するのかという問題になりますし、そもそも検閲にあたりますからね。
「確かにねー」
表現の自由って難しいですね。そう考えながら元の世界に戻りました。
セノバを出ると、もう夕方でしたが相変わらずまだ熱いです。未来は日傘を差し、私は扇風機を動かします。
「相合い傘しよっ♥」
「え!?」
恥ずかしがりながら入ると、日傘の中はちょっと涼しい・・・はずなのですがドキドキしすぎて砂漠のような暑さ。ちょうど目の前の信号が赤になりました。私の真横には可愛い未来の横顔。とっても可愛くてドキドキ。
言わなきゃ!!チャンスだよ今、ここで!私の思いを伝えよう。
「あ、えっと、あのね私、み、未来のことが・・・」
「すいませーん!今テレビのインタビューやってましてー」
私たちに若い女性のスタッフさんがマイクを向けられていろいろとびっくり。未来もちょっとあたふた。
「前髪大丈夫かな・・・!」なんて急に鏡でチェックする未来。テンションが上がっているのが伝わってきます。
「わ、私出来るかな・・・」思わず震えて、ちょっとお腹が痛くなります。
「一緒に話せば大丈夫だよ!」と私の手を未来はそっと握る。恥ずかしすぎてなんとか頷くのが精一杯。
「今日も暑いですねー!!」
「ホント~に暑いですねっ!お風呂みたいですっ!」と切り替えが早いのはさすが未来。物怖じせずに答えます。
「こっちの貴方はどうですか?」
「えっ、あ、えっとすごい暑いです・・・でも!二人だったら・・・この暑さでも楽しい・・・です」
・・・緊張しすぎて変なこと言ってるー!!絶対こんなとこ映像に採用しないで!目がくるくるするー!
「仲良しですねー!」と続けるスタッフさん。未来は急に緊張したのか顔真っ赤で照れながら、
「そーなんですよ♥」と私の顔を見つめて言いました。
「なにか暑さ対策とかはー」
なんとかインタビューを終えた私たち。インタビュー中は周りを歩く人にも注目されて、恥ずかしすぎて宇宙まで飛んでいきそうでした。
「き、緊張した・・・」
「あたしもだよー」と駅へ向かう地下道で服を仰ぐ未来。
「え、未来も緊張したの?」
「そりゃするよー、だってテレビだよー」
なんとかインタビュー答えられて良かったけど、あれが他の人に見られたら、お母さんとかに見られたら恥ずかしくって死んじゃいそう。・・・あ、告白!出来てない!!
せ、せめてなんか言わないと!!
「デートね、次は未来のいきたいところ行こうね・・・」
「ーっ!?そ、そうだねーどこがいいかなー」
駅のデジタルサイネージには『2050年の生活はどうなる!? 展示は静岡科学館』の文字。
「2050年だって、その時はどんな世界になってるのかな・・楽しみだね!!」
「え!?うん、そうだねー。。」
ん、どうしたんだろう?
「そ、そういえば楓はどこ行ったんだろうね?」
そういえば変、そもそも涼子はなんで恋愛映画のチケット2枚なんて持ってるのか、あの子は恋愛映画とか興味なさそうだし2枚買う意味がわかんない。そもそも涼子がなんであの映画館のチケットをとるの?映画館なら月夜グループが経営する清水のショッピングセンターもあるし、そういえば楓もおかしかったな、なんで草薙駅の南口へ行ったのかな?南口にあるのは遠くに美術館大学図書館神社・・・近くに静電の駅・・・くらいだよね。
まあ、なんでもいっか。
===沙羅達の後方===
「お二人、告白できなかったみたいですよ~?」
「はあー、ちょっといい雰囲気だったのに邪魔が入ったからなー、せっかく映画のチケットわざわざ買ったのに、なんでデートで二人とも真剣に映画見るのよ、もっと普通さ映画デートなんだからお互いを見てドキドキするとか手繋ぐとかしなさいあの鈍感コンビ」
「まあ~あの二人ですから~」
「あの二人だからねー」
手塚治虫 TEZUKA OSAMU OFFICIAL https://tezukaosamu.net/jp/
三菱総合研究所 AI・ロボティクスの受容性は国によって異なるのか https://www.mri.co.jp/knowledge/opinion/2025/202502_3.html
なっとくブログ キャプテン翼・スラムダンクがプロリーグ発足に与えた影響は?
https://dragon-sassa.com/2018/06/03/post-1990
「聖地巡礼の現実」ラブライブで賑わう沼津の実態とは・・・<<沼津市編>>【ゆっくり解説】
文春オンライン オタクへの注目、加害者家族のその後・・・「宮崎勤事件」は昭和と平成の分岐点だった https://bunshun.jp/articles/-/10556
読売新聞オンライン 国連総会で「サイバー犯罪条約」採択へ...ロシアが主導、政府監視に懸念
https://www.yomiuri.co.jp/world/20240809-OYT1T50197/




