沙羅の誕生日
「今から皆でカラオケに行きます!!」と涼子は宣言。
「か、カラオケ!?わ、私初めてだよ」と沙羅は言う。やっぱり!!
「大丈夫だよ、沙羅は一人で誰もいないときストレス発散に歌ってるんでしょ、保健の授業で言ってたじゃん」
「よ、よく覚えてるねそんなこと・・・でもお金大丈夫かな・・・」
「誕生日ですから~!!、お金もこちらが出しますよ~」
「皆、ほんっとうにありがとう!!」
満面の笑みをする沙羅。可愛い。この笑顔のためならお小遣いはたいてでも払うよ!
「そういえば今日未来いつもと靴下違うね」と沙羅は言う。
「気づいたかー、今日は最近流行ってるルーズソックスにしたの!!」気づいてくれて嬉しい!!
(流行は巡るってホントなんだ・・・)と沙羅が思っていたのは別の話。
草薙駅前のカラオケ店、ここが沙羅の誕生日を祝う舞台だ。学校にも駅にも近く、飲み物食べ物の持ち込みができるのでここにした。
「あたしはメロンソーダにしようっと」
「もちろんコーヒーですかね~」と楓は好きな物を選ぶ。
「緑茶にしよ」と涼子。
「うーん」
ずいぶん悩んだ後、沙羅はカルピスを選択した。
個室に入ると涼子がかばんをごそごそとする。
「沙羅が今日は主役だから、買ってきたよこれを!!」
「何?」あたしも分からない。
「テッテレー 本日の主役って書いてあるタスキー!!」
なぜそれ!?確かに100均とかにあるよ!?
「・・・ちょっとつけてみたかったかも」
意外と高評価だった。
ご飯を注文してから、さあ歌おう。
「さて、誰から歌いますか~?」と楓。
「じゃあまずあたしから」
こういうときはトップバッターが一番大事だ。今回の主役はカラオケ初めての沙羅だ。沙羅が歌いやすくなる雰囲気を作らなければならない。なのであらかじめ涼子から「沙羅が好きそうな曲」を聞いておいた。機械でその曲を検索をかける。
「よしこれ!」
「え、未来もこの曲知ってるの!?」と驚く沙羅。
(ふっ、計画通り)という顔をする涼子、怖い。
「♪放て!心に刻んだ夢を 未来さえ置き去りにして!」
アニソン!沙羅もこの曲を聴くらしいし完璧な選曲でしょ。沙羅は楽しそうに手拍子でリズムをとってくれる。
歌い終わると、「未来すごい!!!」と拍手してくれた。
「じゃあ私が次ね」
計画どおり涼子にバトンタッチ。
「♪ロマンスの不祥事 逃がさなーい!!消してあげる」
あたしがアニソン、涼子がボカロを歌って大分歌いやすくなったかな?
「沙羅、何歌う?」と涼子。
「うーん、いっぱいあるから迷っちゃうよ」
優柔不断、そこが可愛い!でもそこは織り込み済み。
「じゃあ楓が歌いますね~」
楓ははっきりいってすごい音痴だ。でも下手でも大丈夫、と沙羅に自信がつくはず。楓には申し訳ないけど。ごめん!
「すごい・・・上手じゃないけど元気になっちゃうね・・・」しれっとディスられる楓には同情を禁じ得ません。
「次は沙羅だね!!」
どんな感じかな。
「あ、えっとじゃあ、・・・あんまり期待しないでね?」
「大丈夫だよ!!」
足を動かしてリズムをとる。可愛い。
「♪いつもの街を 飛び出して」
歌声可愛い!可愛さの天元突破!声は少し震えてるけど、真剣に歌う姿はなんと可愛い。
そしてこれJRの歌だな~!沙羅はやっぱり沙羅だ。
「♪今日を変えていく」
パチパチパチ!終わったので盛大な拍手をした。
「ど、どうかな・・?」
「何というか・・・良かった!!」感動した!!
「うまかったですよ~!」
「沙羅は堂々と歌うのが一番」と謎の師匠ぶる涼子。
「わっ、ありがとう・・・!」
ご飯が来た。あたしはピザとたこ焼き、沙羅はご飯、楓は焼きそば、涼子は担々麺。それからコンビニで買ってきたおにぎりやファミチキやその他いろんなお菓子。
「改めてみると凄い量だね」
「おいしい!」
「焼きそば美味しいですね~」
「そして沙羅にはケーキ!!」
今日の夕方大急ぎであたしがシャトレーゼに注文したケーキを取り出す。ふわふわの生クリームにいちごが乗ったショートケーキだ。沙羅もあたし達も「わ~っ」て声が出ちゃう。本当は手作りしたかったけど、さすがに学校にケーキを丸1日放置するわけにはいかないのでしょうがない。
「ありがとう!!」って沙羅は笑顔。天使的な可愛さ!
ろうそくを指してマッチで火をつける。予約した際に火の取り扱いOKとのことだったのでありがたく使わせて貰う。誕生日ソングを流してムードもばっちり。あたしはHappy Birthdayの曲を歌う。
「「「沙羅、誕生日おめでとう!」」」
改めて祝いの言葉を言う。
「私のためにここまでしてくれてありがとう!!」
「お友達の誕生日を祝うことは当然だよ!」とあたしは言う。
「さあ火を消して!!」と涼子は催促。
「ふー!!・・・あれ」
息が弱すぎて、もしくは吹くのが下手なのか火は消えなかった。どちらにしても可愛い。
「頑張れ!!」
「ふー!!!」やっと1本消えた。
「フーフーフー!!!!はー・・・はー・・・」
全部消すのに30秒ほど時間を要した。まあ可愛いからいいけど。あたしはこの一部始終を動画に収めていたので、後で皆に送ろう。
「・・・おいしい・・・」って照れくさそうに笑う沙羅の笑顔はなんだか心が温かくなる。あたしも大きく一気に食べて「おいしーい!」って叫んで、楓は小さめの一口を味わいながら、涼子はお嬢様のように食べる。
「こんな誕生日、初めて・・・!」とすっごく嬉しそうな沙羅、可愛い。
「去年の誕生日はどんなだったの?」
「コロナになって寝込んでたよ」
かわいそ可愛い。
「沙羅、一緒に歌お?」と勇気を出してあたしは聞いてみる。
「え、でも私なんかで・・・」とすごい遠慮する沙羅。
「いいからいいから、今日の主役なんだし大丈夫!」
あたしが一緒に歌いたいの。遠慮の必要なし!
「どの歌にしますか~?」と楓。
じゃあこの歌だ。さすがにこの歌なら沙羅も知ってるだろう。沙羅と一緒に歌うことにドキドキと緊張してしまう。
「「♪明日 今日も好きになれる」」
沙羅視点
うー、二人で歌うなんて恥ずかしいよ。私の下手な歌で迷惑かけないかな・・・緊張して俯きながら小さな声が音楽に乗って流れていきます。未来の明るい声と私の歌が重なってなんだかいい感じ。
でもさっき私が歌うとき皆楽しそうだったな・・・ちゃんとやってみよう。そもそもここには私含めて4人だけ。何を恥ずかしがる必要があるんだろう。なんだか行ける気がしてきた!
未来視点
二人の歌声がボックス内に響く。涼子と楓はマラカスと手拍子でリズムをとってくれる。沙羅も恥ずかしがらずに一生懸命歌っている。何かが吹っ切れたようだ。ならあたしが恥ずかしがってる場合じゃないね!
「「♪二人寄り添って歩いて 永久の愛を形にして」」サビだ。二人の息がぴったり合っているというのが感じられて、もう言葉に表せない感動がある。そーっとあたしが沙羅に近づくと、沙羅もそっとあたしに近づいてきた。最後のフレーズは二人で自然に見つめ合いながら、ぴったりで歌いきった。
「あー楽しい!!沙羅めっちゃ上手かったよ」
「わ、私も未来と歌っててえっと、すごい楽しかったよ!」
「二人ともすっごい可愛かったよ」という涼子の応援。
「お似合いでしたねっ~」楓は続ける。楓・・・もしかしてあたし達応援してくれてるの?
「でしょでしょ!」
「え!?ちょ、ちょっと、そんなに見ないで・・・///」頬を真っ赤にする沙羅なのでした。
カラオケは流れに乗ってどんどん続く。
楓「♪パッと光って咲いた 花火を見ていた」
涼子「♪神っぽいな それ卑怯 神っぽいなそれ」
沙羅「♪僕は君の背中に なれる勇気があるよ」
あたし「♪Ready for my show」
楓「♪騒げ怪獣の歌!!」
涼子「♪千本桜 夜に紛れ」
沙羅「♪さあ行くんだ その顔をあげて 新しい風に心を洗おう」
あたし「♪君の前前前世から僕は 君を探し始めたよ」
そんな感じで1時間半後。もうすぐ7時になろうとしている。
「さて、名残惜しいけどもうお開き、だけどその前にあたし含め皆から沙羅にプレゼントだよ!!」
「えぇっ!?」驚いてる驚いてる。
「皆で決めたの」と涼子。
「喜んでもらえるといいんですが・・・」と不安そうに言う楓。
紙袋から、きれいに包装された片手で持てる長方形の箱を手渡す。
「ありがとう!開けてみていいかな?」
「「「もちろん!!」」」
「あ、手持ちの扇風機!!本当に、私一生大切にするよ!」
あたしたちがプレゼントしたのは手持ちの扇風機。前、沙羅が欲しいなって言ってたからね。一生大切にするなんて大げさだけどそこが可愛いな。
「最後に写真撮ろう!!」
沙羅はすごく恥ずかしそうにしてたけど手持ち扇風機と一緒に写真撮ってくれた。沙羅は優し可愛い。
「じゃあ、最後は皆で歌いましょう~」と楓。そうだね。
「ど・れ・に・し・よ・う・か・な・て・ん・の・か・み・さ・ま・の」と古典的な手法で決めようとする涼子。
「・・・これとかどう・・かな?」と自信なさげに言った沙羅。これは!?
あたし「いいねいいね」楓「盛り上がりましょう~」涼子「盛大に!」
「「「「♪」」」」
沙羅視点
今はカラオケが終わり後片付けをして今は楓がお会計の最中。
「でも悪いよ、こんなにいろいろお金出して貰っちゃって」
一体皆で何円が私のために使われたんだろう。
「何言ってるの、沙羅の誕生日なんだから」と未来。
「でも」
多少は何かやらないと。
「なら、あたしや皆の誕生日を豪華に祝ってね!!」
「・・・分かった!」
未来の誕生日はまだ先ですが、今のうちに考えとかなきゃですね。
階段を降りて道路に出ると、一気に現実に引き戻された感じがします。夏なので空はまだ西がぼんやりと明るく、また暑いです。駅はすぐそば、家には何分到着かな?と考えている内に改札の前まで来ました。さっきからなんか人に見られているような。私以外皆可愛いからやっぱり注目しちゃうのかな?
「それじゃあ、また明日・・・え」と涼子が急に固まりました。ん?
「どうしたの?」
「だってそれ・・・」と私を指さす。え?
「あ」と楓も固まり、
「あちゃー」と未来も変な表情をする。
え、何?皆どうしたの?
「何でまだたすきつけてるの?」と勇気を出すように言う涼子。
下を見下ろすと「本日の主役」と書かれたたすきが。・・・・・
え、カラオケからここまで?駅の中まで?こんな格好を?この事実を認識し急に体や顔が暑くなってきました。大慌てでたすきを仕舞ってさっきプレゼントで貰った扇風機の電源を入れてみます。おかしい、涼しくならないよ~!!頭がふらふらする!
「沙羅、一回こっち来て」と涼子。
一回皆から離れて階段を降りました。北口のロータリー前で深呼吸。
「どう、大丈夫?落ち着いた?」
「大丈夫、ごめんね」
みんなに心配をかけちゃったな。さっきは恥ずか死するところでした。未来の前であんな恥ずかしいこと・・・
涼子は急に真剣な顔でこっちを見つめてきました。
「沙羅ってさ、未来のこと好きでしょ」
「!?」
その瞬間、上の高架を新幹線が通過していきます。新幹線が通過しきるのはいつもたった8秒間なのにその瞬間はずいぶんと長く感じられました。
えええええええええええええええ!?そ、そんなわけ・・・
もしかしてそうなのかな?新幹線の走る轟音と風に頭は一気に冷えます。
「ど、どうしてそう思うの・・・?」一応聞いてみることに。
「あ、未来!!おーい!!!」
「えっ・・み、未来!?顔変になってないかな・・・」
「・・・嘘だよ」
「う、嘘・・・もう、涼子の意地悪!」
「ほら!!見れば分かるよ、未来と一緒の沙羅はすごく楽しそうだけどドキドキしてすごく緊張してるし私と話してる時の雰囲気と全然違う、あの雰囲気や顔は恋以外ありえないでしょ!?」
言われてみれば未来と一緒なのが楽しくて、ずっと隣にいたくて、でも一緒にいるとドキドキして変な気持ちになるけど・・・
「い、いやいやそそそそ、そんなわけないじゃん・・・」
全力で否定します。そんなわけないそんなわけない・・・たぶん・・・自分が未来を好き?そんなおこがましい、私には世界恐慌後のマルク札程度の存在価値しかないのだから。こんな私みたいな人間を好きな人、いるわけない。
「ホントに?本当に心の底からそう断言できる?自分に嘘ついてない?」
・・・そうかな?そうなのかな?でもやっぱり、私には・・・
「まあ私は応援してるよ、頑張って」と涼子は駅の中へ戻り始めます。
頑張れと言われましても!!こんな恋人いない歴=年齢みたいな私にはハードル高すぎるよ!慌てながらも私は涼子について行くのでした。
涼子「やっと気づいたよ・・・なんで二人とも誰かに言われなきゃわかんないかなー」
楓「二人とも本当に鈍感すぎです~」
「しかもお互いに意識せず惚れさせてるのがねー」
「早くくっついてください~、応援してます!」
次回は日本が南北に分断された世界線です。




