日本がスペイン、そしてアメリカの植民地になった世界線3
メリエンダを終えて、なんと学校の掃除の時間が消えていました。終礼を終えて、さて部活に行こうかな。
「じゃあサラ、バイバーイ!!」と今日はお別れかな。
「バイバイ!」
「え、ミライどこ行くんですか~?」と楓。
「どこってーダンス部だけど★」とダンス部の活動が楽しみなのかルンルンなミライ。私も早く美術部行こうかな。
「ねえリョウコ、今日も美術部一緒に行こうよ」と声をかけます。今日は先週の続きにしようかなー。しかしリョウコとカエデはそんな私やミライの期待を打ち破りました。
「2人とも何言ってんの?」「ビジュツブやダンスブなんて初めて聞きました~」
「え、じゃあみんななんで・・残ってるの?」
周りの子もみんな教室に残っています。終礼終わりにみんないるってことはまだなにかあるんだよね。
「なんでって・・自習時間だよ。2人ともどうしたの」
「もしかして三日三晩勉強して寝てない、とかじゃないですよね、大丈夫ですか」
「だ、大丈夫★」「なんかボーッとしちゃった、みたいな感じだから全然大丈夫だよ」と2人で慌てて答えます。
空を西の方へ飛ぶ複数の軍用ヘリコプターを見ながら2人でこそこそ。
「何!?自習って!!」
「受験競争が厳しいらしいから、これもその一環かな?」
「部活がないなんてー!」と2人で嘆くのでした。
というわけで4時から始まった長い長い自習の時間は夕食を挟んで続き。
「わー、星が綺麗★」と半ばやけになったミライ。
夜もすっかり更けて私達は勉強漬けでくたくた。
「や、やっと終わり・・・?」
しかしリョウコは言いました。
「終わりってそれじゃいい大学入れないよ?私はこれから塾行くからねー」
「え、これから塾!?」もう8時だというのに。
「え、別に普通でイッタ!!」私の方を見るために後ろ向きで歩いていた涼子はドアに衝突していました。
「だ、大丈夫?」
「だいじょぶだいじょぶ」と言いながら頭を抑えて塾へ向かっていきました。
「カエデはまだ自習室でまだ勉強ですよ~2人も行きましょう!」
「そんなに勉強するの・・?」
「受験競争に勝たなきゃですよ!!いい大学入っていい会社入りたいじゃないですか~」
「そ、そうだねー」
自習室には信じられないくらい多くの子がいました。
『四当五落』5時間寝れば不合格、みたいな四字熟語が貼られた自習室。みんな真剣です。この雰囲気ではおしゃべりする気にもなれずもうどうにでもなれとこの際徹底して自習室で勉強すること何時間か経って。
「ミライサラ、帰りますよ~・・・」慣れてるはずのカエデですら眠そう。
そう、時計はもう10時をまわっています。私達はもう限界という感じでなんとか乗れたスクールバス。
「確か・・韓国の進学校は・・こんな感じ・・だっt」
「韓国の子・・・すごい・・・」
もうバスに座った途端、この会話を残して寝てしまうのでした。
「あなたいつもここで降りてるでしょう」と先生に起こされるまでぐっすりでした。眠るミライの寝顔が可愛くて、「バイバイ」と起こさないように声をかけバスを降りるのでした。
深夜の街をゆっくり歩いていくと、空を偵察用の陸軍ヘリが上空を飛んでいきます。そういえばこの世界に来てから陸軍をやけにたくさん見るけどいつもこうなのかな。
帰ってみると、やっぱりいつものアパートでした。でも、周りもアパートが多くてびっくり。一軒家が少なめなんだね。
「ただいまー」
「おかえりなさーい」
そっか、こんな時間ならお母さんいるよね。ドラマを見ていたお母さんはお風呂上がりって感じでのんびりしています。制服を脱いでシャワーを浴びて。椅子に座ってドライヤーをお母さんにやってもらいます。
「気持ちいい・・・」
「サラドライヤーなんてどうしたの?久しぶりに甘えたくなった?」
「その、疲れただけ・・・」
「ふーん」
そんな感じでお母さんと私がゆっくりしていたとき、テレビが急にドラマから報道フロアに変わりました。
『えー番組の途中ですがこれから予定を変更して緊急放送を行います』
ん、緊急放送?
『フェルナンド共和国民の皆さん、これから緊急放送をお送りします。テレビの近くに居る方はできるだけ多くの方に声をかけ、放送をご覧になるようご協力をお願いします。またこれにともない全ての民間放送およびラジオは自動的に国営放送に切り替わります』
時報が静かに『午後11時40分20秒・・・』とか小さく言っているのが聞こえた後、画面は動き出します。お母さんは私の髪をとく手を止めて、2人でただ画面を見つめます。
『速報です。先ほど総理は緊急記者会見を行い、予測される最悪の時代に備え反国家勢力を排除するため戒厳令を発令し、軍の信頼の置ける部隊に出動を要請したと明らかにしました。総理の会見映像です』
んー、これもドラマかな。本格的だなー。
『親愛なる国民の皆様、私はこの国の治安を維持し予測される最悪の事態に備え、我が国民の自由と幸福を脅かす反国家勢力を一挙に排除し、自由民主主義体制を守り抜くため、非常戒厳を宣布します。』
お昼のニュースで総理として登場していた人物が映像に映って、やっと理解しました。これはドラマでも映画でもない、まぎれもない現実なんだって。
「は!?」と私は声を出してしまいました。その声でびくってなったお母さんはまた髪を解き始めます。
『この非常戒厳を通じまして、国家崩壊の淵にある我が国を再建し、守り抜きます。そして、これまで破壊行為を繰り返してきた亡国の元凶である反国家勢力を必ず排除します。これは体制転覆を企てる反国家勢力から国民の自由と安全、国家の持続可能性を守り、未来世代にふさわしい国を引き継ぐためにやむを得ない措置です。
私はできる限り迅速に反国家勢力を排除し国家を正常化します。この戒厳の布告によって、憲法価値を信じ従ってくださる善良な国民に多少の不便が生じるかもしれま・・・』
こんな宣言の後、きれいな富士山の映像とともに禁止行為が羅列されていきます。戒厳令という異常事態に私は理解が追いつきません。
『戒厳令発令中は国会および地方議会・政党活動・政治的結社・集会・デモなど、すべての政治活動行為が禁止されます。
また、自由民主主義体制を否定、または転覆を企図するすべての行為を禁止し、フェイクニュース、世論操作、虚偽の扇動を禁止します。国民の皆さまにおかれましては憶測に惑わされず冷静に行動してください。これに伴いすべての報道および出版は戒厳司令部の統制を受けることになります。政府からの情報に従って行動してください。
社会に無用の混乱を避けるため、混乱を助長するストライキ、怠業、集会行為につきましては一切禁止となります。
これら本布告に違反した場合は、戒厳司令官特別措置権に基づき、令状なしで逮捕・拘禁・押収・捜索を行うことができ、戒厳法により処罰されます。軍や警察、政府機関の行動に従い積極的な協力をお願いいたします』
令状なしの逮捕拘禁に政治活動の一切の禁止なんて、これじゃまるで・・・
「独裁国家じゃん・・」
この国はこれからどうなるの?自由な考えや行動はもうできないのか、政治はどうするの、軍国主義国家になってしまうんじゃないかとか、海外は・経済はどうなっちゃうのかな。
そもそも私達はこのまま普通に生活できるの?
テレビの画面はまた切り替わります。ライブカメラらしきその映像には、だだっ広い高速道路には一台も一般車はおらず、オーサカ方面に戦車を乗せた大型トレーラーが走っていく姿がありました。そびえ立つ高層ビルをバックに走る車列。どこかから「ああっ、F2式にトヨカワの8式もいるぞ」なんて声が聞こえてきます。字幕には『非常戒厳令発令 オーサカに軍展開中』の文字。
また同じ映像や戒厳令の概要が流された後、たった今入ってきた情報としてキャスターが内容を伝えます。
【速報】国会議事堂 陸軍出動
映像では戦車が誘導に従ってトレーラーから降ろされ、一瞬白くライトアップされたオーサカの国会議事堂に砲塔が向くと、そのまま旋回していき、軍人がまわりに警備を巡らせていきます。
オーサカ城址地区・FHKオーサカ放送局・オーサカ駅などにも出動したとかヘリが到着したとかそんな情報が次々流れてきます。オーサカ港のカメラには海軍、オーサカ国際空港のカメラには空軍が展開していくのが映像でもはっきり分かります。
「・・・あれ、寝ちゃってたの・・?」
椅子に座ったまま眼鏡も外さず眠っちゃったんだ。そんなに私眠かったんだなんて思いながら付けっぱなしのテレビを見ると左端に05:32と書いてあります。夏の朝は早く、外は明るくなっていました。お母さんは私の横でぐっすり。テレビにうっすら反射する、地味な寝ぼけなまこメガネ女子高生はやっと昨日のことを思い出します。
「あ、戒厳令・・・どうなったの・?」
現実と違うと思いされたのはテレビ画面に映る、街に砲塔を向けた駆逐艦数隻の姿でした。今も事態は変わっていないことは何も聞かずとも分かりました。
そんな朝は恐ろしいくらいに不気味でした。全国に戒厳令が出されているというのに、独裁国家のような状況なのに、大きな交差点には警察官か軍人か警備員が立っているというのに。
朝ラッシュの電車は混んでいて、みんな気怠そうに、不安そうにしながらも制服を、スーツを着てスマホを見つめ会社へ学校へ向かっています。お母さんはいつものように「いってらっしゃい!」と言って私を駅まで送ってくれて。
ここシゾーカも主要都市だからか、たくさんの警備が敷かれています。学校の最寄りであるクサナギ駅にも警備の目は当然あります。小学生が警備の警察官とハイタッチして、高校生達は軍人さんに「おはようございまーす」なんて挨拶しています。国道を戦車が走っているのに、周りの人もちらっと見るくらい。
そう、これがまるで当たり前であるかのように。前もこんな感じだったみたいに。異常としかいえないけれど、私もこうして朝ご飯を食べて日常のように高校に登校して、周りに合わせて軍人さんに挨拶してる時点で同じなんだよね。
でもトイレットペーパーやカップラーメンは買い占められていて、コンビニやドラッグストアの棚は空でした。そこだけは、この状況を当たり前でないと教えてくれていました。あの緊急事態宣言の時を思い出しちゃいますね。
この世界の政治状況は極めて不安定です。与党野党の二大政党制ですが、政策が違いしかもどちらもほぼ議席過半数。30年前まで開発独裁体制だったこの国はまだまだ民主主義が成熟しているとは言いがたいんです。
気持ちも落ち着いたので絵を描いて過ごします。
「サラおっはよー★」
「ミライおはよー」
よかった。いつも通りでほっとしちゃう。思わず手を止めてみてしまいます。
「ミライがいると安心する・・・優しいしちゃんと見てくれて・・・」
「・・・・・」
あれ、なんだかすごいこと話してる気がする・・・
「だから、つい一緒にいたくなるのかな・・?」
「~~~~~~っ!!」
「ミライ・・・・?」
「むりむり★サラ、そんなこと真顔で言うの反則だよ!心臓持たないって♥」
「え、何か言っちゃった・・?」
また気持ち悪いこと言っちゃった?
「言ったよ!!めっちゃ言った!!」
顔を隠してミライは何かぼやくと、顔真っ赤でした。
「元の世界、戻ろうよ」
「そうだね・・・まだ眠たい・・・」とあくびをするミライ。
タブレットを使って元の世界へ戻ります。戻ると学校は賑やかで、青春な感じ。
「そういえばあの世界の朝って警備が厳重だったけど、なんかあったのかな?」とミライ、いえ未来。
「今さら!?」
当然戒厳令など出されてもいませんでした。あの地獄の勉強もなく高校生活という青春を謳歌・・・私がそんな青春を過ごしてもいいのかな。だって私だし・・
涼子「絶対YouTubeで1日無料公開されてたアニメ映画の影響受けてるねー」
楓「んー、楓ももっと勉強しないとですね~♥」




