従騎士に戻してあげなくもないわ!
ウフフ……楽しみだわ。侍女に成り果てた第3の従騎士、ロイク・シャルアン。このままわたしの傍付きとして雇わせて頂こうかしらね。まずは折角の綺麗な顔を民にお披露目しなくては勿体無いわね。
「シャリィ! わたくしの傍に来なさい!」
「え……シャ、シャリィ? そ、それは僕……私のことでしょうか?」
「他に誰がいるというの! 早くなさい! 斬るわよ!」
「は、はい……すぐに」
「まったくもってトロくさい侍女だわ。とてもじゃないけれど、こんなトロくさい動きなら従騎士は務まりそうもないわ。我慢しても侍女に限るわ」
侍女としてお披露目をして差し上げるというのに、今日に限って従騎士のその1と、その2の二人が何故か付き添いの警護をすると言い出したわ。何をトチ狂っているというのかしらね。危険な事なんてわたしの国の、しかも街でなんて起きるはずがないというのに。
「リルーゼ皇女。悪ぃが、あんたにとっては遊び相手かもしれねえが、俺ら従騎士は三位一体なんでね。たとえ、一番弱っちいロイクだろうと、手傷を負わすわけには行かねえんだよ。そういうわけだ」
「リルーゼ。私もライナードの言葉が正しいと思っている。だから私も警護に付かせてもらう」
「あらあら、従騎士は3人いないと何も出来ないというのかしらね? たかが街を練り歩くだけじゃない。ふふっ、もっとも、その内の一人は侍女なのだけれど。あなたたち2人もわたくしの侍女となって傍仕えをしてみたいのかしらね? いえ、想像しただけでおぞましいから、こっちから願い下げだわ」
「くっ……相変わらずの毒吐き皇女さんだな」
「止せ、私たちはそれでも陛下に従う身だ。まぁ、ロイクだけで何とかなるだろうが、この際いい機会だと私は思っている。リルーゼにとって、従騎士は忌むべき存在なのだ。その存在にもし守られでもしたら、少しは心を入れ替えてくれるかもしれない。そう期待している……」
「あんた、正気か? 心を閉ざしまくって可愛げの全く無い皇女が変わるとでも?」
「あぁ……恐らくな」
無駄口ばかりで何の役にも立ちそうにない従騎士その1と2と3。ふん、陛下に言われるがままに来ただけの奴等にわたしを守れる心でもお持ちなのかしらね。でもそうね、億が一にも守れるというのなら、侍女に成り果てたシャリィは、従騎士に戻してあげなくも無いわ。あり得ないでしょうけれど。