第41話 椿っちと変態くん
こんにちは。崖っぷち系小説家、風井明日香です。
この話を書き終わり、現在前書きを書いているただ今の時刻、定期更新時間である日付の変わる十五分前!
話を書き終えたのが今から二分前ですからね。はっはっは。いや、はい、すみません。
「めぐちゃんもお買い物~?」
「はい。二人と一緒に浩介くんの誕生日プレゼントを買いに」
佐倉さんと仲良さげに話す眠そうなお姉さん。
佐倉さんが先輩と呼んでいたし、うちの学校の先輩だとは思うが……うん、全く知らない。
長谷川さんも知らないようで、二人の会話を見守っている。
「浩ちゃんの誕生日プレゼント! なるほど~、それでみんな揃って買い物か~」
「はい。明後日の一日が浩介くんの誕生日でして」
「なるほどね~」
そう話すと、俺と長谷川さんのほうに視線を移すお姉さん先輩。
二人そろって軽く会釈する。すると、お姉さん先輩が佐倉さんに話しかける。
「めぐちゃんめぐちゃ~ん。この二人のこと、私に紹介してくれない?」
「あ、えっと。まずこっちが、私の友達の椿で」
佐倉さんがそう言うのと同時に長谷川さんが、頭を下げる。
「長谷川椿です。はじめまして、先輩」
礼儀正しくあいさつする長谷川さんに、どへへと頬を緩める先輩。いや、なんだあの顔。
すると次は俺のほうに目を向け、
「んじゃあ君は~、椿っちの彼氏?」
「あ、ちわっす」
「ちっがうわよ! 先輩、これは途中で拾った変態です。お気になさらず」
「ひでえ! 俺は浩介の友達の松下真人です先輩! 決して拾われた変態じゃないっす!」
「あはは! 君たち面白いね~。さすが浩ちゃんの友達だ~」
俺と長谷川さんのやりとりを見てけらけらと笑う先輩。
なんか長谷川さんがすごい腑に落ちない顔してんな……。
「私は春咲菜乃花。めぐちゃん浩ちゃんと同じ、図書委員をしてるよ~」
あ~なるほど。だから佐倉さんと仲がよく、浩介のことも知ってたのか。
というかさっきから思ってたが、浩介は浩ちゃん呼びなのか。あと長谷川さんは椿っち。
俺はどうなるのかな~。ドキドキ。
「一応先輩だからね~。椿っちも変態くんも、なんでも相談してね~」
「変態くん!?」
えっそれが俺のあだ名っすか!? 嘘でしょう春咲先輩!
さすがにそれは心に刺さりますわ! あんな嫌味一つない顔で言われたら、なおさら!
「いいあだ名じゃない、変態くん」
「うるせえぞ椿っち!」
「なっ! あなたにそう呼ばれる筋合いはないわよ変態くん!」
「こっちだって変態呼ばわりされる筋合いはねえぞ椿っち!」
椿っちこと長谷川さんと、春咲先輩考案のあだ名を呼び合っていがみ合う。
それを見て苦笑いの佐倉さんと、一人腹を抱えて笑う春咲先輩。
ひとしきり笑うと、春咲先輩は佐倉さんのほうを向き、
「めぐちゃんも困ったことあったら相談してね?」
「はいっ」
にこっと笑ってそう返す佐倉さん。それに春咲先輩も笑顔で答える。
和やかな雰囲気が漂う図書委員ズ二人に対し、こちらは……。
「……椿っち」
「……変態くん」
そっぽを向き合い、未だにあだ名を呼び合い牽制しつづける、俺と長谷川さん。
そして、ふとさっき春咲先輩の言っていたことを思い出す。
「あ、春咲先輩。相談があります! 長谷川さんがなかなか心を開いてくれないんです! どうしたらいいですゴフッ」
言い切る前に、当の長谷川さんから横腹に痛恨の一撃をもらう。
春咲先輩は、崩れ落ちる俺を特に気にした様子もなく、
「う~ん、焦りは禁物だよ~。少しずつ一歩ずつを大切に、攻めすぎないように距離を縮めないとだよ~」
「了解しました! 焦らず攻めすぎず、かつ積極的にいくことにします!」
「お~う。がんばりたまえ~」
地面に崩れ落ちたまま、春咲先輩と話し続ける。
横からすごい殺気を感じたのは気のせいだと信じたい。
「私の見かけによると、椿っちはツンデレタイプだからね~。諦めずにアタックし続けるのが鍵かな~」
「なるほど! じゃあ地道にアタックして、ここぞのタイミングで告白すればツンデレならではの返事が返ってくると、そういうわけですか!」
未だひざまずいたまま、拳を握りながらそう聞き返す。
春咲先輩はそのふくよか胸を強調するかのごとく腕を組み、
「ふふふ。さすが変態くん、わかっているじゃ~ん」
「了解しましたあ! では好感度をめっさ上げてから告白することにしまゴヘッ」
「な、なんであなたが私に告白する流れになっているのよ!」
さらなる追撃をもう一度横腹にうけ、完全に地面から離れられなくなる。
さっきの二倍は痛かったが、ちょっと照れた顔も見れたから結果オーライ!
「それで~話は戻るけど、浩ちゃんの誕生日プレゼントは決まったの~?」
春咲先輩が大幅にそれていた話を元に戻す。
あー、そういえばそんなことしてたか。忘れてた忘れてた。
「とりあえずは、これがいいかなって話してて」
佐倉さんがそう言いながら先程のブックカバーを春咲先輩に見せる。
「お~! いいじゃんいいじゃ~ん。なかなかセンスあるね~」
春咲先輩からも絶賛をいただける。
うん、これだけ意見が一致するんだ。外れることはないだろう。
「ん~。私的にはラッピングとかして渡したら、すごく心がこもった感じになりそうかな~って思うんだけど」
春咲先輩が、ちょっと前俺がぼんやり考えていたことを、的確に指摘する。
……少し思ったのだが、春咲先輩。
一見は眠そうでちょっとマイペースな人って感じなのだが、結構頭の切れる人だったりするのだろうか。
なんとなくだが、そんな気がする。
「ラッピングですか……。包むくらいの紙なら家にあったと思います」
「完璧完璧~。あとは渡すタイミングだけど~」
ぽんぽん話を進めていく春咲先輩。
いやなんだこれ。もう佐倉さんと春咲先輩で一緒に買いに来ればよかったんじゃね?
「めぐちゃんたしか~、一日は図書委員休みだったでしょ? 私が当番だったから、その日は用事があるって言ってめぐちゃんに変えてもらって、もう一人の当番の子にも伝えとくよ~。あとは渡すだけ!」
「あ、ありがとうございます……」
文字通りトントン拍子で話を進めていく春咲先輩に、少し戸惑いながらも佐倉さんがお礼を言う。
いやほんとにこれ俺ら要らなくね。
「ほんじゃあ明後日頑張ってね、めぐちゃん!」
「は、はいっ」
そう言って手を振りながら足早に去っていく春咲先輩。
あ、嵐は去った……。あの人がいると俺と長谷川さんの存在意義がなくなりそうだな……。
「あ! 言い忘れた~!」
「?」
結構遠くに言った春咲先輩が声をかけてくる。
三人で首を傾傾げながら、春咲先輩のほうを見る。
「椿っちと変態くんも、しっかりプレゼント買うんだよ~。忘れてない~? それだけ~。まったね~」
再び、嵐の如く去っていく春咲先輩。
「「………」」
思わず長谷川さんと目を合わせる。
そして二人して小さく笑い合う。
ははは。
うん、完全に忘れてたわ。
椿っちはツンデレ。はっきりわかんだね。
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