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第40話 全身全霊プレゼント

 こんにちは。柿バナナ系小説家、風井明日香です。

 先日、柿〇種を食していたら、六つほど合体した本気モードのやからがいまして。

 思わず写真を撮ったのですが、どう見てもバナナにしか見えません。ばなな。


 ゴールデンウィーク二日目。浩介の誕生日を明後日に控えた今日。

 俺、長谷川さん、佐倉さんの三人は、記憶に新しいとあるショッピングモールに来ている。


「なんか、あんまり新鮮味がないなあ。マレラ」


「つい最近来たばっかりだものね。私もそう思うわ」


 横にいる長谷川さんがそう話してくる。

 いやー、やはり私服っていいですなあ。至福至福。


 今日は休日。当然ながら長谷川さんも佐倉さんも至福……間違えた、私服。

 前回マレラで合った時も同じことを考えていたのだが、やっぱり私服は最高。かわいさ倍増でっせ。


 ふと長谷川さんの隣を歩く佐倉さんに視線がいく。

 さっきからあまり喋らず、かと言って落ち着いているわけでもない様子。

 なにやらそわそわしている佐倉さんに声をかける。


「佐倉さん、どうかしたか? なんか落ち着かない感じだが……」


 長谷川さんも同じことを思っていたのか、俺がそう言うと同時に佐倉さんのほうを向く。

 俺ら二人から見つめられた佐倉さんは、少し慌てた様子で、


「あっいや。ご、ごめんね……? ち、ちょっと、不安で……」


「不安?」


 長谷川さん不思議そうに聞き返す。


「う、うん。私、男の子にプレゼントを渡すって初めてで……。しっかり選べるか、少し不安……」


 なんて初々しいんだ、佐倉さん!

 これを浩介に伝えたらどんな反応するだろうか……。


 まあ、あいつのことだし「な、なんでも嬉しいよ!」とかテンプレな返しをしそうだが。

 全く、こんな健気な女の子から気にかけられるなんて、羨みの極みだな。


「大丈夫よ、愛美。私たちも付いてるし、松下くんは“一応”男子な訳だし、心配ないわ」


「なんで“一応”を強調したんだよ」


 長谷川さんの言い方はなんか癪だが、言ってることは間違っていない。

 佐倉さんに限って、そんなとてつもないセンスを持っているなんてことはないと思う。

 それにさっきの話じゃないが、浩介ならどんな物でも喜ぶだろう。


「長谷川さんからの評価はなんだかイマイチだが俺も男だし、なんせ浩介とは小学校からの付き合いだ。あいつの好みくらいなら少なからず把握してるつもりだ。安心してくれ」


「ええ、そういう意味では松下くんも役には立つと思うし、そんなに気を張らなくても大丈夫よ」


 俺の後に続き、長谷川さんも佐倉さんにそう伝える。

 すると、佐倉さんは俺と長谷川さんに明るい笑顔を向け、


「ありがとう! がんばっていいプレゼント選ぶね!」


「ええ」

「おう」


 俺たちがそう返すと、満面の笑みを浮かべてくれる佐倉さん。

 浩介はこんな笑顔をいつも見ているのだろうか。うーん、これでときめかなかったら男じゃねえな。

 じゃあ、とある理由でときめいていない俺はどうなんだって話だがな。どうも、変態紳士です。


「よし、じゃあさっそくプレゼント選び、行きますか」


 前回来たときにも思ったことだが、ここ、マレラには本当にたくさんの店がある。大抵のものはすべて揃っているだろう。


 だが、なんせ広い。広すぎる。

 前回みたく、大きな目的もなくぶらぶらして暇潰しをするには、これでもかってくらい最適だ。

 しかし、今回みたいに目的を持って買い物をするとなると、厄介極まりない。


 最初にどんな物を買うか考えておけばとも思ったのだが、なんとなくこういうものはゆっくり決めたほうがいい気がしてやめた。


 とりあえず目についた店に入ってみる。

 まず最初に発見したのは文房具店。文房具であればもちろん実用的だし、まず外れることはないだろう。


「文房具……ね。実用性は十分だけれど、それ以外は可もなく不可もなくって感じかしら」


「だな」


 やはり、長谷川さんも同じようなことを考えていたらしい。

 俺と長谷川さんで二人して文房具を睨みつつ考えていると、それを見た佐倉さんが苦笑いしながら、


「な、なんか、二人ともすごい真剣だね」


「あたりまえだろ、佐倉さん」


「へ?」


「そうよ愛美。杉浦くんの誕生日なのよ?」


「え。う、うん。つ、椿ってそんなに浩介くんと仲良かったっけ……?」


 俺に続きそう言う長谷川さんに、怪訝そうな面持ちで呟く佐倉さん。


「そんなことは気にせず今はプレゼント選びに集中するんだ、佐倉さん!」


「松下くんの言う通りよ愛美。今は杉浦くん誕生日に全身全霊を賭けなさい」


「わ、私、誕生日がなんなのかよく分からなくなってきた……」


 腑に落ちない顔をした佐倉さんを横目に、再び商品とにらめっこを開始する俺と長谷川さん。

 少しすると、佐倉さんも観念したかのように店を回りだした。


 しばらく、個々に文房具店を物色する。

 すると、俺と長谷川さんとは違う場所にいた佐倉さんが、何か手に持って戻ってきた。


「ねえねえ! これなんてどうかな?」


 少し弾んだ声の佐倉さんの手には、ブックカバーが握られていた。

 黒く落ち着いた色合いのそれは、俺や浩介がよく読む文庫本の大きさで、(しおり)変わりの紐も付いたもの。


「そういえば、杉浦くんも結構読書を(たしな)むのだったわね。いいんじゃないかしら」


 そう評価する長谷川さんに、俺も頷く。

 全く持って悪くないな。佐倉さん、いいセンスだ。


「柄もシンプルで、使いやすそうだし。問題なしだな」


「うんっ!」


 俺と長谷川さんの評価に、嬉しそうに笑顔を見せる佐倉さん。

 そんなに俺たちが口を出すまでもなかったっぽいな。

 今日一日使ってプレゼントを選ぶ予定だったが、そんな必要もなかったらしい。


 後はまあ、渡すタイミングとかラッピングとかを考えて──


「およ? めぐちゃん?」


 唐突に背後からかけられる、間延びした声。

 誰からということもなく、三人同時に声のほうに振り向く。

 そこには、


「春咲先輩!」


「やっほ~めぐちゃん。奇遇だね~」


 佐倉さんを特徴的なあだ名で呼ぶ、どこか眠そうなお姉さんがいた。

 春咲ちゃん、意外と早く再出演。香苗先生? いえ、知らない子ですね()


 毎週日曜0時更新中! 次話≫3月4日

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