第995話 「魔球②」
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「前置きが長い!」とフランに叱られた? ルウは早速実践に入る。
「じゃあ、論より証拠。俺とフランシスカ先生でこの魔球を使い、手本を見せる」
ルウはそう言うと、再び魔球に魔力を込めた。
ふわ……
不思議な魔道具、魔球は、ルウの手元から静かに浮かびあがる。
更にルウが、意思を伝えるかのように、軽く息を吐くと……
浮かんでいた魔球は、柔らかい放物線を描いて飛んで行く。
速度は……ゆっくり、ゆっくり、蝶が止まれるくらいだろうか。
そして正確に、フランの胸辺りへ、きっちり投げ込まれたのである。
当然、フランは軽々と両手でキャッチし、にっこりと笑った。
「「「「「「「「「「おおおおおおっ!」」」」」」」」」」
生徒達から、『どよめき』が起こった。
「先生、もう我慢出来ませんっ! 魔球の仕組みを教えて下さいっ」
マノンが口火を切ると、
「そうです! 教えて下さいっ!」
「お願いしますっ!」
「そうですっ!」
オレリーやジョゼフィーヌ、リーリャを含めた生徒全員が追随した。
「分かった、じゃあ簡単に話そうか」
ルウが微笑むと、フランの手にあった魔球がふわりと浮き上がった。
30㎝ほど浮き上がった魔球は、そのまま空中で静止している。
「「「「「「「「「「おおおおおおっ!」」」」」」」」」」
生徒達は、またも歓声をあげた。
歓声が終わったのを見計らって、ルウは説明を開始した。
「魔法により、物質を動かす『力』は存在する。『念動力』と呼ばれる力だ」
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
浮かんだ魔球を見守る生徒達は、息を呑み、ルウの説明に聞き入っていた。
ルウは言う。
人間を含め、全ての生きとし生ける者が持つ魔力。
魔力を、様々な力に変換させたものが魔法。
そして魔法使いが、魔法を発動する際に発するのが魔力波なのである。
基本的に、魔力波は『物を動かす力』を持たない。
だが、例外もいくつかある。
『念動力』と呼ばれる魔力波も、そのひとつであるのだと。
しかしながら……と、ルウは言う。
「そもそも全ての魔法使いが、念動力を使えるわけではない。行使出来る魔法使いの方が稀れかもしれない」
だが……
魔球を使い、あっさりとルウとフランが実演して見せた。
念動力を……
生徒達が驚いたのはその為だ。
驚く生徒達へ、更にルウは、
「お前達は分かっていると思うが……俺達魔法使いは、失敗する事を恐れず、未知の世界へ可能性を求めて邁進するべきだ。けして魔法だけじゃない、物事を学ぶというのは、全てそうだと俺は思う」
「そ、その通りですわっ!」
ルウの言葉に感動し、大きな声で叫んだのはマノンであった。
「でもマノン、命だけは大事にしろよ。失敗を恐れないというのはむやみに危険を冒す事じゃあない」
にっこり笑ったルウが、今度はフランへ呼び掛ける。
「フランシスカ先生」
ルウの呼び掛けに応え、今度はフランが魔球を返す。
「はい!」
同じように魔球はルウへ投げ返され、ルウの胸元へ。
あっさりルウが、片手でキャッチし、笑顔で説明する。
「慣れるまではしばらく、これくらいの速度でな」
ルウがまた投げ、フランが受け取る。
またフランが投げ、ルウが受け取る。
いわゆるキャッチボールだ。
「よし、もう少し高度な手本を見せる。フランシスカ先生。徐々に速度をあげて行くぞ」
「了解!」
ルウの声に、フランが応えた。
ひゅ! ひゅ!
びゅ! びゅ!
ひゅおおっ! ひゅおおっ!
魔球の飛ぶ速度に比例して、大気を切る音も大きくなって行った。
驚く事にまるで、計ったようにルウとフランの胸元に魔球は投げられているのだ。
加えて、しっかりキャッチし、一回も落とさない。
10数回くらい投げ合っただろうか。
フランから魔球を受け取った、ルウが再び説明をする。
「この魔球は念動力を使えない者でも、魔力を転換し、簡単に行使する事が出来る魔道具だ。但し、俺やフランシスカ先生のように投げ合うのは、魔力の正確な制御が必要となる」
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
生徒達は「ごくり」と息を呑み込む。
ルウとフランは、いかにも簡単そうに魔球を投げ合っていたから。
緊張する生徒達へ、ルウは悪戯っぽく笑う。
「ははっ、やってみれば分かるが、慣れるまでは少し難しいぞ」
ルウの言葉を受け、フランも同じように笑う。
「ふふ、そうよ。息がぴったり合わないと駄目だから、真剣にやってね」
「息が合う」という部分を特に強調するように、フランは言った。
とても嬉しそうに……
ルウが更に、注意事項を告げる。
「先ほども言ったが、この魔球の材質はリネンだから、余程の事が無い限り、怪我はしないと思う。だが相手の顔や急所への投球は禁止だ。胸元へのど真ん中を狙い投げてくれよ」
「ルウ先生の言う通りです。それとルウ先生と私がやったみたいに、いきなり速く投げるのは駄目。当分はゆっくり正確に投げてね」
「「「「「「「「「「はいっ!」」」」」」」」」」
「最後にもう一回手本だ。慣れればこんな事も出来る。フランシスカ先生」
「はいっ!」
ルウはそう言うと、魔球を浮かせて、また投げた。
すると、生徒達は衝撃的な光景を目にする。
何と!
フランは魔球を、『手』では受けなかったのだ。
投げ込まれた魔球は、彼女の目の前で、「ぴたっ」と止まり、……微動だにせず浮いていた。
「「「「「「「「「「おおおおおおっ!」」」」」」」」」」
「お前達が見て分かる通り、フランシスカ先生は魔力制御を完璧に行った。結果、手を触れずとも魔球を制御出来たんだ」
「うふふ、ルウ先生にもお返しよ」
ひゅおっ!
フランの言葉通り、浮かんでいた魔球は、凄まじい速度で投げ返された。
しかしその魔球も、ルウの前で、先程のフラン同様「ぴたり」と止まっていたのであった。
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※『魔法女子学園の助っ人教師』とは微妙に違う
ヴァレンタイン王国における、のんびりスローライフな田舎ワールドです。
故郷に帰りたかった青年が謎の死を遂げ、15歳の少年になって異世界転生!
バトルは少々ありますが、基本は田舎の村で美少女達とスローライフ。
畑を耕したり、狩りをしたり、魚を釣ったり、結婚した美少女達と日本の昔遊びなど。
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