第994話 「魔球①」
愛読者の皆様!
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ここは、魔法女子学園屋外闘技場。
ルウとフランにより、魔法攻撃術B組の授業が、引き続き行われている。
やがて、ランニング後の短い『休憩』が終了した。
夏季休暇前に、ルウから告げられた進行予定の通りなら、次は身体強化の魔法習得訓練を行う筈だ。
マノンは柔軟体操だけではなく、こちらの『対策』もバッチリだった。
元々、身体強化の魔法の発動方法は、魔法女子学園で使用される防御魔法の教科書に記載されていた。
当然、魔法式による発動である。
夏の間、ずっと猛特訓していたマノンは……
もう教科書など見ずに、『そら』で魔法式を唱える事が可能なのだ。
そう……覚えましたわ、完璧に。
ルウ先生が仰った日から……私は必死に、身体強化の魔法式を練習しました。
ここに居る誰よりも、スムーズに詠唱出来る筈……ですもの。
背筋を「ピン」と伸ばし、胸を「びっ」と張り、誇らしげなマノンは、そっと……
声を出さずに、魔力を込めずに、口の中で詠唱を始める。
……我は知る、力の天使よ! 我の盾となり護りたまえ、その名のもとに!
ビナー・ゲブラー・ザイン・サーマエール……
詠唱が終わると、マノンは拳を軽く握った。
うん! バッチリ! 完璧!
準備は万端ですわ!
いつでも、どうぞっ、ルウ先生。
マノンは満足そうに笑顔で頷いたが……
何故か、ルウは魔法式の説明を始める様子がない。
教科書ではなく、左腕の腕輪から『何か』を取り出したのだ。
何だろう?
一体、何を出すというのだろう?
マノンを含め、怪訝な生徒達の視線が、ルウへ集中する。
魔道具らしい腕輪から取り出されたのは……
大きさは、人の拳より少し大きい程度。
見た事もない、正体不明の『何か』であった。
形は、完全な球体で、色はといえば、目にも鮮やかな赤。
果たして、材質は……何だろうか?
何か、触ると、凄く柔らかそうに見える……
球体の材質を、生徒達は何となくだが、見た事がある。
「「ルウ先生、それは?」」
オレリーとマノンの声が重なった。
ルウはふたりへ、そして生徒達全員へ微笑み、
「ああ、これは魔球だ」
「魔球?」
マノンがぐいっと身を乗り出した。
オレリーは、ジョゼフィーヌ、リーリャと顔を見合わせ、苦笑している。
だが、マノンは全然気にしてはいなかった。
「うん、正確に言えば魔球という、古代人工遺物の複製品だ。材質だけは、変えてあるがな」
「先生、それ、一体どうしたのですか?」
「ああ、俺が作った」
「え!? じ、自作なんですか?」
「オリジナルの図面があったからな。仕組みを理解したから、作れたぞ」
「…………」
「一体、何をするのですか?」
「ああ、お前達の訓練を兼ねた、ちょっとした遊びだ」
「遊び?」
「うん! 単純な訓練だけだとお前達が飽きると思ってな」
「…………」
遊びを行う?
ルウの言葉を聞いて思わず、マノンはポカンとしてしまった。
すかさず落胆が襲って来た。
全身から、力が抜ける。
がっくりする。
折角、身体強化の、魔法式を覚えたのに……
言われた通りにして来たのに……
気が付いたら、マノンの目からは涙が出ていた。
「マノン、大丈夫だ。次回の授業で身体強化魔法の訓練をするから」
「え?」
マノンは、またポカンとする。
まるで自分の心をルウは見抜いているみたいに……言い当てられたのだ。
先程まで笑顔だったのに、いつのまにかルウの表情は真剣だった。
しかしマノンはルウから優しさの波動を感じる。
「お前が夏の間に努力した事は、絶対無駄にならない。というか、経験で無駄になるものはないというのが、俺の考えだ」
「先生……」
「但し、俺が教授する身体強化の魔法は魔法女子学園のものと少し違うぞ」
「え?」
マノンは吃驚してしまう。
驚きの連続である。
まるで、大波に揺れる船に乗っているようだ。
「良いか! 皆も聞いてくれ! 来週は事前の話通りに身体強化の魔法の訓練を行う。まずマノンのように魔法式詠唱を完璧に習得しておいてくれ」
「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」
ルウの大声に生徒達が答えた。
面目を施されたマノンは……満面の笑みを浮かべていたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
生徒達が落ち着いたと見て……
ルウは早速、古代人工遺物、魔球の説明を始める。
彼の手の上には、先ほどの『球体』がある。
「この球は俺達の魔力に反応して浮く」
ルウは「ふっ」と軽く息を吐く。
すると!
真っ赤な球体が「ふわっ」と浮いたのである。
「「「「「「「「「「わああああっ!」」」」」」」」」」
思わず、生徒達から歓声がわいた。
しかしルウは、「当たり前だ」とばかりに微笑むだけである。
「まあ、こんな感じだ。こいつの素材はリネン」
リネンとは、亜麻布の事である。
ヴァレンタイン王国では、夏向きの衣服、大きなものでは船の帆などに使われている。
上質のものは丈夫で、肌触りも良い。
「その魔道具、リネン製なのですか? 先生、もっと教えて下さいっ! 出元は? そのように浮く仕組みは?」
ここで、また質問したのはマノンである。
相変わらず凄い喰い付きぶりだ。
だが、ルウは首を振った。
「まずお前達の訓練ありきだ。悪いが、時間もないし、魔球に関して、これ以上の説明はなしとする」
ルウに回答を断られ、マノンは一瞬切なそうな表情をするが、パッと笑顔を見せる。
「これから、何かある」と理解して、すぐ切り替えたようだ。
「まあ、許してくれ。それより今回、この魔球を授業で使う意味を説明する」
「使う意味ですか?」
「ああ、そうさ」
ルウはそう言うと、オレリーを含めた他の生徒達に呼び掛ける。
「みんな! 遊びだと言った癖に、講釈が長くて、ごめんな」
「そうよ、ルウ先生。説明が長過ぎるわ、早く遊びましょうよ」
今度は、フランが突っ込む。
当然冗談である。
「悪い、悪い」
「あははは」
「うふふっ」
「ほほほ」
副担当のフランに怒られ? 罰が悪そうに頭を掻くルウを見て……
生徒達は皆、面白そうに笑ったのであった。
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東導の別作品もお願いします。
☆『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』新パート連載中!
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※『魔法女子学園の助っ人教師』とは微妙に違う
ヴァレンタイン王国における、のんびりスローライフな田舎ワールドです。
故郷に帰りたかった青年が謎の死を遂げ、15歳の少年になって異世界転生!
バトルは少々ありますが、基本は田舎の村で美少女達とスローライフ。
畑を耕したり、狩りをしたり、魚を釣ったり、結婚した美少女達と日本の昔遊びなど。
スローライフ最中、自らの転生の謎を解き、様々な人々と、出会い&別れを繰り返す。
結果、逞しい『ふるさと勇者』へと成長して行く物語です。
※本日3月19日朝、更新予定です。
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