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第987話 「テオドラの復活⑫」

愛読者の皆様!


『魔法女子学園の助っ人教師』第4巻が発売決定致しました!

詳細は決定次第お報せ致します。


書籍版をまだお読みではない方は、第1巻~3巻を宜しくお願い致します。

※店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さい。

 テオドラは思い直す。

 ルウの従士を務める、選ばれた戦士たる自分が、容易たやすく恐怖にとらわれる。

 こんな事では、絶対にいけないと。

 

 顔を軽く左右に振り、何とか勇気を振り絞って、恐る恐る見れば……

 逞しい女戦士は腕組みをして、テオドラ達を見下ろすように立っていた。


 ゆっくりと、女戦士の形の良い、薄めの唇が開く。


「ミンミ、任務完了だ。ただ、それだけを告げに来た。他に用はない」


 どうやらこの女戦士は、ギルドから指示された依頼を完遂し、その報告に来た『だけ』のようだ。

 彼女の言う通り、確かに依頼完了だけなら、わざわざギルドマスターへ伝えに来る事ではない。

 マスター自らが出した『特別指令』というのなら、また話は別であるが……


 片や、ミンミはというと、苦笑したままである。


「ははは、相変わらずだな、マルガ」


 マルガと呼ばれた女戦士は、微かに笑う。


「ふん! 所詮は一般依頼。カウンターの担当者に伝えれば済む用件だ。しかし、丁度お前が居たから、上まで出向いてやった」


 テオドラは、吃驚した。

 マルガが、いくら実力のある女戦士だからとはいえ、所詮はギルド所属の一冒険者。

 ギルドの長たるマスターに対し、何という、無作法且つ上から目線な口の利き方であろうか。

 しかし、ミンミは怒った様子もなく笑っていた。


「ふふ、それは嬉しいぞ」


 「にこにこ」するミンミから、視線を移した女戦士――マルガは「じろり」と、テオドラを見た。

 視線を注がれたテオドラの身体が、緊張で固くなる。


「ほう……お前がテオドラか?」


 驚いた事に、マルガはテオドラを知っているようだ。

 当然初対面であり、この場で紹介もしていないのに。 


「…………」


 テオドラは、やはり返事をしなかった。

 けして、単なる人見知りとかではない。

 未知の相手であるマルガの事を、大いに警戒しているのだ。


 無作法なテオドラの態度を見て、僅かに眉をひそめたマルガだが、何故か「ふっ」と微笑む。


「返事くらいはして欲しいが……私は、お前みたいな女が嫌いではない」


「…………」


 しかし、相変わらずダンマリのテオドラ。

 見かねたウッラは、テオドラの肩を掴み、軽くゆすった。


「お、おい、テオドラ……マルガさんに挨拶しろ」


「…………」


 テオドラは頑なに返事をしない。

 口を強く、「きゅっ」と結んでいた。


 ずっと無言を貫くテオドラへ、マルガの怒りがさく裂するかと思いきや……

 爆発したのは大きな笑い声であった。


「ははははははは! テオドラ! お前と私は似た者同士だ」


「…………」


「ふむ、お前の実力は魔力波オーラを見て分かった。ギルド登録が終わったら、ウッラと共に来い。……私はいつまでも待っている」


 マルガの言葉の意味とは……

 冒険者になったら、同じクランのメンバーになれという誘いだ。

 それにとても好意的な物言いである。

 今迄の経緯を考えれば、意外……であった。


 マルガに好意的らしいウッラは、感激したようで、素直に礼を述べる。


「あ、ありがとうございます」


 対照的に、テオドラは……相変わらず無言である。


「…………」


「では失礼する」


 「用はもう済んだ!」とばかりに、マルガはきびすを返し、去ろうとした。

 その背へ、ミンミが声を掛けた。


「まあ、待て、マルガ。そう急ぐな」


 去ろうとした、マルガの動きが一瞬止まった。


「ここでひと息つけば良い。茶くらいは淹れるぞ」


 ひと仕事終えたマルガを、労わろうとするミンミの誘いではあったが……

 マルガは背を向けたまま、きっぱりと断る。


「無用だ。既に次の依頼を受けた。大昔に廃棄された古城の不死者アンデッド退治だ」


 普通の冒険者では考えられない事である。

 休息という言葉は、マルガの辞書には存在しないらしい。


 ミンミも心得ていて、お茶の誘いを引っ込める。

 あっさり依頼の話へと、切り替えてしまう。


「ほう、あれか」


「うむ、あれだ! まあ、不死者など雑魚だから、あっという間に完遂するだろうが……さあ、ピエレット、もう行くぞ! 下まで降りる、先導しろ」


「は、はい!」


 戦士マルガ――大悪魔マルコシアスは来た時と同様、扉をバンと閉め、去って行った。

 部屋には、ミンミ、ウッラ、そしてテオドラが残される。


「ははは、相変わらずだ。あいつは……」


 ミンミは笑いながら、首を横に振った。

 だが、けして「あいつは嫌だ」という雰囲気ではない。

 むしろ、マルガへの親しみが溢れていた。


 ここで漸く、テオドラはおぼろげな記憶を修復する事が出来た。

 口からは、ある人物のふたつ名が語られる。


「彼女、もしや天狼……ですか?」


「うむ、そうだ! 天狼……マルコシアス。ルウ様の悪魔従士の中では、アモン、アスモデウスと並び最強と謳われる女悪魔だ」


 ミンミの説明を聞いて、ウッラは「うんうん」頷いていた。

 「当然、承知」という雰囲気である。

 先程のミンミ同様……

 ウッラからは、マルガへの好意を示す強い波動が放たれている。


 何故……だろう?

 マルガはマルコシアス……

 怖ろしい悪魔の筈だ。

 人々から、忌み嫌われる筈なのだ。


 疑問に思ったテオドラは、再びマルガの正体を呟く。


「天狼マルコシアス……」


 テオドラの言葉を受けて、ミンミが言う。


「うむ……愚直という言葉を、具現化したような女だな」


「愚直……」


 愚直とは、正直すぎて上手く立ち回れず、不器用……

 テオドラが知るところ、確か、そんな意味である。

 何となく共感を覚える。


「なあテオドラ、ここに居る私達3人は皆同じなのさ……マルガ同様、ひたすら愚直に生きている。そう思わないか?」


 ミンミからの、問いかけを聞いたテオドラは……


 何故マルコシアスが、怖ろしい悪魔なのに好かれるのか?

 そして、不器用な自分が……

 何故、周囲から、優しく見守って貰えるのか?


 漸く、分かった気がしたのであった。

いつもお読み頂き、ありがとうございます。

東導の別作品もお願いします。


☆『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』新パート連載中!


https://ncode.syosetu.com/n4411ea/


※『魔法女子学園の助っ人教師』とは微妙に違う

ヴァレンタイン王国における、のんびりスローライフな田舎ワールドです。


故郷に帰りたかった青年が謎の死を遂げ、15歳の少年になって異世界転生! 

バトルは少々ありますが、基本は田舎の村で美少女達とスローライフ。

畑を耕したり、狩りをしたり、魚を釣ったり、結婚した美少女達と日本の昔遊びなど。

スローライフ最中、自らの転生の謎を解き、様々な人々と、出会い&別れを繰り返す。

結果、逞しい『ふるさと勇者』へと成長して行く話です。


☆『隠れ勇者と押しかけエルフ』


https://ncode.syosetu.com/n2876dv/


深き深き地下世界で……

怖ろしい悪魔王により、父と一族全員を殺されたダークエルフの姫エリン。

穢されそうになったエリンを、圧倒的な力で助けたのは謎の魔法使いダンであった。


※両作品とも本日2月26日朝、更新予定です。

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