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第1,017話 「叶わぬ恋に落ちて⑨」

愛読者の皆様!


『魔法女子学園の助っ人教師』第4巻の発売が決定致しました!

詳細は決まり次第お報せ致します。


書籍版をまだお読みではない方は、第1巻~3巻を宜しくお願い致します。

皆様が応援して下されば、更にまた『次』へと進む事が出来ます。

※店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さい。

 ここは異界……

 旧き南の女神により呪われた、悲劇の女王ラミアが幽閉された神殿である。

 最後の守護者と思われる、不死の怪物ヒュドラが居る大広間への回廊を、3つの影が進んでいた。


 長い回廊の四方には、堅固な石壁が迫っている。

 スフィンクス……

 すなわちリゼッタの部屋へ向かった時と同じ仕様で、おびただしい魔法の仕掛けと、物理的な罠がお約束のように仕掛けられていた。


 3つの影とはいっても……

 正確にはルウが浮遊の魔法で飛び、両腕にそれぞれひとり、南の国の妖精(ニンフ)が座っていた。

 ルウと一緒に来たエレナはともかく、何故、呪いが解けたリゼッタまでが同行しているのか?


 それは一体、どうしてなのか?

 ……時間は、少しさかのぼる。


 ルウの『提案』があった直後の事……


『もう!』


 エレナは、むくれていた。

 頬がまるで、巣ごもり前の栗鼠りすのように膨れている。


『はぁ? そっちこそ、もう! よ……』


 そしてリゼッタも、むくれていた。

 同じく、頬を「ぷくっ」と膨らませている。


 ふたりが、こうしてむくれている理由は簡単。

 先程リゼッタが、エレナを連れて行くといったからだ。

 妖精王オベロンの治める国、アヴァロンへ……


 それぞれの思いがあった。

 エレナはずっと、大好きなルウの傍で暮らしたい。


 だがリゼッタは……

 それが本当に、エレナの幸せになるのか、はなはだ疑問に思ったのだ。

 エレナに対して、家族として接する『ルウの態度』を見て聞いて、これは『叶わぬ恋』になるのではないかと……

 

 自身の事ではなく、所詮は他人?の事なのに……

 リゼッタは、とても危惧している。


 エレナの恋が……ルウへの想いが……

 完全に『叶わぬ恋』となった時、間違いなくナルキッソスとの悲恋の二の舞となる。

 永き間、異界に閉じ込められていたエレナだって自分同様、身も心も傷ついている筈なのに……

 更に、ダメージを受けてしまう事となる。


 ならば、自分と共に、アヴァロンへ行った方が良い。

 仲間の妖精達と暮らし、心身を癒し、新たな恋に向かって歩き出す方が良い。

 リゼッタは、そう考えたのだ。


 当然、エレナも気付いている。

 ルウとの恋が成就するのが、とてつもなく困難なのは。

 しかし、見守る恋でも良いと覚悟を決めたエレナにとって……

 リゼッタの優しい思い遣りは、はっきり言って、余計なお世話なのだ。


 と、その時。

 リゼッタが更に意外な申し出をする。


『分かりました! じゃあ、私も行きます、一緒に』


 一緒に?

 ついて行く?

 何故?


 エレナは同行を希望する、リゼッタの気持ちが分からない。


『え? リゼッタ?』


『ルウ様、私もエレナ同様、一緒に連れて行って下さい。命を懸けて盾になります! 助けて頂いたご恩に報います』


 リゼッタも同じく、ルウを守ろうと?

 助けて貰った、恩に報いる為に?


 エレナは思わず叫んでしまう。


『リゼッタ、そ、それでは、ルウ様のご迷惑になるわっ』


 しかしリゼッタは反論する。


『何がご迷惑よ! そっちこそ、全然足手まといじゃない』


『だ、だって! 私がそもそもラミアを助けようって……』


『そんなの! 途中まで、案内すれば良いじゃないの』


 喧嘩は……果てしなくなりそうだ。

 さすがに、ルウが止めに入る。


『おいおい、喧嘩するな。じゃあ、ふたりともついて来れば良い』


『え? 私だけじゃなく、リゼッタも?』

『ルウ様、ふたりともですか?』


 さすがに、エレナとリゼッタが驚くと。


『ああ、問題ない。一緒に行こう』


 と、しれっと言い放ってしまう。

 暫く……

 呆気に取られていたリゼッタであったが、覚悟を決める。


『ルウ様! 行きましょう』


 改めて同行の意思を伝えたのである。 

 

 という理由わけで……

 ルウはエレナとリゼッタを連れて、ヒュドラとの戦いへ向かっているのだ。


 ルウとエレナふたりの顔を見て、リゼッタは思う。

 ヒュドラは怖ろしい怪物だ。

 ラミアを助けるどころか、3人全員、あっさり死ぬかもしれない……と。


 でも良い。

 助かったとはいえ、完全に諦めていた自分の運命だから。

 恩人であるルウは勿論の事、自分の為に泣いてくれたエレナと共に死ぬ……

 それも良いかもしれない……と感じていたから。


 だけど……もしかしたら、ヒュドラに勝てるかもとも思う。

 何故なら、ルウの力はとんでもないと感じるのだ。

 

 エレナはもう慣れているようで、何も言わないが。


 事前に守護者を命じた、くだんの女神から話だけは聞いていたが……

 そもそもこの回廊の、侵入者への攻撃は凄まじい。


 全てを焼き尽くす、高温の猛炎。

 ずたずたに、容赦なく切り裂く疾風。

 瞬時に身も凍らせる、冷たい氷柱の突出。


 しかしルウの魔法障壁は、全ての攻撃を無効化してしまうのだ。


 ルウは、単なる人間なのに……

 自分が会ったどんな神々よりも強大だ………

 「つらつら」と考えたリゼッタが、ふと気配を感じ、背後を見たら……


『え? 翼?』


 何と!

 輝くばかりの純白で、巨大な何枚もの翼が、自分達3人を守るかのように覆っていた。


『な、何?』


 と、リゼッタが吃驚した瞬間、『翼』は「すっ」と消え去っていたのである。


 幻とも見えた巨大な翼……

 それがルウの持つ、絶対防御の象徴、完全な翼ペルフェクトゥスアーラである事を、リゼッタも、そしてエレナも知らなかったのであった。

いつもお読み頂きありがとうございます!

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