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第1,013話 「叶わぬ恋に落ちて⑤」

愛読者の皆様!


『魔法女子学園の助っ人教師』第4巻の発売が決定致しました!

詳細は決まり次第お報せ致します。


書籍版をまだお読みではない方は、第1巻~3巻を宜しくお願い致します。

皆様が応援して下されば、更にまた『次』へと進む事が出来ます。

※店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さい。

 それにしても、大声で叫ぶ守護者ガーディアンの、全長10mもあろうかという体躯は……

 何というおぞましく、凄まじい姿であろうか……

 人間らしき者、そして様々な獣の身体の部位により造られた合成獣キメラなのである。


 しかし……

 ルウとエレナは、とても違和感を覚えてしまう。

 何故ならば、異形の体躯を持つ守護者の人間の顔と胸だけは、まるで芸術品のように美しかったからだ。


「この愚か者ども! 神聖なる女神の神殿へ、よりによって乳繰り合いながら入って来るとは! 不埒ふらちなっ!」


 大きな声で、ルウ達を怒鳴る守護者……

 エレナはすぐに、かつての『同胞』だと分かったようだ。


『ルウ様、あの子……』


 口籠りながら言うエレナの口調に、ルウもすぐ「ピン!」と来たらしい。


『そうか……あいつ、人間ではなく、南の国の妖精(ニンフ)なのか……』


『はい! あの子とは……あまり喋った事がないから良くは知りませんが……顔だけは知っています。確かにニンフです』


 目の前の守護者が……

 昔はニンフだったという面影は、最早、漆黒の瞳を持つ端麗な顔と形の良い真っ白な乳房だけである。

 今の彼女の身体は逞しい獅子であり、その背には巨大な鳥の翼が生えているのだ。


『彼女の……あの姿も、女神の仕業だな』


『はい、多分そうです……可哀そうに……』


 悲しみに染まったエレナの目が、やけに遠い……

 目の前のニンフが、何故このような醜い姿にされたのか、経緯いきさつは分からない。


 しかし、大体想像は付く。


 ニンフは、ほぼ間違いなく、大神に『求愛』されたのだ。

 そして愛し合った……

 神の眷属であるニンフは、大神の求愛を断る事が出来ず、受け入れるしかなかったのだ。


 だが『浮気』がばれ、嫉妬に狂った女神の怒りは、張本人の夫ではなく相手のニンフへ向けられた。

 理不尽で醜い嫉妬の怨念が……ニンフを、このような醜い姿に変えられてしまったのだ。


『彼女は、スフィンクスか……』


『はい……そうです』


 スフィンクス……

 この世界では南の女神の眷属として、敵対する者に対し遣わされた異形の怪物である。

 

 旧き言い伝えによれば……

 交通の要所である山に腰を据え、罪もない旅人を捕えては謎掛けをし、正解を答えられないと……

 容赦なく、喰らっていたという。


『ルウ様……あの子は……あの子には……』


『分かっている……彼女に罪はない』


 ルウはエレナへ向かい、にっこり笑うと、「ずいっ」と前に出たのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 スフィンクスは憎悪に満ちた目で、ルウを見つめていた。


 そもそも……

 スフィンクスという魔物は、平時なら極めて冷静な性格だと伝えられている。

 だが、おかしな事に、目の前のスフィンクスは最初から攻撃的であった。


 多分、神殿を守らせる為……

 女神によって、最初から粗暴で癪の強い性格にされているのだ。


「貴様、殺す! そんな女といちゃつきおって!」


「…………」


 ルウは無言だ。

 そんなルウに対し、スフィンクスは罵倒する。


「殺すぞぉ! この薄汚い人間めぇ!」


「まあ……そう、怒るな。それより、お前へ『謎掛け』をしよう」


 何と!

 ルウが切り出したのは、いつもスフィンクスが旅人に対して行う『所作』であった。

 「人間におちょくられた!」そう受け取ったスフィンクスは激高した。


「ふ、ふざけるなぁっ! それは貴様じゃなく、こちらの役回りだぁ!」


「ははは、安心しろ、先に言っておく。答えが『人間』という問題は出さないから」


「き、貴様ぁ!」


 もう我慢出来ないとばかりに、翼を羽ばたかせ、襲い掛かろうとするスフィンクス。

 すかさず、ルウの魔法が発動した。


鎮静リミッション!」


「ぐあ! 人間の魔法が!? な、何故!」


 スフィンクスには魔法耐性があるらしい。

 普通なら効かない人間の魔法――ルウの魔法により脱力してしまった事に驚愕している。


「落ち着け……」


 穏やかなルウの声で、スフィンクスは、ハッと我に返った。

 スフィンクスは既に……ルウの瞳に囚われていた。

 まるで深淵へ堕ちるように……

 玻璃のような、漆黒の瞳に捕らえられていたのだ。


「…………」


 魂を縛られたように、スフィンクスは、黙り込み……

 沈黙が支配する大広間に、ルウの声だけが響く。


「では問題だ」


「…………」


「海に生まれ、泉に生まれ、山に生まれ、森に生まれ、木に生まれ、谷間に生まれる者とは……誰だ?」


 ルウはそう言うと、「ピン!」と指を鳴らした。

 何かまた、魔法を発動したようだ。


「…………」


 しかしスフィンクスは……唇を噛み締め、何も喋らない……

 片やルウの表情は変わらず、穏やかなままだ。


「どうした? もう喋れる筈だ。こんな問題、お前なら簡単に分かるだろう?」


「…………」


 だが……

 スフィンクスは、答えなかった。


 と、その時。

 いきなりルウとスフィンクスの間に割って入ったのが、エレナである。

 大きな声で、スフィンクスへ答えるよう促す。


「答えてっ!」


「え?」


 エレナの意外ともいえる行動を見て、スフィンクスは、さすがに驚いたらしい。

 そんなスフィンクスを見据え、エレナはきっぱりと言い放つ。


「私はエレナっ! 深き緑の森に生まれたアルセイス、木霊エーコーのエレナよっ!」


 木霊のエレナは森のニンフ、すなわち『アルセイス』である。

 

 エレナはもう、ただ傍観しているのに耐え切れず……

 正気を失っている同胞へ、切ない気持ちを籠めて呼び掛けたのだ。


 呼び掛けたエレナは……泣いていた。

 泣きじゃくっていた……

 大神からの愛と引き換えに、悲惨な呪いを受けた、同胞の辛い悲しみを受け止めて……


 そんなエレナを見つめる、スフィンクスの目にも……

 大粒の涙が、「どっ」と溢れていたのであった。

いつもお読み頂きありがとうございます!

東導の別作品もお願いします。


☆『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』


『アンテナショップとお祭り編』連載中!


https://ncode.syosetu.com/n4411ea/


※殺伐とした都会に疲れ、幼い頃に離れた故郷へ帰ろうとした青年ケンは謎の死を遂げる。15歳の少年として未知の異世界へ転生したケンは、出会った美しい少女達と辺境の田舎村で心の拠り所を探し続ける。


※『魔法女子学園の助っ人教師』とは微妙に違う、

ヴァレンタイン王国における、のんびりスローライフな田舎ワールドです。


☆『真☆信長に学べ! 俺の異世界生き残りライフ』


https://ncode.syosetu.com/n4165cd/


※歴史オタクの気弱な中二病少年が異世界転生して、信長に?

※長らくお待たせしました。

連載再開です。

活動報告でお伝えした通り、大幅加筆修正しまして、第1話から差し替えとなっております。

申し訳ありませんが、ご了解下さい。


両作品とも、本日5月25日朝に『更新』予定です。

何卒宜しくお願い致します。

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