間章・母親のこととおせんべい 1
――でかい。
子供のころは何とも感じなかったが、改めて見るとこの家は大きい。
屋敷といえる家や庭の広さはもとより門のあたりで気おされて立ち尽くしているありさまだ。
地主の家だからこのぐらいは当たり前なんだろうか。田舎だし。
そんなことを思いつつインターホンを押した。
『はい』
数十秒もたたずに家主――正確には、次期家主が出た。
インターホンカメラに顔を合わすようにうろうろと顔を動かしながら名乗る。
「遠藤咲の娘、かおりです」
『ああ、かおちゃんか。少し待っていてね』
声はわたしを懐かしいあだ名で呼んで通信をきる。
さて。いつも取材前にするように、襟元を確認して背筋を伸ばす。
最後にここに来たのがおばあさまの葬式だから…十年も前か。しかも一人で来るのはこれが初めてだ。
「やあ、かおちゃん」
門を開けて出てきたのはダンディな中年男性だった。
わたしの母親の兄だ。
母親の旧姓で、この家の名でもある秦野家次男だ。とりあえずすごい人とだけ。
「伯父さん、お久しぶりです」
「大きくなったね。――それもそうか。立ち話もなんだし入ろう」
「はい」
素直に頷く。
昔から兄とわたし――だけでなく従兄弟たちは健二伯父さんだけには敵わなかった。
やんちゃしていても伯父さんのほほ笑み一発で大人しくなったほどだ。
本能的な恐怖があったというかなんというか。まあ、今は関係のない話だ。
玄関を上がり、庭に面した廊下を歩く。これ掃除大変そうだな。
ふいに伯父さんが立ち止り危うくぶつかりそうになる。
「父さん。かおちゃんがきたよ、ほら、咲の娘」
ふすまを開け個人の部屋らしきところにいるご老人に向かって話しかけたが、ご老人はまるで動かない。
テレビを前に石のように沈黙したままだ。
伯父さんは振り返って私を見、困ったように笑う。
「ごめんね、めったに反応しなくて」
「いえ」
知っている。
おばあさまが死んでからご老人――おじいさまはゆっくりとものを忘れていった、らしい。
間近で見ていないので伝え聞きでしかないが。
けっこうおばあさまに依存していたらしいから、そうなってもおかしくはないのかも。
両方が健在だった時のぼやけた記憶をたどると二人はおしどり夫婦というより、親子みたいだった。おばあさまがおじいさまの手綱握っていたというか。
ぼんやりと考えながら再び歩き始めた伯父さんの背中を追うと、結構近代的な居間に案内された。
足の短いテーブルの前に正座で座る。
あらかじめ沸騰させていたらしいお湯でお茶を入れ、わたしの前に置いてくれた。
それからおせんべいを入れた籠も持ってきて正面に座る。さすがに緊張した。
「それで、なんだっけ――舞花のこと?」
「はい」
すでに連絡はしていた。
拒否されるならば対面した状態ではなく電話のほうが気が楽でもあったし。
断られることもなくこうしてわたしはのこのことここへ来たわけだけど。
「さっそくですけど、舞花さんのことどう思ってたんですか?」
次回もかおちゃんのターン




