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人殺したちのコンクルージョン  作者: 赤柴紫織子
三華宮高校占領事件
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三華宮高校占領事件 3

 破裂音がしたのは一時限目の体育が始まって二十分が経過した頃だった。

 といっても、建物が吹っ飛ぶようなそんな大仰なものではなくクラッカーを鳴らしたような音。

 だから最初は気になんかしていなかった。誰かい何かのいたずらをしたんだろうと、それぐらいで終わった。

 だけど、それが間違えていたと知ったのはすぐのことだった。


 それから数分後、確か一年の数学担当の先生が体育館に飛び込んできたのだ。

 『学校に侵入者が来て、しかも銃器を持っている』と。

 にわかには信じられなかった。なにかのドッキリとかそんなものだとすら思ったぐらいだ。

 とにかくも詳しい状況がつかめないでいるので私たちはその場で待機を命じられ、落ち着かない十数分間を過ごした。

 その間にも、遠くで破裂音が数発鳴り響いていた。


「明日香。ほら、あれ」


 体育館の外を覗いていた桃香が私をつつく。

 見ればグラウンドのフェンスの向こうで白黒の車体に赤いランプがついた車が数台止まっていた。


「警察だ」


「ね。そんなにやばい人たちなのかな」


「多分…。京香は大丈夫かな」


 胸騒ぎ云々はこういうことだったのか。

 今は私のほうが胸騒ぎして仕方がない。

 普通に過ごしていれば京香は今校舎の中だ。侵入してきた変な人たちに遭遇していないといいんだけれど。


 体育教師の坂本先生は見た目と相まって動物園の熊みたいにあたりをうろうろとしていた。

 もしも私たちの安全を守るように言い伝えられていなければ今頃ダッシュで校舎に向かっていただろう。やりかねない。

 他の子たちもひそひそと話し合ったりしたりして不安そうにあたりを見回したりして落ち着きがない。

 むしろ落ち着きがなかったらおかしいか。

 かくいう私も心臓がバカみたいに撥ねていて仕方ない。


「ああ、どうもお疲れ様です。どうなんですか? 侵入者はいったい――」


 体育館に警察の人が入ってくるなり坂本先生は詰め寄って質問攻めした。

 が、それを静止してその人は厳しい表情で言った。


「外に出てください。安全を確保できるところに、すみやかに」


「な――どういうことですか!?」


 顔を曇らせて警察の人は目をそらす。とても言いにくそうに。

 三十人余りの目がじっと彼らに注がれている。


「東校舎の三階から四階を占領されました。爆弾があるとも言っています。ここにいては危険すぎるんです」


「そんな…ただの、侵入者とかじゃあ…」


「…詳しくは後ほど話します。今は生徒を誘導――」


 私は立ち上がって、筆箱と財布を桃香に押し付けた。

 靴紐を強く結びなおして、ジャージのジッパーを首元まで引き上げる。


「明日香!?」


「桃香はみんなと居て! 私ちょっと行ってくる!」


 体育館ばきのまま私は体育館から飛び出した。

 外には何人か警察の人が立っていたけど全部無視して突っ切る。


 東校舎の三階っていったら、京香のいる階じゃないか。

 どうして、どうしてどうして、よりによってそこに行くんだ侵入者が。


「来宮! 危ないから戻れ!」


 坂本先生が後ろから追いすがるように静止の言葉を叫んだ。

 でも、そんなこと今は聞いていられるか。

 京香が――私の片割れが、危ない目に遭っているかもしれないというのに!



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