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人殺したちのコンクルージョン  作者: 赤柴紫織子
三華宮高校占領事件
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三華宮高校占領事件 4

 校舎内で教師や警察の人に見つからないようにしながら、人影のない東校舎の二階まで登る。

 一年も通っていれば頭の中には物陰で出来る死角の場所も入っているのだ。伊達に時折授業抜けているわけじゃないぜ。


 そこまではよかったのだが、それから先へはすすめなくなった。

 顔を布ですっぽりと隠し、黒っぽい服を着た人間が三階に続く踊り廊下に立っていたからだ。

 ギリギリでトイレに隠れることが出来たが、もしも見つかっていたらただじゃすまなかっただろう。高校のトイレ出入り口にはドアがなくて本当に良かった。

 このまま特攻するのは危険すぎる。手に持っているのはよく戦争映画で見るような銃だ。なんで日本にあんなものが、と思わなくもないが今はそんなこと関係ない。

 テロ対策の特殊訓練受けた人とか来るんだろうか。なら早く来てほしい。

 

 万が一でも見つからないようにゆっくりと手洗い場の下のスペースへ移動してぺたりと座り込む。

 さて、どうしたものか。

 時折ぼそぼそと話し声が聞こえるもののよく聞き取れない。

 何か隙を見せてくれたりしないだろうか。でももし見せたとして、何ができる?

 武器らしい武器も持ってきていないし。私は所詮、どこにでもいる女子高生だ。

 せめてバッドでも持ってくればよかった。

 

 ふと携帯を開く。

 桃香から着信三件とメールが二件。

 電話には出られないのでメールボックスを開く。


【どこにいるの?】


【馬鹿なの? なにしてんの?】


 これ完全に怒っているな。

 あとで謝らなくてはいけない。


 【ごめん】とだけ送り、小さく息を吐いた。

 京香にメールしようかとも思ったけど、やめた。何が起こるか分からないし。

 着信音なんかなってしまったら最悪だ。

 何度か桃香からの帰れメールを受け取りながら、私は二時間ほど冷たい床に座っていた。


「なにしてんだろ、私……」


 あまりの自分の無計画さに後悔しかけるが、でも京香を残したままにはいれなかった。

 嫌な胸騒ぎは収まらないままだ。

 次第に桃香は外の実況を始めていた。

大きなバスみたいなものが来たと。他の人の話によれば機動部隊っぽいと。

解決に一歩近づいたかと少しだけ心が軽くなる。


 しばらくして、静かだった階上が突然騒がしくなり、何事かと思い顔を覘かせると一気に生徒が下りてきた。

 さながら雪崩のようだ。

 押されて転んだ子を踏みつぶしながら必死の形相で我先にと下へ行く集団を呆然と眺めた。


 ――何が起きた?


 集団の中に『京香』のクラスメイトを見つけたので咄嗟に捕まえて、つぶされないように人波から離れる。

 何度か抵抗して私が離さないことが分かったのか彼女は私の腕に空いている片手の爪を立て、怒鳴る。


「何よ! 早く逃げなきゃならないっていうのに!」


「京香は!? どこなの!」


 一瞬クラスメイトの顔が引きつった。

 なにかまずいことを聞かれたかというように。


「知らないわよ!」


 それにだまされるほど私は愚かじゃない。


「どうしてみんな解放されたの!? 教えないと離さないから!」


 爪がぎりぎりと皮膚に食い込んでいくが、この程度どうとも思わない。

 私は痛みなんかよく分からなくなっているのだから。


「連中は人質連れて屋上に行ったのよ! 離して!!」


「まだ! 京香を最後に見たのはいつ!」


「あ、あの子は――あの子は、屋上よ!」


「は――?」


 力が緩み、クラスメイトは今がチャンスとばかりに振りほどいて駆け去った。

 人ごみに消えた彼女の背中を見送りながら、頭の中は真っ白に塗られていく。

 掴まれていた腕には五つ、細い傷が出来てて緩やかに血が流れていた。

 どういうこと?

 京香が、人質になったってこと?


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