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喫茶厨房本能寺 -徳川家康の倹約道-  作者: 本能寺


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第2話「猿のタイパと三河の麦飯」

第2話「猿のタイパと三河の麦飯」


第1場:多忙を極めるサルの来訪


夕暮れ時の三河開発・代表室。 本日も蛍光灯を半分だけ消し、薄暗い室内で家康はカタカタと電卓を叩いていた。


その向かいでは、総務の鳥居元忠が呆れ顔で手元の伝票をめくっている。


「社長、本日の節約実績です。昼食は20円引きの納豆巻き、お茶は水道水で沸かした自家製麦茶。……そして、先ほど郵便局へ行くついでに遠回りして、10円安い隣町のスーパーで見切り品の長芋を仕入れてきましたね」


「うむ! 往復20分の歩行による有酸素運動で心肺機能を高めつつ、10円の純利益を獲得した! 運動コストを浮かせながら健康寿命と入金力を同時に伸ばす、極めて合理的な一石二鳥じゃ!」


「時給換算したら完全に赤字ですけどね」


元忠が冷ややかにツッコミを入れた、その時だった。


ドタドタと慌ただしい足音とともに、執務室のドアが勢いよく開いた。


飛び込んできたのは、本能寺のロゴが入ったヨレヨレの黒ポロシャツに、油やタレの染みがついたエプロンを引っ掛けたままの羽柴秀吉であった。


目の下には濃い隈が刻まれている。


秀吉はソファに倒れ込もうとしたものの、腰を落ち着けることができなかった。


両手に抱えた「本日食べる暇もなく溜まりに溜まった自分用の高額デリバリーの紙袋」を足元に放り出し、それでも長時間のワンオペの癖が抜けきらないのか、反射的に袋の口を開けて中身を仕分けようとしては、ポケットで震え続けるスマートフォンを取り出す。


「……秀吉殿、ここは三河開発ですぞ。デリバリーの仕分けは必要ありません」


「分かっとります……分かっとるんですけど、手が勝手に動いてまうんですわ……」


秀吉は画面を伏せ、ようやく深く息を吐いた。


その直後、またピロリンと鋭い通知音が鳴り響いた。


『明日午前7時00分、モーニング用資材の搬入確認』

『午前7時15分、追加席の設営とテイクアウト動線の確認』

『午前7時30分、柴田様統括のデリバリー応援人員の最終調整』


秀吉は画面を見つめ、力なく目を閉じた。


「……明日の予定を確認するだけで、もう帰りたくなってきましたわ」


「まだ今日の仕事が終わっていないのでは?」


「せやから困っとるんです! 家康さーん! お助けをーっ!!」


秀吉はエプロンをバタつかせながら応接ソファに倒れ込み、持参した900円の高級エナジードリンクを一気にあおった。


「聞いてください家康さん! 稼いでも稼いでも、金は増えとるはずなのに、生活が一向に楽にならんのですわ!」


第2場:外食課金地獄と「タイム・イズ・マネー」


「生活が楽にならん、ですと? 本能寺の変以降、貴方の見事な客席捌きと外販事業の拡大は大成功し、信長殿から直接、破格のボーナスを受け取っているはずですが」


「そうなんです! 毎月200万も300万もドカンともらって貯金は増えとるのに、通帳の数字と反比例して生活は地獄なんですわ!」


秀吉はスマートフォンの家計簿アプリを握りしめ、身を乗り出した。


「毎月40万円以上も払っとるのに、飯は適当にかき込むだけ。家に帰れば寝るだけ。最近は立ちくらみまで起こす始末ですわ! 金を使って時間を買っとるはずなのに、買えた時間は全部仕事に消えて、寧々ちゃんと過ごす時間も身体の余裕も増えとらんのです!」


「……支出に見合う成果が得られていない、と」


元忠の言葉に、家康の目がギラリと光った。


「詳しく内訳を見せなさい」


秀吉が差し出した画面には、凄まじい数字が並んでいた。


高級デリバリー朝食(配達料・手数料込):2,400円

移動中のタクシー内でかき込む有名店の特上弁当:3,500円

深夜の仕込み明けに頼む高級仕出し弁当:8,000円


「これは、ある日の注文明細ですわ! 毎日ここまで贅沢してるわけやないんですが……食事やデリバリーに月約22万円。洗濯や部屋の掃除を頼む家事代行・買い物代行サービスに月10万円。さらに眠気覚ましに流し込むこの900円のエナジードリンク代が、1日3本で月約8万1,000円……! 合計で毎月40万円以上が消えていっとるんです!」


「……1ヶ月の食事と生活支援に、40万円以上……!?」


家康の喉がゴクリと鳴った。額に青筋が浮かぶ。


「貴方、正気ですか!? 40万円あったら、毎月オルカンに全額突っ込んで年利5%で30年間運用できたと仮定すれば、税金や手数料を考慮しない机上計算でも、約3億3,000万円の純資産に化けるのですよッ!!」


「そんなこと言うても無理ですわッ!」


秀吉はエプロンの裾を握りしめ、悲痛な叫びを上げた。


「今の本能寺を見てください! 信長社長は特注耐熱鉄板で長可君の修行を加速させ、自分は奥で新しい焼き物の試作に没頭しとる! 厨房の精密機械である一益さんまで、柴田殿のデリバリー応援に駆り出されとる! そのぶん現場の客席からテイクアウトの受け渡し、スタッフの配置まで、実質的に俺がホール統括としてワンオペで回さなアカン始末なんですわ! 飯を作る時間なんて1分もありまへん!」


秀吉はポロシャツの襟元を緩め、絞り出すように言った。


「俺……今年、寧々ちゃんと結婚したばかりなんですわ。新婚やのに、家には寝に帰るだけ。一緒に温かい飯を食うどころか、顔を合わせる時間すら作れん……! 洗濯も掃除も代行業者に丸投げせんと、家の中がゴミ屋敷になってまうんです!」


「新婚生活の時間すら削って……」


元忠が同情の眼差しを向けると、秀吉は拳を握りしめた。


「朝は5時に店へ飛び込み、夜は日付が変わるまで翌日の予約調整! 買い物に行って、包丁握って、火加減見て、後片付けまでしてたら1時間は吹き飛ぶ! 俺が1時間かけて料理を作るより、その時間で黄金茶室で一組でも多く接客した方がええんです! 特別な祝い事で喜んでもらえれば、その後も人生の節目ごとに家族で通ってくれる! 1時間で浮く数百円より、何倍もの価値を生む接客に全力を注ぐ方が、どう考えても得でしょうが! 俺は遊ぶために使っとるんやない! 『時間を買う』ための設備投資なんですわッ!!」


元忠が「なるほど……。秀吉さんの時間単価から逆算すれば、自炊にかける時間をすべて外注して接客に集中する方が、トータルの稼ぎは多くなるという理屈ですね」と頷いた。


「せやろ元忠君! わかってくれるか!」


第3場:家康の算盤――「タイパの罠と健康の減価償却」


「……秀吉殿。時間を買うという考え方そのものは、間違っておらん」


「……へ?」


意外な家康の肯定に、秀吉が目を白黒させた。 家康は静かに算盤を引き寄せ、パチリと玉を弾いた。


「家事を外注し、食事を届けてもらい、浮いた時間で仕事を進める。それで利益が増えるなら、合理的な選択になり得る。問題は、その時間をどう使っておるかじゃ!」


家康は、秀吉の手に握られた空のエナジードリンクをビシッと指さした。


「買った時間をすべて仕事に注ぎ込み、睡眠を削り、食事の内容も確かめずに急いで胃に流し込み、身体が悲鳴を上げても働き続ける。それでは時間を買ったのではない。休息を削って、疲労を先送りしているだけじゃ!」


「う……!」


「食事の外注費が高いことだけが問題ではない。高い金を払っているのに、食事の質も睡眠も改善せず、寧々ちゃんとの時間まで失っておる。ならば、その支出は本当に目的を果たしておるのか? 貴方が月40万円を投じて1日1時間を買い、その時間で毎月何十万円もの追加利益を生み出せたとしても――稼ぐエンジンである身体そのものが壊れてしまえば、時間を買った投資など長続きせん!」


「うぐっ……!」


「時間を買うことと、身体を壊すまで働き続けることは全くの別問題ですぞ! 健康を損なえば、仕事を続けられぬ期間が生まれる。失うのは目先の売上だけではない。積み上げるはずだった資産も、稼いだ金を家族と楽しむ時間もじゃ! 投資の利益ばかり計算して、稼ぐ本人の持続可能性――【健康の減価償却】を計算に入れぬとは、片手落ちもいいところじゃ!!」


ドォォォン……と雷鳴が落ちたかのように、秀吉の脳天に家康の言葉が突き刺さった。


「う……うわああああっ! 言われてみれば、最近ほんまに胃がもたれて肌もボロボロや……! 先週もホールで立ちくらみして倒れそうになった……!」


「そうでしょう! だからこそ、己の身体に入れる燃料を自ら管理し、余計なコストを削ぎ落とす! これぞ人生の最大化エンジン!」


家康の熱弁に、秀吉は青ざめた顔で縋り付いた。


「で、でも家康さん! 理屈はわかりましたけど、現実問題として俺には刻む時間も煮る時間もありまへん! どうすればええんですか!?」


「フッ……任せなさい」


家康の口元に、不敵な笑みが浮かんだ。


「調理時間を最小限に抑え、コストを極限まで削り、健康寿命を極限まで延ばす――三河に伝わる究極のタイパ自炊術を、わしが貴方に伝授して進ぜよう!」


第4場:三河式「限界タイパ弁当」の提案


翌朝。午前7時00分。


本能寺のバックヤードに、たすき掛けに前掛けを締めた家康が現れた。


持参したタッパーウェアを調理台の上にズラリと並べる。


「おい家康……貴様、朝っぱらから勝手に人の厨房に入り込んで何をしている?」


奥のオーブンから顔を出した信長が、怪訝そうに腕を組んだ。


「信長殿、邪魔立ては無用。本日は秀吉殿の壊滅した食生活と資産形成を救済するための実地講習に参ったのです」


そこへ、開店準備のポロシャツとエプロン姿の秀吉が駆け寄ってくる。


スマートフォンを握りしめ、青ざめた顔で時計を確認した。


「家康さん! 今から資材搬入の確認なんですわ! そのあと15分で追加席の設営確認もあるんです! そのタッパーを並べる時間があるなら、俺の予定表を見てください!」


「慌てるでない! これこそが、わしが毎週実践している【完全自炊パッケージ】じゃ!」


家康は意に介さず、胸を張ってタッパーの蓋をバッと開けた。


中から現れたのは―― 「……なんですか、これ。ただの【冷えた麦飯】と【茹でたブロッコリー】と【鶏胸肉の塩茹で】……あと、塩分補給用の【干からびた梅干し】が1粒?」 秀吉が目を点にした。


「侮るなかれ! 麦飯30円、鶏胸肉100グラムで88円、ブロッコリー20円、梅干し10円。合計【148円】じゃ!」


「ひゃ、148円……!?」


「日曜日にまとめて炊飯と加熱を済ませ、1食分ずつ小分けして冷凍する。これは、その作り置きの中から秀吉殿用に取り分けておいたものじゃ! 前夜から冷蔵庫で解凍し、朝はカバンに詰めるだけ。保冷剤を添え、食べるまでの温度管理も怠らん! 炊飯や加熱の待ち時間を除けば、わしが実際に手を動かす時間は日曜夜の20分のみ! 朝の実質拘束時間は【1分】じゃ!」


「……弁当の説明なのに、ずいぶん管理が徹底してますね」


元忠が呟くと、家康は胸を張った。


「当然じゃ! 食中毒で1日寝込めば、節約どころか時間も入金力も失うからな! もちろん、これだけで一生の栄養が完璧などとは言わん。他の食事で不足分を補えばよい!」


「家康さん、そこまで考えてるんですね……。でも、味は?」


「味は……改善の余地がある」


「そこは認めるんかい!」


そこへ、背後から底冷えするような殺気が立ち込めた。


「……おい、家康」


信長が鬼のような形相で歩み寄ってきた。


その手には、松永久秀考案の特注耐熱鉄板で完璧に焼き上げられた、黄金色のフレンチトーストが握られている。


「秀吉は毎日、店のために走り回っておる。だからこそ、飯くらいは心から美味いと思えるものを食わせてやりたい。それなのに……」


信長は家康のタッパーをギロリと睨みつけた。


「栄養と原価だけを並べて、食う人間の気持ちをどこへ置いてきたッ!? 客が金を払うのは、カロリーだけを買うためではないぞ。香りを楽しみ、味に驚き、食べ終えたあとに『明日もここへ来たい』と思う。その感動と喜びこそが店の価値となり、次の売上を生むのだ! 飯とは生きる喜びそのもの! 人の心を動かし、次の仕事への活力を生み出す魂の燃料だ! それを……家畜の飼料にも劣る生気のない灰色の餌を、俺の右腕に食わせようというのかッ!?」


信長はフレンチトーストを秀吉の目の前に突きつけた。


「食ってみろ、秀吉」


秀吉は一口かじった。


表面の香ばしい焦がしバター、じっくり染み込んだ卵とミルクのコクが口いっぱいに広がる。


「……っ! う、うまい……! 気持ちまで一気に明るくなりますわ……!」


秀吉の目が、パァァッと輝いた。


「せや! 俺は美味いもんを食ってテンション上げて、その馬力で稼ぐのが生きがいなんや! 麦飯と茹で鶏で月何十万浮かせて長生きしたところで、毎日の飯が砂を噛むようやったら何のために働いとるかわかりまへん! 寧々ちゃんにも『今日は美味いもん食えたか?』って笑って話せる生活がしたいんですわ!」


「な……秀吉殿! 目先の快楽に流されては――!」


秀吉はふと壁の時計を見て、慌ててエプロンの紐を締め直した。


「あかん、もう資材搬入の時間や! 家康さん、話は分かりましたけど、俺はこのあと客席とテイクアウトの確認に戻らな……!」


「待てい! まだ弁当の投資効率について説明が終わっておらん!」


「そこを最後まで聞いとったら、昼飯どころか朝の営業準備まで破綻してしまいますわ!」


秀吉はフレンチトーストをもう一口かじり、ふと家康の弁当に目を向けた。


「……まあ、食事と働き方を考え直すきっかけにはなりましたわ。あの弁当を毎日食うのは無理やけど!」


「ならば、わしの教えを実践する気になったのですな!」


「そこまでは言うてません! でも、社長、俺やっぱり昼飯はあの五大加圧野菜ソースの豚角煮弁当をテイクアウトして食いますわ! しっかり美味いもん食うて、午後からは頭使ってスマートに店を回してみせます!」


「ガハハハ! よし、食え秀吉! ボーナスに色をつけてやる!」


「ありがたいですわ、社長ーーッ!! ……せや社長、午後からは俺一人で抱え込まんと、応援の人らにもガンガン仕事振っていきますわ! 混雑時のシフトのことも、後で相談乗ってくださいな!」


「うむ! それでこそ俺の右腕だ!」


「……わしの弁当の話は、どこへ行ったのじゃ?」


家康の悲痛な呟きが、バックヤードに虚しく響き渡った。


二人の料理狂と商売狂の熱気から完全に弾き出された家康は、タッパーを抱えたまま、静かに立ち尽くしていた。


(……ダメだ。この店の人種は、全員が『合理的な算盤』の外部で生きている……!)


第5場:薄暗き部屋の勝者と「原価148円の昼食」


3週間後。


三河開発の社長室。


本日も蛍光灯を半分消した薄暗い部屋で、家康は60万円の人間工学チェアに深々と腰掛けていた。


腰痛による稼働率低下を防ぐための必要経費であり、家康にとってそこに節約の余地は微塵もない。


元忠が、温かい番茶を差し出す。


「社長、秀吉さんからメッセージが届いてますよ」 画面には、生き生きとした長文が並んでいた。


『家康さん、あの話を聞いてから、食事だけやなく働き方も見直しましたわ! 仕入れ業者と提携して、栄養バランスの取れた特別弁当を店に届けてもらうようにしたんです』


『それと信長社長に相談して、昼の混雑時だけでもホールの応援人員を固定してもらいました。俺が全部抱え込まんでも回せる仕組みを作ったんですわ!』


『栄養士監修の特別弁当への完全移行や、家事代行を毎日頼むように枠を広げた分、俺個人の食事・家事支援費は月50万円ほどになりましたけど、あんなに流し込んでいたエナジードリンク代がほぼゼロになり、身体のダルさも劇的に消えましたわ。夜は寧々ちゃんとゆっくり話す時間が戻ってきました。立ちくらみも減って、仕事中のミスも少なくなった。売上も少しずつ伸びています!』


家康は画面を見つめ、忌々しそうに吐き捨てた。


「……支出が増えておるではないか。本末転倒じゃ」


「でも、秀吉さんはお金を使った分、健康と家庭の時間を取り戻したんでしょう?」


元忠は苦笑した。


「全部を節約することが、必ずしも一番得とは限りませんからね」


元忠の視線が、家康の机の上に落ちる。


そこには、家康が日曜日に作り置きし、前夜から冷蔵庫で解凍して今朝持参した【限界タイパ弁当】が鎮座していた。


あの日、秀吉にも勧めたものと全く同じ内容だ。


冷えた麦飯。

薄い塩味の鶏胸肉100グラム。

色の褪せたブロッコリー。


「……で、秀吉さんに断られたのと同じお弁当を、今日も食べるんですね」


「食材を無駄なく消費するのは当然じゃ!」


家康は箸を割った。


「外食を回避した昼食代800円から、弁当の原価148円を差し引いて652円。そこに昨日の見切り品長芋の値引き10円と、今朝の麦茶持参による購入回避額130円を加えれば……本日の節約実績は792円じゃ!」


「長芋と麦茶、明日も同じように節約できるとは限りませんけどね」


「黙れ! 実績は実績じゃ!」


家康は家計簿アプリに数字を打ち込んだ。


「ただし、長期運用の計算には、毎日続けられる弁当の節約だけを使おう。外食との差額652円を毎月30日分、継続して投資できると仮定すれば……月々1万9,560円! これを年率5%で30年間運用できたと仮定すれば、税・手数料を除く机上計算で、積立資産は約1,600万円に達するのじゃ!」


「結局、そこは細かいんですね……」


元忠の呆れ声をBGMに、家康は満足げに目を細め、パサつく麦飯を青汁で豪快に流し込んだ。


その時、暗闇の中から元忠のボソリとした声が響いた。


「……社長。その冷たくて味のしない弁当を暗闇で一人で噛み締めている時間、人間としての幸福度はいくら減価償却されているんですか?」


ピクリ、と家康の箸が止まった。


「……精神の健康も、投資効率に含めるべきということか」


「いや、普通に明かりをつけて食べたらどうです?」


カチカチカチカチッ――バチィィィィィンッッ!!


次の瞬間、社長室中のすべての蛍光灯が一斉に点灯し、昼間のような爆光が部屋を満たした!


「精神の健康も最優先じゃああああッ!! 照度を確保し、快適な執務環境を整えるのじゃあああッ!!」


「だったら最初から半分消さないでくださいよォォォッ!!」


元忠の絶叫が木霊する中、家康は背筋をピシッと伸ばし、輝く光の下で、148円の【限界タイパ弁当】を満足げに咀嚼し続けるのであった。



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