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終末後遺症  作者: Anzsake
20/21

カリン:流れ

流出の流れがほとんど見えなくなる。ホルンに目配せをするとガスマスクを外す。


「ハチ、外していいよ」


ハチもガスマスクを外して唸る。まだ街っぽいけど、旧市街は抜けた。


「あー空気空気。というか口元が蒸れるし、服は汚ぇし……」


「お疲れ様」


ハチは急に姿勢を正す。


「カリンも、ありがとうな」


「どういたしまして」


なんだかこそばゆい。でも、ハチとホルンが話していると、少しだけ羨ましい気持ちはあった。

僕がもっと知識があれば、会話に参加出来るんだろうか。妬みと言うと大袈裟だけど、完全に否定は出来ない。


「どっか川無いの?水浴びしようぜ」


「あるんじゃない?でももう少し離れないと、化け物来るかもよ?」


ホルンの言葉に乗ってみる。


「来ないとは思うけど」


「茶化しただけ」


やっぱり難しい。


「おっ、あそこはどうだ?」


ハチが指さす。建物の間に川があった。戦車が通れそうな土手を下って止める。

川は綺麗で、それなりに広い。深さも無さそうだが少し勢いはある。


「丁度いいかも」


ホルンが言う。僕も頷く。


「よっしゃ!早速この血を流してくるぜぇ!!」


「あ、ハチ……」


ハチが駆け出す。止めようと手を伸ばしたが届かなかった。


「ぎゃぁぁぁああ!!」


 腿まで入ったハチが固まって悶絶している。さっき撃たれた傷は、ジェルで止血していただけで、まだ塞いでない。


「あいつ馬鹿なの?それとも、もう痛くなかった訳?」


川に入り、ハチの手を引いて岸に戻る。


「ハチ、そのシャツはもう捨てな。血を落とすのは厄介だから」


「そうだな。そうするか」


ガチガチな顔でハチが言う。ホルンが医療箱を取り出す。


「カリン、休んでていいよ」


「え、いや。僕もや……」


そこまで言って思い出す。


「うん、ありがとう。洗車だけはやっとくよ」


「お願い」


土手の戦車の荷台からバケツと掃除道具を取り出す。川まで降りて水を汲み、戦車の外装に掛けて、血で汚れたところはブラシで擦る。

狙撃手にやられて剥げた部分を見つけた。助手席のシートにも穴が空いている。装甲を開けて中を確認するが、基部に当たった訳では無いらしい。シートの裏の小さな隙間に、ペレットが挟まっている。取り出して捨てる。


「カリン、俺にもやらせてくれ。女の水浴びだから追い出された。それはそれで危なくないか?」


「あー」


ハチが来た。服を脱いで、荷台から新しいシャツを取り出して着る。

別に、振り返って数歩出れば見える位置ではある。


「ありがとう。じゃあこれ」


ブラシを渡し、外装の掃除はハチに任せ、僕は基部のメンテナンスをする。


「戦車の洗車……片手で出来るもんなのか?」


「まぁ、慣れたかな」


「まぁ、これからは俺と言う腕が出来たから、いつでも頼ってくれよ!」


「そうさせてもらうよ」


一通り磨き、水を掛ける。布で拭き上げる。元々くすんだ色の戦車は、洗車をしても実感は湧きにくい。


「なんか変わったか?」


「まぁ、細かなところは」


それでも、胞子を付けて走り回るのは悪いから、必要なことだ。

出発からまだ2日目。洗濯の必要は無い。暑い。ジャケットを脱いで荷台に座る。ホルンとミズキが戻ってくる。


「終わった?」


「終わったよ」


「ありがと」


「よし!じゃあ次は俺らが水浴びだな」


「そうだね」


ハチが盛り上がって川に飛び出す。ミズキがそれを岸で見つめる。僕の隣にホルンが座る。


「……どうする?」


「何が?」


「2人。本当に連れてく?」


「別に、いいんじゃない?なんで?」


「なんか、行きずりみたいな感じじゃん?まだ2人の事、あんまりよく分かってないし」


僕はてっきり、ホルンはもう2人と打ち解けていると思っているが、ホルン的には違うらしい。ミズキに優しく接し、ハチと楽しそうに話す。別に、嫉妬じゃないけど。

でも上手く馴染めてない自分が、ただの守ってくれるレーダーみたいになっている気がしている。


「……それでも、こうして誰かと一緒に動くって、久しぶりだから。楽しいんだ」


「まぁ、カリンが良いならいいけど」


「ホルンこそ、やりたい事があったら言ってね」


「分かってる」


僕が回収員から、師匠の元から逃げ出した時、ホルンが付いてきた。その理由は今も聞けないでいる。歳は近かったけど、当時から密接な付き合いは無かったはずだ。

この旅の何処かで聞けるんだろうか。彼女は、どこに向かっているんだろう。


ハチの絶叫が聞こえた。立ち上がってマフラーの位置を直し、水浴びに行く。

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