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死んでていいから生きててほしい  作者: やりいかのフリット
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人の心は裏腹模様 V

「どうだった?」

「うぉ⁉︎いきなり喋るな!驚くだろ‼︎」

「まったくー、君は臆病だねぇ。そのぐらいのことでビビるなんて」

「うるせぇ!色んな事が起こりすぎて気が立ってんだよ!」

 俺は窓の外を覗く。するともう委員長はどこかにいなくなってしまっていた。

「はぁ……なんだったんだ今のは」

 心臓が止まるかと思った……。まさかいきなり委員長に告白されようとは……。

「ねぇねぇどうだった〜?」

 神倉はそう言って俺に迫ってくる。

「うるせぇ静かにしててくれ。今、超悩んでるんだよ」

「え〜つまんないなぁ……せっかく僕がこの神に選ばれし力ーーゴッドネス・ディスソルーションを披露してあげたっていうのにーー」

 はぁぁ〜、と神倉は大きめのため息をついた。

「……ん?なぁ神倉」

「どうしたんだい?」

「もしかしてさ、今の委員長が告白したヤツーーお前の仕業?」

「そうだよ?」

 あっさりと神倉は答えた。

「どうやって?」

「だからさっきも言ったじゃないか。ゴッドネス・ディスソルーションだって」

 いや、分からなすぎる……。

「そのゴッドなんとか……ってのはどんな力なんだ?」

「おっ!やっと興味を持ってくれたね!いいでしょう説明しましょう!」

 神倉は立ち上がると、得意げな顔で語り始めた。

「ゴッドネス・ディスソルーションとは、僕が神から与えられた力の事で、なんと!10秒程人の体を乗っ取ることができるんです‼︎どう?すごいでしょ⁉︎」

 なるほど……そういうことか。

 さっきの現象もあるし、こいつが嘘を言っているとは思えないーーこいつは()()()()()

「神倉……お前、死んだだろ」

 俺はストレートにそう口にした。多分、こいつにはその方が都合がいい。

「え、えぇ⁉︎何でわかったの⁉︎」

 誤魔化すでもなく、いきなり正解だと教えてくれるとは、単純だが分かりやすくていい。

「お前のその異能力、それは死んだ奴にしか扱えないものだからだ。神倉、お前はどうして死んだんだ?」

「それは……僕の超楽しみにしてた【キングダムハート3】が発売されたから、ぶっ続けでプレイしてたら、いつのまにか、死んでたみたい。うん、なんか呼吸止まってた動画スマホに保存されてたし……」

「な、なんだそれ……あまりにもしょうもなさすぎる……」

 “通り魔に殺された”や美空みたく“交通事故で殺された”というのが大それた理由だとは言わないが……“ゲームのやり過ぎで死ぬ”って……いくらなんでも、それは理由が小さすぎる……。

 はぁ……と大きめなため息をついて頭を抱えた。

 だが、こんなことで一喜一憂してる場合じゃない。とりあえず話をすすめないと……。

「なぁ神倉、お前その生き返った時に近くに何か書いてある紙とかなかったか?」

「あ!あったねあったね、ルーズリーフに“良くご飯食べて、毎日お風呂に入って、ちゃんとお布団で寝るんだよ!”って書いてあったよ」

 なんだその会社から帰ってきたらお母さんがこっそり部屋を片付けに来てくれてて、ラップのされたご飯と共に置いてありそうな内容の置き手紙は……。

「それと〜……」と言って神倉は話を続けた。

「君の寿命はあと1年だから、長く生きたかったら他の人殺せばイケるから、必要だったら頑張って!って書いてあったね」

 何の違和感もなく、神倉はそんな事を口にした。

 屍者ーー俺と一緒なのはこれで確定か。

「なぁ神倉……お前それを見て、人を殺したか?」

 単調に、包み隠さずそう問いかける。

 もし、こいつが人を殺めていた場合、美空の時のように、俺はこいつを止めなきゃならない。罪のない人を、死んだ俺たちが殺そうなんて、そんな虫のいい話が通っていいわけがない。

「いいや、殺してないよ?だって、怖いじゃないか、人を殺すなんて。きっとそれが気になってゲームに集中出来なくなっちゃうよ」

 よかった。コイツは主張こそ少しおかしいが、そこらへんの倫理観に関しては問題がなさそうだ。

 俺はほっと胸を撫で下ろした。

「にしても〜、なんでそんな事を気にするんだい?君にとって、重要な伏線だったりするわけかい?」

「いや、そういうわけじゃないんだ。ただ、お前が屍者かどうかを確かめてただけだ」

 俺のその言葉に小首を傾げる神倉に、俺は屍者の存在や、生命(ライフ)、そして俺が通り魔に殺された事を話した。



「アイエー⁉︎ということは、君も僕と同じ選ばれしものってわけ⁉︎」

 説明が終わるなり、神倉はこの奇怪な名称に興奮が収まらないようで鼻息荒く俺に尋ねてくる。

「まぁ……有り体に言えば、そういうことになるな」

 たしかに、誰かに選ばれて屍者にされてるわけだし。

「なーるほどねー‼︎ってことは、君と僕は、お互いに同じ境遇にいる兄弟ーーブラザーってわけだ‼︎」

「ブラザーかどうかはよくわからないが、同じ境遇なのは間違いないな」

「おっほー‼︎すごい、これはすごい‼︎選ばれしものが二人、あぁ、伝説が始まるぞー‼︎」

 神倉は有頂天なのか、奇声を発して部屋中を跳ねまわって喜んでいた。

 そんな神倉を眺めていると、ふと、夕暮れに染まった空が窓から見えた。

 もうこんな時間になってたのか……そろそろ作道家に行く時間だなーー玲美たちが待ってる。

「なぁ、神倉」

 俺はおもむろにそう口を開いた。

「俺はそろそろ帰らないと行けなくてな、一旦この話は保留だ。とりあえず、本来の目的の“お前が学校に来るのか来ないのか”それだけをはっきりしてもらいたい」

「行くよ?」

「え?」

 あまりのあっさりとした解答に、俺は思わず反射的に聞き返してしまった。

「だからーー行くよ、学校」

「な、なして?」

 今まで学校に一度たりとも来なかったような奴が、こんなにもあっさり学校に来るものなのか?

「だって、選ばれしもの同士が行動を共にするのは物語の鉄則だよ?そうしないと物語進まないじゃないか!」

 なるほど……そういう理由な。俺はこいつの妄想ワールドの登場人物の一人に入れられちまったってわけか……。



 xxx



「で!で!どうだった?昨日神倉君に会ってきたんでしょ?元気してた?」

 翌朝、教室に着くなり彩音が無駄にデカイ胸を俺の机に押し付けながら

「あぁ、タダのサボりだったよ。元気にしてた。超元気」

「へぇ〜そうなんだ。それで?文化祭には参加してくれるって?」

「そう言ってたな。文化祭だけじゃなくて、普通に学校に通ってくれるってよ」

「えっ⁉︎そうなの?2年間学校来なかった子が急に?一体どんなマジックをしたっていうの歩夢」

「ふふっ、俺のカウンセリング能力は限界突破してるのさ」

 俺のその発言に彩音は「はぁ…またそんなことを」と呆れていたが、優宇は目をキラキラとさせて俺を尊敬の眼差しで見ていた。

 ふむ、あとで優宇にはジュースでも奢ってやろうかな。

 と、各々雑談をしている教室に、ガラガラと音を立て神倉が入ってきた。

「ハロハロリーナーーー‼︎」

 教室中の視線が一気に神倉に集まる。

 はぁ…あいつ、普通に入ってくるということは出来ないのか…。初対面から宮鷹由莉奈のライブ挨拶は流石にないだろ…。

『ちょ…なにアイツ…』,『ないわー』という声が教室のあちこちから訊こえてくる――と思ったが、そんなことは杞憂だった。

「ハロハロリーナ〜」

「ハロリ〜」

 流石今をときめく大人気アイドル宮鷹由莉奈、その独特な挨拶は既に一般大衆にも浸透している。

「ロリーナ、君は――神倉君かな?」

 ハロハロリーナをそんな自己アレンジして活用ーー⁉︎委員長でも宮鷹由莉奈好きなんだな。なんか意外だ。そういうのは『俗物だ』と言って触れないタイプかと思っていた。

「イグザクトリー、正に僕こそが神倉で間違い無いんだぜお嬢さん」

 おいおい命知らずだな。委員長にお嬢さんとかぶん殴られるぞ…。

「ふむ、神倉くん。よく来てくれた、歓迎しよう。私はこのクラスの委員長を務めている委員長だ。よろしく頼む」

「うっそー!殴られるどころか罵倒すらもされないなんて!」

 思わず声に出てしまうレベルに驚いた。

「うるさいぞ二階堂、次変な事を口走ればその命、無いものと考えろ」

「めっちゃ辛辣…」

 昨日あんなことがあったばかりの今日だが、委員長の俺に対する態度は全く変わってはいなかった。

「なぁ委員長」

「なんだ二階堂?2限の数学の教科書ならちゃんと貸し出す用のも持ってきているから遠慮なく使ってくれていいぞ」

 やれやれと言ったような口調で、委員長は普通に優しい言葉をかけてくれた。

「いや、そういうことじゃなくーーお前、昨日のこと覚えてたりしないのか?」

「昨日ーー?昨日の事でいいなら事細かに覚えているが……一体何時頃のが知りたいんだ?」

「17時ごろだな」

「17時か……たしかその時間は下校していて、ちょうど夢遊病の様なモノにかかってしまって、一瞬気を失っていたな」

 なるほど、記憶はないが、意識がなくなったという感覚はあるわけか……。

「それがどうかしたのか?」

「いや、別にいいんだ。気にしないでくれ」

 不服そうな委員長が俺に問いかけようとするのと、扉を開け、星空先生が入ってくるのはほぼ同時だった。

「おーいホームルームはじめんぞ〜。席つかないヤツは流星キックな〜」

 星空先生は誰もクスリとも笑わないのに決してやめないジョークと共に教室へと入った。

「ん……?君はーー」

 星空先生は教室に入ると、目の前に立つ神倉に視線を向けた。

 まぁ無理もない。一度も高校に来た事ないヤツなんて、そりゃわからないよな。

「神倉です。マイティチャー」

「おぉ神倉か。名簿の写真よりイケメンで気付かなかったよ。席はそこの一番右奥を使ってくれ」

「はい!ユアマジェスティー!」

 頭を下げると高城は俺の後ろの席へと向かってくる。

 にしても先生、相変わらず対応力がすげぇな。見習うべきところだ。

「それじゃーーいつも通りホームルームで言うことは特にない。今日も他の先生方に迷惑をかけないで、しっかりと勉強しろ。それだけだ。それじゃかいさーん」

 そう言うと星空先生は教室を後にした。

「あっ、そういえば1限の物理なんだが文化祭の準備に使っていいぞ〜。私はその間にちょっとやることがあるんでな。それじゃ、いい子にしてろよ〜」

 そう言い残し、星空先生は教室を後にした。

「やぁブラザー‼︎まさか席が君の後ろなんて、これは運命だね!やはり選ばれし者同士は引かれ合うものなんだね!」

 自由時間になるなり、ニコニコと笑みを浮かべ神倉は俺に話しかけてきた。

「選ばれし物、ね……昨日の出会い頭のモブ扱いから随分と変わったもんだな……」

「はっはっは!それは〜それ、これは〜これだからね!」

 はぁ…さいですか…。

「選ばれしものっておもしろ〜い!何に選ばれてるの?」

 彩音が目をキラキラさせながらこちらに近づいてくる。

 間違えない。あれは“新しいおもちゃを見つけた”時の目だ。

「ふふっ見たところ二階堂くんのフレンド、ならば教えてあげないわけにはいかない。いいだろう教えよう!僕と二階堂くんは――」

「はいそこまで〜教室で厨二病はやめてくださ〜い」

 俺は両手で神倉の口をふさぐ。

「ふぁにふぁふふはねひはいほうふん!(何をするの二階堂くん!変態!)」

「いやいやいくら友達でもおいそれとそんなバラしちゃダメだろ」

 俺は小声で神倉にだけ聞こえる声で話す。

 まさかこんな簡単に話そうとするとわ。しかも大声で…。

「へもぉ…(でもぉ…私ぃ…)」

「でもじゃない、いいか、能力の事をバラしたらお前は宮鷹由莉奈のライブを見れない位置の仕事にするぞ」

「ほへぇーほへははは!(ふえぇ〜それは嫌だよぅ)」

「んじゃ…わかったな?」

 俺のその問いかけに神倉はブンブンと首を縦に降る。はぁ…疲れるヤツだ。

 この先の学校生活、こいつといると不安でしかない……。

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