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死んでていいから生きててほしい  作者: やりいかのフリット
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人の心は裏腹模様 Ⅲ

前回のあらすじ

座禅の投票数が減った。

 そして黒板からTHE座禅の得票数が見る見るうちに減っていき、最終的に【THE座禅】,【宮鷹由莉奈の手伝い】,【おいでよ!メイドの森2】は順に得票数が14,14,1となり、座禅と宮鷹由莉奈が並ぶ形となった。

「はぁ…んじゃあ仕切り直しだーー」

 ルナちゃん先生は箱から30枚目ーー最後の投票用紙を取り出すーー直前に、ルナちゃん先生が首からかけている職員用の携帯が鳴った。

「ん?なんだこんな時に…」

 懐かしのガラパゴスケータイをパカっと開く姿が妙に懐かしかった。

 はぁ…やっぱりカワイイのはスマホなんかよりガラケーだよねぇ…アクセントとして電波通ってなくてもいいから持っとこっかなぁ。

「あぁ、私だが……ふむ…なるほど…それはすごい…いやいや、悪いのは君じゃない、では…」

 パタンッと携帯を閉じるとルナちゃん先生はこちらに向き直る。

「よし、仕切り直すぞ!」

 なんだったんだ今の電話…まぁ、いいか。

「え〜と…次のはーー」

 これがTHE座禅であれば15票獲得で私の勝ち。私は…私の運命力にかける‼︎

「えーっと、次は…」

 ゴクリ、と息を呑み、次の言葉を待った。

「座禅だな」

 そして、THE座禅の文字の下に正の字が3つ並びーー私の勝利を表した。

「やったぁー‼︎」

 私は堪えきれず椅子から立ち上がると、拳を天に突き上げて喜んだ。

 だれに見られようと構うものか!私はあゆっちに、勝ったんだ‼︎

「ーーおいおい、気が早いんじゃないか?」

 ガラガラと勢いよく扉を開け放たれ、二階堂歩夢が日差しを背にして教室へと帰ってきた。

「あゆっち…随分な登場だね。トイレで脳みそも出しちゃった?」

「ははっ、お前こそ胸に栄養が行き過ぎてるせいでまともじゃないらしいな。お前はクラスメイトの人数も忘れたのか?」

「…も、もう!セクハラだよ‼︎そんなの覚えてるに決まってんじゃん‼︎」

 ま、まったく!公衆の面前で言うかなぁ普通!このノーデリカシー人間め‼︎うどんで首吊って地獄に落ちてそのどす黒い臓物を(さら)け出しちゃえ‼︎

 だが私の反論虚しく、歩夢は余裕の態度を崩さなかった。

「ふっ…じゃあ出来ないのは算数か?さて…1+14+15、これの答えはいくつかな?」

「30ですけど…バカにするにも限度があるんじゃない?あゆっち」

「さてね……じゃあ次の質問だ。俺たちのクラスメイトは何人だ?」

「31人…だけど神倉くんは来ないし実質30人!」

「おい彩音ーーその“実質”っていう言葉はどこから持ってきたんだ?」

「え…?」

「31人目にも、ちゃんと投票権はあるーー」

 そう言ってせせら笑う歩夢の顔は、邪悪に満ちていた。

レオナルドダヴィンチが悪魔を描くためのモデルを探していたなら、きっと今の歩夢の様な顔をモデルにするに違いない。

「あ…ありえない‼︎だって、神倉くんは高校にだって入学式しかーー」

()()()()()ーーそうだろうな、神倉の存在を最初から無い物と扱っていたお前にはありえないだろうさ」

「けどな、最初から神倉を視野に入れてた俺には必然の運命ーーそう…ありえなかっただろうな、お前の中ではな‼︎」

「くっーー‼︎」

 こんなーーこんなことが…この私が、二度もあゆっちに上をいかれるなんて!万年学年テスト最下位のあゆっちに‼︎

「先生、どうぞ。神倉くんの投票用紙です」

 言って歩夢はポケットから三角に折った白い用紙を取り出すと、ルナちゃん先生へと手渡した。

「そんなの信じられません!あゆっちーー二階堂君が書き換えた可能性があるじゃないですか‼︎」

「いや、それなんだがな。私が神倉の投票先を知ってるからそれは無理なんだ」

「え…?」

「さっきの電話…神倉本人からでな、私はその時にあいつから投票先は訊いている。二階堂から紙をもらったのは一応形式上ってことでだ。だから書き換えることは無理なんだ。してもすぐバレるからな」

「そ…そんな…‼︎」

 あゆっちは…私の計画に気づいてからのこのほんの十数分の間でそこまで手を回したというの⁉︎

「あっ…そういえば二階堂、お前トイレで神倉と連絡を取っていたらしいな」

「ははっ、わかってますよ」

「まったく…校内で堂々とスマホを使用するとは……一週間没収だからな」

「はい」と言うと、満足そうに微笑みながら歩夢はルナちゃん先生へとスマホを手渡すと、自分の席へとついた。

「そんな……」

 やってしまった!まだ一人、残っていたなんて!

「それじゃ読むぞ〜、最後のはーー」

 もし、仮に、あゆっちが神倉君と連絡を取った際に宮鷹由莉奈に入れるように言っていた場合ーー

「えーっと…」

 その場合、勝つのはーー

「宮鷹由莉奈、か」

 黒板の宮鷹由莉奈という文字の下に線が一本足され、正の字が三つとなり、再びTHE座禅と並んだ。

「……おっ!じゃあ座禅と同点だな」

 何故かルナちゃん先生は腕をぐるぐると回して急に上機嫌になった。勝負事が好きなのだろうか。

「よーっし!それじゃじゃんけんタイムだ!最終決戦だ、盛り上げろよー」

 そう言ってルナちゃん先生は楽しそうに笑った。

「まず宮鷹由莉奈の代表は…どうするかこれ」

 宮鷹由莉奈に関しては、学校側から提案されているものなので代表者という者がいない。

 だがーー代表者を引き受けたいという人物は、一瞬で現れた。

「俺がやりますよ」

 いつもの歩夢からは想像もできないほど爽やかな笑みを浮かべ、歩夢は立ち上がった。

「おっ!やってくれるか二階堂。お前にしては珍しくやる気があるじゃないか」

「いつもクラスのみんなには迷惑をかけてるし、たまには恩を返さないと」

 おえぇ〜…あれは誰だ?そして何だ?たとえ演技といえど、いくらなんでもくさすぎるよ……。

「えーっと…じゃあ座禅の代表は三日ーー」

「私がやります‼︎」

 先生が言うよりも早く、私は声を発した。

 あゆっちが来ると言うのなら、私は負けるわけにはいかない‼︎

「三日月、それでいいのか?」

 突然の事に目を丸くして驚いていたユミちゃんだが、先生にそう問われると「はい、構いません」と答え、いつもと変わらない毅然とした態度へと戻った。

「ありがとねユミちゃん!私、勝ってくるよ‼︎」

「うん、がんばって!あやちゃん!」

 ユミちゃんの声援を背中に受け止めると、私は教壇へと上がり、目の前の()を睨みつける。

「すごいじゃん、あゆっちがここまでやるなんてーー正直驚いたよ」

「ははっ、随分と上からじゃないか。とても俺に負けた奴が吐くセリフとは思えないな」

「ははっ、そりゃあ私はまだ負けてないからね!」

「ふっ…それもそうだった。これから負ける奴だったな」

 嘲笑うと、歩夢は拳に力を込めた。

「じゃあーーやろうぜ」

「うん、やろうか!」

 グッと私も拳を握るーー

「「じゃーんけんーー」」

 残念ながら、あゆっちは私に勝てない。

 私は知っている、歩夢は99%の確率でグーを出す。

 じゃんけんの際“男は拳で勝利を掴みとるもんなんだぜ?”というのが歩夢の口癖だ。そしていつも負け、雑用を押し付けられる。そう、だから私はパーを出せばいい。そしていつも通り勝てばいい。

 手の力を緩めパーの形を作るーーだがその瞬間、さっきまでの出来事が走馬灯のように私の頭を駆け巡ったーー

 そうだ…今日のあゆっちはいつもと違う。ちょこまかとゴキブリの様に動き、私の先を行く行動をしてきた。今日のあゆっちは勝負のためには手段を選ばない。なら、今回は私の先を読んでチョキを出す可能性が高い!

 再び手の形を変え、チョキの形を作ろうとする。

 いやでも待って‼︎あゆっちがそんなことをする⁉︎自分の信念を勝利のために破るような軽い男だっただろうか?いやそんなことない!…ん?そんなことない、かな?あゆっちは授業中寝てるしいつも変なこと言うし予想ができない今回だって信念を破る可能性だって高い!いや待って!そうなのかな?そうなのかな?本当に?いや待って!本当は何も考えてないのかもしれない、だってあゆっちだし…あのあゆっちだし…くっ……うう!私はーー私はどうすればっっ‼︎



 彩音の後出しにより、俺たちのクラスの出し物は、宮鷹由莉奈の手伝いになったーー

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