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最終章

 《神の剣》はルベウス王国の国宝だ。

 これがあったから、今まで魔族からの侵略に耐えられたと言っても過言ではない。


 まぁ、今代の勇者になるはずだったギャレスは、残念ながら剣に使い手として認めてもらえなかったようだが。


「返すわ。私には必要のないものだから」

「……その事ですが……」


 ぺリノールは私が差し出した剣を受け取る様子もなく、ギャレスを振り返った。彼は何かを決めた様子で頷く。


「《神の剣》はエレストリアが持っているべきだと思う」

「え? どうして? 国宝でしょう? それに、破魔の力を持つ剣を、私が持っているなんて……」


 それではまるで、自分がゼオを殺したがっていると取られかねない。

 そういうつもりで答えたが、ギャレスは静かに首を横に振った。


「一つは、剣が君を選んだ事。もう一つは、今回の件は全面的にこちらに非がある。今後こちらが不可侵条約を破るつもりがないという意思表示のためにも、《神の剣》をそちらに渡す事には意味がある。そして何より、破魔の力を持つ《神の剣》は、魔王の花嫁であるエレストリアが管理することこそ、帝国側からしたら都合が良いことだと思う」


 それは確かにそうだ。

 《神の剣》は破魔の力を持つ剣。

 勇者が手にしたら魔王をも倒すと言われている伝説のアイテムだ。


 そんな魔王にとっては物騒なものを、わざわざ敵国に置いておく必要はない。


 かといって、ゼオにとって不穏なものを私が持ち帰るのも気が引ける。


「……エレス、そこまで言われた以上、持ち帰ったら良い。気になるのなら、魔王城のお前の自室に封じておこう」

「ゼオ、良いの?」

「俺はお前がそれを使うと思っていない。万が一お前がそれを使う程俺を憎むことがあれば、それは俺自信の至らなさのせいだと受け入れよう」


 え、何それ。器大き過ぎない? 格好いい。好き。


「私がそれを使う事があるとしたら、ゼオが他の女に心変わりしたり浮気した時よ」

「なら、それを使う機会は永遠に訪れないな」


 ふっと微笑むゼオ。


 やだ何それ、一生私だけを愛してくれるって事? ああ、もう、私だって一生大好き。


 ほう、と見惚れる私に、ぺリノールがこほんと咳払いをした。


「エレス様、国王陛下には僕からも事情の説明はしておきます。それと、今回の件については、国家魔術師団が責任をもって調査し、後日ご報告とご説明に伺います。それでよろしいでしょうか」

「わかったわ」


 私に異様な敵対心を燃やすセリナと、私に異常な執着を見せたヴァルダン、その二人に加担していたグラントの三人が捕らえられた事を受け、私とゼオは王城に戻る事にした。


 ゼオが転移魔術を使ってくれたので、私はすぐに自室のソファに腰を下ろすことができた。

 便利過ぎる転移魔術だが、彼の強大な魔力量があってこその連発だ。


「……なんだか疲れちゃったね」


 溜め息を吐くと、ゼオは私の隣に座り、肩をぐいと抱き寄せた。


「無理もない。だが、お前が無事で何よりだった」

「それなら私も、ゼオが怪我をしたりしなくて済んで良かったと思ってるわ」


 同じことを思う私達は、顔を見合わせて微笑み合った。


「エレスと一緒にいると退屈しないな」

「それは褒め言葉で良いんだよね?」

「当たり前だ」


 ゼオが優しく私の頬に触れ、唇を重ねてくる。


 ああまた、力強いのに優しい口づけ。好き。


 彼の身体に身を預けながら、私は幸せを嚙み締めた。


 大好き過ぎる推しキャラの花嫁に選ばれて、無事婚約者になった訳だけど、当然魔王と人間の小娘の恋路が、平坦な訳がない。

 この先もトラブル続きの予感満載だけど、彼と一緒なら何でも頑張れる。


 邪魔する奴はぶん殴って投げ飛ばす。そう心に誓いながら、私はゼオの背中に回した手に、力を込めたのだった。

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