03
最強と言われている魔法少女は2人存在する。
その2人は闘神と雷神とも呼ばれている。
その内の1人、闘神のミリア。
そんな最強と言われている魔法少女にトウコは話しかけられたのだった。
「あなたがメイジグリズリーを倒した魔法少女なのかしら?」
美しく上品な魔法少女ミリアにトウコは話しかけられた。
「ま、まあ、一応は…」
自分の描いた理想の魔法少女に話しかけられトウコは多少緊張していた。
「そう…」
ミリアは一瞬目を閉じて、いきなりトウコの顔面に向けて拳を放ってきた。
トウコは驚きながらも間一髪でこれを回避した。
「あら?今のを避けるのですね。その可愛いお顔がグシャグシャになる姿を見たかったのですが」
ミリアは平然とした表情で恐ろしい事を口走っている。
「い、いきなり何すんだっ!!!」
(な、何だこいつ。普通いきなり殴るか?チンピラと喧嘩した時でも、もうちょと会話があったぞ…しかも顔をグシャグシャにって…こいつ魔法少女じゃなくて悪魔だろ)
「先ほど言ったじゃありませんか、あなたのお顔に風穴を開けて処刑すると…」
(言ってねえーっ! さっきより残虐性が増しとる! こいつやべぇ…)
言った矢先再度ミリアは容赦なく攻撃を仕掛けて来た。
今度は拳と蹴りの連続攻撃を放ってきた。
しかしこれも避けたり防いだり受け流したりで何とか凌ぐ事ができた。
(こいつ糞強ええ、魔法使わず打撃のみとか、こいつ絶対魔法少女じゃねえ、こいつも俺と同じ転生者か?)
「ちょっ、ちょっ、ちょっ、ちょっと待ってくれっ!」
「あなた、結構お強いのですね。私の攻撃をここまで凌いだのは2人目ですわよ」
「な、何故俺は、あんたに命を狙われなきゃならんのだ!」
「いいでしょう。私の攻撃を凌ぎきったご褒美に教えて差し上げましょう」
(随分上から目線だなあ…)
ミリアの話しによるとメイジグリズリーの討伐はミリアが依頼された仕事だったがトウコが横取りしたと。
それについては、たまたまその場に居合わせて困っていたようだから助けたと言ったのだが無駄だった。
(しかし…普通、依頼を横取りされた位で相手を殺そうとするか? 彼女が本当に魔法少女なら仲間のはず…まあ俺は実際は魔法少女じゃないけど…
何故、仲間である相手をそこまで倒そうとするのか…いや…あいつは魔法を使わず殴ってくるし性格も凶悪過ぎるから絶対に魔法少女じゃねえな…)
ポン太に一応ミリアについて確認してみた。
「なあ、あいつって最強の魔法少女って言ってたけど、絶対魔法少女じゃないよな?魔法を使わず殴ってくるだけだし」
「あやつは魔法少女じゃ。ちゃんと魔法も使っておる」
「いやいや、魔法少女と言ったら攻撃魔法をガンガン打ちまくる生き物だろ!」
「あやつが得意とする魔法は身体強化じゃ。攻撃魔法は使わぬ」
ミリアは魔法少女では希少種な攻撃魔法を使わない肉弾戦闘系魔法少女。
更に彼女の加護はマジックシールド。殆どの攻撃魔法をほぼ無効化する能力で魔法が主流のこの世界では無類の強さを発揮する。
彼女はその戦闘スタイルから闘神のミリアと呼ばれている。
「じゃあ、あいつが魔法少女として、何で仲間である俺を倒そうとするのよ?」
「仲間じゃと?貴様は何か勘違いをしておるのぅ」
「えっ?いやいや、魔法少女って一丸となって魔王的な相手を倒す使命的なアレがあるだろ!」
「そんなものは無い」
この世界の魔法少女達は基本群れる事は無い。
自分より強い相手に憧れて行動を共にする者も少なからず存在するが基本皆ライバルだ。
その為、魔法少女同士の争いは珍しくはないのである。
「えっ?そんな世界なの?ここって。とんでもない奴に目を付けられたなあ」
「転生早々にまた死ぬ事になるとは運が無い奴じゃのぅ」
(いや、多分、勝つ事は出来るが、しかし…)
「そろそろ、宜しいかしら?」
ミリアはご立腹のようだ。
「出来れば、もうちょっと…」
トウコが話をしてる最中にミリアは攻撃を仕掛けてきた。
トウコは防戦一方ではあるが確実にミリアの攻撃を防いでいる。
(このスピードとパワーで更に武術の心得まであったらヤバかったぜ)
ミリアには武術の心得は無い。
身体強化魔法で極限までに高められた肉体で自己流の攻撃を行っている。
それ故に動作に無駄も多いのでトウコは防ぐ事ができるのだ。
とは言え、人間離れしたスピードとパワーなので、このまま防ぎ続けるには限界がある。
(うーむ…流石にこのままではマズイな。悪魔みたいな奴だが見た目は可愛い女の子だから攻撃はしたく無かったが、しゃーなしか…)
トウコはミリアの拳を受け流し腹部に連撃を叩き込んだ。
「くっ…」
ミリアは一瞬苦しい表情をしたが、それでもお構いなしに攻撃を続けている。
(あの熊を倒した時より強く打ったんだが、この程度じゃほぼ効果無しか…化け物め)
ミリアは一旦トウコから離れ魔法を発動した。
一瞬ミリアが光ったと思ったら次の瞬間、再度攻撃を仕掛けてきた。
先程発動した魔法は更に身体能力をアップする魔法だった。
「うわっ、うわっ、うわっ」
ミリアのスピードが上がりトウコは防ぐので精一杯になった。
(こ、こいつさっきよりスピードとパワーが上がってる、さっきのは強化魔法か。既に強化魔法を使ってたんじゃなかったのか?ヤバい、ヤバい、ヤバい、どうする…)
トウコはミリアの攻撃の一瞬の隙をつき胸部に掌底を叩き込んだ。
(やばっ!!! 思わず強めにやっちまった!)
「ぐふっ」
ミリアは口から血を吐きその場に蹲った。
(手加減出来なかった…すまん…)
「な、中々やりますわね…」
ミリアは苦しそうに手で胸部を抑えながらも余裕を見せようとトウコに話かけた。
「ええええええっ!!!」
ミリアがまだ動ける状態と知りトウコは非常に驚いている。
(いやいやいやいやっ! あの一撃で内臓が滅茶苦茶になってるはずなんだけど! こいつサイボーグかっ! でも…生きててよかった…)
「貴様本当に人間か?生身の人間がミリアと互角に渡り合うなどと…貴様、さては…サイボーグじゃろっ!」
「アホかっ! サイボーグはあいつだろっ! さっきの一撃で普通死ぬぞっ!」
魔法少女は神の力により肉体強度も増している。
ミリアは更に魔法により身体強化を行っていたのでトウコの攻撃は致命傷には至らなかった。
「貴様がさっさと、とどめを刺さぬから…見よ、ミリアに回復をする時間を与えてしまったではないか!」
「いや、とどめってお前…えっ?胸に手を当ててるのって…アレ回復魔法か…って、ずるい! ずるいっ!」
「殺らねば殺られる…それがこの世界の理じゃ」
「んな訳、あるかーっ!」
トウコとポン太がアホな会話をしている間にミリアはある程度回復し立ち上がった。
「では、続きといきましょうか」
ミリアはまだ戦うつもりだ。
「えーっと…ひ、引き分けって事でこの場はひとつ…」
トウコはこれ以上戦わない様に引き分けで丸く収めようとした。
「そうですわね…私に初めて膝をつかせた相手を生かして帰す訳には行かないですね」
(全く話が通じねーっ!)
ミリアは攻撃を仕掛けてきた。
しかし、完全に回復をした訳では無いので先程よりスピードが落ちていた。
(回復魔法を使ったって事は、かなりダメージがあったはず。まだ回復しきってない状態でさっきのを使えば、今度こそ確実に死んでしまう…よし、あの手で行くか)
トウコはミリアの攻撃をさばきながら機会を伺っていた。
(ここだっ!)
トウコは目にも止まらぬ速さで両手で掌底を交互にミリアの顎に打ち込んだ。
すると、ミリアは意識を失いその場に倒れたのだった。
(これで暫くは起きないだろ)
トウコはミリアと一緒にいた2人の魔法少女に近づいた。
「おいっ、お前等!」
「ひぃ、こ、殺さないで…」
2人は腰を抜かし命乞いをしている。
「いや、殺さねーよ! っていうかミリアも死んでねーし!」
しかし、2人は恐怖のあまりトウコの声が聞こえていない様子だ。
「とにかく! ミリアを何処かで休ませてやってくれ。じゃあな」
そう言ってトウコはその場から足早に離れたのだった。
「何じゃ、殺さなかったのか」
またポン太は物騒な事を言っている。
「殺すかっ! つーか、何なんだ、さっきからお前はっ!」
「ミリアはまた貴様を狙うじゃろ」
「だろうな。だからどっか遠くの街に行く。もう女の子とは戦いたくねーわ…」
その日、トウコは街の中心部から離れた宿屋で一泊した。
次の日の朝。
「さて、今日はまず、食料を買い込んでさっさと近くの街に移動するか」
「手遅れじゃ」
「えっ?何が?」
いきなり部屋のドアが豪快に破壊された。
「見つけましたわよ!」
ミリアが現れた。
「なっ、なにいいぃーっ!!!」