02
トオルは異世界に転生して早々に魔法が使えない魔法少女『なんちゃって魔法少女』のトウコとして生きて行く事になった。
「なあ、この世界って俺がやってたゲームと同じ世界なんだよな?」
ふとした疑問をポン太に確認してみた。
「それはちと違うのじゃ。『ゲームがこの世界を元に作られた』が正解じゃな。」
トオルがプレイしていたゲームはこの世界からトオルがいた世界に転生した者が作ったようだ。
転生には規則やルールが存在するが基本担当した神様に委ねられる。
トオルのように前世の記憶を持ったまま姿を変えられ転生するのは稀なケースで基本は前世の記憶は消去され赤ん坊からスタートするのである。
ゲームの作者も前世の記憶は無いのでオリジナルを作ったつもりでも深層心理にあった記憶が同じ世界観にしたのだろう。
「んな事はどうでも良いっ! アホかーっ!」
「貴様が聞いたんじゃろがっ!!」
「俺が聞きたいのは地図や街や魔法やスキルがゲームと同じなのかって事だっ!」
「ほぼ同じじゃな」
(ほぼ同じか…じゃあやっぱこの街はオガネソンの街か…噴水や店とかの配置もゲームと似てる。って事は…)
「うおおーいっ! じゃあ街の外にはレベル100前後のモンスターがウヨウヨいるって事じゃねーかっ!」
「それはゲームの話しじゃろ。ここは現実世界じゃ」
「あ、ああ、なるほど。異世界とは言え現実の世界なら流石にモンスターはいないのか」
「おるぞ」
「いるんじゃねーかっ!」
ここはゲームの元となった世界。当然ゲームと同様にモンスターも魔法も存在する。
戦闘では魔法使いが多く、武器を持って戦う戦士系は少ない。魔法が主流の世界である。
「所で俺ってレベルいくつよ?」
「そんなものはない」
ゲームでは各キャラクターの強さは数値で表現される。
しかし、この世界でも転生前の世界と同様に人の強さを数値化する事は無い。
「俺、もうこの世界で生きてく自信ないわ…」
「さっきからグダグダと五月蠅い奴じゃっ! いい加減現実を見つめんかっ! 前世のステータスを引き継いで贅沢をほざくなっ!」
前世のトオルは幼少の頃から父に格闘技を叩き込まれ育った。
しかし嫌々やっていた訳では無く積極的に父に教わっていたのである。
18歳で既に父を超えてしまった為、以降は中国拳法等の書物を読み漁り独自で鍛錬に励んでいたのだった。
「アホかっ! よく見てみろっ! この幼い体系に細くか弱い手足と可愛い顔をっ! 前世の強靭な肉体のかけらもねーわっ!」
「いちいち五月蠅い奴じゃ。 論より証拠じゃ、向こうの林に行くがよい」
ポン太の言うがままに林に向かった。
「その木を殴ってみよ」
「アホかっ! こんなか弱い手で殴ったら骨折するわっ!」
「さっさとやらんかっ!」
何故かポン太が怒っている。
仕方ないので骨折しない程度の力で木を殴ってみた。
バキッ
「ほらよ。これで満足か?」
すると、木がキシキシと音を立てて倒れたのだった。
「あ、あれ?何だこの木は、この世界の木って、こんなモロいのか?」
「それは普通の木じゃ。貴様はその姿で前世の肉体の強さを継承しているのじゃ」
(この姿で前世の肉体と同じ強度って…信じられん。しかし、動きに全くの違和感を感じない…ちょっと試してみるか)
トオル(トウコ)は前世の時と同様の動きをして木を次々をなぎ倒していった。
「なるほど…確かに前世と全く変わらず動けるし肉体強度も前世のままだが…」
「何が不満なんじゃ」
「人間相手ならともかく、モンスター相手に通用するのか?」
「試してみれば良いじゃろ」
(まあ、通用しなかったら逃げればいいか…)
「んじゃ、ちょっくら街の外でモンスターを相手にしてみっか」
早速街の外に出てモンスターを探してみた。
しかし、見渡せる範囲にはモンスターはいなかった。
ゲームでは街の外をウロチョロしていたらエンカウントしたが、ここは現実世界なのでそんな事は起こらない。
仕方ないので先にある森の中に入る事にした。
暫く森を突き進むと、やっとモンスター的な生物に遭遇した。ワーウルフだ。
ワーウルフはこちらに気づき向かってきた。
ゲームではレベル10程度の雑魚モンスターでトウコなら魔法を使わずワンパン出来る相手。
しかし現実は魔法が使えない上にレベルが無いので自分の強さがよく分からない状態。
トオル(トウコ)は全力で戦う為、精神を集中し身構えた。
すると、ワーウルフは何処かへ逃げて行ってしまった。
「モンスターも逃げるんだな」
「その様じゃな」
トオル(トウコ)とポン太は暫く沈黙してからモンスターを求め歩き出した。
暫く歩いていると前方で人間数人がモンスターと戦っているのが見えた。
この世界の魔法戦闘を見てみたかったので、その場まで駆け寄った。
5人の魔法使いがグリズリーを相手に魔法攻撃をしていた。
「ほう、これが魔法かー…何かショボいな…しかも全く効いて無いように見えるが…」
「アレはメイジグリズリーじゃ」
モンスターの中には稀に魔力持ちが誕生する事がある。
魔力と言っても攻撃、強化、防御、回復と様々で基本どれか1系統の魔法しか使えない。
この手の知能が低いモンスターは無意識に魔法を発動している。
そして、このメイジグリズリーは魔法防御の魔法を発動しているので魔法使いとは非常に相性が悪い。
「いや、じゃあ戦士を連れてきて強化魔法とかを掛けろよっ!」
「この世界は魔法が主流じゃから戦士系は殆どおらんのじゃ」
必死に魔法を放っていた内の1人がこちらに気づいた。
「おお。スターだ。やっと来て下さったか!」
魔法を放っていた人がこちらを見ておかしな事を言い出した。
「なに?スターだと!」
「こ、これで助かったわ」
5人は攻撃を止めこちらに駆け寄って来た。
「お、お願いします!」
先程まで魔法で攻撃をしていた1人に何かをお願いされた。
「おい、こいつらひょっとして俺にあの熊を倒せって言ってるのか?」
「その様じゃな」
この魔法使い達が先程から言っているスターとは魔法少女の事。
この世界には複数の魔法少女が存在する。
魔法少女を含めた魔法使いには3つのクラスが存在する。
1つ目は『スター』現役の魔法少女。
2つ目は『エリート』元魔法少女。
そして『ノーマル』普通の魔法使い。
魔法少女はこの世界の神が魔力の高い少女を選び10歳になると神獣が現れ魔法少女となって神の加護が与えられる。
加護は人によって様々だが現役の魔法少女同士で同じ加護になる事はない。
魔法使いクラスと魔法少女ランクは増えてきた魔法少女の管理を行うため人間が勝手に作ったシステムである。
それだけ魔法少女はこの世界で特別な存在なのだ。
「そんな説明どうでもいいわっ! つーか、魔法少女って沢山いるのかよっ! そっちの方が驚きだわ!」
「そんな事より今はあの熊を何とかする方が先じゃろ」
「お前が無意味に長々と説明したんだろがっ! まあ、今の俺の実力を測るには丁度良い相手だな」
(あいつ魔法が通用しない以外は普通の熊っぽいし、先ずは軽く打撃を試してみるか)
トオル(トウコ)は一瞬で間を詰め打撃技を叩き込んだ。
すると…メイジグリズリーは倒れ、息絶えたのだった。
「えっ?終わり?弱っ!」
「貴様、本当に人間か?」
トオル(トウコ)はポン太に失礼な事を言われた。
それはポン太が思っていたよりトオル(トウコ)が遥かに強かったからだ。
そして魔法使い達は素手でグリズリーを倒す姿を見て暫く固まっていた。
「さ、流石スター。あの凶暴なグリズリーを一瞬で」
暫く固まっていた魔法使い達はトオル(トウコ)を褒めたたえている。
トオル(トウコ)が帰ろうとしたら呼び止められ色々話をした。
魔法使い達から非常に有意義な情報を得られたのだった
街に戻り早速教えられた店に行きグリズリーを換金した。
グリズリーは魔法使い達から貰ったボックスと言うアイテムに格納可能。
ゲームではモンスターを倒すとお金やアイテムを落としたが現実世界ではモンスターはお金を持って無い。
ここではモンスターを買い取る店で換金を行うのだ。
お腹も減ったので何処か食べ物屋さんを探して街をウロウロしていた時だった。
背後から、とてつもない力を感じたので振り返ると、そこには3人の少女が立っていた。
「あなたがメイジグリズリーを倒した魔法少女なのかしら?」
3人の内の1人が話しかけてきた。
(こ、これは間違いない。魔法少女だ。美しく上品な話し方、俺の想像する完璧な理想の魔法少女だ)
ふと気づいたら、周りから何やら声が聞こえてくる。
何故か我々は注目されているらしい。
「お、おい、アレってミリア様だよな?」
「ああ、間違いない。闘神のミリアだ」
周りの連中が何やら話ている。
どうやら注目されていたのはミリアとか言う魔法少女だった。
「あやつはミリア。最強の魔法少女と言われておるのじゃ」
「マジかーっ!」




