01
トオル(男)28歳会社員。
幼少の頃から父に格闘技を叩き込まれ育った。
20歳で会社員になるが現在に至るまで毎日の鍛錬を怠った事は無い。
そんな彼にも格闘技以外に趣味があった…それはRPGゲームだ。
5年前にこのRPGゲームを知りプレイヤーキャラには自分好みのキャラメイクをして毎日プレイをしてる。
そんなある日、事件は起こった。
休日、朝の鍛錬後に例によってゲームをしていたが食料が無い事に気づき買い出しへ出た。
コンビニに向かう途中、信号待ちをしていた子供に暴走トラックが向かっている事に気づき、とっさに走って子供を突き飛ばした。
しかし、子供は助かったがトオルはトラックにはねられ帰らぬ人となった…
「人助けをして人生の幕を下ろしたか…お主は特別に1つ願いを叶えて転生させよう」
(何処からか声が聞こえたような気がする…)
そして…
トオルは何処か知らない街中に立っていた。
「ん?あれ?ここは何処だ?俺は確か…そ、そうだっ! 俺は確か子供を助けようとして…」
「そう。君は事故死してこの世界に転生したんだ」
「そ、そうか…俺は死んだのか…」
「そう悲しむ事は無いさ。君は君が望む理想の姿で転生したのだから。寧ろ喜ぶべき事さ」
「死んだのに喜べるかっ!って、さっきから勝手に話しかけてくるお前は誰だ!」
「僕を忘れたのかい?つれないなあ。5年も行動を共にした仲間じゃないか」
「俺にそんな仲間なんていない! それよりお前は何処にいるんだ!」
「ここだよ」
声のする方を振り向くと変なぬいぐるみ的な物体が宙に浮いていた。
「……」
「やあ、会うのは2時間ぶり位かなあ?」
(いや、まさか、そんな、馬鹿な…)
「ひょ、ひょっとして…お前って…ぽ、ポン太…なのか…?」
ポン太とはトオルが毎日プレイしていたRPGゲームのサポートキャラである。
サポートキャラとはゲーム内で次に行うべきクエストの場所を教えたり戦闘時には戦闘のサポートをするキャラだ。
ゲームを初めて開始する際にサポートキャラの命名を行うが、良い感じの名前が思いつかなかったので適当にポン太と名付けたのだ。
「そう、僕はポン太。君の相棒さ!」
(相棒ではない。俺にはただのゲーム内のサポートキャラと言う認識でしかない)
(しかし、何故ゲーム内のキャラでしかないポン太がこの場に居るのだろうか…)
「いや…何でお前が居るの?」
「そうだね。先ずは君が事故死してから今に至るまでの経緯を説明した方がいいね」
ポン太が説明を始めた。
先ずトオルは人助けをして死んだので神様よって特別に何か1つ願いを叶えて貰ってこの世界に転生した。
神様は山ほど存在し、その時たまたまトオルの担当になった神様がそうしただけで、他の神様が担当だったら違う結果になっていたらしい。
何故ポン太がここに居るのかと言うと、トオルはゲームを起動した状態で買い物に出かけて死亡した。
どうやら神様はトオルがこのゲームの世界に行きたかったのだと勝手に解釈しトオルのキャラと一緒に居たポン太も付属物として作った…と…
そして、その辺の経緯を説明させる為、ポン太にはその辺の情報と神々のある程度の知識を与えたとの事だった。
要は説明をポン太に丸投げしたのである。
(しかし、そんな事はこの際どうでもいい…ここで1つ確認しなければならない事がある。そう…転生してから自分の服装が気になっていた…何か俺…スカート的な服装になっている…
神様は言っていた。『特別に1つ願いを叶えて転生させよう』と…ポン太は言っていた。『君は君が望む理想の姿で転生したのだから』と…)
…
(ちょっと待って欲しい、俺は願いを言っていない。神様の御好意でゲームと同じ世界に転生されたのは良しとしよう。
しかし、俺が望む理想の姿って…俺は別に女装をしたかった訳では断じて無い。俺は可愛い子を愛でる為に自分のキャラを自分好みの顔や髪形にキャラメイクしていただけだ)
「変態かっ! 俺は変態女装男子として転生させられたのかっ!」
「急にどうしたんだい? 何か不服でもあるのかい?」
どうやらポン太にはトオルが何故不満がっているのかが分からないらしい。
「不服しか無いわっ! お前は俺のこの姿を見て変だとは思わないのかっ!」
「凄く似合っているよ」
「似合ってるかーっ! 女装が似合うとかアレかっ! お前はアレかっ!」
「チッ、いちいち五月蠅い奴じゃ」
ポン太は面倒くさい奴を相手にするような感じで舌打ちをした。
「お、お前、今、舌打ちをしただろっ!」
「そんな事より女性がスカートを履いても女装とは言わないだろう?」
ポン太は意味不明な理屈をこねている。
「いや、今そんな話してないし」
「納得がいってないみたいだね。ほら、鏡を見てみなよ。とても似合っているよ」
ポン太は何処からか鏡を出してトオルに自分の姿を見せてみた。
そこにはトオルが作ったゲームキャラそのものの姿が映っていた…
「確かに似合ってる! 可愛い! って、これ完全にトウコじゃねーかっ!」
トウコとは、トオルが毎日プレイしていたRPGゲームのプレイヤーキャラの名前である。
少女キャラなので女子っぽい名前にしていたのだ。
「これで納得したかい?」
「いや…ちょっと待って…ひょっとして…これ…俺…?」
「さっきからウジウジと…そうじゃっ! 何なんじゃさっきから貴様は一体っ! いい加減現実を受け入れんかっ!」
ポン太がキレて口調が変わった。
「出来るかーっ!」
(俺が望む理想の姿って女装じゃなくトウコその者になるって事か…神様はとんでもない誤解をしてくれたもんだぜ…)
「貴様は貴様が望んでいた変態魔法少女としてこの世界に転生したのに何が不満なんじゃっ!」
(変態魔法少女なんて望んでいるかっ! が、しかし…どうやらこいつはもう口調を戻す気は無いみたいだな、今までネコを被ってたか。
こいつの事はこの際どうでもいいが受け入れるしかないか…この状況を…どうせ転生した身だしな…)
「わ、分かった。今後はトウコとして生きて行く事にする。一応確認するがステータスは引き継いでいるんだよな?」
「無論じゃ」
「安心したぜ。これで魔法やスキルも無いって言われたら神様をぶっ飛ばしてたわ~」
ゲームでのプレイヤーキャラであるトウコはレベル120。
魔法少女のゲームなので当然トウコも魔法少女で多種多様な魔法とスキルを獲得している。
廃課金者には劣るものの相当強いキャラなのは間違いない。
「何をほざいておるのじゃ。そんな物は無い」
ステータスを引き継いでいると知り、この世界で無双する予定だった思惑が一気に崩れ去った。
「いや、いやいや…お前さっきステータス引き継いでるって言ったよな?」
「うむ。ちゃんと前世のステータスを引き継いでおる」
「えっ…ぜ、前世って…まさかとは思うが…トオルのステータスを引き継いでるとか言い出さないよな?」
「そのまさかじゃ。貴様は転生したのじゃからステータスを引き継ぐなら前世からに決まっているじゃろ。神様に感謝せい」
(ゲームキャラの姿なのにステータスは前世って…それって何も引き継いでないって事だろ…何か腹立ってきた)
「おい、この豚野郎! 糞神様を呼んで来いっ! ぶっ飛ばしてやるっ!」
「無理じゃ。貴様は大人しく、なんちゃって魔法少女としてこの世界で生きて行くがよい」
この世界はトオルがプレイしていたゲームと酷似した世界。
ここではトウコ(トオル)は魔法少女として認識されている。
魔法が使えない魔法少女…ポン太が言ったようにトウコは『なんちゃって魔法少女』なのである。
「糞がああああぁーっ!」




