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その魔法少女は物理系  作者: 須美音
第一部
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20

ギルド職員はトウコとミリアに依頼を引き受けて欲しいとお願いをしてきた。

その依頼内容は魔法少女の討伐だった。


「えっ!? 魔法少女の討伐? 何で??」


ここから馬車で2カ月程の距離にあるルバモリウと言う街で半年位前から盗賊が多発。

その盗賊は魔法少女とエリート(元魔法少女)で構成されている集団。

ルバモリウのギルドから数度に渡って討伐隊を向かわせたが尽く返り討ちにあった。

盗賊の中に1人、恐ろしく強い魔法少女が居ると言う事だった。

ルバモリウのギルドでは対応できないと判断し、最強と言われているミリアが在籍するトネシンのギルドに応援依頼が来たのだった。


「ああ…この世界の魔法少女ってそう言う生き物だったな…」


トウコは強い魔法少女に若干の興味はあったが、現状お金に困ってはいなかったので依頼の諾否(だくひ)はミリアに委ねる事にした。

ミリアは個人的に気に入らない依頼以外は、基本ギルドの依頼は引き受けている。

今回も特に気に入らないと言う事は無かったので二つ返事で依頼を引き受けたのだった。


依頼を引き受けたのは良いが距離が遠すぎるので例によってエアボートを所有しているエリーザに頼む事にした。



エリーザ邸の一室。



「お姉様。本日はどの様なご用件で御座いますか?」


エリーザには以前助けた時にトウコが死んでない事を説明済み。

ミリアと違ってあっさりと信じてくれた。


トウコは今日来た目的を説明するとエリーザはお姉様の為ならと快諾。


次の日の朝、エリーザはエアボートでミリア邸まで迎えに来た。

馬車で2カ月程の距離でもエアボートなら1日もかからずに到着する事が可能。

今回は運転者2人を含む計5人で向かう事となった。

早速出発し途中何度か休憩をしながらも夕方前にはルバモリウと言う街に到着した。


トウコ一行は少し遅い昼食を取る為、例によって大衆的な食堂へ入った。

食堂に入るや否やトウコは怪しい連中が居ないかキョロキョロと周りを確認していた。


「お姉様、どうかなさいましたか?」


ミリアはトウコの挙動を不思議に思った。


「いや、いつもならここで訳の分からん連中に絡まれてたから、怪しい連中が居ないかチェックしてたんだが…今回は大丈夫っぽいな」


過去に何度か食堂で絡まれ、店を破壊した事があった。

原因を作ったのは相手だが、実際に破壊したのはミリアとツバキだった。


辺りを見渡しても怪しい連中は見当たらなかったのでトウコは安心して席に着き注文を行い一息ついた。


「ふう…」


トウコの姿を見て何を思ったのかエリーザが立ち上がり口を開いた。


「お姉様、ご安心下さい」


「えっ?」


トウコは何を安心するのか分からない様子。

そんなトウコを余所にエリーザはとんでもない事を叫んだ。


「皆様! ここにおられるお方こそ、殺神のトウコお姉様と闘神のミリアお姉様に御座います! 我はと思う方は是非、挑んで下さいまし!」


「お前、何言っちゃってんのっ!」


「ふふっ。そう言う事ですか。いいでしょう!」


トウコの思いとは裏腹にミリアは何故かやる気満々で立ち上がった。


直ぐに名乗りを上げる者は出なかったが辺りから妙な声がトウコの耳に入ってきた。


「ぷっ、殺神のトウコ? 聞いた事無いんだけど?」

「さつじんってwww、どんだけ人を殺したんだよwww」

「ミリアは聞いた事ありますがトウコって何処の雑魚かしら?(笑)」

「闘神って、すれ違った者を全て殺すと言われてる無慈悲魔法少女の闘神ですか?」

「ミリアは無理でもトウコとか言う雑魚なら殺れるかしら?」


(分かっていた、分かってはいたが…こいつら、言いたい放題言いやがって…)


トウコは自分で無名と自覚はしていたが、周りから聞こえる声に怒りを抑える事が出来なかった。


「上等だ、この豚野郎共! かかって……えっ!?」


トウコが言い終わる前にミリアが飛び出し暴れ出した。

それを見たエリーザも調子に乗って魔法を打ち出したのだった。


「いや、何でお前等、無関係な連中相手にそこまで…」


「案ずる事は無い。一般的な魔法少女同士のいざこざに過ぎん。貴様もよく得意の暴力を振るっておるじゃろ」


例によってポン太が突然口を挟んで来た。


「よくはやってねーわっ! それに暴力じゃなく武術だ! アホかっ!!」


トウコは2人を止める為、辺りを見渡すとエリーザが魔法で店の破壊活動を行っていたのが目に入った。

エリーザは反撃を恐れてか、人を攻撃せずに何故か店を壊すのに夢中になっている。


「止めんかっ!」


トウコはエリーザの頭を軽く殴って止めさせた。


「あ、安心して下さいませお姉様! この程度の店の10件や20件、いくらでも立て直しをしますので!」


トウコはそういう問題では無いと思いつつも、今度はミリアの所へ行き暴れるのを止めさせた。

ミリアとエリーザに軽く説教をした後、エリーザには店の損害賠償を命じ別の食堂的な店へ入った。

食事をしながら、トウコは先程の店でエリーザの発言が気になっていた。


「そういやエリーザお前、何でさっきの店で挑んで来いとか変な事を言い出したんだよ」


「お姉様が絡んでくる輩が居なく退屈でため息をつかれたので、その辺の者共を殴り殺せば退屈しのぎになるかと思いました!」


「人を殺人鬼みたいに言うな! つーか、ため息じゃねーし、落ち着いて飯を食えると思って一息ついただけだっつーの。まったく…」


トウコはエリーザなりの気遣いと思い、それ以上は言う事は無かった。



次の日。



朝食を済ませギルドに向かう途中にチンピラ魔法少女と遭遇した。


「おっ、ラッキー。こんな朝早くからCD魔法少女ゲット~」


チンピラ魔法少女の1人がおかしな事を言った。


「シーディー…、おい豚共、CD魔法少女って何よ?」


チンピラ魔法少女が言うCDとはキャッシュディスペンサーの略で現金自動支払い機の事。

拉致した魔法少女からお金を搾り取る為、彼女等はそういう風に命名した、との事だった。


(いやいや、この世界にCD(キャッシュディスペンサー)って無いのに、良くその単語に辿り着いたな!)


「そんな訳で、お前等全員拉致るから宜しく~」


チンピラ魔法少女は何とも軽いノリで拉致宣言をした。


「ほほう、通りすがりのモブ如きが俺達を…」


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