0_02話
初日なのでもう一話投稿。
プロローグ的な感じです。
冒険。旅。心踊る日々の始まりを決める日。それは同時に学園を卒業するための試験を受ける日でもある。
リデオーラ王立学園。
武術や幻法、魄式を学ぶための学舎であり、10歳以上であれば入学することができる学校である。一般的な読み書きなどの教養も学ぶこともできるため、この国、リデオーラ王国最大の学校には毎年沢山の者が入学試験にやってくる。10歳以上で入学できるとは言ったが、毎年入学希望者が多いため、入学試験によってふるいにかけられる。さらに、在学中に毎月一定以上の金額を学園に納めないといけないのも特徴か。
ある者は家の仕送りで、ある者は地道にバイトをして、またある者は近くで狩りや採取などをしてお金を稼ぐ。2ヶ月滞納した者は休学扱いになり、そのままさらに1ヶ月払うことができなければ借金を背負って退学となる。休学になる者は毎年2~3割ぐらいいるが、退学者は極稀である。修学金や特別贈与金などの制度もあり、真面目な者には少し優しい学園なのだ。
そんな学園では入学すれば最低でも6年は学ばなければ卒業できず、自分の意志で残れても10年が最高である。さらに、それ以上に残りたければ教師の推薦のもと、教師見習いとして働くしかない。研究分野で学園に残りたがる者がこの制度を使うことが多い。大半は6年過ごして卒業する。そして、卒業の条件は教師に認められること。学問であれ生産技能であれ、教師に認めてもらえて承認すればそれで卒業である。シンプルでしょ?
そして、私が在籍している戦騎科、戦闘を主に受講する学科で教師に認めてもらうには、つまり、如何に"生き残ることができるか"に尽きる。
私が望むのは冒険者。未知なる場所や過去の神秘に触れること。その第一歩が今なのだ。
「いけぇ!シュベルトヒルト!」
「強面教師に一発いれたれぇ!」
「負けないで!」
「ライニー!頑張れ!」
校庭で私と担当教師、学園でも5本の指に入る強さを誇るアゼルド・レック先生が向かい合う中、周辺には沢山のギャラリーに埋め尽くされていた。これは戦騎科の宿命らしく、卒業試験のときは毎回学園中の生徒だけでなく、教師も集まるらしい。・・・何分で認められるか、決着がつくか、なんて賭けをしているのはどうかと思うけれど。
まぁ、そんなことを気にしても仕方がない。未来に向けて私は私の全力を振り絞るだけ。
アゼルド先生は片手ずつ3本の刀を持っている。計6本。世界的にも有名な【六爪流】の使い手。その流派における段位までは知らないけれど、アゼルド先生の幻法による影の腕を使った変則的な戦い方をするのは学園内では有名な話だ。6年の在学中に幾度か戦う姿を見る機会はあったけれど、その動きは正直言って反則だ。両腕の素早さ、影の腕の発生場所、攻めの鬼畜さ。騎士志望の人からすれば邪道などと言いそうだけれど、私から見ればその道は生きるための正道だ。清濁関係なく、勝ち残るための技である。
だから、私は卒業試験にこの教官を選んだ。私の戦い方もアゼルド先生に近い、邪道と言われる戦い方だ。
「ライニー・フォン・シュベルトヒルト。王立学園62期生の中ではトップレベルの"戦闘狂"か。どうして俺の下には変わり者しか来ないのだ」
「知りませんよ。あと、変わり者とは失礼ですよ」
変わってなどいない。頭の中で繰り返し告げてから左腰から剣を抜き、構える。
「ただ戦うことにおいて狂ってるだけじゃないですか。私より強い人なんて五万といる。ならば、私はどこまで強くなれるのか、気になるじゃないですか」
未知なる冒険、神秘の探索。それらをするには何よりも力が必要だ。気持ちでどうにかなる事態なんてそうそうない。そして、私は努力が実を結ぶと信じている、ならば、
「前へ前へ。上限なんてないものだと信じているから。どこまでも高みを目指したいんです。未知なる冒険と神秘の探索を行い続けるためにも!」
止まらない。止めるなんて勿体ない。生きているならば望みを果たせ。生きているからこそ、生を強く感じるためにも、
「>我が身は剣!」
私は"戦うことを選んだ"のだ。
† † † †
side:アゼルド・レック
「>我が身は剣!」
ライニー6回生が突然に詠唱を始めた。俺の不満に対していろいろと独白していたが、まぁ、その気持ちはわからなくもない。
校庭に来る前に見た資料だと、彼女の志望は冒険者。理由は独白の通り、未知なる冒険と神秘の探索のため。その夢を持ちながら冒険者になる者はそれなりにいる。だが、その大半は挫折に終わる。それは力がなかったり、危険に対して怖気づいてしまったり、神秘なんて見つからないからだ。俗物的な言い方になるが、お金を稼ぐために冒険者を志した者の方が冒険者として活動できている。彼らは魂澱種、害を及ぼすモノを狩り、その死体や報酬を糧に生きているからだ。
ここで、折っておくのもライニー6回生のためになるな。まだ、16歳。志す道を変えてもやり直す時間はたっぷりあるし。
「>その剣は願う!
>速く、速く、振るう刃は留まらない!」
聞いている感じで言えば幻法ではなく魄式。それも剣への付加効果だな。今のご時世、魄式を主として使う者は少なくなっているが、この学園にもそれなりにいる。つまり、弱点は明白だ。
魄式は己の魂から溢れる魄気を用いる。その魄気は魂から絶えず溢れ出るが、短時間で大量に出るものではない。つまり、短時間で使える量に限りがある。
対して幻法は世界に漂う、大気や大地にある幻素を体内に取り込んで使用する。人によって一度に取り込める量は異なるが、短時間でも取り込み続ければ幻法は使い続けることができるのだ。
この差が魄式が衰退している理由である。つまり、魄気を使わされ続けて枯渇すれば、魄式使いは何もできなくなる。詠唱が終わるのを待って影を駆使して持久戦に持ち込めば・・・
「>何者にも阻めぬほど以下略
>【Donner】!」
・・・は?
魄式も幻法も魔法みたいなものです。
世界観とか、どっかで説明的な話をいれないとなぁ。
この話で出てきた魄式の説明は次回で。




