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『東の魔王、西の勇者 ~普通のおっさんと少年ゲリラが世界を二分するまで~  作者: サラ男


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隣国

仕事が始まったので先日から投稿低頻度になりました

国境を越えた。


 ヴィクターたちの車列は。


 隣国の街へ入っていく。


 窓の外には。


 自分たちの国とは。


 少し違う景色が広がっていた。


 建物。


 道路。


 看板。


 人々。


 言葉も。


 文化も。


 違う。


「本当に。


 国境を越えたな」


 盟友が。


 窓の外を見ながら言った。


「ああ」


 ヴィクターは。


 短く答えた。


 これまで。


 国境は。


 戦う場所だった。


 敵が来る場所。


 兵士が立つ場所。


 銃を向ける場所。


 それが。


 今日は違う。


 外交官として。


 この国へ来ている。


 車列が。


 首都へ向かう。


 沿道には。


 人々がいる。


 旗も見える。


 歓迎のために。


 集まっているらしい。


 だが。


 全員が。


 歓迎しているわけではなかった。


 少し離れた場所から。


 車列を見つめる人々もいる。


 警戒している。


 当然だった。


 革命によって。


 政権を変えた国。


 その国の代表が。


 今。


 目の前を通っている。


 やがて。


 政府庁舎へ到着した。


 玄関前には。


 隣国の政府関係者が。


 並んでいる。


 ヴィクターが。


 車から降りる。


 盟友。


 エリアス。


 その後ろに。


 外交官や。


 軍事担当者たちが続く。


 隣国側の代表が。


 歩いてくる。


「ようこそ」


「ありがとうございます」


 二人が。


 握手を交わす。


「ヴィクター・ヘイルです」


「存じています」


 相手が。


 少し笑った。


「あなたの国では。


 有名な方だ」


 ヴィクターは。


 特に反応しなかった。


「今日は。


 よろしくお願いします」


「ああ。


 こちらこそ」


 会議室へ。


 案内される。


 大きな机。


 両側に。


 それぞれの代表団が座る。


 最初は。


 形式的な挨拶だった。


「両国の友好を願います」


「我々も同じです」


 そして。


 エリアスが。


 資料を開く。


 経済。


 貿易。


 資源。


 道路。


 港。


 エネルギー。


 数字が並ぶ。


 隣国側の担当者が。


 説明する。


「我が国は。


 こちらの港を。


 主要な輸出拠点としています」


「なるほど」


「貴国との交易が増えれば。


 双方に利益があります」


 エリアスが。


 頷く。


「こちらも。


 同じ考えです」


 話は。


 比較的順調だった。


 しかし。


 軍事担当の話になったところで。


 空気が変わった。


「安全保障について。


 一つ確認したい」


 隣国側の将校が言った。


 盟友が。


 顔を上げる。


「何でしょう?」


「貴国は。


 革命によって。


 政権を変えた」


「はい」


「そして。


 軍も。


 新しく作り直した」


「その通りです」


「我々としては。


 それを。


 どう評価すればいいのか。


 まだ分からない」


 会議室が。


 静かになった。


 ヴィクターは。


 将校を見る。


「当然だと思います」


 意外な答えだった。


 相手の将校が。


 少し驚く。


「警戒するのは。


 当然です」


 ヴィクターが続ける。


「我々が。


 あなた方の立場なら。


 同じように考えます」


 盟友が。


 隣で。


 黙って聞いている。


「だから。


 今日は。


 信用してくださいとは言いません」


「では?」


「見てください」


 ヴィクターが。


 言った。


「我々が。


 何をするのか」


「こちらから。


 国境を越えない」


「他国の領土を。


 奪わない」


「問題があれば。


 戦う前に。


 話をする」


 将校が。


 ヴィクターを見る。


「それを。


 約束できるのですか?」


「できます」


 即答だった。


「我々は。


 もう。


 戦争で国を作りたくない」


 会議室が。


 静かになる。


 ヴィクターは。


 続けた。


「守るための軍は持つ」


「でも。


 奪うための軍にはしない」


 盟友が。


 静かに頷いた。


 エリアスは。


 資料に。


 その言葉を書き留めた。


 隣国側の代表が。


 しばらく考える。


「……分かりました」


「ただし。


 すぐに同盟という話には。


 ならないでしょう」


 ヴィクターが。


 頷く。


「それも。


 分かっています」


「まずは。


 互いを知ることからです」


 会議は。


 そこで終わった。


 正式な条約は。


 何も決まらなかった。


 それでも。


 意味はあった。


 敵でも。


 味方でもない。


 その間に。


 最初の橋が。


 架かった。


 その夜。


 隣国政府が用意した。


 夕食会が開かれた。


 外交官たちが。


 席につく。


 ヴィクターの隣には。


 盟友。


 反対側には。


 エリアス。


「今日は。


 悪くなかったな」


 盟友が。


 小さく言う。


「ああ」


 ヴィクターが答える。


「でも。


 まだ始まったばかりだ」


 エリアスが。


 食事を取りながら言った。


「貿易については。


 かなり前向きです」


「安全保障は?」


「慎重です」


「当然だな」


 ヴィクターが。


 頷く。


「なら。


 経済から始めよう」


 盟友が。


 聞く。


「経済から?」


「ああ」


「人が行き来する」


「物が行き来する」


「企業が行き来する」


「そうすれば。


 相手のことが。


 少しずつ分かる」


 ヴィクターは。


 隣国の街を見る。


「知らない国だから。


 怖い」


「なら。


 知らないままにしなければいい」


 エリアスが。


 静かに笑った。


「それなら。


 明日から。


 仕事が増えますね」


「最初から。


 そのつもりだろ」


「もちろんです」


 三人が。


 少し笑った。


 翌朝。


 再び。


 会議が始まった。


 今度は。


 経済担当者が中心だった。


 貿易。


 エネルギー。


 道路。


 港。


 農産物。


 工業製品。


 話すべきことは。


 いくらでもあった。


 そして。


 その中から。


 一つずつ。


 協力できるものを。


 探していく。


 同盟は。


 まだ遠い。


 だが。


 ヴィクターたちは。


 焦らなかった。


 戦争を終わらせるより。


 戦争を始めない仕組みを作る方が。


 難しい。


 だから。


 一歩ずつ。


 進む。


 帰国の日。


 隣国の代表が。


 ヴィクターと握手をした。


「また来てください」


「もちろん」


「次は。


 もっと具体的な話をしましょう」


 ヴィクターが。


 頷く。


「こちらも。


 準備してきます」


 車へ乗り込む。


 盟友が。


 隣に座る。


 エリアスも。


 資料を抱えている。


「どうだった?」


 盟友が聞いた。


 ヴィクターは。


 少し考えた。


「悪くない」


「それだけ?」


「ああ」


 窓の外を見る。


 隣国の街が。


 遠ざかっていく。


「でも。


 次は。


 もっと先まで行ける」


 車列が。


 国境へ向かう。


 その先には。


 まだ。


 いくつもの国がある。


 ヴィクターたちの海外視察は。


 まだ。


 始まったばかりだった。

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