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『東の魔王、西の勇者 ~普通のおっさんと少年ゲリラが世界を二分するまで~  作者: サラ男


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世界へ

黒崎は。


 久しぶりに。


 深く眠った。


 目を覚ました時。


 朝だった。


「……」


 以前なら。


 目を閉じても。


 頭の中が止まらなかった。


 借金。


 家族。


 失敗。


 将来への不安。


 それらが。


 何度も。


 頭の中を巡っていた。


 だが。


 今は違う。


 資産がある。


 金がある。


 数字が。


 黒崎を安心させていた。


 そして。


 いつしか。


 眠れるようになっていた。


 黒崎は。


 スマートフォンを手に取った。


 東方エネルギー。


 また。


 株価が上がっている。


 黒崎は。


 保有株数を確認した。


 数年前。


 誰も見向きもしなかった頃から。


 黒崎は。


 買い続けていた。


 借りられる金を借り。


 信用枠まで使い。


 狂ったように。


 買い続けた。


 その結果。


 黒崎の保有比率は。


 いつの間にか。


 会社の大株主上位に入っていた。


 そして。


 株価の急騰によって。


 その保有株の価値は。


 さらに膨れ上がっていた。


 東方エネルギーから。


 正式な通知が届く。


 黒崎は。


 画面を見た。


「……」


 個人筆頭株主。


 その文字を。


 しばらく見つめる。


 以前の黒崎なら。


 想像すらできなかった。


 会社を辞め。


 家族にも見放され。


 何もなくなった男。


 それが。


 今では。


 巨大企業の。


 個人筆頭株主だった。


「……俺が?」


 黒崎は。


 小さく笑った。


 その直後。


 会社から。


 連絡が入った。


 海外事業の現地訪問。


 筆頭株主である黒崎を。


 正式に招待したいという。


 黒崎は。


 承諾した。


 数日後。


 空港には。


 東方エネルギーのスタッフが。


 出迎えに来ていた。


「お待ちしておりました」


 専用車。


 最高級ホテル。


 現地の料理。


 政府関係者との会食。


 移動する先々で。


 黒崎は。


 VIPとして扱われた。


 まるで。


 視察というより。


 接待旅行だった。


 黒崎は。


 その待遇を。


 黙って受け入れていた。


 飛行機の窓から。


 眼下の大地を見る。


 そこは。


 数年前。


 クーデターをきっかけに。


 戦争となった国だった。


 今は。


 停戦を経て。


 復興へ向かっている。


 空港を出る。


 道路を走る。


 街には。


 まだ戦争の傷跡が残っていた。


 壊れた建物。


 補修された道路。


 軍用車両。


 そして。


 復興を進める人々。


 その一方で。


 新しい建物も増えていた。


 東方エネルギーによる投資。


 資源開発。


 インフラ整備。


 街そのものが。


 少しずつ変わり始めていた。


 ホテルへ到着すると。


 夜には。


 政府関係者を交えた会食が用意されていた。


 黒崎は。


 静かに席につく。


 数年前。


 親にも見放され。


 友人も離れ。


 会社さえ辞めた男。


 それが。


 今では。


 国の要人と。


 同じテーブルについている。


 黒崎は。


 ふと。


 グラスを見た。


「……人生ってのは」


 小さく笑う。


「分からないもんだな」


 翌日。


 東方エネルギーの資源開発施設を訪れる。


 巨大な設備。


 広大な敷地。


 忙しく動く作業員。


 そこから。


 莫大な資源が生み出されている。


 黒崎は。


 黙って眺めていた。


 かつて。


 自分が死ぬ気で買った株。


 それが。


 今。


 目の前で。


 巨大な事業になっている。


 黒崎は。


 遠くの街を見た。


 戦争の傷跡。


 復興。


 新しい産業。


 そして。


 その中心にある。


 東方エネルギー。


 黒崎は。


 静かに。


 笑った。


 もう。


 ただ株価を見るだけの生活ではない。


 自分が持つ株によって。


 世界が。


 少しずつ動き始めていた。

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