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無法者の詩  作者: 唯の屍
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第三十八話「もっとも遠き、新しき一人」其の二

イメージソング


スペース・ヴァンガード https://youtu.be/hnSReARTukc?si=pcuX9maKsEPaEQRo @YouTubeより


amazarashi 『性善説』 https://youtu.be/ja3UA2lagAM?si=BsCSc5LKkOa6b9P6 @YouTubeより


『Amore』Anime Music Video 「未完成」- ReoNa × TVアニメ『きみが死ぬまで恋をしたい』 - https://youtu.be/njJfgw1D-H8?si=yLUOEEoLpxOz1kQy @YouTubeより


私の永遠/ALICes(黒崎真音×神田沙也加) Music Video https://youtu.be/zyh4r6tYOgY?si=_O4ozUxbnN341kQS @YouTubeより


YOASOBI × Overwatch 「オリオン / Orion」Official Music Video https://youtu.be/EjaQdBcF6K4?si=_sAXAigIVYs5tJmi @YouTubeより


驚異の廃絶を試みるが、結果は...


「失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。」


現地人とのコミュニケーション...不整合


現地人との情報共有...部分的に可能なもの重要な箇所に欠損あり。


現地人の言語...翻訳可能だが意訳に齟齬有り


致命的な、不整合を魅せる。


過去に未来の情報を持ち込ませるには、問題があり、伝えられる情報には制限がある。


やはり未来の情報を限定的に、知らせるのに無理があったのだろう。


喩え、今日、明日は世界が滅びると言われ、はいそうですかと納得する人の方が少ないだろう。


警告の言葉は薄く、ぼやけた輪郭でしか伝わらない。


何故、同じ陣営、同じ組織に属する者同士で、情報を隠して情報の伝達が行われていないのか?


その理由は、判然として何も分からない。


人は、人と人の繋がりを、何処で違えた。


未来の予知を知り得る者だとしても、誰もがその言葉に耳を傾けるとは限らない。


ましてや、唯の人の身でしかない己には、その根拠を示す術が難しく厭わしい。


何度となく今まで経験してきた。事故を予知したとしても誰も聴く耳は持たないし、話を取り合わない。


何か確証となる証明が必要だが、其の為には未来に関する情報を述べなければならないのに、其れは禁じられている。


であれば、情報伝達の断絶はどうしても産まれる。


事前に情報を搭載した遡行探査プローブを送り込んでいたが、何故か、その情報が、時の世の人々に伝達されていなかった。


十三機の機神は、強力なモノの我の身体は一つのみ、精密な迎撃を行う為には、現地住民の協力が不可欠。


誤解があるとすれば、事象の再現に必要な事は、ただ表面をなぞるだけではなく、各々の分担するそれぞれを尊重するその意志だけだった。


それは人の心根に起因する事で、他人に強制する事は出来ない。


だが、それが一番簡単であり、一番難しい。協調性は、それぞれ個々人が持ち合わせるモノで、誰かが取ってつけた様に与えられる様なモノでもないのだから。


既に伝達した未来の技術を得た者たちは、僅かばかりの人々を収容しての箱舟の建設に取り掛かる。


その経過を見守り、地上の人々を見守るのか?それとも宙への遥か新天地を探す旅へ向かうかの二択を選択し、


地上へと残る算段を試みるが...破損した機体の修復を行う間もなく、


一部の体制の手によって...吾身は虜囚となり果てる。


今を生きる者たちは、不思議に思う。どうしてなのかと現代の技術との相違が見られる創意工夫の品々に魅了され


生きたままの解剖に...、解析を試みる。


物資の乏しき、荒れた大地の世界に置いて、何故これほどまでの科学技術を駆使する事が出来たのか?その答えを探るべく、


名も知らぬ十二番目の男は、自らの息子と共に、その秘密を暴く事に終始する。


導き出された結果は、現代の人には終ぞ持ち得る事の無かったその能力と素材としての有用性を示しながらも、


決して報われる事の無い。時代の谷前へと名を消され、人権を消され、存在を消され、唯の便利な素材としての扱いだけが、そこに残されていた。


既にこの世界に明日は無く、それでも自らが取り込む事が出来たと嗤い。満足するかのように眠る何者かの翳が奇妙なワルツを踊り続ける。


「親父、結局死んだ死刑囚(冤罪)の存在は、十三番は知っていたのでしょうか?」


「さぁな、奴は完全に私たちの事を信用していた。故に、本来であれば、心を壊した二号機に乗った少年すら、自ら志願した有志だと思っていただろう。」


「七番機が使用するモノも唯の原生動物だとの説明もそのまま疑う事なく、信じていたようだ。」


「なんとも滑稽な話だ。騙して無理やり搭乗された事実すら知らないまま。今はモルモットとして生きるしかない。」


「素材としては有用だが、その高齢さが気になる。もう少し若ければ如何様に増やす事も出来ただろうが。」


・・・



・・・



・・・


欠けた物語を語る語り部の口は重く未だ、その事実に至らない。


リアクティジェネレーター...。本来の使い道は、未来の物資が尽きた世界に置いて、


あらゆる資材を有効活用する為の物資の再変換システム


リアクティブジェネレータ《反応生成機構》...


本来で有れば牛肉と僅かな香辛料や野菜を投入すれば、自動生成しカレーや食料品を作り出し、


他生物や鉱物を投入すれば、素材と燃料を吐き出すという。


単なる大型完全自動万能調理器...正式名称...ダグザの釜として、機能するはずだった。


だが、そこに目を付けたのは、過去の人類の発想の転換に起因する。物資が無ければ。生きてる人間で代用すれば良いと、常用外の使い道を思いつく


新天地を探す、惑星間航行の当面の問題である。燃料と食料、そして必要不可欠である水と空気の諸問題が解決されるのは。


まだ、物語の先の話である。


だがこれより描くは、叫喚亡き、正道とは違えた道でしかないとしれ、そこには地獄しかなく、融和とは程遠い。


選民思想に支えられた。一部の技術を占有する人々が、勝ち筋を見出し、生贄となる何者かを欲し続ける世界が待っている。


だが、この時点に置いてそれを阻止する術を持つ者は、存在せず。


一部の既得権益を保持し、優性思想に取りつかれた。特権階級の人々は、自らをステリス・クピドレス (Stellis Cupidores)と呼称


この時、寒冷化する地球と地上に残り苦難の道を辿る人々を見捨てて、、地球圏から脱し新たなる新天地を求めて旅立つ準備へと入る。


袂を別ち、其の心の距離と物理的な距離が離れていく途中、其れより進む事、千数年生きる素材として無理やり生かされた老人は、


日々に残された意識ある時間は、一日5分程度にも満たない僅かな時間、実験データの取得を行うあいだ限り、意識を目覚めさせられ、それ以外は、麻酔薬での意識混濁と共に、


死なない程度に身体を切り刻まれ、検体として、奪われ続けし憂き目にあう。


極上の餌と飼料に燃料。そして素材の原料として、伸びる爪や髪の毛でさえ再利用され、生きたまま解剖を繰り返される。


帝王切開で、生まれ出し胎児の如くうやうやしく担ぎ上がれた。ピンク色の何かを掲げ、濃厚豊かな肉の園が開陳される。


浅く切り出した皮膚に、黄色の脂質と出血を抑えるべく焼き切り開く電熱メスの稼働音だけが響く、手術室には、牝馬のごとき雌の叫喚がアンサンブルを奏でる響となる。


「はぁはぁ、温かい。手だけじゃなくて顔も埋めたい。猫吸いならぬ内臓吸いしたい。」


「博士ダメですよ。検体が雑菌に汚染されます。私だって我慢してるのに。」ほらっと


自らの盛り上がった何かを指し示す。


「はぁはぁ、美しい。スーハ―スーハー匂いがたまらん。ちょっとだけだからほんのちょっとだけだから。どうせ意思も精神も壊れている。今更...」


「だからダメですよ。雑菌で感染症を併発したら、危ない。貴重な検体なんですから」


「しかし、船の代表団が呼称した《慈聖体》...貴重な検体である。これをリアクティブジェネレータへと投入して生じたその研究結果には目を見張るものがある。」


「すでに有機物を違う形で生成できる物質の転換機としては認識してはいたが...慈聖体の片鱗を入れる事に極上の餌と重力の軽減のみならず反重力制御と膨大なエネルギー資源を


得る為の素材の生成を成功した、故に、我々人類は手に入れる事が出来た。」


「それを見つけたグレフエフスキー博士は、原因不明の自殺を行ったが、惜しい人を亡くした。だが福音は我らの手に届いた。」


「博士が最後に提唱した。その粒子を使用しての応用技術。」


「該当の粒子を縮退もしくは爆縮。若しくは加速器に駆けて圧縮して、更に、物質の転換機に突っ込んだところ、超弦理論の素粒子の振動を色々な形に変えられる現象を確認する事が

出来る様になった。」


「随時、放棄していた残骸ともう一機の試験機体への組み込み作業を試みている最中で、今からとても楽しみだ。」


(こいつらは、好き勝手な事をしながら好き勝手な事を言う。反論する事も叫ぶ事も、意味がない事と知り、ただ通り過ぎる事だけを夢見て、僅かな時間を無駄にしない様、沈黙と、乗機への介入と修復を気取られぬ様、作業を繰り返す。)


開く瞳孔と、内臓に肉の園に埋められし、怒張する指先を内蔵に這わせて堪能しつくす。その姿の瞳にから一筋の涙が零れおる。


そのピンクの肌の裏側の彩に、欲情する。検体取得者は、その暖かな内臓に手を埋め、何度目かの絶頂を果たし、萌える。


そして、申し訳程度に身体に繋がれられた。義手や義足、代替えの内臓を植え込められ、抵抗の意思すら薬剤による調整で、喪われて久しい。


唯々、宇宙を旅するステリス・クピドレス (Stellis Cupidores)の生きる糧としてのみ生かされ続ける。


無言の忍耐と意思の力を以て、絶対的な窮地に...


何も会話を行う人との会話が途絶えて久しく、


千数年の準備期間を経て、老人は、五分間の意志ある瞬間を解剖の痛みに耐えながら、徐々に大破しゴミ捨て場に放棄された乗機との思考の戦術データを形成し、


完全に破壊されていたその躯体を自動修復機能を駆使して補修を試み、其の作業を終えた。翌日に、最後の意思の力を以て、呼び出した機体を操り、今まさに日課の解剖に入ろうとした。


医師と研究者の身体を唯の肉塊として、処理を行う。


処置室に、汚いシミとしか形容できないその姿を、何の感慨を覚えず。


「世話になったな。お礼が遅れたが、気に入ったか?どうだ?」


「嗚呼、そうか...。それじゃぁ、もう受け答えは無理だな...」


躯体を操り、全てを書き換えるべく、飛翔する。


ステリス・クピドレス (Stellis Cupidores)は、理解する。貴重な検体を喪い。逃げた検体の行方から、これ以上の超長期間での宇宙航行は、困難とみて


この世界において、故郷の地球以外に人類の生息域たる惑星体を見つける事は、大海に堕ちた針を探す事と等しく不可能に近い状況となり、


同時に、地球圏への期間の可能性をその脳裏に過らせる結果となり。


そしてステリス・クピドレス (Stellis Cupidores)首脳部は、決定を行う。


既に千数年の時は経た。既に荒れた地球環境は、自然の復元力で、元の生息可能な惑星へと戻っているだろう。


逃げた検体を追い今から来た道を戻り、再びステリス・クピドレス (Stellis Cupidores)の繁栄を唄うべきだと。


それと同時に、生ずる問題が発生する。


調停者たる老人が、地球圏へ訪れるならば、同じくその支えを喪った彷徨うステリス・クピドレス (Stellis Cupidores)も、地球圏への向かうという悪循環に


されど、其の脚は、阻めない。



悲願の脱獄を果たし、刻は流れる。


■調停者side


しかして、その決定的に世界が壊れた日々を境に老人は旅をする。全てを変える為の最初の渡航は最悪の失敗により終わった。


故に、一案を考える。通常の時間遡行では、過去に行けば、別の分岐点の未来が形成されるだけで、根本的な解決はないが、


無数に存在するどれか一つの世界と彼ら彼女らの命は護れる。


だから、一つの選択を老人は行う。不完全な"Unafraid Arbor Sacrifice Drive"(アナフレイド・アーバー・サクリファイス・ドライヴ)の完成を見る為に


自らを生贄に捧げるという行為に駆り立て、その一回目の過去遡行による世界線の分岐が終わる。


それは、


二回目への序章...


アンフォールンダウンその日、地球の大地と空に向かって、巨大な隕石が降り注いだ。

巨大隕石の飛来をいち早く察知した、一部の人間達は、核ミサイルでの破壊を試みるも其の手立てが、無畏に終わると理解ると、

早々に、地球に見切りをつけた。特権階級と呼ばれる数少ない人間達は、自らの家族と身の回りの少数の人を伴に、宇宙へと退避し、新天地を目指し探求の旅へと消えた。


その後、阻止限界点を超えて地上に墜ちた隕石による長い長い冬を経て地球に残った人達は、見捨てられたことすら認識できずに、過酷な環境を乗り越え、千数百年後、それぞれの国を統合、連合国家を形成し、墜ちた隕石と伴にもたらされた、資材と燃料を手に再び宇宙進出を試みる。


時はUD(Unfallen Down)、落下した隕石の脅威を忘れないために付けられた其の名を持って、時は経過し、千数百年...UD(Unfallen Down)1979年


偽りの歴史の仮面は、目撃者のみがそれを記憶し、忘れ去られた。


舞台はそれより約十年前である時はUD(Unfallen Down)1969年に遡る。


一回目の私は、もうダメだ。長い延命治療も、その術を持ち得たステリス・クピドレス (Stellis Cupidores)の元を離れては、維持できない。


徐々に身体が崩れていく。


千年以上の道のりを経て、来た道を戻るには時がたち過ぎたのだ。


時間遡行を流用した。瞬間移動で、時間と共にその顕現位置を、且つて暮らしたコロニー、ミーミルへと帰ろう。


覚悟は既にできている。何もできないでいるよりはましだと、且つての自分に声を掛ける。


どうやら、彼女に振られて酷く落ち込んでいる。何故分かれる事になったのか????おかしい。過去を改変したからなのか?


将又これから未来を変える事になる所為で、過去の理と因果が、曲がったからなのか?


通称テスラタイト...、自称、二コラ=テスラの子孫が作ったとされた。正式名称A²(エー・スクワード)ユニット。


この機体に残る。記憶媒体に記されていた情報では、如何に過去を書き換えたとしても


世界が保持する歴史の修正力によって、離れていたモノ同士はいずれ繋がるはずだと記されていたが、何が理由なのか分らないが、


今回の世界では、私の記憶にない現象が起こっているのだろうか?


これから過去の私の人生には暗い闇が混じるだろう...だが、いつか会えることがあるのだろうと信じて、私は後塵に託すよりほかない。


何故ならば、譬え別れ得ぬ世界であったとしても、寒冷化した地上では生きる術など無いのだから...だから私は、自らの記憶の全てを


この端末へと記そう。


彼女と別れて暫く項垂(うなだ)れる且つての自分をみやり、意を決して、声を掛ける。


「この罪深き、火の元も早晩、尽きる。明日この場所に、また来い。お前に、唯一無二の力を与えよう。」


(もう私の身体を維持する事が困難だ。早晩、この身体も崩れ去るだろう。その前に、お前に、与えなければならない。来い。此のどうしようもない未来を変えてくれ。)


「その時、貴様は自らの命運の行末を知るだろう。」


(喩え、報われなくとも、その運命を変えて、私に見させてくれ。)


「戦え、戦え、戦え、抗い、争い、この世のあらゆる理不尽と戦え、其処にしか、貴様の生きる路はない。」


(それより他に私と彼女達の生きる路はない)


「全ては…〇〇の為に…◯すべき命運を超えて、其の手で掴め、今のままでは唯のモルモットにすぎない。」


(全ては彼女の為に...死すべき命運を超えて、全てを助けるべくこの手を掴んでくれ。今のままでは唯のモルモットに過ぎない。)


「お前の後に続くものなど無い。唯己のみを信じ、そして全ての悪辣なる欺瞞に其の爪と牙立てろ。」


(お前の後に続くは、お前自身しかいない。自らを信じて、其の全ての悪辣なる欺瞞にその爪と牙を立てろ)


「折れた牙を継ぎ接ぎし、それでも前へとすゝめ。」


(喩え未来という過去に置いて、その牙が折れる運命だったとしても、)


「儂が与えられるのは…。だけだ…」


(儂が与えられるのは、次に繋げる為だけのこの骸と運命を覆す情報だけだ。)


「《 トゥ フイ、エゴ エリス(我は汝であった。汝は我になるであろう)》この言葉を忘れるな。己の命運は己で変えろ。」



この萎びた姿だ、お前は、何も知らない名も無き老人に、この機体を渡されたと思うだろう。だが、お前はいずれ私になるのだ


掠れる声も絶え絶えに語りかける其の言葉に、脆弱なる肺と内臓が悲鳴を上げるも、溢れ出す血潮を飲み込み自らの思いを吐露する。


その手足を義手に機械化した身体の一部もキシキシと絶鳴の音叉を鳴り響かせる。


長年の苦労から深く彫りが刻まれた貌と、野放図に髪が伸び、萎びた顔にも、確かな意志の煇を燃やし老人は告げる。


そして相対する青年。且つての自分を見て、承諾する旨の返答を聞くと笑みと涙がその眼下から溢れ出し、安堵のため息を漏らす。


最後に注意点として、端末の注意書きを熟読する様にとの言葉を残し、その邂逅は終わる。


一仕事終えた調停者は、コックピット内の壁面を開き、コックピットの背後に存在するジェネレーターへの点検通路を通り、用意していた起動コードを元に


この世界線に置いての、最後の改修作業へと入る。


その機体の中心部へと進んで行く。暗く仄暗く、通路らしき空間を抜けて進むと、そこには、やや開けた空間に出る。


其処には機体内部に開けた場所に降りるとかつての文明で使用された蒸気機関の火室の様に、開閉する投入口が垣間見える。


着の身着のまま、意を決して自らを炉へと投入する。それは最後に覗かせた表情は、確かな希望を胸に微笑んでいた。


其処に何の感慨も後悔も何もない。あるのはこの苦しみからの解放のみ。いずれ彼は知るだろう。全てが上手く行ったとしても、


待ち構える過去という名の未来の先には、裏切りの道がある事を


そして稼動する炉が吐き出したのは一本の樹木であった。


其処に残るは、天井から放射される陽光に照らし出され光り輝く樹木と人気のなくなった機体が一つのみ。


老人は言った。


且つて機体を手に入れた時の経緯を思い浮かべ、




三回目...


失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。


何故だ。何故彼女が死ぬ。前回の世界線での俺が経験した記憶では、彼女が死ぬのは、崩壊した世界のただ中で疫病と飢えによる病死の筈だった決して、あんな死にざまじゃない。


何よりおかしな点がある。元来た俺自身が、経験してきた事が事実であれば、あのUD(Unfallen Down)以前で飛来して来た。


隕石の数と規模がおかしい。少なくとも彼が最初に経験していた世界で起きていた隕石落下に、超巨大隕石とあそこまでの数の


隕石落下はない筈。


あんなものを防ぐすべのない人類は、本来であれば絶滅していたとしても可笑しくない。


考えられるのは過去の伝わっていた歴史自体に誤りがあるのか?


だが可能性として一番考えられるのは本来絶滅するはずの人類の未来を書き換えたその副作用か?


問題なのは地球が破滅する別の世界線を救ってしまった所為で、より歪んだ歴史が其の跡に続くことになってしまった?


どうする?どうすればいい?


するべき行動は、また同じことを試みるだけだ。今度は俺の番だ。


四回目...


其の話を嬉々として伝えてくる同僚に、表向きには何喰わぬ顔のまま、アイジェイスの背中に冷たい冷や汗が流れる。確か…の出身地がL2コロニーの…だったはず。


まさか?学生の自分、嘗て付き合いのあった彼女は、いつの頃か俺に何も言わずに去って行き、地元のコロニーへと帰っ行ってしまった。


其の理由は分からず。書き置きには、「ごめんなさい」の一言だけだった。


其処にあったのは、失望では無く。唯々、一体どうしてなのだろうかという疑問のみ。


それでも脳裏に過る思い出の似姿を思い浮かべながら、


時は経ち


喧嘩をするのも些細な事で、其れすら俺たちにはコミュニケーションの一つであった。


彼女が惚けて悪戯な微笑を仕掛けて、俺が戯れ、そして最終的にいつも俺が折れて、元の鞘に収まる。


そんないつもの一幕なはずだったが、それでも彼女は黙して帰らなかった。


彼女との関係を一言で言うと、お互いの嘘を嘘として、見抜きあい、それでいて、時に、素直でない


軽い嫉妬混じりの焼き餅を伝えることすら憚れた、


あたし好きな人が出来たんだ。それが彼女の口癖だった。


喩えるなら、遠き夜空に浮かぶ十字星。いつか地球から見えるであろう、その星を眺めて一緒に歩きたいと願いながら


ついぞ其の日は訪れなかった


未練はあると言えばあるのだろう、あれ以来誰かと付き合う事もなく無畏に仕事に打ち込み続ける毎日で、一度も逢いに行くこともなく、途絶えた連絡先を何時までも通信端末に残したまま、意気地なしにも彼女を追いかけて行かなかった。


届かぬ、何度目かの宛先無しのメッセージが帰ってくるメールを送るも、やはり結果は同じだった。


息を吐いて、当たり前のその結果に嘆息しながら、昔の伝で、連絡若しくは情報を…と思った矢先に、


此処までは前回での出来事と変わりはない。だが、細部の所々に変化が見られる。


どうして、最初の時系列では、死ぬ時期がズレる?前回の周回に置いての問題点は、人心を惑わす何者かの翳、


全ての元凶たるステリス・クピドレス (Stellis Cupidores)...。星に恋願う人々者どもの暗躍か?


五回目...


百四十二回目...

幾重にも重なる。思考の果てにその想いと事実に行き当たる。


...


...


...


...


...


...


西暦2025年...皆既月食を魅せる日に。


ケース羅睺の撃退は...部分的に成功。


但し...量子演算機が本来想定していたカウンターが、発動せず。その原因を探る。データ不整合。


量子演算の結果、対抗する術を持つ何者かが、何かの理由によって、欠如し正しい歴史との乖離を引き起こしているが、


未だその結末は、この物語では語られる事は無いだろう。辛くも辛勝を捥ぎ取った我らが人類は、今後の生活に


...


...


...


となったが、奇しくもその年の冬には、現存する人類は地球上で生息は困難と判断。


そして一つの結論に至る。埒外の天災によるカタストロフィを回避するその術を産み出したのは、


出所不明の技術を転用しての新天地を探す旅へと出る事。


星に恋願う人々は、新天地を求めて宙へと飛び立つ事となる。


そして、そこからが、星に恋願う人々の旅の始まり、そしてそこからが、我の地獄の始まりだ。


人は人の命の味を覚える獣と化した、


この世界線には、秩序を守りし、杜人は、存在せず。世界に名を隠す様な、且つての何者かの姿も無い。


ただ其処に在るのは、放射能を吸収し冷却し、超伝導を備えし...核融合炉の実現に寄与した。


超伝導放射能吸冷却材(Superconducting radioactive coolant)


SRCと名付けた、その素材の生成に成功した名も無き科学者の遺稿が僅かに残るばかり、


A・A


その人物の死により、本来あるべき結末から大きく離れる事となる。この世界線に置いては、人類には遥か外宇宙より迫る


害意に対抗する術はなかった。



・・・


・・・


・・・


しかして、二つの螺旋は交わり、物語の続きを喰む。


嗚呼、どうかこのまま夢見がちなまま、もう少し夢を見させてくれ


知るべきだ。全ての悲劇はこれより始まる。互いに互いを想い。自己犠牲を重ねる毎に、状況とその結果が


複雑に絡み合いながらも、その姿と結果を変え、決断の時を強いる。


物語は、奇(起)、傷(承)、天(転)、末(結)の姿を見せ、流転する世界の様相を変え続ける。


その奇妙な始まる起点から、産み出される傷が示す承ずる意味は、転じる天の輝き以て、その末を帰結させる。



男は唄に耳を聞かせて、詩を謳う。


俺は、彼女の残してくれた唄を噛みしめる様に聞き惚れる。死と隣り合わせの暗闇の中で、其れのみが、無明の闇を歩く


替え添えとなる灯台の光。


詩を謳うのが好きだった。唄を唱える姿が好きだった。


未だ残るのは数篇のかつて残した唄のみ、残された唄を聞くことが、周りの喧騒や死の恐怖を紛らわす一助となっていた。


それでも男は謳う様に詠う。



「俺は、自らの矜持に則り、宣誓するぞ。何が真実は俺が決める。何が偽りかはお前が決めろ。」


「その時、貴様は自らの命運の行末を知るだろう。」


「戦え、戦え、戦え、抗い、争い、この世のあらゆる理不尽と戦え、其処にしか、貴様の生きる路はない。」


我は、もっとも遠き、新しき一人、その解に、問いを混ぜ掛け、問い願う。


君は果たして、その答えに辿りつく事は出来るのだろうか?


さすれば救いの御手は、その音声(おんじょう)に乗ってその耳に届くだろう。



・・・


且つてこの地球には、無数の国家と人喰いなど、存在しない。比較的穏やかな世界が広がっていた。


其れなのに、天罰の如く天より舞い降りた到来者の翳は、其れ迄、相まみえる事はなかった。


其れなのに、事態の凡そのアウトラインを知るには、拘束からの脱出までの時期を徐々に押上げ、


時間的余裕を産み出し、何が彼女を殺すかの理由を探るには、幾重にも重なる時間の旅を経る必要があった。


その片鱗を知るには...メタマテリアルの一種であるテスラタイトの異なる時空の情報を集積する特性を使っての情報収集を試みる。


数年間の猶予を以てテスラタイトの一部を事前に受け渡し、観測できる情報の精度を上げていく。


・・・


・・・


・・・


■アスミside


???回目の世界に置いて

黒いジャケットを羽織り、タイトな黒地のコルセットに、ショートパンツを合わせたスプライシングスーツの装いの長めショートの女性は、


ぱっとみ、少年にも見紛うのはこの世でただ一人だけだよと豪語する程の造美の顔立ちで彼女は、


月の裏側にいつの間にか建造された都市で、窮地を脱した、仲間達と共に、襲撃者たちの領域からの脱出を試みる。


それは私たちが知る。報告を受けるより遥か以前での話。


拘束された施設からの脱出を果たし、月面都市へとその暗躍の痕跡を、探る様に試みを行う。


何とか脱出する事は、叶ったものの一緒に脱出した仲間達は、新鮮な空気と水を貪り、飢えた糊口(ここう)を凌(しの)ぐため、確保した食料を食する事とする。


仲良く分け合い。そして...苛まれる飢餓感を耐えながらも、飢えた仲間からの襲撃を受け、逃げる途中でその命を散らす。


更に???回の思考を経て、有る時は施設からの脱出に失敗し、死亡。死亡。死亡。死亡。死亡。死亡。視るに堪えないその結果に、思考が鈍化する



■調停者side

???回目


時系列を遡り、現実の問題を解決するべく調停者は、分かった事実を声に出し検証を仕掛ける。


判った事実は、UD(Unfallen Down)1969年の時点でこの世界に介入したとしても、彼女を助けるには間に合わないという事実。


故に事前に、施設からの脱出に必要な。フリーパスの開発と譲渡を試みる。更には、顕れる裏切り者の所為で、春幸が死んだ。


裏切り者が誰か、探る必要がある。


???回目

仲間達へと、此処で流通する空気や水は、主に月のレゴリスを加工して精製されているので、問題がないが、食糧は、絶対に食べては、いけないよ。


と警告に似た注意を言い渡す。


(これは前回のやり取りで知った。空気や水は問題ない。問題なのは食料...それは、廃棄された食糧倉庫を探せば...それは前回で把握済みだ。)


「だが、隔離施設から抜け出して、何も食べてないんだ。一個ぐらい良いだろう?」「ダメだよ。戻れなくなる。」


指の爪を噛みながら次善の策を練る。どうすればいいの、このままだと...彼が、死んでしまう。何度やり直しても、私を助けようとして、絶望的な戦場へと無謀な突撃をして、彼が死ぬ。何度やり直しても結末が変わらない。その結末を変えるには...一体どうすればいいのか?


(前回は、私の居所を知らせた所為で、彼が、単独でクピドレスの大群に突撃して、嬲り殺しになった...)


(私が...私が居所さえ知らせなければ、彼が死ぬことはないが、何故かどこに居てもクピドレスは私たちを襲ってくる。)


(何故??毎回潜伏地域を変えているのに、何かを目印にして追いかけてくる。)


・・・


(月の都市の外れにある南の寂れた宇宙港への襲撃計画は既に練っている。問題は前々回で逃げ遅れた。敵地に潜入した彼が、掴まって死んだ。)


(彼を逃がすには、もう一手、工夫が必要だ。)


(彼だけに分る暗号...思いつく事は...詩しかない。警告の詩を残して気付いて貰えれば。)


...


また、彼が死んだ。


...


彼が逃げるには、逃げる為の足が必要だ。現場で何か使えるものがないかと?彷徨い歩き。壊れた作業用ローダーを見つける。が直す為の技術がない。


其の為、何回か繰り返した世界の中で、私は、技術者への道へと踏み出す事にする。


この世界ではダメか...。と手に持った銃口を頭に向け引鉄を引き絞る。


パンッ


何故か、私は、何度も世界をやり直す毎に、悪夢のような夢を見る。そして目覚めると同時に、且つての記憶を思い出す。


これは現実ではない。其れは分かっているが...私は技術者としての知識と技術が必要だ。だから、其の為、昔から夢見ていた。歌い手としての夢を捨て、


何回か繰り返した世界の中で、私は、技術者への道へと踏み出す事にする。


適正に合わない職業に四苦八苦して、それでも何度も繰り返し、彼を救う為の技術と知識の蓄積をひたすら繰り返し、彼の為の詩を描き、彼と、


此れから産まれる息子の為に唄を詠う事とする。私のこれからの旅路は、あまり時間が残されていない。


事実、それが終わりを見せた後の方が長い。出来れば自分が生き残る術を模索して居たいが...私が救われると、彼や息子が死ぬ。



■調停者side

???回目


上階から兵士たちの声が響く「侵入者はどこへ行った?この先は行き止まりで古い廃棄場しかない。ゴミと廃棄品以外何もない。袋小路で終わりだ」その愚にもつかない愚かしい行動を嘲笑い。


目標の確保に一歩前に踏み出したところを、古びたシャッターを突き破り、壊れて放置されていたはずの作業用ローダが眼前に、踊りでる。


疾走する作業用ローダーのコックピット内では、今も響かせる詩が流れ続ける。そのありあわせの部品で作られたその機械を抱え、その不思議な状況において彼女の意思を感じ取る。


何故かあの場所にこれがあり、故障中と書かれていた張り紙は何者かの手により、破り捨てられて居た。


その不思議な状況下で廃棄されていたはずの機械をダメもとで始動してみると、やや頼りない稼働音を上げながら、握りこんだ操縦桿に確かな反応を返す。スラスターをひと吹きさせ、


ややバランスを崩したものの、荷重を傾け、重心を変えて湾曲するスロープを駆け上がりながら途中で右往左往する兵士を薙ぎ払い、地上へと飛び出す。


報告を受けたジンボ=ルダカは、訝しむ、なぜ廃棄したはずの作業ローダーが動いている?


そう言えばここ最近、警備用のカメラにゴーストが映り込むという噂話を聞いたことがあるが、それが決まって、廃棄された建物や、我々が把握していない区画の付近で有る事が多い。


随分と前に、南の宇宙港で、薪の脱走騒ぎが起きていたな?


それらと何か関連があるのか?あれは確か、月の裏側へと向かう途中で撃墜されたはず。頭の中でそれらの情報を組み立てて、捜索対象地域を絞り出す。


コルムナ・パーキス(平和の柱)を抜けて、飛び出した作業ローダーは、月の薄弱な重力をスラスターのひと吹きで其のくびきから、解き放たれると、一路、自らが乗ってきた機体のある方、月都市の南部へと向かってひた走る。


その背後から、複数の《ピスハンド》が追従してくる。この機体では、武装もない、飛ぶのがやっとの廃棄品...対抗できない..追いつかれれば...脳裏に死がよぎる。


それでもめい一杯の速度で飛翔し、向かう先で、何故か、断続的な、爆裂音が鳴り響き、古いレコーダーから、その懐かしい声が、響く。


「やぁ、久しぶりだね。僕の子豚ちゃん。君が僕のこの声を聴いていると言うことは、もうそこには、僕は居ないよ。」


「その頃には既に月の裏側に移動してる。僕の予測ではひと悶着が起きて、その痕跡が残っていると思うんだけれども、それでも君は僕を追いかけてきてはダメだよ。」


「嗚呼、なんで逃げないのか?そう思うかもしれないけれども、僕も忙しい身だからね。やる事があるんだよ。」


「君はまだ知らないかもしれないけれど...僕の子豚ちゃんによろしくね。」


「それから、《静かなる都》(ウルブス・トランクイッラ)には、犠牲者はもう残ってないよ。すべて月の裏側まで今頃逃げている。できれば月の裏側に居る抜け出してきた人を回収して欲しいな。君の事だから準備はしているだろうけど、重ねてよろしく頼むよ。」


「それと...」


「僕は、君を愛してる。君が誰と居ようとも、僕の隣に誰が居ようともね。然様なら。」.........



■調停者side

三万三千四百四十回目


久しぶりに聞く彼女の声を柔らかく、涙と嗚咽が込みあげてくる。なにかと口にしようとして、町の至ることろで、爆発が起きる。(。´・ω・)ん??なんだ?


熱源と周囲にアルミ箔らしき破片が舞い、何処からともなくダミーバルーンが射出される。チャフ代わりとなったそれらの破片が、《ピスハンド》のセンサーの邪魔をし


周囲の助けを求める市民の要請により、その動きが、消火作業へと置き換わる。これなら...


きっと彼女を助けられる...


だが無情にも、その結果は芳しいもので終わらなかった。



今回の裏切り者は、ソッチ=コッチとアッチ=コッチの二人だった。何故彼らが人喰いになったのかの理由はわからないが、


必要以上の交流は避けて置こう。


念の為、彼らの家族構成を調べ、暗殺を行う事も考慮する必要がある。


それよりなにより、この窮地を覆すには協力者を得る必要がある。


次回は、脱出から現在、過去、未来と、その歩むべき道を歩む途中で、彼女を救う為の根回しとして、


アンフォールンダウン以前の時系列の改変は、もう一度、戦闘を行いながら、迎撃を行うのは...難しい、何故ならば、私の与太話に同調し


参加するに至る人間は、恐らく彼らしかいない。


荒廃したあとの世界から、捕えられた時系列からの離脱も、毎回上手く行くとは限らない、自然と繰り返しの起点とする特異点を


選定するとなるのは、未来の結果を観測した直後から、過去の自分に、新しい機体を渡すまでの時間に固定する事にする。


それ以外の干渉は危険すぎる。


だが、協力者を募る為に、遡る時期を、受け渡すよりも更に十数年、遡り、其れ迄は便宜上、調停者を自称していたが、


本来の役割としての調停者としての働きを開始する事になる。


クピドレスが長い旅路から、地球圏への帰還を果たして、時代の翳に隠れて暗躍する時期は、未だよくわからないモノの


特異点として規定する時期から、数十年から十数年前後とみる。


往路を繰り返すに至り、行きと帰りで、時期が微妙に異なるのは、時代を追うごとに技術革新を得て、その工程が短縮されたのであろう。


故に私が行う事は、この機体の性能を使い。


いずれ決戦の時に、有用な人々への勧誘と協力する為、各地の紛争の調停と、協力者に乗せる為の機体の作成を試みる。


協力者には、クピドレスに強い憎しみを持った人間が必要だ。


その内の数機は、紛争の停滞に寄与したものの凡その機体は、悉くクピドレスの手により破壊若しくは鹵獲される。


乗る人間の選定にも苦慮する事になる。協力者には、クピドレスへの強烈な怒りを持ったものが必要だ。


其の為、彼の息子を助けるチャンスがあったにもかかわらず。私は、見過ごす事にする。その候補者の姿を、遠くから観察する。


ヴェニ=ヴィディキは、衰えた肌の眉間の皺をも見ながら、それでもその頑強な、眼に映る憎しみの炎を燃やし続ける。


その男の形相に、自らの人選に間違いがない事を知る。


其れは豪雨が降り注ぐ、都市部の外れ「大佐ッ!!!ご足労アリガトウゴザイマス。ご子息の消息は...。」やや、笑いをかみ殺した様に告げる。


部下の声に、声音を出さずに答える。


「それは良い。良いから機体を見せろ。」そこには、風雨にさらされたヴェリタスの淡いクリーム色の装甲が何かに炙られたように、剥げている。が、


そこには解放されたコックピットに残る。液状の何かが漏れた様な跡がシートに残る。それにふれ、まだ温もりがある...。


その匂いを嗅ぎ、その異臭の正体に思い当たり、酷く落胆する。


任務を放棄しての敵前逃亡…それは、軍人である自分には赦せぬ所業。


「良い、探すな。軟弱ものに帰る家など無い。」そう震える手は、何も考えられず。


憤怒の表情の侭さる。幾年か後に、日々の任務に忙殺されたある日、私はその男と出会う。


渋滞に巻き込まれ、自らの足で向かう事を選択した、道の途中。


まるで私が、そこを通るのをはじめから知って居るかの様にその老人は、立っていた。ボロボロになった外套の端から覗く手足が、金属製の義手義足が見え隠れする。


「なんだ。放浪者か?私に何用か?」


「その罪深き、怒りも早晩、真実を知るであろう。明日この場所に、また来い。お前に、唯一無二の力の断片を与えよう。」


「その時、貴様は自らの命運の行末を知るだろう。」「戦え、戦え、戦え、抗い、争い、この世のあらゆる理不尽と戦え、其処にしか、貴様の生きる路はない。」


「そして奪われた大切な何かの行方を知るだろう。」


「人は、儂の事を調停者と言う。」


(調停者だと?あれはお伽話の話の筈だ。いったいこの男は何を言っているのか?)


(貴公の息子は、敵前逃亡などしていない。逃げる味方機を庇い。殿を買って出た末に、力及ばずコックピットを無理やり開かされ、生きたまま体液を吸われた。


異臭は裂けた内臓の内容物が漏れただけだ。彼は最後の死ぬ一瞬まで、抗い闘い続けていた。故に親たる貴公に白羽の矢をさしたのだ。)


(許せ...)



そして回を繰り返す毎に裏切り者と協力者が、回数と時機を追うごとに様変わりする事に気付く、だがこれで私が止まる事は無い。



sideアスミ視点

???回目


一方、月の裏側の都市部では、数人の人々を引き連れた。黒葬の衣服に身を包んだ女性が、長らく放棄されていたであろう食料倉庫の一角に、居を構える事に成功していた。


おそらく月都市を占領したときに回収したものの《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)が捨てるわけにもいかず扱いに困ってこの一角に放棄したのだろう。



目的の場所を探るため、単身、各拠点や設備を渡り歩いて、宙に向かって定期的に、メッセージを送りながらこの数か月、ここを拠点にして活動していたが、一旦、此処からは別行動にしよう。と、走り書きしたメモ帳に、道すがらで出会うであろう難所と、扉のロックを開ける為のキーワードを書き記し、


問題は途中の生体認証をどう潜り抜けるか?途中で眠りこけている兵士がいるから、捕らえて、開けさせるんだな。というのは冗談でこの生体偽装マトリクスを渡しておこう。奴らは、該当の生体認証を排除できない。それをしたら《聖痕》持ちすべての認証が不可能になってしまうからね。



あとは君たち次第だよと、突き放すような、言葉を告げるが、まぁ、その必要はないだろう。と、夫婦二人組を指さして、「君達なら恐らく抜けられるよ。外崎さん。」と、告げ、「あなたはどうするんですか?」


「僕は、まだここでやることが、残ってる。こんな面倒事は他人に任せたいんだが、そうもいかないみたいだ。」「アスミ…せっかく逃げ出したのにお前が行かなきゃいけない事なのか?」「貴方…お父さん。是は私がやらないといけない事なんだ。あとで追いつくから、みんなと一緒に先に行っててよ。」



後ろ髪が惹かれる思いで、別れ、唯一人、基地内部の重要区画へと滑り込む様に戻り、心配そうなその姿が消えるまで眺め、そして歩み出す。


この区画には、巡回する兵士の姿があるが、その歩調、向き、息を吐いて休むタイミングの全てを予め把握、兵士たちが後ろを向き、監視カメラが別の方向を向いた瞬間に駆け抜け、手早く生体認証を行いパスコードを入力する事によりそのセキュリティを突破していく。


幾度目かの通路を曲がり、いくつもの区画を抜けていくと、既に深夜を回り、区画の灯も落ちていた。ぐるりと、回る。数体の威容を魅せる。その壮観な素体。


それぞれの機体の前には、何かの文字が掘られたプレートが覗く



設置されていた端末で、それらの機体情報を確認すると...。


《アンブレイカブル》(Unbreakable)・・・1.壊されえぬ者…機体特性・・・破壊不能...。武装各種...。


《アンフェア》(Unfear[fair])・・・・・・1.恐れざる者…機体特性・・・


《アンタッチャブル》(Untouchable)・・・1.触れえざる者…機体特性・・・接触不可


《アンレコニング》(Unreckoning)・・・1.裁かれぬ者…機体特性・・・


《アンタレス》(Ant Ares)・・・1.火星に対抗する者…機体特性・・・


《アンギフテッド》(Ungifted)・・・機体特性・・・与えざる者…機体特性・・・


.........


十三番(XIII)…欠番・・・《アンチェイン》(Unchain)・・・繋がれざる者...機体特性・・・



端末にはそれぞれの機体を指示すコンソールの数字が徐々0へと向かってカウントダウンされ続けている。やっぱり…機体の封印が...解放されそうになっている。


その原因は、分からないけれども、これらの機体は事実上、通常の兵器での破壊は不可能。


爆薬を仕掛けたとしても、恐らく表面を焼け焦がせ、煤まみれにする程度の事しかできない。


僕は、これに再び、封印のロックを仕掛ける為に、其の為にここ迄やって来た…


ロックは再び仕掛けるには...この生体偽装マトリクスと、登録者の音声入力か手動でのキーワードの入力が必要になる。を決して、端末上に踊る文字列を組み合わせ、再度の封印を試みる。


あとは...この月面に存在する未来の機体は六体のみ...残りの六体は、敵の本拠地に収監されている。


遠隔操作での接触を試みるが...やはり、404ERROR NOT FOUND...接続を拒否される。「うーん、やはりこれは残りの六体を封印するには直接行くしかないね???」



諦めにも似た、ため息を吐き出して、思い出す。


この光景は、君が僕に、見せてくれたモノだよ?厭世家だった僕を変えたのは君だよ。と、


ふと、小さな手が握り返してくる光景が過る。


君の両手に抱きしめられた、感触を思い出し、彼の気配を確かに感じるけれど、もう行かなくちゃ。


貴方に会わなければ、こんな想いを知る由もなかった。でも、貴方に出会えてよかった。譬え、もう...逢えなくとも...それでも僕は、君を想う。


懐を探り最近収録した音源を時限式で仕込むと、後ろ髪を引かれる思いで、月の重力に惹かれながら、一歩月の大地を踏み出しその場を後にする。


この僕の力も年々落ちてきている。息子が宿った時をピークとして、年々その力が落ちてきている。


恐らく彼と媾(まぐわ)ったあの時に、移ったのだろう。


ふふふ、これは秘密だぞ。きっと君も気づいてない。


彼が何故欲せられ、そして何故あんなに...それは、別に宇宙の核心に触れて意識が拡大された訳じゃない。


彼は知らないが、彼の出身は地球だ。血筋も調べたが、特に其の血が特別な訳でもない。



だから、かつて新しき人類と呼ばれる其れとは真逆の人間だ。だから、彼が進化したんじゃない。


新しい僕らが退化しただけなのかもしれない。だが、それでもまだ出来ることはある。必ず僕が、君を殺させないよ。


だから、君も...


場面は暗転し、急ぎ奔る黒衣の女性は、停留中の輸送船を奪取して、隣接する宇宙港から、半ば無理やりに出航を果たす。


遅れて、同じように離脱していく艦影に向かい。《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)の追撃が迫る。


戦闘中のアイジェスは、仄かに香る。懐かしい匂いを感じ取り、そして、その香しい香りが流れてくる方向を見る。


其処は遥か彼方の月面の裏側だ。


それは何度見た擦れ違いの光景であった、


■調停者side

9?998?回目


問題は、不要な未来の情報を過去の自分に与え過ぎていたと仮定し、時間と状況毎に解放されていくように再調整。


そして、どう繰り返したとしても、彼女の死は変えられない事実に涙する。


もはや考えられる方策は一つしかないが、私にはそれを行う勇気がない。もう二度と彼女に彼らに逢う事が出来なくなるという事実に震え、


これまでの事実は知ったままでは、その判断を降すことがどうしても出来ない。


あとの事を、後塵の私自身に任せる事とする。


その為に、テスラタイトの存在も既知の事実を次回の私には知らせない事ととする。


三千世界の鴉(己)を殺し、世界を旅して、君と朝寝がしてみたい


【そして、貴様はこの事を、全て忘れる。その時が来るまで...。は、静かに眠れ。】


【朝日夢みし、その繋がり容易く途絶えず、努々撃ち捨てるな】



sideアスミ視点

9?999?回目


指の爪を噛みながら次善の策を練る。どうすればいいの、このままだと...彼が、死んでしまう。何度やり直しても、私を助けようとして、絶望的な戦場へと無謀な突撃をして、彼が死ぬ。何度やり直しても結末が変わらない。その結末を変えるには...


十三体の未来の機体の内、未来の十二体が敵に回る。そうなれば...彼は助からない。


しかも相手が何千何万居ようとも、私の為に単騎で、突撃を躊躇なく行使する。まるで自分自身が一発の弾丸でしかないと規定する様に、


躊躇う事すらない。


何度も何度も、自分が死ぬことを知りながら、まるでそこに何よりも大切な何かが有るかの様に、星の数にも似た、光点が待ち構えるその死地に置いて、


何度繰り返しても無謀な突撃を繰り返す。


その死にざまの最後の映像すら、今さっき見たように脳裏に深く刻まれ、その光景をを思い出し、瞳に朝露の如き、涙が流れる...


どの世界でも、最後の死ぬ瞬間まで、私の事を想い。相手の一機でも道連れにする様に、相打ちを狙うその行動に...嘆息するべき想いの吐露を仕掛けて


弱音にならない程度に、飲み込みながら、


講じるべき答えと対策を探し、街を歩く。いつしかアスミ・貴南(きみなみ)は、テスラタイトを介さずに、


異なる世界の事象を観測できる様になっていた...だが答えがわからない。


涙と共に降る。一瞬の閃光が、何かを視界の端に捉え、



今一瞬なにか?


一緒に逃げ出した仲間たちと離れ単独行動をしていた。街の散策の中に置いて、月面都市の離れに、寂れた祠を見つける。


月面に?祠?嗚呼言う文化は地球圏の地上で僅かに残る風習だったはず。


これも何かの縁かと思って、ニ礼、ニ拍手...果たしてこれが正しい、手順と礼拝のやり方は解らないが、唯一つの願いを込めて祈る。


ふと、見ると、社の端に絵が描かれた木片の何か?これは確か聞いたことがある絵馬という奴か?


特に、代金を払う様な、箱が見当たらない。まぁ唯で使うのは気が引けるし、此処では無用の長物となった金銭のお札を社の中へと捧げ、


「これで代価として正しいのかわからないけど、こういうのは心の持ちよう。感謝の念が大切なんだよな。」と、誰かに告げるのか判然としないまま


その絵馬へと、自らの願いを書き記し、変わった絵馬奉納を試みる。


すると頭上より声が響く


「1番大切な物を捧げる覚悟はあるか?その覚悟あるのであれば、絵馬に人願成就と書いて、自らを捧ぐと誓約し血で拇印すればそれで契約は成立する。」


(神頼み?いや人頼みとは、些かあやふやな話ではあるが...)


「私の一番大事なモノ...それは、私自身とすることは可能かい?こういう寓話には、本人の意思とは関係ない代償を求めるって話が通説にあるからね?」


「可能だ...が...その願いを叶える為には、一度、と言わず、長い間■■事となるが良いか?私の...で、この世界の...を破壊する事は出来れば避けたいのだ。」


「その反意なき範囲であれば、融通する。」


「良いよ。先ほどの言葉に偽りはないかい?」


「偽りはない。とここに誓約しよう。君が誓うのであれば、これより未来に起こる。君の大切な伴侶と子の安全に寄与する事を此処に誓おう。」


...


意を決して、嚙み千切った指先での押印を果たし、すると、目の前で今まさに飾った絵馬が二つに割れ、そこに上から一言、声が響き渡る。


一陣の風が去っていく。


「最後に、この誓約と制約は、異なる世界を辿ったとしても、成就への応報は願われるであろう。代償は、...の命だ。それに変更はない。」


「ありがとう。」


これが一体何を意味していたのかは分からないが、心なしか、心に重く伸し掛かってきた重石の一つが外れる。


そして決意する次回のループには、贈られたテスラタイトに仕掛けを施し、欠片を別れ際に託した。古いレコーダーに隠して彼に返そう。



・・・


・・・


・・・


side調停者&アスミ視点


且つてのいちシーンいちシーンが、走馬灯の意識の中に映る。



【この事実は、貴様が身を以て知らねばならぬこと...故に...】


しかして、不吉を指し示す十三番目の季節は流れ、存在しないはずの道化師が、その目論見を顕わにする。


哀しげに涙する。その行為に、意味がなかったとしても、永遠は、確かにあった。


嗚呼、「君死に給うことなかれ」そんな言葉を吐き出して、君を抱きしめる夢を見る。


その理由わけを忘れていたとしても、その温もりは、今もこの手に残っている。


確かにこの手に残る、感触を何度も反芻し、消える君の背中を追い続ける。


どうか...嗚呼、どうか君よ。君よ。君よ。


散らないで、其の哀しみを、俺の手で払うから。


夏の日差しには、日陰を作り、雨が降れば傘をそっと差しだす。そして寒い冬が訪れたのなら、この手で温めたい。


青空は、今にも泣き出しそうな雨模様のまま、俺は君を傷つけるすべてを赦さない。


譬え、この身、この魂を、悪魔に喰わそうとも...


何度この道を違え様とも、他の何を犠牲にしたとしても、必ず、必ず...君を...


その言葉との決別の時が刻一刻と近づいてくる。


それでも、


【何度この世界をやり直したとしても必ず君を助け出す。】


【代々の自分より連綿と受け渡されたこの記憶に残された。彼女との生活と営みは、幸せと共に苦しみも同時にその胸に去来し得る】


【いつかの未来に置いては、共に子を為し、育てる事もあったのだろうだが、凡そ考えられうるパターンの選択肢と行動は全て、既に試しているが、


其の全ては失敗に終わっている。あとは、その記憶を持つことにより、阻害され得る可能性を検証するしかない。】


【今日も又君の名前をなぞりて、夢を見る。いずれ再会を望み、星に願い、神に祈るも、何も解決策が出ない。】


【既に、解決策の一端は、想像するも、どうしてもこの記憶がある限り、この決断が下せない。ならば全ての記録をこの端末に残し、万全を配して君の未来に賭けよう】


【問題は、その決断を如何に降せるかに掛かっている。】


【その決断を重く辛い。故に、今までの私たちにもその決断を降す事が出来なかった。であれば、この記録を秘して、次の自分に賭けるべく、苦渋の決断を試みる。】


【そして明日の未来の自分に全てを押し付ける事になる。きっと貴様は過去の自分を恨むことになるだろう。】


【導き出された決断の結末を未だ誰も知り得ないのだから。】


(今も、もがき苦しみ孤独に耐える。貴方に告げるよ。)


(きっと彼は私の事を許さないだろう。)


(貴方の代わりに死ぬことを選ぶ、私を...だけど)


(必ず、君を、君が守ろうとしたた全てを守って見せる。)


どうか私を信じて...私を見つけて、この手を取って...


(逝ってきます...)


去り行く背中を見送って、溜めた露が強かに、地面に波紋を波打つ。


...


...


...


...


...


...



何度繰り返そうが避けられない悲劇なら、其のすべてを壊して、作り変える。


そう決意する間もなく、場面は暗転し、然様ならを告げるその声すら聞き届けられない、無情に、


僅かに触れることすらできぬ、この距離と、時間の隔絶に涙する。


寄せては返す。波間に消される砂に掛かれた文字の如く、互いに互いを思って繰り返す振り子の如き行為が、


この世界の運命と命運を重ねて砕きシーソーゲームの様に、同じ過ち。同じ罪、同じ自己犠牲を繰り返している事実に、


気付かぬまま互いの時間は刻一刻と刻まれ、快諾する事の出来ない願いとして結実する。


...


...


...


嘆くには早く、希望を持つには遅く、諦めるには絶望と愛が足りない。


それでも俺は逝く。


彼女の待つその場所へと、歩を進める。そこに待つ結果を未だ知らず。


ただ、その隣へ、傍へと続く歩むべき道を探し続けている。


今も、昔も、そしてこれからもそれは続く、譬え君の隣を歩けずとも、


その幸せと、生きる喜びに振るいえていたい。痛い、痛い、居たい。君の傍に居たいよ。


鈍痛にも似た寂しさを抱き、あの時確かに繋いだ手を想い出す。


優しくあの時...眠る俺を撫でた手を掴むことが出来ていれば、どれほど...


唯一つ俺が願うことは。君の傍でただ眠りたい。


譬えそれが一瞬の夢の幻だとしても、その是非の答えを持つ者は、此処には居ない。


ざわつく心から、漏れる冷笑を噛み殺し、その牙を研ぎ、貴女を探し続ける。


どうか貴女は、消えないで、譬え俺の世界が終わったとしても、愛しい人、君だけは生き続けて、


彼女を連れて逝かないで...


(知ってるよ。でも私は一人で逝く道を往く、貴女と子供の為に、だから泣かないで、ずっと傍に居るから。)


…


…


…


時は流れ何度も繰り返したその悲劇に涙し、その光景に最良である選択肢を探し続ける。私たちはすれ違ったまま、


その悲劇を目にする。


促される様に、従者に引かれた椅子に座る、と続く言葉が飛んでくる


「我々の出した食事には手を付けないのか?勿体ない。」


「どうしても行方を知りたいというなら、出された食事を食すのは最低限の礼儀だぞ。」


(青葉は、食べるなと言っていたが...)


徐にその食事を手に取り、そしてひと噛みひと噛み、味あうように咀嚼し出された飲み物を飲み干す。そして料理に手を付ける。


「で、星は彼女は...何処にいる。会わせろ。」


「貴様の方こそ何を言っている?もうすでに会わせているぞ?この大気、この恵みをもたらす水、そして...」


「其のすべては...あのコロニーの生き残りたちで出来ている。」


「ダグザの釜の利用方法は本来、宇宙空間の飢餓を、途絶えただけで死にゆく定めを押し付けられる理不尽を覆す為に作られた。」


「貴様が何を探しているのかまでは、わからんが...」


死んだ?喰った?俺が?これは、戻るのか?いや喰ったら...身体が欠けている。


唐突に襲う、嫌悪感と嘔吐感に逆らい、目頭が、脳が熱く燃え上がるような灼熱の怒りと喪失感が襲い掛かってくる。


「ははッ喰ったな、貴様も此れでウィンディゴの一人になる。」


「一度、人を喰った獣は、人の味を忘れられない。餓えた熊が人里に降りて、人を喰らう論理と同じだ。」


「貴様には、遣ってもらいたいことがある。」


「だが、その前に、することがある。前回の保持者は、使い潰した結果、遺伝子マーカー情報を喪い、臓器の一部の培養しかできなくなってしまったからな。」

故に、今回は大切に使わせて貰おう。


「ふざけるなッ!!!!」どうすれば...救える。どうすれば逢える???必死に思考するが...答えは出ず。いつもなら語り掛けてくる。


声が聞こえない。どうしてだ?...を知っているはずじゃないのか?何故、こうなった?


「お前っ!!!!!」激怒し立ち上がる男を制するように声が飛ぶ。


「なんだ。貴様は、私を責めるのか?ハハッ何を言っている?お前も私を殺しただろ?」


「まさか、自分だけは奪われない、殺されないとでも思っていたか?」


「何度経験しようともビームサーベルにこの身を焼かれる経験は、慣れないな。」


いったいなんの話か?と思考を巡らせ、思い出す。


ジンボ???ジンボ少佐????鹵獲していた機体に乗っていた奴か?確かに見覚えがある表情だが、年齢が違う?


「ハハッ気付いたかね。知らないかもしれないが、《クシェドレ》の試験機にも乗っていたのだよ。」


言葉を切って、自らの優位を誇る様に語り始める。


「君は、臓器移植に関して、どの様な知識を持ち合わせているか?移植には拒絶反応が起きないように家族が最適で、次点で遺伝子情報が似通った人を探すしかない。」


「そして、移植された人物にドナーの記憶が混じる事がある。という事を、つまり遺伝子には記憶が残存している。」


「匂いが、貴様の...其の到来を告げるのは、人は、近親婚を避ける為、自らと似た遺伝子を持つ相手の匂いを...嫌う性質がある。父親が娘に嫌われる理由と同じだ。」


「不思議なもので、これは妊娠中では、反転する。身を守ってくれる家族の匂いを求めるのだ。我々には関係ないがな?今も貴様の匂いが匂うぞ?」


話が脱線したなと、話を区切り、確信を付くように語り掛けてくる。


「故に、我々クピドレスは、死亡する直前の遺伝子マーカーさえあれば何度でも蘇る。」


命は巡るのだよと。言葉を切って切り出す


「私は、ジンボ=ジンタ、一番目を名乗る。異星体、かつて地球と呼ばれた星より出でし、宙を旅して星を探す者。」


「そしてその罪深き、炉の護り手、全てを蹂躙し、そして、この船団を預かる裁定者。貴様の運命はここにきた時点で決まっている。」


「貴様には、我らが宿願の成就の礎となってもらう。」


「これは最後の食事だ、どうだ望みは叶えたぞ満足して死ね。」


その身一身で、大きく深呼吸して機体に乗り込むと、仄かにその光景が垣間見える。


彼女の去り行く後ろ姿が一瞬...その両目に映る。


久しぶりだね。だけど、ここでお別れだ。


僕の仕事は此処までだよ。一機、撃ち漏らしてしまった...誤算だ。一機だけこの場所に無いなんて...それでも最低限の仕事はしたよ。


だから君は、生き続けて欲しい。それが僕、私からの願いだよ。


哀しいけれど、此処で然様ならだ。


知ってたかい?君の他に好きな人が居たなんて、嘘だよ。


君に直接は一言も言えなかったけど、僕は君を愛していたよ。それはこれからも、僕の世界が終わった後でも変わらない。


どうか私を信じて待っていて欲しい。だから私を見つけて、この手を取って、もう逢えなくとも、私を見つけて、救い出して、


それが譬え、違う世界の話だとしても...


逝かないで...一緒に春の日向で、他愛もない話をして、秋の星空を見よう。


俺も、君を愛してる。君が誰と居ようとも、僕の隣に誰が居ようとも。然様なら、然様なら...そんなのは嫌だッ!!!


俺は、そんな君が、崩れるほど愛しい...

…

…

…

その事実に、揺らぐ、


【この事実は、貴様が身を以て知らねばならぬこと...故に...】


どうして??彼女はこの場所に単身乗り込んだ?その理由は分からぬまま、別れの時は訪れる。


震える手で、変わり果てた彼女の身体を抱きしめ、咽び泣く。


間に合わなかった...どれだけ急ごうとも、この結末は変わらなかった。


…

…

…

見慣れたその顔が思い出せない。


微笑む笑顔に、割れた硝子の様に亀裂が走る。


貴女だけが、居ないこの世界で、俺、何を想い生きればいい。


何をよすがに、歩けばいい。


天地が逆転する世界の最中で、その大切な世界の終わりを知る。


其処に一切の希望はなく、絶望の亀裂が心に走り、砕け散る。

…

…

…


邪魔だ。彼女を亡き者にした者どもに、鉄槌を。


譬え、殺戮者の汚名を受けようとも。俺は逝く。きっと戦うべき時は、今だ。


奴らは、他人を喰いモノにして、増え続ける。ここで全てを終わらせる。


誰一人、逃すことなく、其の全てを撃ち滅ぼさん。



逃げ惑うその後姿を目視する事もなく、把握し、その行為に対して、言葉を紡ぐ。


人喰いカルニヴォルス (carnivorus)共は、口では仲間が大切だというが、所かまわず、味方を巻き添えにして、なんの準備もせずに死地に送り出し、フレンドリーファイアーを繰り返す。


其処に一体何の理がある。正当性があるのか?


幾ら死んでも、再生できる。その生に、一体どんな意味があるのか?人の価値は、その歩いてきた道で、どんな事をしてどんな選択をする。それは、ただのエゴだったかもしれない


でも、生きていて欲しいと願う。その願いを踏みにじり、嗤うお前らに、なんの価値があるのか?


もう二度と声が詩が聴けなくなるなんて、考えただけでも、千地に乱れて、心が砕けていく。


欠けた月は、二度と戻らす。生み出される引力に引かれた悲しみは、


悲劇の潮力を生み出す。俺は今からお前らを殺す。何の呵責もなく、そしてなんの慈悲もなく。


それを引き起こしたのは誰でもない、貴様ら自身だ。


一瞬、いつかみた夢の欠片を思い出す。重ねた会話は言葉少なく。


呟く、


僕が君を愛するのは、君が君のままで居るから...喩え、且つての繋がり方とは違かったとしても、その根幹に在るモノは変わらない。どうか僕が死んでも君は君のまま居てね。


約束だよ。


まぁ、でも、偶には、素直に声を伝えてくれると良いんだけどね。


あれは、いつかの...を重ねた時の話。


どうか、殺意の引鉄を引いたとしても、あの時のままの優しい君で居て欲しい。


それが僕の我儘だとしても...


その声に答える詩は未だなく、それでもその引鉄を引き絞る。



《エーリヴァーガル》背にして、戦うアイジェスから離れる様に、自爆する味方と友軍機を楯にしつつ、時に防御の薄い位置も巧妙に魅せつつ、その位置を変えていたのか?


その狡猾な、その手をその目を、その耳を討ち果たさんと、転進する。


貴様らは、何故奪う。俺から何故彼女を奪った。その理由を問う意味も、もはや無いのかもしれない。


だが問わずにはいられない。


それは、途絶えた詩を繋ぐ、報復絶答。その答えを問う。


「だが、どうしてだ?彼女を奪った?何故多くの人々の命を奪った。分けあうことが何故出来なかった?」


「貴様に答える答えなど、何もない。全ては、我らが貪る餌えに過ぎない。」


「彼女を消したというならば、何故俺を殺さなかった? 」


「貴様らが人喰いと宣う。我らクピドレスが目的は一つだけ、この餓えを満たすこと唯一つだけだ。」


「そうじゃない。俺が聴きたい話はそんな事じゃない。」


(通信可能距離まで、捕捉されてる...)と、会話を仕掛けながら、自らは旗艦の専用機のコックピットと兼用のだ脱出艇に滑り込む様に、入ると、


言葉を続ける。


「そうか貴様は、仇を殺すための理由が知りたいのだな、何を甘い事を貴様らに正義などはない。あの女が死んだのも何もかもすべては貴様の所為だ。」


「すべては潜入した《オーグル》が知らせてきた。それを有効活用しただけだ。」


そもそもだな?と諭すように語り掛けるその声に、苛立ち覚えながらもその通信に耳を傾ける。


「それは我らが生き続けるのに、絶対的に必要なものだ。それらは全て我らが活用する資源だ。人は、お前たちじゃない。我らが人間だ。」


「ステリス・クピドレス (Stellis Cupidores)...クピドレスであらずば、人ではない。」


「人ではない薪を燃やしたとして、貴様らはその抗議に耳を傾けるのか?」


「貴様らも豚や牛を喰らうではないか?何故、我々だけ非難をする?」


「嗚呼、そうか...良く分かった。」


ならば俺も一切の呵責なく、其の断頭台に手を掛けよう...


もしも、逃げ迷い、惑う者が居るのであれば、時間は与えた。既に逃げているだろう。


…


彼女を奪われたこの痛みが怒りが貴様らに解るのか?


大切な者を喪った事のある人間は、人の大切なモノに対しても敏感だ。それは...喪った哀しみが分かるから、


別にそれが強さだと言う気は毛頭ないが、その痛みを知らぬ者に負けてやる道理はない。


俺は、この怒りを胸に、冷えた頭で考える。自分がこれから熾す事は、後世では、虐殺だと後ろ指をさされる事だろう。


だが...こいつらを生かして置くわけには行かない。


「覚悟しろ、裁き討つぞ。」


なぁ、アスミ、いつも、口ずさんでるその詩、なんだ?あまり聞いた事のない言い回しを使ってるしそれでいて不思議な語感を感じる。


「嗚呼これはね、僕が、謳う。連作の御唄だよ。そうだね。無法者の詩。とでも名付けようかな?」


「おいおい女が僕って、男と間違われるぞ?」


「やれやれ、君も偏見が過ぎるな、可憐な僕を目の前に、男と見間違える様な人間は、此の世に君しか居ないよ。」


「無法者て?物騒だな。」


「で?その詩は誰の事を詠ってるんだ?」「それはね?秘密だよ?」


(僕が唄うのは、君とこれから生きる事を夢みし、その想いをそこに込めた。誰に伝わらなくとも君に伝わってくれるなら良い。)


(この全ては、君という名の無法者へ贈る。ラブレターいつかその感想を僕に聴かせてね。)


(だから私は当てもない詩を歌う。)


(その言葉の端さえあれば、強くなれるから。)


...


...


...


俺は唯の無法者だ。その詩を聞く資格も、願いも届かない。


周囲には、自らの勝利を確信し、群がる虫、虫、虫。


其の全てに、鉄槌を、魔女と呼ばれて捧げられし生贄に、その身を責めるのではなく、その災禍を、火刑台へと送り込み嘲笑る異端だと大義名分掲げるすべての人間にたいして、俺はその引鉄を撃つ。


俺は全てを超越者たる神様じゃなくて、悲しむ誰かに寄り添う、人間になりたかった。


ただの怪物だった俺は、そんな人間になりたかった。


何故ならば、神は隣人にはなれないし、雨を止める事は、出来ても、神様でいる限り、傘を差して、一緒に雨に濡れてはくれない。


誰かの代わりに泥に塗れる事はしない。


だから、唯一人の今泣いてる君の隣にいる人間でありたかった。


だがその祈りも嘆きも、悲しみもすべて消えた。


だから俺は、殺戮者になる。


そう誓った。星降る夜の闇の中で、その宙域に迫り離れて行く。二つの軍船と一つの集団が離れ、近づいてくる。


それらは、宵闇の宙を貫く、消えゆく星の翳を仰ぎ見て、その異常事態を観測する。


その光景を見て、今回のループが、今までにない結末を知らせる事を感じとりながら、


調停者の意識が鮮明になりつつもその声が徐々に強くなる


そして僕らは、何故故に無法者と名乗り、その本当の意味を知る事となる。



・・・


・・・


・・・


今一度、その名を名乗ろう。縛られる事の無い自由を唄うモノではなく


唯、彼女が名付け詠ったその名の通り、無法を飾るその名を、俺はその通り振る振る舞おう。


もしもこの物語が、歴史の波間に消えたとして、譬え一瞬でも君の記憶に残るのであればそれでいい。


俺は何も特別な存在でも何者でもない。


人は結局分かり合えない、でも、解ろうとする事は誰にも出来る。それが出来ないのは、進化する事を足踏みした訳でも、


周りの一部の人間だけが特別なモノへと進化した訳ではない。


ただ、一つ分かり合うという道を捨てて、対価無き退化を行った者たちの戯言だ。


分かり合えない理由を門戸を開いている誰かに対して囀るな。


機微を興ずる間も無く否定しよう。


俺は新しい進化した人間なのではない。古き時代に取り残されたオールドタイプな人間だ。


且つて世界には言葉の壁などなかった。


其れ故に神は、天の頂に続く塔を作る人々と咎めて、塔ではなく、意思疎通を行える。共通の意思疎通方法...言葉を奪った。


喩え塔を壊したとしても人と人との繋がりがあれば、試行錯誤を熟して人は、崩れない塔を建設するだろう。


元々人は人間同士で分かり合ってバベルの塔を建設したのだから。


だが、言葉を意思を協力する術を奪えばどうだろうか?容易く其れは崩れ去り崩壊する。


だから別に人々は新しく進化した訳じゃなくい。


唯、かつては星を見て位置や方角を観測していたはずの人類は今では、その能力は喪われ、便利な方位磁石や羅針盤に頼り、専門職でもなければ星読みなぞしない。


それは唯々、退化しただけ、たった一つの答えは、人は結局分かり合えない、でも、解ろうとする事は誰にも出来る


故に、後は人間がどこまで他者を理解しようとして傲慢にならないかに掛かってる


何故ならば喩え、言葉の壁が無くなったとしても、無理解でいがみ合ってたら意味なぞなく、相互理解などなく、それどころか彼女の言う通り退化してる事になる。


今、この世界を覗く者よ。観よ。


右も左も観ればいがみ合い、騙し合いが溢れている。同じ言語を理解しているはずの同じ国の人間同士でいがみ合い。


話が通じない。だが、話をする人がいるから結局は歩み寄りや他人を理解しようとする。空気を読む感覚や、読解能力を鍛えるしかない。


でもそれは、誰しも人間はしているはずだが、日常的にしているはずなのに、次第に鈍化していく人間が居る。


だから、私は、現代にバベルの塔を作った。バベルという名の意思疎通を行う手段を


作者の気持ちを答えなさい。その誰しも通る勤勉の果てに、本来の作者の意図を読み解ける人間は、実に少ない。


あれは、単純に、画一的な解釈論を正しいとして、押し付けてるだけで真の意味の作者意図を読み解けるものが居るのであれば、


それは、且つて喪った人々の力の片鱗を持ち得ていると言えるのでは、無いのだろうか?


後の事は、もっとも遠き、新しき一人ならぬ、最も遠き古き人より、新しき君へと贈る。


だが、希望はある。言葉が通じず。意思疎通の困難な言葉違う人々には、理解しようとする動きがある。



君は詠うだろう君なりの詩を。


その結末が如何なるモノになるのかは...


(ある意味、私に掛かっているのは確かな事ではあるが...しかし...すべては)


未来を憂う君の手に掛かっている。


(何故ならば、俺が...を捨てる選択をするかは、君の...に掛かっているのだから...)


見せてくれ君の答えを。


無情なる世界を渡り歩き、何を選び何を見るのか?


この世は真に、命を捨てたとしても守る必要がある世界なのか?を


俺が一番大切なモノを賭ける価値のあるモノなのかを?


...


その報告を静かに受け止めていた終夜は、ギベオンとの邂逅を経て、


聞きなれた常にノーマルスーツとヘルメットを着けたまま過ごす仲間に、苦言を呈される。


全てを救けて欲しい。その要望は分かるがそれを叶えれば、更なる犠牲をこの世に強いる事を知るべきだが...


お前がそう望むのであれば、そうしよう。


脳裏にこれから手足を喪う子供の叫びと、未だ産まれ得ぬ命を失いかける妊婦の姿が脳裏に過る。


お前の歩む道は茨だぞ。そこに救いなどなく、新しい哀しみでしかない。


救いとは、別の誰かの命と幸福を付け替えて別の誰かにその可能性を与える事と知れ、


ならばこの手を汚そう。これは俺が望む仕事の手ではないが...。


名も無き男は、出会ってから一度としてノーマルスーツのヘルメットを人前で脱ぐことが無かったものの


その声音から表情の変化と感情の揺らぎが感じられる。


「この結果は、君が望んだ事だろう。さて、君はどの命を選び、誰を救けて、誰を見捨てるのだ?全ての人間を救う簡単な、術などないぞ。」


・・・


・・・


・・・



「こんな結果になるなんて知らなかったんだ!」


「そうだろうな、且つて原爆の原理を作った人間も、研究の場から追放され、自らの意思など無き結果となり、その名誉は大きく損なわれ。」


「その名誉が回復したのは死後だ。」


「知らずとも人の命の多寡に関する決断で、問題は無いと思うのか?」


「俺は止めたぞ。つまりは世界の真理への頂に置いては未だ途中という事だ、」


「喪った手足は、船体のメディカルポットで癒せるとしても心の傷は為せないし、喪った少年の両親は帰ってこない。」


「その結果全ては君と私が引き起こした事だ。」


「コロニーの保護と言う外観が崩れた人喰いを何の制約、統制もなく解き放てばどうなる事か?それは推して知るべしだろう。だからそれや辞めて置けと言っていた。」


「当然起こるべきして起こるべき事だ。助けるべきものが弱き儚く善良なモノで有るという事は、凝り固まった幻想であり。現実とは違う。」


「それでも尚進めるのであれば、この手を取れ...且つてこの手を取った彼女の様に...」


僕は...おじいちゃんの名誉を回復したかった。稀代の殺戮者とその名と名誉を奪われ、常に命と安寧を脅かされ続ける。


それでも優しいおじいちゃんが好きだった。


父さんは、おじいちゃんが僕たち家族を見捨てて去った事に、腹に逸物を抱えている事は知ってる


だからギベオンにおじいちゃんが居る事は...僕以外に知る者は、そう多くない。


でも、だからこそその汚名を濯ぎたかった、孫の僕は不殺を詠う部隊を率いて紛争を止めれば、


何時か誰かの耳に入り、その名誉が回復される事を祈って...



救う人間を選別する。


助けた人が誰かを殺したら。誰かを害する行動としたら?その責任の所在は、命を救ったモノに果たしてあるのか?


その答えは禅問答の様に答えが出ない。


だが、僕は、胸を張って答えよう。


「確かに、これから救けた人が、誰かを殺すかもしてない。其れは分かっている。だから、僕は...もし救けた人が人としての道を踏み筈というのであれば...」


「悉く、其の全てを阻んで、全てを助けるよ。誰かの命を救うかの選別は僕には出来ない。」


「俺の話を聞いていたのか?其れは対処療法に過ぎないと言っているよ。」


「それでも今もこの世に誰かが涙を浮かべるのであれば、その涙を拭ってあげたい!!!!!」


頬を高揚しながら、一言一言、噛みしめる様に、請願する様に、その声を自らに誓う誓約の言葉を吐き続ける。


「それは茨の道だぞ。その先には誰一人生き残れない悲劇が待っているかもしれない。」


「それでも、それでもだよ。」と熱に浮かされ強弁する。


「ならば見定めよう。その道の先に彼女の想いが辿る運命を超えるかどうかを?」


これで、物語の指針は決定された。だがその答えに関する正解は未だ霧の中を彷徨い


暗中模索の迷路へと入り込む。


少女が大人の女性に移る頃、


《Gifted Unchained Navigators Defying All Misconceptions》と刻まれ「天より与えられし力を持って、何者にも束縛されず、すべての誤解に立ち向かう案内人」を


自称する祖父に成り代わり、


乗機に嵌め込まれた金属プレートに刻まれる姿に視線を泳がせ決意を新たにする様に、頷くと


《Gifted Unforgiven Navigators Defying All Misconceptions》と刻まれ「天より与えられし力を持って、許されざる者の導き手は、すべての誤解に立ち向かう案内人」


彼女は、其の行動を開始する。



...


...


...



しかして、物語は、流転し、想像の果てより来る。大戦争へのカウントダウンが始まる。


その答えを示す。物語は、一旦幕を下ろし沈黙を告げる。

〆

毎月、月末最終日に2話更新予定。⇒今のところ月に一話に変更予定


※来月の分量かなり多いから、一ヶ月に二話やってたら体調崩すから裏では一ヶ月で二話書いていくけど


アップだけ一話にしてストックしとく。多分今年中に全部描き終わったら、年末年始に全部ぶっぱする

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