033 戦略訓練⑦【ギーク視点】
◇ギーク視点
「くそっ!」
鳴り出した雷と止む気配のない大粒の雨に思わず感情的になる。
本来ならこうなる前に畳み掛けたいところだった。
だが恐ろしいほど早く、山は雷雨に襲われていた。
「運のいい奴め……」
これほどまでの悪天候、魔法使いが作り出すのは不可能だ。
だとするとこれは運。天候はシミュレーション結果によるものだ。
「私が知らなかっただけでこの場所にも雨は降るのだろう」
そうでなければおかしい。
そうでなければ……どんな魔法を使えば山全体を覆い隠すほどの雷雨が生み出せるというのか。
雷に怯えるように竜の勢いが止まる。
こうなるともう火竜は役に立たない。一度部隊を下げた。
「だが魔法使いは見つけた……!」
この悪天候がシミュレーションによるものだとしても、ある程度の操作はしているだろう。いやそうでなければ、悪天候の影響など両軍に影響するのだ。
残念ながらうちの部隊に天候を操れるような魔法使い部隊はいない。
だが結局、相手の魔法使いを倒しきれば、あとは雨が上がるのを待てばいいだけだ。
「運だけでは勝てぬということを教えてやる」
本陣付近に見えた謎の部隊。
あんな場所に隠して意味がある部隊など、魔法使い以外にありえない。
別働隊が叩いて終わりだ。
「この状況を作り出せたというのなら本陣で囲んでおけばよかったものを……」
素人はこれだから簡単で良い。
運の要素に恵まれた相手を実力で上回る。
姫様が興味を失うには、完璧すぎるシナリオだ。
「逆にこうなると、私は運が良かったのかもしれないな」
考えているうちに別働隊が潜んでいた魔法使い部隊の喉元に迫ろうとしている。
「ふん……伏兵か」
だが兵の数はこちらが上。
伏兵も奇襲も、あるとわかっていれば大して効果は発揮しないのだ。
「本当に絵に描いたような雑魚だ……」
伏兵を蹴散らし、魔法使いの部隊に別働隊が迫ったときに、異変が起きた。
「なんだ……?」
中央で時間稼ぎを指示していた部隊が突然崩れだしたのだ。
「なぜ……なっ……そんな馬鹿な!?」
ありえない……。
ありえないことに……。
「うちの本陣が……落ちた……のか?」
広告の下の星から応援お願いしますー!