行軍
それから程なくして、僕たちは沢山の騎馬兵に囲まれて居た。
僕やセーラ、アマルダも騎乗の人となっている。
乗っているのは馬ではない。足の長い蜥蜴のような、羽毛のない駝鳥の様な生き物、走竜だ。
オルニムスと言うらしい、小型の亜竜種だそうだ。
馬より力も体力もあり、そして何より元々肉食の魔物だからか、気性が荒くちょっとやそっとの事で怯えたりしない。
普通に乗り物として使うだけでなく、命じれば敵に噛み付いたりして、攻撃もしてくれる。
便利で賢いが、自分より弱い人は乗せないとか、扱いが難しい面もあり騎兵隊では一部の実力者しか乗れないらしい。
当然、僕は走竜くらい簡単に乗りこなせるけどね。
「騎兵隊の馬はその辺で買えるものとはそもそも違うのよ」
とはセーラの説明だ。
普通の馬の姿をしていても、特別な血統だったり、魔物との交配種だったりするんだそうだ。
奴隷やメイドの皆には主に此方が宛がわれていた。
そしてそれら全ては、勇者が普通の馬に乗っていたら変だと、ライミラーが用意したモノだった。
「ライミラーがな……」
驚きだ、僕らがどうしようと感心ないと思っていたんだけど……
「ラサイアスはもう公の勇者なのよ国の威信に関わるわ、って言っても走竜か………私たちの動員はたぶん始めから決まっていたんでしょうね」
「ふーん?」
ま、今の王国に僕以上に頼れる戦力もないだろうしな。
なら会議場でのいざこざは、本当に無駄ってヤツだったのか?
いや、叔父上が父上の意向を邪魔してたってことか?
「よく解らないな」
「ラサイアス、その頭の装備外しなさいよ」
「え?」
っと、セーラの言葉に首を傾げたところで、兵士が走ってきた。
「そろそろ出発致します。ご用意宜しくお願い致します、ご用意宜しくお願い致します」
伝令の兵士が声をかけながら駆け抜けて行き、大きな角笛の音が鳴り響いた。
やっと出発らしい。
「やっとかー」
「仕方ないわよ、大人数なんだから」
「ああ、早い方だと思うぞ、さぁ行け」
「ウィーキュキュキュ」
アマルダが、走竜の横腹を踵で軽く叩くと、前が進むのに合わせてノロノロと歩き出す、僕とセーラもそれに続いた。
扶助は普通の馬と変わらないって話だけど、攻撃とかはどうやって指示するんだろう?
それから暫く、操り方を確認しつつ走竜の背に揺られた。
ただ、騎兵の後ろに歩兵も居るから常歩程度のスピードだ、それでも着いてくる兵士は大変だろうな。
いくら軽装とは言え、武器も鎧も着けてる訳だし。
30分くらい経過してだろうか、進みが一旦止まった。
「おっとと、休憩かな?」
「どうどう……何かあったのかしら?」
「んー? どうやら前が魔物と遭遇したみたいだな?」
アマルダが手を翳して遠くを見ながら答える。
ついに魔物大暴走と対決か!?
と思ったけれども、それは小さな群れだったらしく、僕らが何かする事もなく先頭の兵士に殲滅されたみたいだった。
「進み始めたわね」
「暴走の先頭がここでは流石に近すぎだろう、主殿の出番はもう少し先だ」
その後も、数分おきに魔物の小規模な群れと戦闘しながら進んだ。
その度に時間を盗られるんだが、戦い事態は兵士だけで片付く。
襲って来ているのは会議で聞いた通り、赤い猿型の魔物だった。
道の端に捨てられた死体を確認したが、何だろう見覚えがあるな、何処かで戦った事があったのかもしれない。
「僕たちも、もう少し前に行った方がいいんじゃないかな」
思ったより敵が弱い、これじゃ僕の活躍の機会が無いんじゃないか?
指揮を担当している貴族の、何とか言う子爵は騎兵の最後尾に居るけれど、僕が指揮をとれる訳じゃないし。
「そんなに焦る必要は無いわよまだ、砦との中継地点にある村にも着いていないんだから」
「そうだけど……」
戦いを他人任せにするって言うのは余り、気分の良いものじゃない。勇者なのだから、最前線に立つべきだってそう心が逸る。
「解るぞ主殿、腕がなるよな!」
「野蛮だわ、もっと慎重になるべきよ」
アマルダ、僕はそこまで戦闘狂じゃないよ。セーラは最近慎重になり過ぎだよな。
こんな時、アマルダと一緒になって騒ぐリリーナや、セーラを落ち着かせてくれるセルジュが居ないのが寂しい。
これが終わったらリリーナを迎えに行きたいな、酷い目にあってないと良いんだけど、あーいや、暴れて迷惑かけてないか心配した方がいいのかな?
ギルドマスターのレイチェルさんとも話をつけないといけないし、ここで功績を上げたらチャラになりそうな気がするけど。
うん、先ずは目の前の戦いだけに集中しよう。それが全てを救うための最適最短の道だ!




