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異世界で隠しキャラやってます  作者: 鳥鼠 ゆき
1章アルカディア王国編

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誰が駒鳥殺したの?

「私の矢羽根で殺したの」


物質世界の外、自身の宮殿でフローラは微睡んでいた。

宮殿と、言っても彼女は季節と共に移り動いていく。彼女の宮殿も移動式だ。

軸の傾きに合わせて星を巡る、それが彼女の仕事。


大勢の眷属を乗せた巨大な、または極小とも言える宮殿は、淀み無く進んでいる。


彼女が退屈に欠伸を噛み殺していると、チラリと小さな光が空中に灯った。



「んん!?」

その小さな光から、弱々しい魔力が這い出してフローラを求めるように辺りを探る。

フローラがその魔力の線を掴むと、見知った相手であることが直ぐに解った。


「おお、ロイか?」

フローラはお気に入りの人種の呼び出しに飛び起きる。

届いた祈り、掴んだ魔力を自分のそれに繋ぎ、逆に力を送って補助してやった。


精霊神殿での召喚は10年に一度とされていたが、それはずっと昔にフローラではない、精霊と交渉した誰かがした約束。

今となっては意味がないものだ。


たぶんではあるが、福寿の樹をそんなに頻繁に切れない事と、忙しい下級神霊が何時でも呼び出しに応えられる訳ではない等の兼ね合いに因るものだろう。


沢山の眷属を抱えるフローラは、割りと暇。

もとい余裕があるので福寿の小枝と葉数枚で彼女の一部を呼び出す、簡易の召喚方法をロイ限定で教えた。


これで好きな時にお喋りが出来ると思ったのだが、ロイは遠慮しているのか、彼がフローラを呼ぶ頻度は多くはなかった。

だから、今回も彼女はワクワクと召喚術が完成するのを待っていた。


最近ロイは、彼女が加護を与えた街から出て、他国に移ったと聞く。

旅立ちの前に説明を受けたが、この先ロイが位を上げるためには、大陸中を行脚した経験か、他国にて神殿を取り仕切った経験が必要なのだとか。


面倒な仕来たりだとは思ったが、色々な経験をして見識を深める事は成る程、上に立つ者にとって必要不可欠だろう。


それに、ずっとではないと言う。

数年したらあの街に戻り、枢機卿に成ることが決まっていた。



まぁ、フローラにとっては人種の役職など然程の興味はない、ロイが無下に扱われていなければそれで良い。


それよりも、新しい場所に移ったロイが、どうしているのか聞けるのが楽しみだった。

もしかしたら苦労しているのかもしれない。


「何となれば、助力してやらねばならんじゃろう」


今度こそ、何か手助けできる事が有れば良いと、フローラは思った。

そこには、ロイに構うのが楽しくて仕方がない、純粋な気持ちしか無い。



光が広がり、中心に空間の穴が出来る。

分霊の用意も出来ているが潜るにはまだ大きさが足りない。



未だかまだかと、逸る気持ちを抑えていた。するとサッと光が途切れる。


「なんじゃ?」


ロイが術に失敗した?

初めはそう思った、全く仕方のない奴だと。


しかし魔力の線さえ切れている事に気付く。


「まさか……」

フローラは慌てて自身の霊を探った。

その膨大な被加護対象を確認する、人種など一人しかいない。


「そ、そんなまさか」


それが最近増えた街の手前に見当たらない。何度探しても見付からない。


「そんな何故じゃ?」


フローラは聳然と立ち上がった。


「ロイが……死んだ……!?」








住んでいた人が消え、寒々と夜の闇に沈んでいるアルカディアの精霊神殿にフローラの本体は辿り着いていた。

理を曲げ、季節に逆らい勝手に自力で移動した為に彼女は肩で息をしている。

背中の3対ある蝶のような羽根は、ポロポロと端から崩れていたが、彼女はその事を気にも止めていなかった。



視線の先、祭壇には彼女を召喚するための準備、それらが滅茶苦茶に荒らされた跡。その側に広がる夥しい血痕。


そして、その血だまりに散らばるのはロイの霊の残骸だった。


「……ロイ何があったのじゃ?」

ロイの霊は答えない。答えるだけの力が残っていないのだ。


普通に死んだのではない。殺しだとしても相手は普通の人種や魔物ではないだろう。

ロイの霊は転生する力さえ失い、今にも消えてしまいそうだった。


「誰が、どこの誰がやった?」

(たましい)自体に危害を加える、そんな事が出来るのはフローラと同じ存在だけ、即ち神霊だけだ。


この世界の一位の神は三柱、その三柱が同盟を結んでいて関係も良好、そして精霊や天使が各々の神に仕えている。


その神霊達が何も言わずにこんな事をするとは思えなかった。

最悪誰かの加護持ち所謂「福者」を殺す事があったとしても、加護を断ち切りその霊までも消すような事は考えられない。


では、何処にも属さずに神々に反発する外道の者か、それとも外世界からの侵入者なのだろうか?


フローラは小さく弱々しいロイの霊を、破片を一粒残らず拾い集めると、それを仰ぐように呑み込んだ。


彼女の頬を雫が一粒滑り落ち、彼の最後の瞬間を見せる。


それは白い髪の聖女と名乗る少女、それを庇うように立ち血塗れの剣を構える勇者と名乗る少年。

その二人は神霊の様には見えなかった、がその剣には紛れもなく神力が宿っていた。


「ゆるさぬ……絶対に赦さぬぞ!」







ロイ・シュトロイヘル。

ここ数百年で、精霊召喚を成功させ、大精霊を呼び出した唯一の大神官。


彼はその召喚から数年後、アルカディア王国精霊神殿の長として任ぜられる。


そして、更にその着任から数年後、精霊神殿の聖堂内で儀式の最中、凶刃にて倒れる。


享年47歳まだ、肌寒い冬の終わりの頃だった。

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[一言] ロイ………悲しい
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