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異世界で隠しキャラやってます  作者: 鳥鼠 ゆき
1章アルカディア王国編

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軟禁?監禁?静養中

僕はその木の扉を蹴破るように、押し入る。

当然大きな物音がして、中に居た人達が一斉に僕たちを振り返った。



目の前の広大と言っていい大広間は、半地下になっていて地面は土が剥き出し、そこに鎧を着た案山子等が設置してあったり、模擬戦をする為の特殊なフィールドがあったりと充実した施設。


そんな場所を、所狭しと訓練に励む屈強な戦士たちが埋め尽くしていた。

動きやすさを優先した服装の男たち、流れる汗と隆起した筋肉、直前まで激しく動いていただろうそれ等から熱気が立ち上って室内に充満していている。

端的に言って非常に男臭い。


中には女性も居るのだろうが、こうなってしまうともう判別がつかなかった。


そんな彼らの視線が今、こちらを貫いているが、僕は一切気にせず歩みを進めた。


目当ての人物へは、僕らが入って来た時の騒ぎにも動じずに黙々と如何にも重そうな金属の棒を振り回し続けていた。


「エイツ騎士団長!」


僕が怒気も露に呼び掛けて、彼はやっと素振りを止めた。

百貫は有るんじゃないかという、金属の棒が地面を打つと重たい音を出す。威嚇のつもりは無いのかもしれないが、セルジュが僕の隣でビクリと肩を震わせた。


僕は騎士団長を真っ直ぐに見詰めて問いただした。

「天空神殿の大神官様を幽閉していると言うのは本当ですか!?」



聖堂で青年神官から相談された内容。

それは信じられない事に、王国騎士団長エイツ・グレイセスによって大神官様が監禁されてしまったと言う一大事だった。


そのために、自分より高位の神官たちは神殿に引き上げてしまった、もしかしたら王都からも避難してしまっているかもしれないと言う相談だった。


もしそれが本当ならば、僕は騎士団長を許さない。


「ソレは……誰に聞いたのですか?」


「誰にって神官の方にですよ」


入って来たときから注目を集めていた僕の発言に、エイツ騎士団長はばつが悪そうに周囲を見回した。

やっぱり疚しいことがあるんだ!


騎士団長が視線を向けると、兵士たちは視線を外して訓練に戻り始めるが、耳は僕らに向いたままだ。


「何か誤解があるようだ、大神官様は臥せって居られるゆえ配下の者に警備をさせているまでです」

騎士団長は真面目な様子でサラリと僕らを誤魔化そうとする。


「では、何故誰も面会することが出来ないのですか?」

セルジュは震える声で異を唱えた。

本当に大神官様を守っての事ならば天空神殿の神官達が面会できないのはおかしいと。


そもそも、穢れによる病気ならば神術による回復が必要で、回復術がこの国で一番得意なのはセルジュを除けば、神殿に務める神官達なのだ。


「それは……わかりました、ラサイアス殿とセルジュ殿には知っていただくべきでしょう」

少し悩んでから騎士団長は言った。


「大神官様の部屋まで案内します、着いてきてください」と。





身なりを直したエイツ騎士団長に案内されて、僕らはシャンゼリゼ城に沢山ある塔の一つを登った。

それはぐるぐると続く螺旋階段が終わる場所。

最上階の扉の前には屈強な騎士団の中でも歴戦の者が警備している。

これはどう善意的に見ても幽閉してる様に思えるんだけど?


「どう見ても監禁しているようにしか見えないんですが」


僕が再度睨み付けると、エイツ騎士団長は眉間にシワを寄せた。

警備の騎士も困ったような顔をしている。


「見方によってはその通りなのでしょうが、これは大神官様のためでもあるのです」


「何を言って……」

「うぁぁあぁあー!!」


その時だ僕の言葉を遮って、扉の中から呻き声が聞こえた。

声は男性のもので、続いて何かが壊れる音が響く。


「大神官様!」

セルジュは叫ぶと扉に駆け寄った。


そして矢も盾も堪らず、取手に手を掛けるがガチャガチャと音がするだけで扉は開かない。


「何をしているのです早く鍵を開けなさい!」


扉の脇に控えていた騎士に命じるが、それを固く禁じられているのか彼らは騎士団長の指示を待っている様だった。


「エイツ騎士団長!」

セルジュが悲鳴混じりに、騎士団長に呼び掛ける。


「少し落ち着いて…………今から鍵をお渡しします、が大神官様は心を病んでおられる。襲撃があった後から日に日に悪くなり今ではまともに会話が出来る状態ではありません」


「な、なんだって!?」

僕は堕天使と戦った直後のセルジュの様子を思い出す。それをもっと酷くしたような状態と言う事なのか……


「この事は一部の者しか知りません。大神官様の今後に影響します」

大神官様にはその地位故の立場がある、悪魔のせいだとしても簡単に醜態を晒す訳にはいかない、そう言う事らしい。

神殿内でも権力争いなどがあって、周囲に知られれば足元を掬われてしまう。


ただ、それも回復出来ればの話だ。


「なるほど、解りました」


「これを」

僕はエイツ騎士団長から鍵を受けとる。

セルジュに視線を合わせると、力強く彼女は頷いた。


「私が大神官様を癒してみせます」


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