壊れたピラミッド
アルカディア王国の北東にあるソウカス地方。
北側に帝国、南にマブカ山を拝しそれを取り巻く深い森林、その中には貴重な植物と魔物の驚異とが混在する、アルカディアにとっての要所。
そこを支配していたのはドラゴン、正式名を緑霞竜と言う竜族の群れだった。
暫く前はーーー
森の中に激しい戦闘の音が響く、そしてそれは一つや二つではない。
剣が肉をえぐり骨を断つ、爪が盾を滑り、渇望と呪いを刻むように鎧に傷を残す。
一つを斬り伏せた男が、木をつたって飛び込んできたもう一つに、押し倒された。
「ぐぁっ!」
その魔物は、四本の腕がある大柄な赤い猿で、キラーエイプと呼ばれる。
性質は狂暴、冒険者ギルドの討伐ランクは単体でD、群れになるとB-といわれる難敵だ。
それが繁った木々から鈴なりになって、ぶら下がっていた。
「ギギャーアギャー」
キラーエイプは、革鎧の冒険者を引きずり倒すと、頭部にしがみつき鋭い爪で出鱈目に引っ掻き回した。
その動きには知性的な技巧は無いが、慈悲も無い。
「ひぃーだ、誰か助けて」
男は直ぐに顔を庇うが、その腕ごと滅茶苦茶にされ血飛沫が舞う。
更には周囲に居た他のキラーエイプまで、弱者に集る禿げ鷲のように集まって来ていた。
その魔物の、濁った瞳に浮かんでいるのは純粋な欲望、空腹を渇きを癒したいと言う欲求だ。
「援護を!」
冒険者のリーダーが指示を飛ばす。
「世界に宿りし炎の力よ我が意思に従い敵を撃て、火炎球!」
その声でローブを着た魔術師が杖の先から炎の塊を放った。
握りこぶし4つ分ぐらいはある火の玉が、冒険者にのし掛かっていたキラーエイプを吹き飛ばし、猿の毛皮を燃え上がらせる。
「アギャギャー!!」
その光景に周りに近付いていた赤猿も、慌てて倒れていた冒険者から距離を開けた。
「キャキャキャキャー」
「離れろ糞猿が!」
「大丈夫か?」
それを見逃さず冒険者の仲間が二人、男に駆け寄り引き摺って下がらせる。
「交代しろ!」
後ろに下がった彼らを庇うように、控えのパーティーが前に出た。
今回の討伐依頼は10チーム合同での作戦だ。
最初それを聞いた時、何故かとみんな疑問に思った。ドラゴンが滅んで安全になった筈の森の中にソウカスでも上位にあたるパーティーばかり集めての依頼。
チーム間で争いが起こらないようにするため、冒険者ギルド側の配慮かと勘繰ったりもした。
しかし、そうではなかった。
ギルドからの依頼、ドラゴンが居なくなって変わりに増えだした魔物の掃討は、切迫した事態に陥っていた。
怪我人が出たと聞くと、直ぐに補給に回っている者が走って来る。
彼はこの辺りを活動拠点にしているポーターだ、背中には大きな荷物を背負い、肩にも大きめのバックを斜め掛けしていた。
その肩掛けのバックを開き、中から痛みを誤魔化す効果のある草を一枚取り出して怪我人にくわえさせる。
「奥に入りすぎだ」
「うぅ……すまねぇ……」
「そいつ任せたぞ!」
「ああ、あんたらは無茶すんなよ」
二人の仲間は補給役のポーターに仲間を預けると、前線の援護に戻る。
狩っても狩っても、キラーエイプの数が減らないのだ、次から次へと湧いて出る。
「ギルマスの言った通りだ、不味いぞこれは……」
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