準備完了と特別な賓客
お祭りの準備、沸き立つ雰囲気が大変なのに心地良い。
学生の頃の文化祭なんて、遠い彼方だけれど、やはり未だに懐かしいものなんだな。子供たちにも出来るだけ楽しい思い出を作って欲しい。
その為には、補助教師としてきっちり働かないとな。
「各種許可も取れた、調理器具の手配……うん。問題ないっと思う……多分大丈夫」
お肉の確保も順調だ。
最初の週でコッコーが目標の半分も捕れなかった時は、どうしようかと思ったけれど。どうにもならなかったら俺が補填しようと思ってたけど。
でも、途中で巨鹿と遭遇して、確保できたので良かった。
大型の魔物である巨鹿が居たからコッコーが、遠くに逃げてて見付からなかった可能性は高いが。
あと数日あるので、もう少しだけコッコーを足せればと思うけれど、鹿肉だけでも十分だ。
ああそれと、ちょっと吃驚したのが、調理師とかが学園から斡旋して貰えたことだ。販売や接客の人員も、子供たちがお家から人手を連れて来ている。
貴族の学校だからかな、生徒も手伝うけれど基本的には人員を使う立場を崩さないらしい。
そうなると、やっぱり派手な演舞をしたい気持ちが強くなるのか。当日のやっている感というか、理解は出来る。
其方の方も予定提出済みだ、午前と午後に二回ずつ。屋台の直ぐ後ろにスペースを確保してあるので、焼き肉を食べながら見られるぞ。
「クラスの方の発表も、良いものが出来そうですよ」
「アトラスさん……ま、まぁ本当に勉強にはなってると思いますけど」
極めて地味で、担任クラスの生徒達からは不評ですけれど。ただ、展示物自体は良いものが出来そうなのは本当だ。
その上展示や説明だけなので、当日生徒達の自由時間は多くなりそうで、一応バランスは取れている……か。
「ふんふんふんふん、ふ~ん♪」
俺が渡したメモ書き片手に、入れ替わりで図書室から借りてきた魔導書を読み解き、アトラスさんは上機嫌だ。
彼が闇属性の新しい魔導書も書いてくれると、助かるけれどな。
「クラスの方で展示に使える魔導書も、纏めておきますね」
「はい、宜しくお願いします」
外部に閲覧禁止の物もある。ケースに入れての展示、手に取れる形での展示と……確り管理しないとな。
人気が無いと言っても高価な魔導書だから。
そんな事をしていると、誰かが研究室にやって来た。誰かって言うか、マローナさんかなこの気配。
「失礼します! シン君大変なのよ!」
ノック四回、扉を俺が開けた瞬間彼女が入って来た。
どうしたんだ、また何かトラブルでも発生したのだろうか?
「マルコ先生隣人際一緒に見て回りませんか?」
「え、あ、いえ」
「それは兎も角、聞きましたか!」
「えっと如何したんですか?」
今日も元気で、忙しいなマローナさん。
授業の合間の休憩時間って十分くらいしかないのに、走ってきたのだろうか。あと1時間で授業は終わり、そこから午後はお祭りの準備の為の時間になるのに、待てない内容なのかな?
「毎年、隣人際に有名人を呼んだりするんですけれど。あ、それでどうですか? 一緒に見て回りませんか?」
「うん? そうらしいですね」
文化祭に卒業生のアーティストとか芸人呼んだり、有名人に講演して貰ったりする。あれと同じ様なことが、魔術学園でもあるのは聞いている。
「それでね、私の人脈でどんな方が来るか、情報を手に入れたの。隣人際でデートよデート!」
「ちょっと落ち着きましょう、当日私は忙しいので一緒に見て回ったり出来ませんよ」
「ええ……」
ええ……じゃない。どさくさに紛れて、デートとか、その、約束を取り付けようとしないでください。
「で、それが如何したんですか?」
何か問題になるような人物でも来るのかな。
アトラスさんにも視線を向けると、首を横に振られた。学園長の親戚であるアトラスさんが知らないとなると、辺境伯家で呼んだ来賓なのだろうか。
「展示物には教師が採点を付けるので、マルコさんも一回りはして下さい」
「ね、やっぱり!」
「そっちは今は置いておきましょうよ、予鈴鳴りますよ」
「そうそう大変なのよ、なんと賓客として招かれるのは、妖精の加護を得た聖女様らしいのよ」
「へぇ~そうなんですか」
誰が来るんだろう。俺も知ってる人かな?
「そうなんですかって、大変じゃない!」
「大変じゃないんですか?」
アトラスさんまで、なんで大変だと思っているんだろう。あ、あーえっと、アトラスさんは俺が悪魔だとまだ思っていて、不味いことになると思っているのかな?
あれでも、ブローチの件でいい加減本当の正体に気付かれたと思ったんだけれど……んん??
「相手によりますけど、急に戦いになったりしないので大丈夫ですよ」
まぁ誰だったとしても、好かれては居ないだろうな、俺は満遍なく広く迷惑を掛けている自覚はある。
あ、予鈴鳴りましたね。




