魔術具としての運用
「はいはい、解ったわよー」
もう少し色々試したかったのだけれど。発動時間とか、攻撃を受けてそれがどう変わるかとか、体感でね。経験したかったのよ。マルコ先生に聞いただけでは、実際の感覚は掴めないから。
ここまでして貰ったのだから、次はちゃんと使えないと、がっかりさせちゃうもの。
でも仕様が無いわね。アレクお兄ちゃんは五月蠅いし、シン君も凄く複雑そうな顔しているから、今はこの辺にして置くわ。
「お嬢様、準備出来ました」
「ええ、ありがとう」
アレクが少し離れた場所に人型の的を数個並べて戻ってくる。その間に、シン君はブローチに力を注ぎ直し、訓練場全体にも結界を発動してくれた。
万が一私が魔術の制御を誤っても、建物とかに影響がないようにね。
それから、シン君はブローチを私に返しながら真剣な表情で言った。
「マローナさんこの世界に絶対はありません。全ては生々流転する、理も実は変化します。だから壊れない結界はないです。それだけは心に留めておいて下さいね」
「ええ、忘れないわ」
シン君が私をとても、とっても心配してくれているのが、嬉しいから。
きっと、信頼しきって調子に乗って、私が無謀な事をするとそう懸念しているのよね。うん、あれね。否定が出来ない、所業しか見せていないから……申し訳ないけれど。
確り心に留めておく。
「では、やってみるわね。……世界に宿りし炎の力よ、我が意思に従い敵を貫け、炎の槍!」
あの時、授業の時と同じ。
魔力がどんどん足されていく、でも今度は出所が解る、胸に付けたブローチから……。
あ、でもそこまで多くない、制御もあの時より遣りやすい。
それでも自分で作り出すよりも随分大きく、力強く燃え上がる炎の槍を思い切って投げ付ける。
「行ってぇ!」
初め重かった槍は勢いが付くと鋭く飛んで、的に当たるとボンと大きな音を上げて燃え上がった。
「魔術を強化する魔導具としても、最上級の性能ですね」
「使い心地はどうでしたか、負担とかはどうです」
アトラス先生は興奮したように、マルコ先生は冷静に魔導具の仕様について聞いてくる。
あの時みたいな溢れる感じは無かったけれど、威力が増していたわね。シン君にそう言うと、ブローチの中で蓄積している間に密度が増すように作られているんだそうよ。
「中の神力も僅かに混ざりますからね。ただ魔力が常に空の状態が続くと、結界の使用回数は増えなくなってしまいますが」
「解ったわ、何時でもいっっぷぁい私の気持ちを注いで、満たして置くわね」
「え、あーはい……」
「お嬢様……」
「はは……言い方」
ふふちょっと熱烈過ぎたかしら?
「それじゃあ、もう一度やってみるわね!」
それから、私の魔力が枯渇するギリギリまでみんな付き合ってくれたわ。
と言っても、祈りで魔力を溜めて、魔術も撃ってを繰り返していたら、それ程長い時間保たなかったんだけれどね。
一度に放出する魔力を増やせるだけで、私の魔力の総量が増えるわけじゃないから、ここも良く考えて使う必要があるわ。
それに、本当にこの魔導具が真価を発揮するのは、何年も魔力を溜め置いた後かもしれない。
これから冒険者愛好会でも、魔術の訓練を増やしていこうと言う話にもなったわ。
「あ、そうだアトラスさんこれ」
「何ですか?」
「前に言っていた現物支給です。冒険者ギルドの依頼を手伝って頂いた分と他にも諸々の」
そう言って、シン君は解散の間際に結構な厚みのある紙束をアトラス先生に渡して居た。何でも、魔術学園にあった闇属性の魔導書、その欠けている部分を補う情報、注釈や引用しているのに引用元の魔導書が見付からないとか、そう言うのを纏めた物だとか。
それって、アトラス先生の喉から手が出ちゃうのでは?
「いやっっふぉーーーーー!」
実際受け取ったアトラス先生は、気持ちの悪い動きで小躍りしていたわね。色々と付き合って、顔を出していた甲斐があったのね。
まぁシン君の側なんて、居れるだけで甲斐性しか無いけれど。
やっぱりグイグイ行くのって大事よね。
「後はアリスさんに渡す物で最後だな」
一段落付いたと伸びをするシン君、ありがとうお疲れ様。




