再会そしてお腹すいた
聞きたいことが、質問したいことが沢山有ったのだかエステラは体力の限界でいつの間にか眠ってしまっていたらしい。
目を開けると、眠る前と変わらぬ柔らかな光に照らされた地下空間らしい部屋だった。
シンたちが居た間は、彼らに気をとられ周りなど見る余裕はなかったが、室内の壁は中に居る者を優しく包み込む様に丸く湾曲していて、まるで母親の体内に戻ったかのような安らぎを感じさせる。
光源は何処なのだろうと視線を巡らせれば、壁の少し低い場所に白い瑪瑙のような玉石が嵌めてありそれが内側から光っていた。
何で出来ているのか、こんな物見た事がない。
魔力が感じられれば極大の魔石に魔方陣を刻んでいるのかと想像できるが、それが全く感じられないのだ。
「はぁ…」
ため息をつくと空気に何か匂いが混じっていることにエステラは気付いた、それは野菜を煮込んだ時のような匂いで。
それに気が付いたとたんにエステラのお腹はギューと自己主張する。
部屋に響く音に一人恥ずかしくなりながらも、ベッドの上に起き上がった。
食事の用意を誰かがしているのなら、それは妖精様たちである可能性が高い、ならば自分も何かしら手伝いに向かうべきだと気をとり直したのだ。
本来ならば神職とは彼らに仕える立場のはずなのだから。
ベッドの端から足を下ろすと、足元には室内履きなのか、つま先の部分にだけ覆いの付いた靴が置かれていた。
許可をとらずに使うことを少し躊躇うが、裸足で歩き回る事も失礼に感じて取り敢えず借りる事にした。
立ち上がると少しふらつくが、動けなくはない。
可愛らしい家具が置かれた部屋を横切り、一つだけ存在する扉の前に立った。
閉まっていた扉は別段施錠もされてなく、可愛らしい取っ手を回すと普通に開いた。
そんな小さな事でも、もう囚われの身では無いのだと強く実感する。
部屋を出ると外は通路になっていて、蟻の巣の様に分岐している。
同じ様な扉が両側に在るのでエステラが寝かされていた様な部屋が並んでいるらしい。
見知らぬ場所だが、神聖な気が満ちていて、危険は無さそうだったのでエステラは進んでみることにした。
しばらく匂いを頼りに歩いていると突然手前の扉が開く。
少しびっくりして身構えたが、開いた扉から顔を覗かせたのは精霊神殿でずっと仕えてくれていた、部下のエマだった。
「エステラさま!」
「エマ無事だったのですね?」
エマはエステラを確認すると走りより、涙ながらにその無事を喜んだ。
「エステラさま、よくぞご無事で……」
二人で喜びあっていると、その声を聞き付けたのか通路にある扉が数戸開く。
中から恐る恐る覗いたのは、どれも見知った神官や神殿で働いていた者たちだ。
誰もがエステラの姿を見付けると、ホッと息を吐いて通路に出てくる。
「エステラさま私たちはどうしたのでしょう?」
「ここは何処なのですか?」
「あの、妖精様らしきお姿をさっきお見掛けしたのですが?」
彼ら彼女らの質問が、少し前の自分と同じだったのでエステラは可笑しくて笑ってしまった。
「皆さん安心なさい。ここは王都の地下、それも土の妖精さまの座所なのです」
「では我々は……助かったのですか……」
「そうです、神霊さま方が救って下さったのです」
シンとの会話で得た情報を部下たちに説明すると、彼らも匂いの元を探す。
否、手伝いをするために食堂を探すことに同意してくれた。
「エステラさまは後ろに、危険はないかと思いますが」
「我々が先行します」
神殿で警備をしていた神官兵二人がそう言って、皆の前に立った。
エステラたちは、まだ部屋で臥せっている者の様子を確認しつつ、部下たちと歩みを進めて行った。




