王城前広場
シャンゼリゼ城。
豪華絢爛であれと目指して作られた城。
その城から一直線に伸びる道を境に完璧なシンメトリーに造られた広大な庭、その庭には魔術師が作ったゴーレムが潜んでいる。
それを囲うのは真っ白な城壁、荘厳な彫刻を施された巨大な城門。
その前に円形にとられた広場に今は舞台が特設されている。ぐるりとそれを取り囲むのは民衆。
祭りのようにも見えるが、並べられた斧や焼きごてが違うと告げていた。
城門の上のテラスに一際華美な衣装の初老の男が現れ、歓声が上がる。
三代目アルカディア王ラミエールは、軽く民衆に手を振り着席する。
それを受けて舞台上、黒帽子にアルカディアの国紋を刺繍した黒服の男が、巻物を広げて高らかに宣言した。
「これより公開処刑を執り行う」
それを合図に、鉄の檻を乗せた馬車数台が広場に進み出る。
檻の中には、すし詰め状態の罪人たちが入れられていた。
元はきちんとした身形をして居たのだろうが、監禁生活によって薄汚れ悪臭を放っている。
それを見ては人々は眉を顰め、罵声を浴びせた。
好奇と非難の視線に晒されながら、罪人とされた人々が引き出されて行く。
普段は美しい神官服に身を包んでいる筈の神官たちが、襤褸を纏い鎖に繋がれている様を、いい気味だと思う者は少なくない。
特に貧困層は不正を暴かれて、粛清されると聞き胸がすく思いだったのだろう。
そこに真実など必要ない。自分達より良い暮らしをして、自分たちに説教をする、偉ぶった人間が殺されるところが見たいだけなのだ。
それも、此方に全く罪悪感の無い状態で。
枯れた細枝のような老人、白髪の目立つ中年の女神官、まだ年若い見習いの神官、等など百は下らない数の罪人がぞろぞろと並べられていく。
王はその光景を見ながらうんざりとして言った。
「もう口上など程々にして、端から順に潰していったらどうだ?」
王の発言は、テラスの下にいる民衆には当然聞こえていないが、側に控える近衛や側近には十分に聞こえていて、彼らは追従したように苦笑いをする。
「国王陛下」
「はっはっ冗談よ、それにしてもあのデブ大神官がここに並んで居ない事のみ惜しいよな」
「ほっほっ、死んだ者は死刑に出来ませんからな」
「この者、ロイ・シュトロイヘルと共謀し聖女を辱めんとした罪……」
炭が赤々と燃えて屈辱の焼印が熱せられ、その縁取りが赤を超えて黄に輝く。罪人は身に着けていた襤褸さえ剥がされ、男も女も諸肌をあらわにされた。
「ありもしない神託を吹聴し、人心を惑わせ王国の転覆を画策した罪……」
次々に悲鳴が上がり、罪人は人以下の烙印を押されていく。
これが終わればそれぞれに、裁判で決められた悍ましい刑が待っている。
「しかし流石は儂の子よ」
大精霊の加護を持つなどという目の上のたん瘤でしか無かった大神官を排除してくれた、例え母親の血筋が悪くとも役に立つものだとラミエール王は鷹揚に頷いた。
「先の報告ではドラゴンの群れを壊滅させたとか」
「素晴らしい働きですな」
「流石のお血筋」
「まぁのう……だが所詮は下女に産ませた子であるからの」
国王はいかにも座り心地の良さそうな椅子に深く座り直し、功績を上げている私生児にどう対処するか思案を巡らせる。
あまり権限を与えて第二の大神官になられても、面倒なのだ。
考え事をしながらも、ラミエール王は処刑の場を見渡した。
それにしても民衆とは愚かで、そして残虐なものだと王は思う。
眼下では、罪状を読み上げる役人の声に合わせ、罪人に石や生塵が投げつけられていた。
見張りの騎士にやらされている者も居るのだろうが、その顔は楽しんでやっているようにしか見えなかった。
「民衆も歓喜の声を上げておるわ」
「首謀者は勇者によって討たれた! そして今この時、その残虐非道な行いに加担せし者共もその罪により裁きを受けるのだ!」
この中で一番地位が高かったであろう神官が、とうとう台の上にうつ伏せに寝かせられ、その背に焼印が押される。
ジュウと言う肉の焼ける音。
だが、中年の女神官は歯を食いしばり悲鳴を飲み込むと叫んだ。
「聞きなさい、この国は今存亡の危機に立っている!」
処刑執行人が慌てて台に押さえつけるが、彼女は黙らない。
「神々はこの国を見捨てられた!! 逃げなさ……ぐっうっ」
だが、人々に逃げろと危険を告げようとしたところで後ろから猿轡を噛ませられる、見ると数人を経由してラミエール王が命令を出したようだった。
その目は、早く殺してしまえと告げている。
「ぐふっ……ん……ぐ……」
特に美しくもない副官の女が、胸をあらわに苦悶の声を上げようと誰も同情する者はいない、その滑稽な姿に笑い声さえ聞こえてくる始末だ。
終わった。
そう女神官が思い頭を垂れた時、ざわりと今までと少しだけ違う騒ぎが起きた。
彼女が絶望の中で顔を僅かに上げると、夢幻のような人影が民衆の覆いの中から歩み出てくるところだった。
周りの騎士たちに止められる事無くゆっくりとこちらに近づいてくる、真っ黒なローブで姿を隠しては居たがそれが何なのか、神職である彼女にはすぐに解った。
シン「この装備…何を討伐させる気ですか?」
ブロンタス「王国騎士だろ?」
シン「オーバーキルにも程があります」
ブロンタス「強い奴に強い装備をさせるのはある種の喜びである」




