表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

序章 大江山決戦

序章 大江山決戦


ーーーーーさながらそこは【地獄】のようだった


立ち上る煙が青い空を覆い隠し、そこら中に人か獣か分からぬ死体が塵のように転がっていた。


いや、実際に転がっているものは全て人の形をとっていたものだ。

ただ、片方は人間で片方が化物なだけなのだ。


ーーーーー妖怪

それの化物は人に害を成し、人に意味嫌われる怪物。

そのなかでも最上位の妖であるもの。【鬼】

それがこの死体の山に転がっている肉塊の生産者だ。

その中で、未だ人間と鬼は争っている。

刀と鎧兜て武装した人間が鬼の首を切り落とし、その人間を怪力で擂り潰す鬼の腕。


そんな地獄のような光景の中、その中心部で二人。静かに相対している鬼と人がいた。



人間は髪を後ろで結った青年剣士

鬼は黄金色の髪に額から赤い角を生やした若い妖怪だった。

青年の目には焦りが見えていた、何故なら相対してから随分経っていたからだ。


「何故掛かってこない!臆病風に吹かれたか!?」

青年が叫ぶ、まるで何かを吹っ切ろうとするかのように。

その言葉を聞いて、鬼が笑った。

「それはお前さんの方じゃないか?

 そんなの待たずに切りかかってくればいいだろう?」

まるで見透かしたように鬼か語る。

「まるで何かに迷ってるみたいじゃないか、迷うぐらいなら帰ればいいじゃないか。なぁ頼光?」

心の底から親しげに、相手を労るように頼光と呼ばれた青年へ言葉をかける。


「黙れ妖怪!我が親友の声で、言葉で、眼差しで俺を見るな!」

その言葉に反応し声を荒げる頼光。それでも体は正直だった、今までのこいつの行動や言動が…。かつて苦楽を共にし、約束を交わした彼を……

「貴様が…、死んだ筈のアイツの訳があるか!」

限界だった。辛うじて口から出たのはそんな虚勢。

自分でも分かっていた、ただ認めたくないのだ。今目の前に敵として立っているこの鬼……。【酒呑童子】が過去に失った自らの親友であるなんてことは………。


その言葉を聞いて、その鬼…酒呑童子は心底ため息を吐いた。

「なんだ?最早名前も呼んじゃくれないのか。相変わらず固いやつだ。」

やれやれ、と

酒呑童子は首を振る。


一挙一動が古き友と被る。

やめろ、お前は鬼なのだ。

人に害なす鬼なのだ。

俺は鬼を倒さねばならんのだ。

そう《彼女》に誓ったのだ。


頼光が葛藤しているときに、酒呑童子は穏やかに語った。

「それにしても懐かしいな。ガキの頃、お前とはよくこうして剣を交わしたもんだ。

お互い負けず嫌いだったから、勝敗も50勝50敗0引き分けだったな。あの頃はよかった、頼光と俺、そしてお前の許嫁のーーー」


「黙れぇぇぇぇぇえ!!!」


そこまで話した時、頼光が咆哮を上げ切りかかってきた。

吐き出したのは怒りと慟哭、友と愛するものを守れなかった過去の自分の罪。


忘れられる筈がなかった。

あの輝かしい日々に影を差した、あの出来事を。


思えばそう……


あの日から我々の地獄は始まったーーー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ