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一章 思い出

この物語は基本的にフィクションです。

実在の名前が出てるだけの妄想作品なので、生暖かい目でご覧ください。

誤字脱字もあるかと思いますが生暖かい目でご覧ください。

一章 思い出


大江山決戦から遡ること五年。


そこは数年後に雌雄を決するとも知らず、日々切磋琢磨する二人の青年がいた。

一人を頼光、もう一人を景正と言う。

その日彼らは刀を握り、試合形式で戦っていた。


「ほい一本っと、今度は俺の勝ちみたいだな頼光」

そういうと景正はニヤニヤ笑いながら刀を宙で弄んだ。

「待て待て、今のは反則であろうが。

何処に剣術での試合の最中、刀を相手の手元に投げつけて、弾かれた刀を掴み相手に降り下ろすやつがいる!」

その曲芸のごとき技を受け、地に足を付けながら頼光は抗議してきた。

「目の前にいるじゃないか」

そう言いながら景正は頼光に手を差し出す。

その手を取りつつとても不服そうな顔を頼光はしていた。

「大体お前、自分の主に手心を加えるとかそういうのはないのか?」

「なんだ?手加減してほしかったのか?」

「そんなわけあるか、ちゃんと堂々と勝つ!」

「なら良いじゃないか、そもそもこれでやっと追い付いたんだから」

むぅ、と今一納得のいってない様子で頼光は唸った。

町外れの二人の修行場に穏やかな風が吹く、初夏の風は疲れた体を癒してくれる。

「そういえば、もうすぐだったよな?」

「なにがだ?」

「お前とお華だ」

その名前を聞くと頼光は耳まで真っ赤になった。

「あ、ああ。10日後に私が父上の後をついで、その22日後だな」

そのまま顔を手で隠す。

お華は頼光の許嫁で、彼らは近々結婚するのだ。

「お前なぁ、婿どのがそんなんでどうするよ。もっと堂々としてねぇとお華のやつ、拗ねるぞ?」

体をほぐしながら頼光の肩を叩く。

「そ、そうだな。私がしっかりしなくてはな」

深い深呼吸をして落ち着いた頼光の顔が景正を見る。

「勿論、お前もついてきてくれるんだろう?」

「当たり前だろう、俺はお前の従者で親友なんだからな」

臆面もなく胸を張って堂々と、景正は即答した。

その姿に頼光はとても嬉しくなり、思わず笑顔になった。

「ああ、しっかりついてきてくれ。お前がいない人生は寂しすぎる」

「大袈裟だなぁ、いつでも捨て駒にしてくれていいんだぞ?」

「そんなことするもんか、お前ほど優秀なヤツはこの辺りにはいないんだ」

「そうかぁ?」

「ああそうだ、だからしっかりついてこい。私の従者なのだろう?」

やれやれ、と肩をすぼめる。

「まったく、世話のかかる主様だな」

景正がそういうと二人して笑いあった。

お互いにお互いを信用している、そして必要に思ってるからこそ彼らには主従関係のほかに強い絆があった。

「ところで主様よ」

「ん?なんだ?」

ふと景正が思い出したように話しかける。その顔はいたずら好きな子供のようだ。

「そろそろ帰らなくても良いのかい?」

「ん?いや、これからもう一勝負と思っていたが?」

その言葉を聞いて景正は深いため息を吐いた。

「やっぱり忘れてたか」

「ん?何をだ?」

「お前、今日の昼にお華が屋敷に来ることになってるだろ?」

「………え?」







「まったく、あなた方は。女性を待たせるなんてどういうことなのですか?」

綺麗な着物に長い黒髪をなびかせた女性が、修行場から全力疾走してきた頼光と景正を責める。

「まあまあ、お華ちゃん。頼光のやつだって好きで待たせた訳じゃないんだぜ?ただ鍛練に集中しすきただけで」

「景正さんも景正さんです!頼光様がどこか抜けているのはご存じの筈です。そういうときのための景正さんでしょう?」

「お華ちゃん、その辺にしておくんだ。頼光が半泣きになっている。」

門の前で正座させられている景正と頼光、頼光は目に涙をためていた。

「頼光様、しっかりなさってください。あなたはここの主になる人で、わ、私の……夫になる方なのですから」

恥ずかしがりながらお華がうつむいた。

もちろん、それを受けた頼光も顔を赤らめた。

「はいはい、ご馳走さま。このくらいにして昼飯にしようぜ。みんな空いてるだろう?」

そういうと景正は正座を解除し、広間に入っていった。

それに続く形で、頼光とお華も渋々広間に向かった。





昼食も済み、縁側で微睡みながら茶を啜りながら三人は昔ばなしに花を咲かせていた。

「そういえば、景正さんを頼光様のお父様が屋敷に迎え入れたのが五年前でしたよね?」

「そうだったな、確か父上が町で見つけて連れて帰ってきたらしい」

「おいおい、その話恥ずかしいんだから本人の前でしないでくれよ」

慌てて止めようとした景正は、お華にお茶うけとして用意された煎餅を口に押し込まれた。

「なんでも、幼子が苛められていたのを助けていたらしい」

「あらあら、まあまあ」

景正は煎餅を食べきり茶を啜りながらそっぽを向いていた。

その横顔は耳まで真っ赤になっている。

「昔からお優しいのですね?」

「ああ、景正は優しいぞ。それに強い、だから父上は屋敷に連れ帰ったそうだ。私にいい影響を与えると見越してな」

そう語ると頼光は茶を飲み一息つく。

「ふん、俺には身寄りもなかったし丁度良かったんだろうさ。………まぁ良くしてもらってるから何も言えないんだけどさ」

照れ隠しに残りの茶をグイィっと飲み干すと縁側に寝転んでしまった。

「そういえば、お華ちゃんは今回どのくらい滞在出来るんだ?」

「え?あぁ、明日のお昼過ぎに戻ることになっています」

そう話す彼女は少し寂しそうだった。

「そう寂しそうにすんなって、まだ明日まで時間があるんだから頼光と愛を深めたらどうだってアッツ!?」

景正が言い切る前にお華が無言で茶をかけてきた。

「こら!何するんだよ!火傷するだろこれ!」

「昼間っから恥ずかしいことを言った罰です」

そう言うとお華はそっぽを向いた。

その横では頼光が腹を抱えて笑っていた。それにつられるように二人も笑うのだった。







翌日、昼食も済ませ、お華を見送った後に景正たちは中庭で稽古をしていた。

「んで?昨日はお楽しみでしたか主様?」

「よし、まずはその口を切り取ってやろう」

「冗談です本当にすみません!」

若干目が本気だった頼光にその場で土下座した。

「大体部屋も違うし、婚前にそんなことするものか」

「お前は固いもんなぁ」

それを聞くと頼光は心底あきれたような顔で景正を見た。

「な、なんだよ」

「いや、知らぬは本人だけと言うのはなかなか、端から見るとどうしようもないものだなと」

「え?なんの話だよ」

「何でもないさ、さぁ稽古を始めよう。今度は私が勝つからな」

そういうと頼光は構えをとる。それに合わせて景正も。

ここからは真剣勝負、彼らは主従であり友でありライバルなのだから。



上段に構えた頼光が先に仕掛けた。それに応戦するように景正はそれを合わせる。

刀と刀がかち合い火花を散らす。

本来真剣など使わないのが普通だが、彼らは敢えて真剣を使って戦う。

これは頼光の父が決めたやり方で、けして相手を殺さない技を覚えるための練習なのだ。

無論、慣れない内は木刀でするが景正や頼光たちは武道の才能があった。

そしてけして奢らず競い会う友も持っている。故に成長の早さは誰よりも早かった。

「今回はちゃんと剣道をするのだな景正」

「こっちでも勝ってみたくてな、泣きを見るなよ主様?」

そう言うと景正は距離を取りつつ下段に構えた。

そして次の瞬間には頼光の目の前に現れた。

「っな!?」

辛うじて反応した頼光がギリギリでかわす。

まったく見えなかった、見えた瞬間に覚えていた太刀筋を勘で避けたにすぎない。

「あれを避けるのかよ、結構苦労して編み出したんだけどなぁ」

景正は自分の切り札を攻略されたことに驚き、頼光から距離をあけた。

「景正、今のは反則だろう。何なんだ今のは、妖怪にでもなったのか?」

偶然かわせたことを悟らせないように景正に皮肉を言う。

「いやいや、れっきとした人間の技だよ。長引くと俺が不利だから一発で決めたかったんだが、流石は頼光ってどころか」

お互いに動けないでいた、頼光はさっきの技の打開策が見つけられず景正は同じ技を打つことに迷っていた。

二人が攻めあぐねていたその時

「若!大変ですぞ!!」

突如屋敷から初老の男が飛び出してきた。

「なんだ十兵衛、今いいところなのだから後にしてほしい」

「お華様が!野盗に連れ去られました!」

「「なんだと!?」」

突然の報告に驚きを隠せなかった。

まさかついさっき笑っていた彼女が襲われるなど思っても見なかった。

「おい十兵衛のじいさん!お華ちゃんには護衛が付いていたはずだろう!そいつらは何やってんだ!」

「それが……全員死んでおったらしい。しかもバラバラに引き裂かれて」

「なっ!?十兵衛どう言うことだ!人間が?引き裂かれた?そんな馬鹿な!」

明らかな同様を見せる頼光、その一方で景正は考えていた。

(人間がバラバラに?それこそ人間の技じゃない。人一人切り落とすのにも半端な技では出来ない。それに引き裂かれた……切られたのではなく引き裂かれたなど、そんなことできるのは一つしかない)

「十兵衛のじいさん、それは妖怪の仕業だな?それも人一倍たちの悪い」

「………そうとしか考えられん」

唸るように十兵衛は答えた。

「まさか!?妖怪だと!?都の安倍晴明様が九尾の妖狐を倒したことで消えたのでは無かったのか!?」

「考えてる時間はねぇ、お華ちゃんの帰る道を考えて過去妖怪が出たのは冠山の辺りだ、あの辺にいるはずだ」

「しかし、どうやって探すつもりだ!」

「そいつは人間を引き裂いたんだろ?なら足跡が残ってるはずだ。それを辿る、何にせよここでじっとしてても始まらないだろ!」

そう言うと景正は口笛を吹いた。すると馬が一頭景正のところに来た。

「まて私も行くぞ!」

「ダメだ、お前が一番感情的になる。これは訓練じゃない、殺す覚悟をしなきゃならない。そしてそれはお前の従者である俺の仕事だ。お前は大至急親父殿に連絡、それとかき集められるだけの人で捜索隊をつくって寄越せ。俺が先に行く!」

そう言うと馬に股がり冠山へと走り出した。

(無事でいてくれよ、お華ちゃん)

そう思いつつ、景正は馬を走らせるのだった。





景正が向かったあと、残された頼光は十兵衛に人を集めさせ捜索隊を準備していた。

「捜索隊には私も行くぞ。一人で待ってなんていれるものか!」

そう言って頼光も武装と馬の準備をする。

(景正、お華………無事でいてくれよ)

焦る気持ちを抑えつつ準備を推し進めるのだった。


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