ガールズ・ティータイム
ティーリアはまだ面識の浅い女の子を自宅に呼んだ。
「まだお互い知らない方が多いでしょう? せっかくですし、お茶会をはじめましょう!!」
余裕のある彼女だから出来る粋な計らいだった。
ティーリアはとりあえず、3人の女子を招待した。
キキョウ、ラビ、ルーメンだ。
この3人は工房に来てそう経たないし、特に共通点もない。
そこで、このお茶会で親睦を深めようというのだ。
もちろんその柱となるフォルも招待された。
「まずは私、ティーリアが。フォルさんにコンパニオン・ゴーレムとして創っていただきました。最初は何も出来ませんでしたが、フォルさんに育てていただいて。今は着付け、マナーにダンス教室をやっています。皆さんよろしくお願いしますわ」
完璧だ。さすがティーリア。
そして僕も名乗った。
「まずは自己紹介を聞きたいな。まずは言い出しっぺから。みんな知ってると思うけど、僕はフォル。フォル・バークライト。主にゴーレムを創ってるけど、一応お医者さんもね。じゃあ次、キキョウね」
今日の彼女はオシャレで紫装束を身に着けていた。花の髪飾りまでしている。
しかし、なぜだか彼女はブツクサ言っている。
「まったく、なぜキリング・ゴーレムが茶会などに……完全に浮いているではないか……」
来たからにはまんざらでもないのだろうが、こんな反応をするのは予想できた。
「キキョウ、いいかい。″可愛い″女の子はみんなお茶会するもんなんだよ? キキョウにもお茶会、やってみてほしいな」
クノイチ・ゴーレムはモジモジしはじめた。
「しっ、仕方あるまい。ならば茶会に参加させてもらおう!!」
キキョウのトリガーは″可愛い″というワードらしく、これをうまく使うと簡単に言うことを聞いてくれる。
ティーリアは思わずニッコリと笑った。
次にラビが自己紹介しはじめた。
「サッキュバスのラビです。よろしくお願いしますね!! お茶会は初参加ですけど……」
悪いとは思いつつも、失敗を狙って創った割にはよく出来ている。
今すぐ普通の社会生活が送れそう……なのだが、チャームが厄介だ。
エッ!!でデッ!!でしかも異性を引きつける。
これはうっかり外には出せないなと思う。
でもチャームの術式は専門家にしか解けないからなぁ。
最後にルーメンが名乗り始めた。
「ルーメン・ルーメンっす!! ゴーレムの修行でフォルさんに弟子入したっす!!よろしくお願いしまっす!!」
彼女からもマルシュと同じ元気印を感じる。
自己紹介が終わるとルーメンは目をまんまるにした。
「こっ、ここの女性陣の皆さん、全員ゴーレムなんすか? フォルさんが創った……!?」
キキョウは切なげな顔をした。
「私だけ他人が創ったものだが……」
気まずい空気をルーメンが押し切った。
「えー、だ、誰が本物の女の子なのかまったくわからねぇっす。師匠おそろしいっす……」
僕は師匠と言われて思わずはにかんだ。
「ところで、ルーメンはなんで僕に弟子入りしたの?」
彼女の顔色が暗くなった。
「あっし、じつのところ、再試験判定が出てるんすよ」
その場に衝撃が走った。
この年齢で王立宮廷魔術師なのは大したものだと思うが、逆にいえば未熟でもある。
「だからあっし、再試験を逃れるために憧れのフォル師匠のとこへやってきたんっす……」
すぐに緊張を和らげようと僕はフォローをいれた。
「はは。憧れるって、僕は協会からしたら出禁スレスレだよ? あんまりアテにならないんじゃない?」
ルーメンはぐりぐりメガネを持ち上げて熱弁した。
「再試験を跳ね飛ばして、しかも協会に媚びない姿勢にしびれたんすよ!!」
これはみんなちょっと引くかなと思ったけど、温かい目で話を聞いていた。
みんな優しいんだな。
実のところ、フォルの元へ集ったという仲間意識がそうさせていたのだが。
女子会らしく話はうつろう。
「まぁキキョウさん。いつもと違うおめかし、″可愛い″ですわよ」
「かっかっ、″可愛い!?″ そ、そんなことはないぞ。し、しかし、気づいてくれたのか?」
普段、凛々(りり)しいキキョウの顔がほころんだ。
こんな顔をすることもあるんだな。
「ルーメンちゃんも今度、おでかけします? このあたりは詳しくないんでしょう?」
「うわぁ!!ありがたいっす。上京してから観光してるヒマが無かったんすよねぇ!!」
「インフィニちゃんが来てくれなくなったのでさみしかったんですよぉ〜」
インフィニは絶賛、思春期反抗期中である。
一緒に下着を洗うなとかいっちょ前なことを言ったりする。
無垢で可愛かった頃がウソのようだ。
お父さんの気持ちってこんなのなんだろうなぁ。
いや、あんまりダメージは受けてないけど。
キキョウが珍しく話題を振った。
「小娘。お主、若くして苦労しているようだが何歳なのだ?」
「はい。15歳っす!!」
「!! それほど幼くして苦境に立たされているのか。私も陰ながら応援することとしよう」
「わぁ。キキョウさん、ありがとうっす!!」
15歳で宮廷魔術師とは上等である。だが、上がるのが早すぎれば叩かれるのも早い。
それにしてもキリング・ゴーレムが他人を応援するとは。
キキョウの精神構造は確実にいい方向へと向かっている。
「あら〜ラビさん、とってもいいプロポーションですわ。今度、ファッションショーに出てみませんこと?」
「ファッションショー? わぁ〜憧れます〜。可愛いお服、着てみたいてますぅ〜。でも私なんかで大丈夫ですかね〜?」
「いえいえ。十分すぎるくらいですわ!! スタイルでは私より遥かに良いものをお持ちで!!」
普ッ!! デッ!!エッ!!
もし、このままラビがファッションショーに出たとしたらやり過ぎである。
人を魅了する体格をコンセプトにしたのだから当たり前と言えば当たり前だ。
もちろんティーリアもそれを知っていて社交辞令を言っているのだろう。
その割には顔が本気だ。いかにもプロデュースしたそうな顔をしている。
僕をプロデュースしたときもあんな顔をしていた。
こうして賑やかなお茶会は無事、終了した。
参加した面々は目的通り、親睦を深められたようである。
僕はティーリアにお礼を言った。
「今日は気を利かせてくれてありがとうね」
彼女はセンスをパッと開いて笑った。
「これは私がやってみたくてやったことですからね。特別、気を利かせたというわけでもありませんわ」
本当に出来た良い子だと思う。
「また、別のメンツでやってみましょう。さぞかし楽しいことになるでしょうね」
それに同意して僕は笑い返した。
その夜、暖かい気分で寝ようとしたらすすり泣きが聞こえた。
「わたしも〜わたしもお茶会、参加したいですよぉ!!」
う〜ん、気持ちはわかるんだけど、お花ちゃんは厳しいかな。
そもそもみんなには見えてないみたいだしなぁ。
それにティーカップというよりはお線香……。
「あ〜!! いま、失礼なこと考えましたね!! 取り憑いてやりますよ!!」
いや、もう取り憑いてるでしょ……。




