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プロローグ
私はただ、子供たちを守りたかっただけなのに。
その夜、彼の紅炎が施設の廊下を這うように広がり、子供たちの悲鳴が闇に木霊していた。私は必死に祈った。――龍神様、どうかお力を。
次の瞬間、私の全身を駆け抜けた力は、想像をはるかに超えるものだった。彼の紅炎に対抗するように、龍神様の光が全てを飲み込もうとする。二つの巨大な力がぶつかり合い、子供たちの魂が、その渦に巻き込まれそうになった時――。
「大丈夫よ」
彼女は静かに微笑んだ。彼女は銀のペンダントを手に取ると、子供たちの魂を自らの魂と共にその中へと退避させた。月明かりに照らされたペンダントの表面が揺らめき、彼女の姿を少しずつ飲み込んでいく。
龍神様の力が彼を呑み込む。そして、だが、龍神様の力は止まることを知らず、ペンダントにまで及んでいく……。
最後まで彼女は優しく微笑んでいた。残されたのは、冷たい、そしてとても大切なペンダントと、私の後悔だけ。
あの夜、私は力の使い方を知らなさすぎた。そして今も、月を見上げるたびに思う。あの時、もし私にもう少し力を制御する術があれば、彼女はあんな選択をする必要はなかったのに。
でも、彼女は決して後悔の表情を見せなかった。最期まで、ただ穏やかに笑っていた。そして、その笑顔が、いつまでも私の心に刺さっている。




